気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

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「そのために、事務局の中に専従班があるんですよ。そういう検索外しとかも素早く見つけられるように。
 ネットリテラシーの低い人は病院長のチェックで見つかります。モンペも多数いますからね。
 糖尿病でキチンと生活習慣を管理しておくことが重要なのに、適度な運動とかをサボってお薬だけを服用して『あそこの病院は最悪だ!!看護師とかカウンセラーが文句ばっかり言って物凄く叱られた!横暴だ」とかナースやカウンセラーの実名入りでブログに書いてしまう人もいるようです」
 糖尿病の場合は、ある程度進行を抑えられるが完治はしない、少なくとも今の医療では。だから適度な運動と食餌療法、そして薬が使われるが、その三点を守らないと病院側の期待した効果は上がらない。だから完全な逆恨みなのだが、そんなことをブログに書く人間がいるとは本当に驚きだった。
「それに事務局では病院長のタヌ……いえ、鶴の一声で最新型のAI、いえ、田中先生がセンター長を務めていらっしゃる方ではなくて人工知能です。その機械に頼って検索を避けていても分かるような仕組みになっています。そんな事例は一つも有りませんでしたが『K/大/病/院/院田/中/医/師』でも見つけられる優れモノです」
 「ここまで進化した人工知能」という雑誌の記事を読んだ覚えがあるが、それを上回る技術が使われているらしい。まあ、腹黒タヌキこと斎藤病院長の鶴の一声も強烈だったと思うし、何かとケチる事務局長も病院の悪評が広まると病院経営計画が下方修正を余儀なくされるので賛成したのだろう。
「そろそろ集合時間です」
 立花さんが遠慮がちに声を掛けている。
「では記念写真を撮りますか?スリーショットで大丈夫ですか?それとも香川教授とのツーショットを二枚お望みですか?」
 祐樹が快活そうな声でーー多分だが、本音は早くカウンター割烹のお店に行って舌が溶けるような美味しい料理と、店の主人お勧めの日本酒を飲みたいのだろうーーそう促している。
「そんな……。香川教授とのツーショットなんて恐れ多くて……。四人で一枚の画像に収まるだけで充分です」
 木内さんも立花さんも遠慮がちにそう言っている。自分とのツーショットにどれだけの価値があるのか不明だったが。
 隣に佇んでいた祐樹を横目で見るとーー誰よりも多い時間を費やして祐樹を見ている妙な自信はあるーー安堵というか、手間が省けたという感じの表情を浮かべていた。
 そして。

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