魔法少年の自由奇行

パルパス・パンプルドア

002

 ラドニア大魔帝国にある。国と同じ名を冠する名門校。ラドニア魔法学園中等部。

 まだ夏が始まったばかりだと言うのに蒸し暑い朝早くに。一人の男子生徒が廊下を歩いていた。

 ふぁ〜。
 
 大きな欠伸をしながら僕は自分のクラスへと向かっていた。

 昨日は結構儲かったなぁ。

 つい頬が緩みそうになるのを抑えながら昨日のことを思い出していた。

 まさか魔力強化の指輪以外にも視力強化のピアス、怪力の腕輪まで手に入ったのだ。

 マジックアイテムというだけでもそれなりに価値があり、その中でも人気の高いマジックアイテムは本当に良い金額で売れるので今すぐスキップしながら歌い出しても可笑しくないくらいの上機嫌だった。

 それに久しぶりにレベルが上がった。

 レベル。それは生きとし生けるもの全てに与えられた神からの恩恵。

 レベルが高いと病気や怪我もしにくくなり、寿命も伸びる。
 
 何よりも強くなる。男として生まれたからにはその事が重要だった。

 レベルを上げるには魔物を倒し、根源と言われる見え無い力を吸収し、一定値以上溜め込むと上がる。

 実際には魔物以外を殺しても上がるのだがあまりにも効率が良く無いので一般にはあまり知られていない。

 ふっふー、ふーん、ふっふー、ふーん。

 遂に鼻歌を歌い出した少年。足取りも軽やかで今にも踊り出しそうな程である。

 そして、遂にスキップへと足取りが変わりかけた瞬間にすぐ後ろから声がかけられた。

 「おはよう、アル。」

 可愛らしい少女の声が少年に向かってかけられた。

 「うひゃーっ!」

 浮かれて油断しまくっていた所に、しかもスキップをしようとしたタイミングでいきなり声をかけられ、驚いて足をもつれさせる少年。

 少年は前に倒れそうになるのを「うりゃー。」と謎の掛け声と共に持ち直したかと思いきや、今度は勢い余って後ろの方に…少女の方に倒れ込んでしまった。

 「あっ!」

 少年はあっ!やばい、勢いつけすぎた。という声をあげ。

 「えっ?」

 少女はえっ?何んで驚くのか。とか、何故こちらに倒れて来るのかと言う思いからの声だった。

 そのまま二人仲良く倒れて行き。

 ドン!

 廊下に二人が倒れた音が響き渡った。

 少年は倒れる時、咄嗟に少女を抱えて自分が下になる様にしたのであった。

 いたたっ、これじゃ最初に一人で転んだ方が痛くなかったなぁ。と思いながらも先ほど抱え込んだ少女に向かって。

 「ごめん、アリス。大丈夫?怪我とか痛い所とか無い?」

 と答えた。一方少女はと言うと。

 「え、あっ、うん。だ、大丈夫。アルが下になってくれたからあんまり痛くなかったから。… えっと、あ、アルあのっ、…て、手を離してくれると嬉しいかなって思うんだけど…。」

 最初は慌てた様子で、次第に顔を赤くしながらもじもじしながらどんどん小さくなる声でそう答えた。

 「手?…あ、ご、ごめん。わ、わざとじゃ、わざとじゃ無いんだ。本当にごめん。」

 手と言われて初めて少年は右手が少女のお尻を思いっきり掴んでいることに気がついた。

 勿論わざとでは無かったが気がついた時に驚いて少し強く握ってしまったりしながら慌てて右手を離し、肩のあたりをを抱きしめていた左手もほぼ同時に離した。そして全力で少女に謝罪をした。

 まだ顔の赤い少女は。

 「わ、わかってるから。わざとじゃ無い事くらい。うん、だ、だからさっきのはただの事故。事故だからお互いに気にしない様にしよう。」

 そう言いながらゆっくりと立ち上がってから少年に向けて手を伸ばしてから言った。

 「ほら、アルもさっさと立ち上がってよ。さっきも言ったけど気にしてないんだから。ね?」

 まだ少しだけ顔が赤いまま少女は微笑みながら言った。

 「うん、ありがとう。ごめん気を使わせちゃて…。」

 少年は落ち込んだ様子で少女の手を取りながそういった。

 「もう、そんなに謝らなくって良いよ」

 少女は少し怒ったようにそう言った。

 「わかった。ありがとう。アリス。」

 少年は嬉しそうに優しく微笑みながら言った。

 少女は少年を起こしたあとプイッと、顔を背けて、歩き出した。

 少年は「あっ、待ってよアリス」と言いながら急いで後を追った。

 少女の顔がさき程より少しだけ赤くなっている事に気がついたものはいなかった。

 …勿論この光景は近くにいた他の生徒たちに見られており、たまたま目撃したクラスメイトによってこのあと盛大にからかわれた二人であった。

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