Astral Beat

奈園 緋兎

泡沫の平凡

 『やあ、はじめまして。僕は西園寺 白錬サイオンジ ハクレン第二班の能力猫さ。』


 …………。

 その瞬間、嶺夜は、押し黙る。

 そして、ササミを錬成すると、


 「おいで~♪」


 『あ、いや、ちょっと待ってくれないかな?普通の猫好きなら、その反応は普通だけど、僕今思い切り話してたよね?もうちょっとアクションがあっても良いんじゃあないかな?』


  「……モフモフは正義。」


 『ごめん。ちょっと何言ってるのかわかんない。』


 不意に茂みからガサガサッと音がして、1班のメンバーが出て来た。


 「あーあー、大雑把にぶっぱなしやがって。たく、警察と市が泣くぞ?」


 「あれ?何でハクちゃんいるの?」


 轍次と麻希がそれぞれ言う。


 『どうも、ご無沙汰しています。ちょうど「ねぇ、ササミいらないの?」近くを、…台詞、被せないでもらえるかな?』


 「嶺夜?少し黙ってましょうか。」


 「辛辣だぜ。」


  白錬は、頭を小さく左右に振り、気を取り直したように頭を上げる。


 『実は、ちょうど近くを通ったので様子を見に来たのです。』


 「ほー。こんな森に何の用があったんだ?」


 『いえ、ただの散歩ですよ。』


 彰弍の質問に白錬が返す。

 ……………。


 「や、何で猫が喋ってんだ?」


 「「「「「『今更かよ。』」」」」」


 嶺夜の反応の遅さに、全員がハモる。


 「…まあ、良いわ。まずは白錬の紹介をしましょうか。」


 千奈は、そういうと、白錬を抱えて、嶺夜の正面に身を置く。


 「このこは、西園寺 白錬。能力名〔超能力者サイキッカー〕超能力と言われているものを、だいたい扱えるわ。」


 「へー。」


 『そうだよ。話が出来るギミックは、【念話】という能力なんだ。』


 「なるほど、完全に理解した。つまり、白錬は、エスパーのにゃんこということだな。」


 赤白球に入ってなくても良いのだろうか。


 「というか、あれ?嶺夜君、なんか目が青くないですか?」


 「あ?」


 「おー、ほんとだ。」


 鏡が無いので、確認が出来ないが、どうやら目の色が文字通り変わってるらしい。


 「まあ、こんなとこで長話もなんだから、一旦戻るぞ。」


 


 ……バシンッ


 「ったぁ!」


 「うるさい。とっとと起きんか。」


なかなか起きない患者をたたき起こし、 杏子はそう言う。

 どうやら、メディカルチェックの間に寝てたらしい。


 「どうやら、一部の体霊脈に加えて循環器も霊力循環に使われてるみたいだね。まあ、異常は無いよ。」


 「……(´-ω-`)」


 「そのあほ面やめろ。」


 嶺夜は、メディカルチェックを終えると、事務室へと足を運ぶ。


 「おう、嬢ちゃん。どうだったよ?」


 「別に、血液中の粒子霊核量が多かっただけですよ。」


 『問題が無いなら良かったです。』


 白錬が言う………

 
 「なあ、白錬、お前2班だろ?戻らなくて大丈夫?」


 『ご心配無く。』


 大丈夫らしい。

 しかし、猫が喋るとは、能力体はどこまで宿主を形質転換改造出来るのだろうか。

 ……まあ、正確に言うと実際には喋って無いのだが。


 「ねえねえ、嶺夜。なんか、君の刀を打った刀匠から、鞘が届いたよ?」


 そう言って、麻希から細長い桐箱を渡された。

 開けてみると、そこには、黒に、青色の桜の装飾を施した鞘が入っていた。


 「へぇ。綺麗な鞘ですね。」


 と彩香が言う。


 「そうだな。」


 嶺夜は、蒼桜器を取り出すと、鞘に刀を収めた。

 と、唐突に、松尾が


 「そういえば、そいつには、もう一振り近縁の刀があるのを知ってるか?」


 と言う。


 「蒼桜器の近縁の刀?」


 「ああ、といっても、できたのは、そいつが先で、蒼桜器はそのあと。まあ、これは分かってると思うけどな。」


 「近縁というと、それも霊力による付与エンチャントができるのです?」


 「ああ、だが、それは蒼桜器とは霊脈の性質が対立にあるものだがな。」


 嶺夜が使う霊力は、始まりと創造に由来するものである。それの対立というと、


 「……終焉と崩壊の霊核」


 「そう言う事だなぁ。」


 松尾はそこで間を開けると


 「そいつは〔彼岸雫ヒガンシズク〕その昔、五千余りの異形を斬った妖刀だ。元々、うちで管理していた物だが、数年前に喪失してる。だが、今回の戦いで、ノメアロDの死骸から同じ能力体痕が出てきた。」


