Astral Beat

奈園 緋兎

特殊災害対策局第一班

 特殊災害対策局 第一班 異能力者一覧表


 D-358      桑原 轍次   (クワバラ テツジ) 
 
能力名〔帯雷〕

 能力体ランク:D   能力体:純系恩恵恵与型能力体雷

 能力者ランク:A     第一級異能力者

 性質:対電



 C-156     松尾  彰弍(マツオ ショウジ)  

 能力名   〔操蟲師〕

能力体ランク:C  能力体:中級異能生物精製型能力体

能力者ランク:A    第一級異能力者

 性質:ローヤルインセクト



  A-29   井伏 麻希(イブセ マキ)   
  
  能力名〔魔術師(ウィザード)

 能力体ランク:A     能力体:純系恩恵変換型能力体

 能力者ランク:A    第一級異能力者

 性質:ノーカラーズ



 S-147   柚乃淡 千奈(ユノアワ ユキナ)

 能力名〔女主神(フレイヤ)〕

 能力体ランク:S   能力体:被造性人工能力体,神霊

 能力者ランク:A   第一級異能力者

 性質:魅了(チャーム) 強



 A-79      上月 彩香(コウヅキ アヤカ)

 能力名〔空間跳躍〕

 能力体ランク:A     能力体:時空操作型能力体

 能力者ランク:B     第二級異能力者

 性質:偏愛



 S-294    神崎 嶺夜(カンザキ リョウヤ)

 能力名〔Astral beat α (蒼星の胎動)〕

 能力体ランク:S   能力体:星霊

 能力者ランク:C   第三級異能力者

 性質:虚無

 
 その他能力者


A-33     菊池杏子

能力名〔慟哭ノ消失(ドウコクノショウシツ)〕

能力体ランク:A    能力体:生体操作型能力体

能力体ランク:B    第二級異能力者

性質:鋼ノ心


G-7489    榎本 一也(エノモト カズヤ)

