九尾の妖狐は学生と洋食が好き

ルルザムート

第1話 不穏な気配 part1

2012年 9月21日 6時00分
東京 とある一軒家
(アメリカ時間 9月20日 17時00分)


ピピピピッ
朝の静かな寝室に目覚まし時計が鳴る
神奈「む…もう朝か…」
目覚まし時計のスイッチを切り、この家の主人あるじ狐坂 神奈こざか かんなは布団から出て台所へと向かった

神奈「たまには儂が朝食の支度をするかの…」
?「朝食の支度は私がしますからご主人はお仕事の準備をしてください」

棚の料理本を取ろうとしたところで背後から…儂の九本の尻尾の中から聞き慣れた声がする
神楽「おはようございます、ご主人」
尻尾の中からぴょこんと頭を出し眠たそうに朝の挨拶をする儂の式神、狐坂 神楽こざか かぐら

神奈「しかしいつも神楽に作ってもらっていては…」
神楽「お気持ちは有難いですがご主人…その…よくご自身の髪や尻尾を燃やしてしまったり指を切ってしまったり…危ないじゃないですか」
むぅ…確かに…

ひと月前、前髪が少し燃えてしまったことを思い出し、神楽に任せることにした
神奈「わかった、任せるぞ」
神楽「お任せください、ご主人」

神楽は儂の尻尾からぴょんと飛び降り、置いてある踏み台に乗って朝食の準備を始める
儂も支度をせねば…

寝室の隣の自室に行き、普段通り耳と尻尾を簡単な妖術で隠して教員用のスーツに着替える
相変わらずこの服は窮屈じゃの、ぶらじゃーとやらもせねばならんし…さらしを巻いて済めばよいのに…

神楽「ご主人〜朝食が出来ましたよ!」
神奈「今ゆく〜」

美味しそうないい匂いと神楽の声に引かれるようにリビングへと行く
神奈「おお!」
リビングに入って真っ先にテーブルの上の皿に用意された朝食が目についた

適量のドレッシングがかかったみずみずしいサラダにこんがりと焼かれたトースト、ほくほくのスクランブルエッグに少しかかるように程よく焦げた2枚のベーコンが乗っていて、その朝食が盛られている皿の横には多くも少なくもないちょうどいい量のコーヒーがコップに注がれていた(神楽が座る方もベーコンが2枚ではなく1枚という違いを除いて同じ朝食が用意されていた)

神楽「はい、フォークと…ミニスプーンです」
神奈「ありがとう、では…」
神奈&神楽「いただきます」

食前の挨拶をし、儂と神楽はフォークを手にとって食べ始める
神楽「自分で言うのもなんですが…うん、美味しい」
神奈「神楽が作ったんじゃ、当然じゃろう」

神楽を褒めながらサラダを半分ほど食べ、次にベーコンを口に運ぶ…ちなみに何故コーヒーを最初に飲まなかったのかはしっかり理由がある
くあぁ…美味い!

再びサラダを半分食べ、ベーコンを食す
美味かった…さて今度は…

ミニスプーンを使い、スクランブルエッグを一口分トーストの角に乗せて食べる
神奈「はむ……っっ〜〜〜!!!」
極上っ…!美味すぎなのじゃ…!

それぞれだけでも美味なるものが組み合わさることによってここまで…くぅ!

あっという間にトーストとスクランブルエッグを食べ終わった儂はもう無くなってしまったという1割の残念な気持ちと9割の幸福感を満喫しながらコーヒーを飲んでいた

神奈「…ズズ」
もっと食わせろと主張する舌と頭をコーヒーを飲んで落ち着かせる、これがコーヒーを最初に飲まなかった理由じゃ

神奈「ごちそうさまでした」
神楽「お粗末さまでした、ご主人」

神奈「いつもこのような美味なるものを作ってくれてありがとう、神楽」
席を立って神楽の隣まで行き、感謝の意を伝えつつ頭を撫でる

神楽「いえいえ、式として当然ですよ!ご主人!…えへへ」
三本の尻尾全てをふよふよと振って照れる神楽

撫で終わり、儂は歯を磨きに洗面所へと行く
神奈「…」
自分の電動歯ブラシを取り歯磨剤しまざいを付ける
(↑歯磨き粉の粉と違ってチューブに入ったペーストのやつじゃぞ)

