九尾の妖狐は学生と洋食が好き

ルルザムート

第3話 父と娘 part3

少し前…2012年 9月21日 17時00分
ガイモの屋敷 廊下
(日本時刻 9月22日 6時00分)


神奈「わしのせいで…っ」バッ
神楽「ご主人!?」
執事長「神奈様!」

止める間も無く窓から飛び出していくご主人
どうしよう…
ラフリア「見てみて!紅茶入れたよ!」
考えているとラフリアちゃんがティーカップを両手で持って走ってくる

執事長「お嬢様、今はーーー」
ガッ
ラフリア「あ」
へ?

いったいどうしてそうなったのか何も無い場所で足を引っ掛けるラフリアちゃん、そして彼女の持っていたティーカップが宙を舞いーーー
バチャッ
神楽「っあっちちち!」
熱々の紅茶が僕にかかった

ラフリア「わっ!ごめん大丈夫!?」
神楽「だ、大丈夫!」
熱いのは驚いただけだけど服が濡れちゃった…
執事長「…申し訳ありません神楽様、すぐに浴場と代わりの服をご用意いたします…お嬢様、今は…」
ラフリア「うん、ごめんなさいサリエル」
ペコリと執事長に頭を下げて落としたティーカップを拾って駆けていくラフリアちゃん

執事長「こちらです」
そのまま執事長に脱衣所に案内される
ここ浴場の近くだったのか…
執事長「では代わりの服を購入に行って参りますのでしばしお待ちください」
一礼をして執事長は脱衣所を出て行く

神楽「…」
ラフリアちゃんもわざとじゃ無いのは分かってるけど…まさかこんな形で足止めを食らうとは…
服を脱いでカゴに入れ浴場に入る
サッと体を流して早くーーー

ガラッ
神楽「出て…」
そういえばお風呂じゃなくて浴場って言ってたね…
そこにはもはや家の中とは思えない空間が広がっていた

神楽「す、少しだけ!」
折角お湯まで入れてくれてるんだし体を洗うだけじゃ勿体無いよね!
入ってすぐの場所に置いてある桶を取り、浴槽からお湯をすくう

神楽「まずは体を洗おう」
そう思い浴場の壁付近にある棚から石鹸を探す、が
神楽「一通りこの棚にあるみたいだけど…」
どれを見ても女性が使うようなものばかりで男性用はシャンプー、ボディソープ共に無い

神楽「石鹸も…無いなぁ、まぁいいかこれにしよう」
折角用意してくれたんだし色々言ったら失礼だよね
適当にシャンプーとボディソープを取り近くの椅子に座る

神楽「へぇ…改めて見るとお店でも見たこと無い物だ…国が違うからかな?あ、裏に値段が書いてある」
70ドル?えーと1ドル110円と考えて…
神楽「7700円…」

神楽「…!?うわっ」

目眩のするような値段に容器を落としそうになる
こんなに高いの勿体無くて使えない!使えるわけがない!
大慌てで他の物に変えるが…
神楽「さっきのより高い…うわ、こっちも!」

結局僕は1番安い70ドルで体を洗ってから湯船に浸かることとなった


2012年 9月21日 18時00分
ガイモの屋敷 脱衣所付近の廊下
(日本時刻 9月22日 7時00分)


執事長「た、大変申し訳ありませんでした!」
神楽「気にしてませんから頭を上げて下さい」
折角用意してくれたものだ、感謝こそすれ文句を言うなどありえることではない

そう思いながら自分の着ている真っ赤なドレスを見る
神楽「…」
やっぱりちょっと恥ずかしい…

執事長「すぐに代わりの服をご用意します!」
神楽「いえ、折角用意していただいたんです、このままでも…ああ、行っちゃった」
ちなみにこのこの服はガイモさんが用意するよう使用人の方に言ったらしいのだがドレスの理由は単純でーーー

神楽「…」
僕ってそんなに女の子っぽいかな…
ガイモさんいわく『小さな女の子が憧れるのはやっぱりお姫様じゃないか?』らしいけど…

ガイモ「やぁ、そのドレスは気に入ってくれたかい?」ニコニコ
神楽「ガイモさん…」
言いにくいけど言わないとダメだよね…

神楽「あ、あのですね、ガイモさん」
ガイモ「…?あ!もしかしてサイズ合ってなかったかな?」
神楽「そうでは無くてですね…」

〜〜〜説明中〜〜〜

ガイモ「えっ!?男の子!?」
神楽「…はい」
どうしよう、自信が無くなってきた…

ガイモ「ごめんね、すぐに他の服を用意するからさ」
神楽「いえっ!今執事長さんが取りに行ってくださっているので大丈夫です!」
執事長のようにその場を去ろうとするガイモさんを慌てて引き止める

ガイモ「ん、そうかい」
神楽「はい」
ガイモ「…」
神楽「…」
会話がそこで途切れ廊下に微妙な沈黙が訪れる

気まずい…何を話そう?
ガイモ「…ところで神楽くんはエルマ・ルーラーという米軍人を知っているかい?」
神楽「エルマ・ルーラー?『陸軍の女王』の?」

それなら知らない人はまず居ない、名前を知らなくとも『陸軍の女王』という呼び名を聞けば誰もがピンと来るぐらいだ
けどなんかヘンだな、なんか違うような…?あっ、そうか