能力名〔鉄尾〕

能力体ランク:G   能力体:特殊器官型能力体

能力者ランク:D   第四級異能力者

性質:鋼皮



「えっと....。」


 渡された資料に一通り目を通した嶺夜は呟く。
 今日は第一班での活動初日なので、全員の能力一覧と、今まで会った能力者の一覧をもらったのだ。


 「この上の人達はいいんですけど、榎本って...」


 「ああ、お前の首を飛ばした奴だな。」


 「やっぱり」


 「まあ、これからの一番最初の仕事がこいつの狩猟にするつもりだから。」


 「おい?凶悪殺人鬼を新人に相手させんのか?」


 「いやまあ、正確には“釣り餌”だな。」


 「釣り餌?」


 「ああ。あいつは一度目を付けたら絶対に殺すのをポリシーにしている。だからお前を釣り餌に使って狩る。」


 「なるほどね。だけど、あいつが見たのは僕の異能発現前で、今のアルビノフォルムだと気付かれないのでは?」


 「それについては案を出している。お前、原子操作の応用で生体複製が出来たよな。」


 「ええ。それが?」


 「今異能発現前のお前の血塊を採取したものを今用意してもらう手筈だったんだが……」


 「「誰も居ないな」」


 特殊災害対策局第一班の事務室の前で、目の前に広がる静寂。


 「……まあ、あいつらが時間通り来ないのは平常運転だしな。」


 「駄目じゃないですか。」


 なんだろう、この部署の人間は駄目な奴ばかりなのか。


 「その見解はあながち間違ってはないんじゃない?」


 「そーですね。だいたい異能力者って社会性無い人多いですもんねー。」


 嶺夜達の後ろには、いつの間にか2人組の女性が立っていた。

 ………考えが外に出ていたか。


 「ああと、どちら様でしょうか?」


 「お、やっと来たか柚乃淡、井伏。」


 「言われた物持ってきたわよ。……その子が件の星霊種?」


 「わー!写真よりリアルの方が凄くかわいー!」


 「………あの……とりあえず放して下さい。初対面の距離感じゃ無いと思うんですよ。」


 そして小動物でもない。と抱きついてきた麻希を引き剥がす。


 「百合百合しいあの二人は放って置いて、はいコレ。生体複製だっけか?今回の新人は面妖なスキルを使うのね。」


  「ああ、ありがとう。他の奴らは?」


 「えーと、彩香ちゃんは今日は家の都合でこれない。松尾さんはお馬さんを応援するって言ってたわよ。」


 「彩香はともかく、あの野郎。賭け狂いもいい加減にしろよ……」


 轍次は千奈からそれだけ確認すると、嶺夜に声を掛けた。


 「おい嶺夜、この血塊を飲んで異能発現前のお前を生体複製をしろ。………というか放してやれよ麻希……。」


「お断る」


 「……もう良いです……煮るなり焼くなり好きにしてください……」


 「いや、話進まんから。」


 千奈が麻希から嶺夜を引き剥がす。
 そして、轍次が嶺夜に血塊を渡した。


 「えっと、これを飲めば良いんですよね。」


 「ああ。」


  嶺夜は血塊を飲んで遺伝子解析を開始した。
 そして遺伝子解析を終え、生体複製を行った。


 「「「うわお」」」


 蒼い光が霧散し、その中から現れたのは異能発現前の男体の嶺夜だ。

 生体複製は成功したようだった。


 「うおおおお!やったぞ!久しぶりの感覚…戻れた戻れた!」

 よもや戻れるとは思っていなかったため、テンションがおかしくなった。


 「……かなりの特異性ね。能力体が書き換えた遺伝子情報をさらに上書きするなんて。」


 「まあ、なんだ……そこら辺は黙認した方が良いだろ。報告なんてして見ろ。絶対 “財団” とか周辺諸国が騒ぐぞ。」


 「そうですねー。あんまり特異性が強いと需要が高騰しますからね。


 三人がそんな不穏な会話をしているとも知らず、嶺夜は男に戻れた喜びを噛み締めていた。


 「おい嶺夜。一応それでまた日常に戻れるな。」


 「えっと、そうですね。」


 「なあ、轍っちぁん。水指して悪ぃんだが、一旦坊っちゃんは死んだことにして、嬢ちゃんの戸籍を新しく作れば良いんじゃねぇの?」


 「お前話聞いてたか?そもそも、嶺夜が釣り餌をしなくちゃ意味ないだろ。」


 「いや待て突っ込めよ!何で自然な流れで新しいの混じってんだ。」


 話に水を指したのは、新しく出てきたおっさん2号。
 

「 やっと来たか松尾。馬はもう良いのかよ。」


 「おうともよ。付きまくりでおめでとうだったぜ。」


 「ああ、そうかい。」


 その間おっさん二人のペースに付いていけず、完全に置いてけぼりになっていた。


 「あの……。」


 「おっと、話の主役を完全に無視してたぜ。おじさんは、松尾 彰弍って言う者だ。宜しくしてやってくれ。」


 「はぁ。」


 松尾が名乗った後、轍次が さて と言って、全員に向かって言った。


 「それじゃあ、今話した通りこれからの任務は、警察の奴らが投げ出した連続異能殺人鬼、 榎本 一也の捕獲だ。」


 「おうよ。」 「ええ。」「はい」「はーい。」


 「まあ、でもそれより先にやらなきゃいけない事があるわよ。」


 そう言って千奈は嶺夜を見る。


 「?」


 「まずはあなたのお兄さんに、可愛い可愛い妹さんの事を説明しないとね☆」


 なん………だと!?




 その男は弱かった。
 その男は無力だった。

 何か特別な能がある訳でもない。
 何も出来ない存在だった。

 そんな男は、腐りきった醜いモノに目をつけられた。

 そのモノに蔑まれ、嘲笑われ、踏みにじられていた。

 それは、確かにその時だけは単なる間違いだった。

 いつも己が身を傷つけていたそれを偶然手にした。してしまった。

 その男は逃れるためにそれを振るった。

 気が付いたらそのモノ共は動かなかった。

 その醜悪な死骸から流れ出た赤は驚く程綺麗で、心が充実感で満たされると同時に、何かが壊れた。

 次の瞬間、男はナニカに変わっていた。
 
 そして悟る。もう無力じゃ無い。



 その影は、警察が訪れた集合住宅の一室を見つめていた。


 「あの感触からなんとなく察していたが、やっぱ殺りきれて無いか。」
 


 
 
   

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