気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

30

「ご好意は嬉しいですが、お屋敷に有るものはご一族の物ですよね。そういう貴重な物を一存で頂くわけにもいきませんし……」
 遠まわしに謝絶した積りだったのだが。
「いえ、ご配慮下さって有り難うございます。ただ、私の祖父の評判は教授のお耳にも入っていると思いますけれど……」
 賛否両論有ったのも事実だったので曖昧に頷いた。誰だって――自分にはそのような人が居ないので、本当のところは分からないが、一般的な考えからだと――自分と血の繋がりのある人のマイナスの評価は聞きたくないだろう、きっと。
「今なお、ウチの家の実権を握っているのは祖父です。そして教授も何かでご覧になったとは思いますが『変人』と言われています。ただ、頑固だし、自分の考えを押し付けるところが多くて……それで私や父母が嫌な思いをすることも多々ありますけれど……」
 そういえば祐樹に向かって「頑固そうなところが似ている」とか言っていたような気がする。まあ、あの時は十分なラポールが構築されていなかったし、彼女自身が――正直、大人でも心臓に疾患が有ってその手術という試練には心が揺れてしまう人も多々見てきた――制御出来ない心情のまま口走ってしまったのも良く分かるので、自分もそして祐樹も全く気にしていないし、祐樹などは言われたことさえ忘れているような気がする。本人も「覚えるべきことが多すぎて、常に有益な情報しかストックしていない」とか言っていたし。それにお子様の戯言ざれごとなど祐樹は「覚えるべき」とも思っていない些細なことだろうし。
「ただ、良い側面も有って……。任せたことは全て自分の責任で全うしなさいと言って下さっています。
 そして、家具の処分は私に一任されています。だから、私としては教授がお気に召して下さったこのような家具は差し上げたいのですがいかがですか?」
 確かに現役の政治家時代でも型破りな言動で周囲や国民を様々な意味で驚かせた人だった。
 だから、その性格がモロに出る家庭内では――ある意味、政治家は人目を気にする職業なので、お祖父様も一応は配慮もしていただろう、多分――「変人」の面目躍如のような気がする。孫にあたるとはいえ、たった6歳の女の子に骨董品アンティークを好きにしなさいとはなかなか言えないだろうから。
「しかし、私などが貰って宜しいのでしょうか?」
 百合香ちゃんは大きく頷いた、名前に相応しく白百合の可憐さで。
「ええ、教授と田中先生にはマンガをたくさん買って頂きましたもの……。ご本は父母が買ってくれますが、マンガはダメなのです。それに私にとってはあんな家具よりも『コナン』シリーズの方がずっと価値があります。
 物の値段は需要と供給のバランスで決まるのですよね?経済学の初歩ですけれども。
 だったら」
 

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