気分は下剋上 肖像写真
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「ああ、あれか。私も正直どちらでも良かった。確かにポーズが決まって居なかったり『家族の肖像画』というか、写真がなかった頃に王族や貴族とか『婚約者決定記念に』と画家を雇って描かせるような感じではなかったら却下しただろうが、そうでもなかっただろう?」
祐樹は思いっきり首を縦に振っている。
「画家じゃなくても音楽家でも居ますよね。確かベートーヴェンでしたっけ?『エリーゼのために』という曲を作ったのって」
祐樹との「デート」では話題がポンポン飛ぶのもとても楽しい。心に思ったことを思った時に言って、そしてその会話のキャッチボールが二人で過ごした長さを象徴するように延々と続いているのも心が躍るようだった。シルクの混じった――といっても写真ではそこまで分からないだろうが――スーツが祐樹の輝く瞳とか男らしくて凛々しい顔に良くマッチしている。
それに病院内と異なって肩を並べてゆっくりと歩みを刻むのも薔薇色の幸せだ。
先ほどは琥珀とセピア色の写真――と言っても自分たちの「肖像」ではなくてサンプル品だったが――に心躍らしていたが、今回は聴覚でも祐樹の存在を感じている。
「ベートーヴェンの場合は生きている間から高名な音楽家だったから、作曲依頼も、そしてピアノのレッスンにヨーロッパ中の王族とかウイーンの貴族の子女に教えるとかもしていたらしい。
『エリーゼのために』という曲のタイトルは確かにそれっぽいし、耳の不自由だった彼の場合は筆談帳を持って歩いていたので記録もたくさん残っている。
その中で『不滅の恋人』と書かれている女性が居て、エリーゼではないかとも指摘されていたのだが……」
祐樹が乾いた音を立てて親指と中指を鳴らした。何時聞いても良い音だ。
「『不滅の恋人』良い響きですね。これからは、貴方のこともそう呼びましょうか?」
半ば本気っぽい感じで耳元に囁かれた。
「それは……止めて欲しい。というのも、彼はその恋人との恋を実らせることもなければ、生涯を独身で過ごしたので何だか縁起が悪いような気がする。
それはそうと『エリーゼのために』と曲名に入れると作曲料が跳ね上がったらしいので、そのせいだろうと結論付けられていたな、私の読んだ本の中では。
ほら『月光』とかだとお金は貰えないだろう?だから……」
祐樹の横顔を見つめると興味深そうに聞いてくれている。自分は冗談のセンスが絶望的にないので、こうした話題の方が話せて嬉しい。
すると。
祐樹は思いっきり首を縦に振っている。
「画家じゃなくても音楽家でも居ますよね。確かベートーヴェンでしたっけ?『エリーゼのために』という曲を作ったのって」
祐樹との「デート」では話題がポンポン飛ぶのもとても楽しい。心に思ったことを思った時に言って、そしてその会話のキャッチボールが二人で過ごした長さを象徴するように延々と続いているのも心が躍るようだった。シルクの混じった――といっても写真ではそこまで分からないだろうが――スーツが祐樹の輝く瞳とか男らしくて凛々しい顔に良くマッチしている。
それに病院内と異なって肩を並べてゆっくりと歩みを刻むのも薔薇色の幸せだ。
先ほどは琥珀とセピア色の写真――と言っても自分たちの「肖像」ではなくてサンプル品だったが――に心躍らしていたが、今回は聴覚でも祐樹の存在を感じている。
「ベートーヴェンの場合は生きている間から高名な音楽家だったから、作曲依頼も、そしてピアノのレッスンにヨーロッパ中の王族とかウイーンの貴族の子女に教えるとかもしていたらしい。
『エリーゼのために』という曲のタイトルは確かにそれっぽいし、耳の不自由だった彼の場合は筆談帳を持って歩いていたので記録もたくさん残っている。
その中で『不滅の恋人』と書かれている女性が居て、エリーゼではないかとも指摘されていたのだが……」
祐樹が乾いた音を立てて親指と中指を鳴らした。何時聞いても良い音だ。
「『不滅の恋人』良い響きですね。これからは、貴方のこともそう呼びましょうか?」
半ば本気っぽい感じで耳元に囁かれた。
「それは……止めて欲しい。というのも、彼はその恋人との恋を実らせることもなければ、生涯を独身で過ごしたので何だか縁起が悪いような気がする。
それはそうと『エリーゼのために』と曲名に入れると作曲料が跳ね上がったらしいので、そのせいだろうと結論付けられていたな、私の読んだ本の中では。
ほら『月光』とかだとお金は貰えないだろう?だから……」
祐樹の横顔を見つめると興味深そうに聞いてくれている。自分は冗談のセンスが絶望的にないので、こうした話題の方が話せて嬉しい。
すると。
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