気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

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「あ!でも四人一緒では物凄く近い場所からしか撮れないのですが、大丈夫ですか?」
 スマートフォンの、いわゆる自撮り棒のようなモノは当然ながら誰も持っていない。SNSをしている――特に画像に特化したインスタグラムにハマっていて、自分の写真をガンガン上げているような人なら常時持ち歩いているとネットニュースに載っていたが――わけでもないので。
 それは木内さんとか立花さんも同様のようだった。
 まあ、料理の画像とかだけを上げているかもしれないが
「教授は如何いかがお思いですか?私は一向に構いませんが……」
 歩行者専用の道路だったが、何だか四人で立ち止まって話しているのが妙に目立ったらしい。多分祐樹の容姿が一際優れているからだろうが。
 ただ、事務局の女性達の手前もあって祐樹は自分のことを立ててくれているのが分かってとても嬉しい。
「私も別に構わないが?」
 これが美しい男性だったら多少は胸が痛くなるだろうが。ただ、愛されているという確信を持っているし、魂も通じ合っている感じもしているので、どんな美しい人と一緒に寫眞を撮る程度では――しかも自分も一緒だ――嫉妬で身を焦がすことはないと断言出来る。
「失礼ですが……香川教授と田中先生ですよね」
 スマホを持って途方に暮れた感じでいる木内さんに祐樹が内心イライラしているのが分かって心配していると、遠慮がちに声を掛けられた。
 まあ、全国に放映されたので知っている人は多い感触は受けていた。ただ、京都の街の人間は自分とか祐樹以上の知名度の俳優さんとかだってスルーしてくれる優しさというか、無関心さを装ってくれる気質の人の方が多いので今のところ迷惑は掛かっていないが。
「はい、そうですが?もしかして、地震の時にボランティアとして参加して下さっていませんでしたか」
 大学生っぽい感じだったが、何だか眩しいモノを見るような感じの雰囲気を醸し出している。その上、記憶中に有るような気がした。
「え?覚えていて下さったのですか?エンゼルエアを担当していたので、教授のお目には触れていないと思っていたのですが?」
 記憶力は祐樹が褒めてくれるくらいなので自信は有った。そして東北地方と思しきイントネーションとかエンゼルケアという言葉をナチュラルに発音してくるところから何となくピンときた。
 多分。


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