今から十分以内に死んでください
二人目 木之内 愛(2)
この子供は……。でも、ダメよ。こんなことで怒っては、またコウの挑発にのってしまうだけ。
「ならいいわ。私はここからでる方法を探させてもらうから」
『指令には従ってもらうよ。あなただけ特別扱いしたらまた怒られる。それにあんまりこれから死ぬ人と話したくないんだよね~、だから注意事項を読ませてもらうよ』
勝手よね。子供って。私はコウの言葉を無視して、手を木の壁にあてた。
冷たい……。ささくれだらけの安っぽい木の部屋ね。ほとんどの繋ぎ目から風を感じない。もしかしたら所々を除いて何かでおおわれているのかもしれない。破壊防止かしら。
『無視はしないでほしかったですね。まあいいです。強制的に始めます』
コウがそう言うと、スピーカーから紙を広げる音が聞こえた。やっぱり誰かからの指示を受けている。
『注意事項です。この箱は二×二×五 (メートル)の箱だ。この中には他に何もない。以上。それでは今から十分間。よーい、始め! 』
勝手に始められた。まあ、一つだけ気になる事がある。空気穴は上にあるはずがないのよね。二酸化炭素は空気よりも思いはず。だったら下からの少しだけ感じ取れるこの風で空気の入れ換えはできているはずだし、もうこの辺は二酸化炭素の密度が高くなって今ごろ私は窒息しているわ。
「この壁、登っても良い? 」
私はコウに聞いた。登れないようにできているからそういうはずだし、あの空気穴も疑問をもつ必要がなくなるかは考え直しになるだけ。
『登れるならば、ご自由にどうぞ』
ということは、登っても構わないということ。そして、登ることができる可能性があるのね。
「じゃあ、自由にさせてもらう。ここの高さ、五メートルだったよね? 」
『……はい。五メートルです』
コウは嫌々答えた。子供だから声でわかる。そこまで私のことが気にくわないのね。この壁を登ろうとするから。
「どうやって登ろうかしら。道具はないし……」
周りの壁を触ってなにか違和感が無いか探した。しかし、違和感などなかった。なにか仕掛けがあると思ったんだけど、そう簡単には見つからないのかもしれない。
『そんなことして、時間の無駄だと思わないんですか? 後八分以内に死ななければならないことが理解できていないようですけど』
「ここから出られれば死ななくて良いわけでしょ? だからでる方法を探しているの」
『出られませんよ』
コウは私が言い終わると被せるようにして言った。しかも冷静すぎるほど心のない、子供の声ではなくなった声だった。
「あなたの言うことは信じない。本当は外に出られるけど、その事を知られたらまずいから嘘をついている可能性だってあるからね」
『そうですか。そう思うならご自由に時間を無駄にしてください。人生最後の七分間ですけど』
後七分か。後七分でこれを登らなきゃならないのよね。運動神経は良い方だけど、流石に五メートルは跳べないよね。
「登るか……」
私は隅に近い壁に触れた。二メートルも幅があるのだから角を使って登ること以外は不可能ね。これだけ凸凹していて、そのくせしっかりしていれば、岩と同じ。時間はかかってしまうけど五メートルくらいなら登ったことあるし、できるはず。
『あと、六分です』
私はその声を合図の代わりにして登り始めた。
「ならいいわ。私はここからでる方法を探させてもらうから」
『指令には従ってもらうよ。あなただけ特別扱いしたらまた怒られる。それにあんまりこれから死ぬ人と話したくないんだよね~、だから注意事項を読ませてもらうよ』
勝手よね。子供って。私はコウの言葉を無視して、手を木の壁にあてた。
冷たい……。ささくれだらけの安っぽい木の部屋ね。ほとんどの繋ぎ目から風を感じない。もしかしたら所々を除いて何かでおおわれているのかもしれない。破壊防止かしら。
『無視はしないでほしかったですね。まあいいです。強制的に始めます』
コウがそう言うと、スピーカーから紙を広げる音が聞こえた。やっぱり誰かからの指示を受けている。
『注意事項です。この箱は二×二×五 (メートル)の箱だ。この中には他に何もない。以上。それでは今から十分間。よーい、始め! 』
勝手に始められた。まあ、一つだけ気になる事がある。空気穴は上にあるはずがないのよね。二酸化炭素は空気よりも思いはず。だったら下からの少しだけ感じ取れるこの風で空気の入れ換えはできているはずだし、もうこの辺は二酸化炭素の密度が高くなって今ごろ私は窒息しているわ。
「この壁、登っても良い? 」
私はコウに聞いた。登れないようにできているからそういうはずだし、あの空気穴も疑問をもつ必要がなくなるかは考え直しになるだけ。
『登れるならば、ご自由にどうぞ』
ということは、登っても構わないということ。そして、登ることができる可能性があるのね。
「じゃあ、自由にさせてもらう。ここの高さ、五メートルだったよね? 」
『……はい。五メートルです』
コウは嫌々答えた。子供だから声でわかる。そこまで私のことが気にくわないのね。この壁を登ろうとするから。
「どうやって登ろうかしら。道具はないし……」
周りの壁を触ってなにか違和感が無いか探した。しかし、違和感などなかった。なにか仕掛けがあると思ったんだけど、そう簡単には見つからないのかもしれない。
『そんなことして、時間の無駄だと思わないんですか? 後八分以内に死ななければならないことが理解できていないようですけど』
「ここから出られれば死ななくて良いわけでしょ? だからでる方法を探しているの」
『出られませんよ』
コウは私が言い終わると被せるようにして言った。しかも冷静すぎるほど心のない、子供の声ではなくなった声だった。
「あなたの言うことは信じない。本当は外に出られるけど、その事を知られたらまずいから嘘をついている可能性だってあるからね」
『そうですか。そう思うならご自由に時間を無駄にしてください。人生最後の七分間ですけど』
後七分か。後七分でこれを登らなきゃならないのよね。運動神経は良い方だけど、流石に五メートルは跳べないよね。
「登るか……」
私は隅に近い壁に触れた。二メートルも幅があるのだから角を使って登ること以外は不可能ね。これだけ凸凹していて、そのくせしっかりしていれば、岩と同じ。時間はかかってしまうけど五メートルくらいなら登ったことあるし、できるはず。
『あと、六分です』
私はその声を合図の代わりにして登り始めた。
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