気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

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「え?病院長はSNSにそんなに神経を尖らせているのですか?」
 インターネットの書き込みなんてデマも物凄く多いことも知っていた。積極的に書き込もうとかは全く思っていないし、SNSをしている暇があるなら、祐樹のために少しでも美味しい料理を作っている方がよほど楽しい。または物凄く喜んでくれたマフラーの続編(?)を編むとか。
 ネットを見ることは見るので、ニュースになった「〇〇動物園から虎が逃げ出しています。近隣住人の方はくれぐれもご注意ください」とかいう事実無根のデマがあっという間に拡散されて騒ぎになったことも知識として知ってはいた。
 自分としては大手マスコミの配信するーーそういうメディアはファクト・チェックもしっかりとなされているだろうからーーニュースしか信じていない。
「はい。ちなみに事務局でも専属で検索エンジンを使ってウチの病院とか教授・准教授を始めとする先生はもちろんのこと、それ以下の職階の先生の名前まで調べています。
 それに斎藤病院長も時々は病院のエゴ・サーチをしているらしいです。ネットでの書き込みで風評被害が出る前に早めに削除依頼をかける必要がありますから」
 エゴ・サーチは本来「自分の名前を自分で検索する」というほどの意味だが、どうやら病院ぐるみで行っているようだった。全く知らなかったので驚いたものの、確かに逆恨みとかもありそうだし、精神科も有るので統合失調症の患者さんなどは「妄想」を事実と思い込む人も多数いるだろうし。
 それに統合失調症の場合は退院してもインターネットにのめりこんでーーちなみに病院内で患者さんが使えるPCはないーー再び入院という悪循環を辿っている人も多いと呉先生からも聞いていたし、医学雑誌にも載っていた。どうやら、統合失調症とインターネットの親和性は極めて高いらしいし。
 そういう人がインターネットで病院に「悪意」を持って書き込むケースもあるのだろう。
「それは初耳ですが、例えばK大付属病院田中祐樹ではなくて、T--イニシャルの英語表記ですーーT中先生とか『K大付属病院心臓外科所属TY医師』とかにすれば検索に引っかからないのでは?もしくは田/中/祐/樹/医師とか」
 祐樹の指摘も尤もだと思ってしまった。というか、自分はインターネットのヘビーユーザーでないけれども、祐樹の場合は救急救命室の凪の時間などに動画などを見ているので知っていたのかも知れない。
 コンピューターは非常に便利だが、人間のような融通が利かない一面がある。
 その場合どうするのだろうか?

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