スイッチを入れ歯を磨き始める
神奈「…」
便利じゃなぁ、この電動歯ブラシ…というか電動歯ブラシに限らず人間達はよくこんな便利なものを作れるのう…

そんなことを考えつつ歯磨きを終え、顔を洗ってから洗面所を出るとすぐ目の前に儂のかばんを持った神楽がいた
神楽「どうぞ、ご主人」
神奈「うむ、助かるぞ」

神楽から鞄を受け取り玄関へ向かう
神楽「昼食のおにぎりの入った風呂敷は鞄の中に入れておきました」
神奈「そうか、ありがとうの」

革靴を履き、玄関の扉を開ける
神奈「では行ってくるぞ」
神楽「はい!いってらっしゃいませ、ご主人!」

外へ出て太陽の光を浴びながら職場…桜丘高等学校へとのんびり歩いて向かった


2012年 9月21日 11時30分
桜丘高等学校 2階 2年生の教室
(アメリカ時間 9月20日 22時30分)


神奈「してA氏がB氏を討ったという訳じゃ」
生徒たちに分かりやすいようゆっくりと日本の歴史を解説進める…今更じゃが儂はこの桜丘学校で日本史の教師をしておる

神奈「次はD氏の日本来航についてじゃが…」
その時、(1人の問題児を除いて)全員真面目に授業を聞いている中で数人の生徒が…
生徒達「くすくす…」
少しだけ笑い始めた
神奈「ええい、またか!」

儂はいつものように出席簿を手にとって生徒達の笑いの原因である1番後ろの席の女子生徒に近づき…
神奈「ふん!」
スパーン!と頭を叩く

?「あぐおっ!?」
頭をさすりながら顔を上げる女子生徒…影月   遥(えいづき はるか)1人の問題児とはこの生徒のことである

神奈「目が覚めたか?影月」
影月「は、はひ…」
全く…何故寝てしまうのか…
もう寝るでないぞ、と注意をしても影月の場合1回寝ると…

影月「zzz」スピィ
5分もしないうちにまた寝る
再び出席簿を手に取り、今度はゴスッ!と角で頭をどついた
影月「ギャッ!」

はね起きる影月を見ながら考える
儂は子供が…特に何にでもなれる可能性を持つ学生が好きじゃ、だから生徒がより良い方向へ向かえるよう注意してるのじゃが…治らないということは儂の注意の仕方が間違っておるのか?それとも影月は何か悩みでもあるのか…今日聞いてみるとするか

そう思いながら教卓に戻ろうとしたところで授業終了のチャイムがなる
神奈「む、終わりか…号令を頼む」

今日の日直当番に号令をかけてもらってから、荷物を持って教室を出る…前に
…あ
大事なことを生徒に伝えるのを忘れていた

神奈「ああそうそう、急遽時間割の変更があっての、5時間目が数学から日本史へ変わったぞい」
生徒達「分かりましたー」

危うく忘れるところじゃったわい
生徒達がちゃんと聞いたのを確認し教室を出て職員室へ向かう

神奈「ふむ着いた、屋上の鍵は…」
今日は屋上で例の問題児、影月 遥と…影月の友人で学校一の優等生、井上 桜と儂の3人で昼食を取るという約束をしている。ちなみに約束は影月としかしていなかったのだが友人だからという理由で影月が井上も誘ったらしい、断る理由は無いので結果3人で昼食を取ることとなった

神奈「…あった、さあゆこう」
鍵を手に取り、儂は屋上へと向かった


第1話 part2へ続く



↓プロフィール

狐坂 神奈 (こざか かんな)
性別 女
年齢 不明(見た目は20前半?)
身長 164㎝
体重 74㎏(尻尾の重さを含む)
血液型 O
髪の色 金
目の色 金
胸 F
武器 妖符
好きなもの 母親、食事(特に洋食)
嫌いなもの 父親、戦争

東京にある一軒家にひっそりと暮らす9尾狐の妖怪、耳と尻尾を妖術で隠して人間の世界に溶け込んでいる
妖怪でありながら人間を愛しており、それが理由で桜丘高等学校の二年生の学年主任兼、日本史の教師として働いている
一言で言って美人であり、またその容姿には合わない『儂』という変わった一人称や腰まである金髪の髪という要因も相まって生徒達だけでなく他の教員達からの人気も非常に高い(一部の教員は生徒に悪影響だと言って良く思っていないが)
食事…特に洋食が好きで、いつか世界三大珍味のトリュフ、フォアグラ、キャビアを食べてみたいらしい
彼女と同じく人間を愛する自身の母親のことを尊敬している反面、人間を敵視する父親を嫌っている



コメント

コメントを書く

「冒険」の人気作品

書籍化作品