神楽「もしかしてアルマ・ルーラーという名前じゃないですか?」
随分と前だがニュースで報道された名前はそんな名前だった気がする
ガイモ「…うんそうだった、間違えたよ、実は彼女がお忍びで日本に行っているという噂を聞いたんだが見かけたりしてないかい?」

神楽「え、日本に?うーん…仮に来ていたとしても分かりませんよ」
いくら有名でも…いや有名だからこそ彼女の顔を知ってるのは極小数だ
ガイモ「そっかー…そうだよねぇ、うん」

実際に彼女を消したがっている人間達…例えば世界一のギャング組織と名高い凶悪犯罪組織『ギャラクシー・ウルフルズ』だ、軍を返り討ちに出来るほどのおおよそただのギャング組織とは思えない力を持った彼らがこの国から出ず、自分達から攻勢を仕掛けないのも『陸軍の女王』を警戒してるからに他ならないし、そういう人間から守る意味でも彼女の情報は殆ど公開されていない

神楽「それに噂は噂ですよ、本当に彼女がアメリカを離れているならあのウルフルズが動かないハズがないしーーー」
少し脱線してしまうが『ギャラクシー・ウルフルズ』も彼女に負けないくらい有名だ、普通ギャング組織は警察を警戒し、見つからないように違法行為をして儲けを出すが、この組織はそもそも隠す気が無い、つまりは正々堂々と・・・・・違法行為をして儲けを出し、対ウルフルズに動いた警察、軍をことごとく返り討ちにしてきた、そしてーーー

神楽「あのガルシア・クラウンがそれを見逃すハズが無い…」
ウルフルズを率いる男、ガルシア・クラウン、最も謎の多い人間…どんな人物か?何を目的としてウルフルズを率いているか?ほぼ全てが謎、分かっているのは彼の性別が男ということと抜群に頭が切れると言うこと、そして『陸軍の女王』を消したがっていると言うこと、それなのに彼女がお忍びで国外へなんてーーー

ガイモ「…君達が来るほんの少し前にそのウルフルズが壊滅したんだ、だからこの噂も現実味を帯びてきているんだよ」
神楽「っ!?」
なっ…ウルフルズが壊滅!?ということはアルマ・ルーラーがーーー

ガイモ「だが壊滅させたのは女王じゃない…多分だがね」
神楽「え…?」
話に聞き入って気付かなかったがいつの間にかガイモさんの顔が真っ青になっている

ガイモ「本当はただの思い過ごしだと思っていた、考えすぎだと…でも君達に会ったことでその考えももはやありえない話じゃ無いと思う」
考え…
神楽「その…考えは?」

ガイモ「ウルフルズを壊滅させたのは人間ではなく、神楽くん達のような人間が知り得ない未知の力を持った種族であり、ウルフルズ壊滅よりも前に噂が立ったことを見るにその生き物はアルマ大佐と繋がっている、そして最も最悪な筋書きはーーー」
神楽「………」
最も最悪な筋書き…?

ガイモ「アルマ大佐と彼女率いる精鋭部隊、そしてその生き物がそのまま次のウルフルズになるということだ」
神楽「…っ」ゾクッ
背筋が凍った、世界最の犯罪組織ウルフルズがアメリカからうかつに動けなかったのもアメリカを…世界を守る女王がいてこそだ

ガイモ「みんながみんな謎多き男ガルシアに意識を向けていたが…私たちも女王のことをほとんど知らないんだ」
神楽「で、でも国を守ってきた女王がそんなことーーー」
ガイモ「うん、あくまで私の『最悪の想定』だ、当たらないに越したことは無いしまず当たらないだろう、でももしそうなった時彼女たちを止められるのは恐らく…君たちだけだ、神楽くん」

真っ青な顔から流れる汗をハンカチで拭いながらガイモさんは言う
神楽「僕…達が…」
ガイモ「アメリカを離れた理由は分からないがーーー待ってくれ、電話がきた」

突然鳴った着信音に僕らの会話は中断された
この着信音…たしかフィンランド民謡の…
ガイモ「うん、うんそうか分かった…神楽くん、神奈さんが戻ったそうだよ!」


第3話 part4に続く



↓プロフィール

ラフリア・ツネルズ
性別 女
年齢 7歳
身長 114㎝
体重 21kg
血液型 O
髪の色 オレンジ(金髪に変える予定)
目の色 青
胸 10年後に測ろう
武器 無し
好きなもの ヒーロー、優しいお姉さん
嫌いなもの 悪い人

富豪の娘という点を除けば至って普通の女の子、お金持ちだからと言ってわがままを言うことも無く出来ることは自分でやる、将来が楽しみな少女
趣味は髪の色を変えることと日本から取り寄せたヒーローもののアニメを見ること
また、飛行機の一件以来神奈に憧れており、将来の夢は『軍人になって神奈達を助けること』らしい

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