  そこで、嶺夜は、釣りが成功していたことを思い出す。

  そして、榎本の言葉を思い出す。


 「そういえば、あの爆発が起こった後、榎本が現れたんですよ。」


 「…そういえば、何であそこでぶっぱなしたのかまだ聞いてなかったな。」


 『……何気に一番大事なところすっ飛ばしてるね。』


 白錬が口を挟む。

 まだいたのか。


 「それで?」


 「ええと、実は、今のあいつは出資者パロトンがいて、あの異能新成生物は、何かそれが支給してたみたいです。」


 「「「「「『そう言う大事な事はもっと早く言え!!!』」」」」」


 全員がハモる。

 仕方ないじゃん。猫でゴタゴタしたんだから。


 「…まあいい。嶺夜、もう少し話を聞かせろ。それ以外は、もう上がって良いぞ。」


 轍次に自分の知り得る情報を話し、自分も家路についた。




 「いやぁ、流石は【Pangaeaの断片】なだけありますね。それとあの得災の連中も中々やはり一筋縄ではいきませんね。」


 男が言う。


 「やはりあの妖刀は、同化は使えないですね。」


 そう言うと、男は懐から何かを取り出す。


 「…これは?」


 俺がそう聞く。


 「まあ、ちょっとしたブツです。ご禁制の物ですけど、それなりの力は簡単に手に入りますよ。」




 翌日。

学校にて。


 「なあなあ、知ってるか?昨日町の郊外の山で、二回爆発が起きたの。」


 「あっ、それなら知ってる。てか、皆気づいたでしょ?音が響いて来たもん。」

 「……」


 「「おい?どうした(の)嶺夜?」」


 友人二人が嶺夜を覗き込む。

 まあ、あれだけさわげばそりゃぁ、ね?

 ただ、これくらいなら、警察が上手くやってくれれば良いだろう。


「や、何でもない。」


 「どーせ遅くまでゲームしてたんでしょ?」
 

 「まあ、そんなとこ。」


 「ゲーム廃人もほどほどにしなさいよね。」


 心外だ。廃人になった覚えはない。


 「まあ、学校には来てるから良いんじゃない?」


 


 放課後


 「じゃあ、俺は部活があるから。また明日。」


 「おう。」


 「じゃあねー。」


 そう言うと、友人の一人啓斗けいとは、グランドに走っていった。


 「じゃあ、僕達も逝くか。」


 「や、逝くなよ!?行けよ!?」


 すかさず突っ込みを入れるのは、もう一人の友人咲樹さきである。

 
 二人は、校門を出る。

 それからしばらくして


 「…ねぇ嶺夜。最近何かあった?」


 「何だって藪から棒に。」


 「いや、ちょっと様子がいつもと違ってたから。」


  (まあ、あったと言えばあったのだが、)

 どう答えるのが正解なのだろうか。

  咲樹が疑わしげな目を向けてくる。

 ……誤魔化しても無駄っぽいよな。

 嶺夜がどう答えようか迷っていると、


 「あは、随分と楽しそうですね。私も交ぜてもらえますか?」


  「「うわお!?」」


  彩香が現れた。

 流石ストーカー。話しかけられるまで気配に全く気づかなかった。


 「えっ、誰?知り合い?」


 「ふふっ。初めまして。私は、上月 彩香です。嶺夜君のk「知人だ。」ちょっ!?」


 下手なことを言う前にすかさず口を挟む。


 「はぁ…よ、よろしく。」


 咲樹は彩香に手を差し出す。


 「それで、用件は?」


 「えーと、見守り?」


 ストーキングか。


 そんなとこしてないで帰れと言おうと嶺夜が口を開いた時。


 「「!ッ!!」」


 嶺夜と彩香が同時に反応し、近くにいた咲樹を彩香が庇う。

 嶺夜は表皮に霊脈を張り、簡易的に硬化させる。

 同時に無数の鈍い閃光が降り注ぐ。


 「こいつは……!」


 「な、な、な、何?」


 「大丈夫です。落ち着いて。」


 無数の柱のようなものに支えられた人形が夕日を背に、砕けたアスファルトに影を落とす。


 「おいおい、たった数時間で伸びすぎだろ……それとも、温存してたのか?」


降り注いだもの、 それは、榎本の異能モノだった。


 「あの犯罪者!とうとう攻めて来ましたね。」





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