進め!非常識ガールズ!

ルルザムート

第3話 part3 カッチリ王子とあたおか王女

とある部屋…


「いたたたた!」
「…」
「あーちゃん!こんなカワイイ女の子に無言で関節技キメるのはやめようよ!女の子は守る存在であっていぢめるもんじゃーーー」
ごきっ
「あぎゃーっ!!!」

「じゃあ次はもう片方ね」
「え?ホンキ?本気で言ってるーーー」
ぐきっ
「あばぴょーッ!」
…すぐ近くでなんか起こってるけどそんなことどうでもいい、今は…

「あたしはちゃんとここにいるよ、泣かないで桜ちゃん」なでなで
「ひっぐ、うん、うん…」
ハルちゃんに抱きしめられているこの時間を大切にしよう

「ねえアーサーくん、これは一体どういうことなの?」
ああ…この声、匂い、感触、間違いなくハルちゃんだ、幻じゃない…

「うん…この変態吸血鬼がタチの悪いドッキリを遥さんの友人…桜さん?に仕掛けたらしいんだ」
なにコイツ?遥さん?馴れ馴れしいわね…
横目で少年…アーサーを見ながら誰にも聞こえないくらいの舌打ちをする

「へんたい?フラルドさんのこと?アーサーくんのお姉ちゃんの…」
「そう、認めたくないけど…」
「はぁい、フラルドお姉ちゃんよ〜」
「バカ姉うるさい!」

めきょっ
「どぅわーッ!?」
さっきから女…フラルドからからえげつない音がしてる…まぁスカッとするからいいけど

「あとフラルドさん、なんでヒゲメガネ付けてるの?」
え?…あ、本当だ
ハルちゃんが指摘して初めて気付いた、ギャグみたいなヒゲメガネをフラルドが付けている

「あ、これ?あーちゃんが勝手に付けたのよ、あーちゃんにはヒゲメガネを掛けた女の子をいぢめる趣味があって…」
ぷっちん

あれ?という顔でアーサーと私を交互に見るハルちゃん
やっぱりハルちゃんも聴こえたんだ、ぷっちんって何かが切れる音。そして多分それはーーー

「姉ちゃん、吸血鬼の首がどれくらい回るのかちょっと実験してみようか」がしっ
「…ゑ?」

ああ、うん…知ってた



きゃあ、あねごろし!(死んでないけど)


2012年 9月21日 19時30分
フラルドの私室
(日本時刻 9月22日 8時30分)


「落ち着いた?」
「うん…ハルちゃんありがとう」
アタッシュケース(気絶する前に咄嗟に元に戻した)を取り、ハルちゃんにお礼を言う

正直もうちょっとくっついてたかったけど流石にしつこいと思われそうなのでやめた、あとアーサー達はーーー
「ふう…まったく…」
「 」←フラルドだったもの

アーサーの躊躇の無さを見るに日常茶飯事なのだろうか?首が360度回されていたというのにヒゲメガネのせいで全然深刻に見えない

「フラルドちゃん復活!という訳で私達は用事があるからちょっと失礼〜」
「ちょっ、姉ーーー」
フラルドが前触れもなくいきなり起き上がったと思うとドアを吹き飛ばす勢いでアーサーを連れて飛び出していった

「い…!?」
今360度回った首がぐりんって元に戻ったような…
「どうしたんだろうね…?」
「さ、さあ…なんでだろうね?」
多分気にしたら負けなんだろう…というかそれよりも今、私とハルちゃんの2人きりだ

「…」
緊張する…以外に思われるかもしれないが2人きりの時間は多いようで少ない、使用人だったり生徒だったり通行人だったり邪魔が多いのだ、だから2人きりに慣れていないというか…
部屋をキョロキョロするハルちゃんを見て深呼吸する

このままじゃなんにも始まらない、思い切って声をかけよう、うんそれがいい
「ハルちゃん、あのね」
「静かにして」
「」

心に突き刺さる一言、勇気という名の私の決心は砕け散った
え、待って…私何かした…?嫌いになったの?
「むう…」
…?どうやら違うらしい、ハルちゃんは目を閉じて…聞き耳を立てている?
一体…?


