青空は、異世界でも同じでした。

娘々ノベライザー8975

第2話 明日の空は、青い。

エルフのミーナは、ゆなを探してくれることに同意をしてくれた。
私は、ゆなが何かを話しかけていたのを思い出しながら夜になって探すことにした。
とは、言っても北に走って行っちゃったゆならしき人物なもんで、確実なことにはならない。
悲しきことにミーナは、嘆いている私に慰めなのか、追い討ちをかけているのか。

「ねぇ。ワイバーンは、巣に居るかもしれないから気を付けてね?起こしちゃったら最悪、食べられるかもしんないから。」

ちょ、え?
今、なんと言いましたか?このエルフさんは。

「え、縁起でもないことを言わないで ️フラグになることになっちゃうから、そういうのは。」

グルルル?

はい、フラグ回収しちゃいました。
私の目の前にそのワイバーンが姿を見せたのは、ちょっとしか歩いてないのにいきなり涎が頭の上にたらりと滴り落ちてべっとりな身体へと変わった。
でも、私には、もっと驚くことになった。

「あ、アスカだ。やっと、冒険者を…見つ……け……ふぁ!?」

今のゆなの顔が顔文字で表現するなら。

Σ( ̄□ ̄;)

いや、そんなことをしている場合じゃなかった。
ワイバーンが、ミーナと私よりもゆなの方に振り向いて涎がさらにだらしなく溢れ出る。

「…ねぇ、あのワイバーン…私の胸を見てゆなの方に目移りしたんですが。」

「……あ。」

このエルフさん、何かを忘れていたのをひたすらに隠そうと目を反らしたんですが。
むしろ、知らなくて幸せなことがあるよと言わんばかりの顔の表情をしているんですが、それが。

「そういえば、最近のワイバーンって、繁殖期間じゃなかったか?ほら、ギルドの看板に書いてあったじゃんか。」

「そうだったわ。だから、ワイバーンの巣の近くのクエストで女性は、気を付けろって書いてあったわね。」

おい、また、フラグが回収されたんですが。
ていうか、ゆなが連れてきた冒険者たちの中でヒーラーとウィザードに女性が居るのですが。
それに、その二人しかいないパーティー編成の人たちを連れてきたまなに、私は、グッジョブのサインを見せる。

「話は、あとで。あのワイバーンを倒してからに…ゆな、危ない!!」

ワイバーンは、ゆなの方に直行をかけた。
ゆなは、危ないながらも真横へ飛び退いた。
ワイバーンは、その動きに慣れてなかったのか近くの岩に頭ごと突っ込んだ。
岩は、ガラガラと音を出しながら砕けた。

「ちょっとちょっと、ワイバーンのステータス、やばくね?」

こわっ ️
いや、怖すぎるんですが。
しかも、ワイバーンは、頭を軽く振って次の突っ込む体勢へ移ろうとしている。
あんなん喰らったら骨が砕けるところじゃない。
下手したら、みんなで仲良くゴートゥーヘブンですが。

「ねぇ、あなたたち…異常キャンセルの魔法とか、持ってる?」

「え、あ、はい。ありますよ?」

私は、ゆなをミーナに預けてワイバーンと対峙することになった。
明らかに、体格さが違えども私には、人には言えないあることができる。
ゆなにでさえ、言ってないことなのではっきり言って滅多にないチャンスだと思う。

「魔法使いさん、シールドを張る前に霧の魔法をだしてくんないかな?」

「あ、うん。分かった。ミストラル!!」

さすが、異世界の魔法。
一瞬で辺り一面に霧が立ち込めた。
ワイバーンは、私が何かすると思ったのか突っ込んできた。
そして、ゆなたちは、魔法使いさんの近くでシールドの中に隠れた。
これなら、思う存分にいけると私は、ワイバーンと戦うことになった。

10分後、周囲の霧が消えかかってまなたちは、私のことを呼んでいた。

「アスカ?どこにいるの?アスカー?」

「……こ……ょ。」

私は、なんとか声を出して返事をする。
声を出す気力しか残ってないので、明らかに動けないのは、確かなのだ。
だが、いち早く見つけたのは、ミーナだった。

「あ、あす…か!?そ、その身体…ど、どうして…だ、大丈夫だからね。ヒーラーが居るから。こっちよ、ライカ。」

ヒーラーさんは、ライカって言うんだ。
可愛い名前だなぁと、私は、若干ながらも笑顔を見せる。
ヒーラーのライカとウィザードとまなは、一緒に私のところに来て驚愕な状況を目の当たりにする。

「アスカ?アスカ!!か、身体が…か、下半身が…下半身が、無くなってるよ!?だ、大丈夫なの!?」

ゆなが、涙を出しながら私の上半身を抱き起こす。
さすがに、辺りが自分の血でグロって思ったけど、痛みのせいでそれどころじゃなかった。

「だ、大丈夫。私は、ゆなが生きて居るだけで…嬉しいから。ワイバーンを、やっつけたよ。」

「バカバカバカ。アスカにケガさせてまでなんて、私は、生きていけないんだから!!」

ゆなが悲しんでくれたのは、私が小学生の頃にゆなが男子たちに苛められた時に助けに入ったは良いけど、殴られながらも必死になってゆなを助けたいと思ったあの時と同じだった。

私は、誰かにやられてもゆなが居れば大丈夫だって言い聞かせたのも懐かしく感じた。

あの時も、確かゆなが話してくれたっけ?

「ねぇ、アスカ。私ね、アスカのことが大好きです。これからは、アスカを守れるように強くなるね。だから、ずっと…一緒に……。」

薄れていく意識の中で、ゆなが、卒業式で保健室に話してくれたことも、思い出した。

「アスカ、私はね。アスカのことが好きでよかった。これからは、アスカとずっと一緒に強くなろうね。」

あぁ、やっと思い出した。
ゆなは、ずっと私のことを、考えてくれていたんだ。
私たちの絆を強く、私たちの想いを強くしていきたい。

「ゆな…私、嬉しい…よ。」

涙を流しながら私は、笑顔のままで気絶をしてしまった。
ヒーラーのライカは、私の血を止めさせて治療魔法を掛けてくれている。
ゆなは、私の頭を優しく撫でながら必死に声を掛けてくれている。
ミーナとウィザードは、私の下半身を探してきてくれて接合部分を近づけて置いてくれた。

「だ、だめ…アスカ、アスカ!!死んじゃやだぁ!!」

朝焼けの森の中で、ゆなの悲痛な叫びが木霊した。
私は、異世界で初めての死を体験した。

今日の空は、青く晴れることを信じて。

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