『おーす!世界中のバカ共、聞いてるか〜?』
フラルドさん達が出て行ってからすぐ、急に声がし出した、右からのような左からのような…あるいは上、下…

びっくりしたけどどこか聞いたことのある声にそっと耳を傾けてみることにした
「ハルちゃん、あのね」
「静かにして」

いつあの声が来るか分からない…きた!
『あー、たった今日本列島はこの俺、ジャック様とコザカカムイっつー妖怪の物になったぞ!といっても観光案内じゃないから来るなよ?もし来たら…手あつーい歓迎するからな?…フリじゃないぜ?』
…えぇ?

わりと、いやかなりびっくりしてる、そうかこの声どっかで聞いたと思ったらジャックちゃんの声だ、それにコザカカムイって妖怪…
つい最近狐坂先生の正体を知った、そしてコザカという妖怪…あたしでも分かる、絶対狐坂先生の関係者だ

「むぅ…」
忘れかけてたけどあたしたちって狐坂先生探しに来てたんだよね…
『お?見ろ見ろ!どっかのアホが飛行機でこっちに来るぞ!記念すべきお客様第一号ってことで通信でも繋いでみるぜ!』
それにしてもジャックちゃん…声だけで分かる、ノリノリだ
これはまるで…YouTuberなりたてで自分なら人気爆上がり間違いなしと思い込んで一つ目の動画を撮っているようなテンション…

『あれ?繋がってるかコレ?イヤ繋がってないし。悪い、ちょっとタンマ』
ぐだぐだしてるなぁ…
『お前それで良くそんな自信満々で喋れるな…ホラ、このスイッチだ』
『おお、サンキュー!さて…繋がったぞ、ああそうそう、向こうの音声も流すからな』

ジャックちゃん、一人じゃないみたいだ、友達かな?うん、きっと友達だ
正直あの子、友達作りが得意には見えなかったしちょっと不安だったけどお喋りしてくれる人がいるなら大丈夫だろう

『おい、さっき一瞬出てきた男が居ただろう、代われ』
「ーーーあ」
その、声を聞いた時だった

『え?なんだ、いきなりーーー』
『やかましい!さっさと代われ!』
『ハァッ!?いきなり偉そうに抜かすんじゃーーーぐわっ!何すんだ!』

その後の話し声は聞いてはいたが理解はしていなかった。
頭の中に次々と浮かび上がる一月前の記憶・・・・・・、それを思い返してただひとつだけ
「会いにいかなきゃ」
「ハルちゃん?」
会って話をしないと行けない、その結果…例え殺されようとも。

「桜ちゃん、狐坂先生のことお願い」
「へ?」
ちゃんと話さないと、自分のやったことを認めないと、きっと今日のあたしを明日のあたしは許せない

ドアを開けて部屋を出る
「アーサーくん」
「はぁ…姉さんったらホントにもう…あ、遥さん、ごめんいきなり出てっちゃって」

どうしたの?と友達の話を聞くように微笑むアーサーくん…友達になった彼にいきなり嘘をつくのはかなり心が痛いけどホントの事を言えば間違いなく止められる、ごめんアーサーくん

「いきなりだけどあたしたちがここに来た時に通った…ええとあの青いトンネルの…」
「あ、ああ『次元の穴ワールド・ホール』のことだね、もしかして帰りたくなった?」
「えっと、まぁそんな感じ」

またここに来たい、そう言いたくなるのを堪えて喋る
「そのワールドなんちゃらって日本にも繋がってるものある?できれば東京の桜丘高等学校に」
「東京かどうかは確認しないと分からないけど日本に繋がってるのは1つあるよ、使うかい?」
…!よかった

「うん、使いたい」
「分かったよ、真っ直ぐ進んで突き当たりに階段があるからそれを使って4階に上がって、そこに大きな扉がある、そこに遥さん達が使ったものと同じ物があるからそれを使って」
「ありがとう!」
お礼を言って桜ちゃんの手を引き言われた場所へ走る…その、背中に

「日本の次元の穴ワールド・ホールは同じ場所に開いておくから…その、また来てね?」
友達との別れを惜しむ男子の声が強く残った

「…うん、行こう桜ちゃん」
「わ、分かった」


第4話 part1へ続く



↓用語紹介

アルバシオン王国
悪魔や吸血鬼等、魔と呼ばれるもの達が住む魔界にてただ一つの国であり世界である、王国。
クラマ・アルコットが治める世界であり、魔界というイメージとはかけ離れて平和な国でもある。地球と同じ広さの魔界にて(小さないざこざはあるが)何故大きな争いが起きないかは魔界の神である魔神の力によるもの、だがその力も徐々に弱ってきており…?

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