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仮面ライダーエレメント

cicada

第二話「異世界『ザード』」その三

その夜、俺と母さんの一連のやり取りを盗み聞きしていたらしいクレアさんとアニエルが張り切ってしまい、食べきれないほどの晩餐となった。

「リュート、6歳の誕生日おめでとう。」

一番上座から俺に祝いの言葉を贈るのは俺の父親フガート・フォン・クウガリア。
クウガリア辺境伯の爵位をもつ貴族の当主だ。いずれ俺はこの家を継がなければならいことになっている。

だが、これは非常に問題である。俺はいずれ帰還方法が見つかれば地球へ帰るのだから。

しかし、今これを問題にするのは時期尚早というものである。当主を継ぐのは俺が学院を卒業し、成人するのは18才、あと12年ある。何か方法を考えるには十分な時間だ。だから今はこの楽しい時間を過ごそうと思う。

「ありがとう、父さん。」

「6才の誕生日の翌日に家を出て学院のある王都に向かうという風習通りに、もう明日出立なのか。」

おいおい、明日出発かよ。出発の準備はしただろうか、記憶を取り戻した影響でそれまでの記憶が曖昧だ。あとで確認しなければ。

「そ、そうだね。父さん。」

「アニエルがどうしてもと言うからアニエルに同伴を許可したが、やはりクレアが一緒に行く方がよいのではないだろうか。」

王立ブレイドル学院。王都に位置するこの国内最大の教育施設は魔術、剣術、体術、錬金術などあらゆる分野の教育を目的とし、貴族、平民、奴隷までもが授業料さえ払えば入学できるという貴族制の社会には珍しい学院だ。学院にはメイドなどの従者の同伴が許されている。

それにしての父親もなかなかの子煩悩のようだ。

「父さん、クレアさんがこの屋敷の掃除はだれがするの?まさかアニエルにやらせる気?」

「それはそうだが、私は心配なのだ。」

「王都までは馬車で一週間だよ。そんなに長い旅じゃないよ。学院内ではそんなに大きい危険もないだろうし。心配しすぎだって。」

アニエルによるとここから王都までは500㎞程度の道のりらしい。一日70㎞と仮定して7日とちょっとだ。
クウガリア領は辺境であるが、実は近くの都市『ガレン』には大きな街道が通っており、道の駅の宿を利用することで一日70kmの行程をうまくいけばスムーズに消化できる。

「そうか、そうだな。息子を信じて送り出すのも親の務めか。」

まあ6才の子供が寄宿学校に行くわけだからこれくらい心配するのは当然かもしれない。

「にーちゃんどっかいっちゃうの?」

そうだ、もう一人いた。俺のこと大好き星人が。

「アリス、僕は王都の学院に通うんだ。だから、しばらく兄ちゃんとは会えなくなっちゃうな。」

「もう、あえないの?」

母さんのめんどくさい彼女の遺伝子を感じるこの少女は俺の妹のアリス・フォン・クウガリア。3才である。

「夏には帰ってくるし、半年くらいの辛抱だよ。」

「はんとしって、なんにち?」

「一年の半分だから365÷2で182日くらいだな。」

「きゅうそくのひがなんかいきたぐらい?」

休息の日とはこの世界の日曜日のようなものである。

「182÷7で、えーっとぉー…26回かな?」

「リュート…お、お前…。」
「リュートちゃん…。」

ん?なぜだ、みんながこっちを見ている。なんか変なこと言ったか?

「リュート、お前は算術がもうできるのか。」

しまった、俺はまだなにも教育を受けてない、計算などできるはずがない。何か言い訳を考えなくては。

「天才よ!6才でもうこんなに複雑な計算ができるなんて!リュートちゃんは将来きっとすごい偉人になるに違いないわ!!」

「リュートはすごいな、クウガリア家は安泰だな。はっはっは。」

親バカで助かった。

「にーちゃん、でもあえるの1ねんに2かい?」

あれ?こいつも計算できてね?いや、気のせいか。

「二年たてば、アリスも学院に通うことになるから、それからは一緒に住めるよ。」

「2ねんたてばまたいっしょ?」

「そうだ、約束だ。」

「わかった…。」

おいおい、そのふくれっ面はあんまり納得してないな。だがこいつは現時点での兄への愛が偏り過ぎている気がする。結構早い気がするが兄離れのいい機会かもしれない。

その後、俺たちはやはり料理を食べきれずに残りの一部は俺とアニエルの明日の弁当になった。

そして、出発の朝。

「リュートちゃん、アニエルちゃんの言うことをよく聞いてね。知らない人についた行っちゃだめよ。あと生水には気を付けてね。」

「リュート、この袋には入学金金貨10枚と生活費金貨2枚が入っている。金貨2枚という金額は無駄使いしなければ、3ヶ月程度で使いきるだろう。だから王都に店を構える旧友の商人への紹介状も書いた。お手伝いをして生活費を稼ぐのだ。」

「わかったよ、父さん、母さん。」

これもこの家の風習だ。さすがに6才から生活費を稼ぐのは早すぎる気がするが、文化の違いというやつか。

「にーちゃん…。」

昨日からふくれっ面が直っていない妹である。

「アリス、こっちにおいで。」

俺はアリスに近寄るように促す。

チャリン

「?…これなに?」

「裏庭で見つけたきれいな石をクレアさんがネックレスにしてくれたんだ。」

俺はアリスの首に手を回しネックレスをつけてやる。

「これを俺だと思って夏まで待っていられる?」

アリスはネックレスを両手で持ち、ぼーっとしたように見つめている。そんなに物珍しいだろうか。

「ア、アリス?」

「…ってる…。」

ん?

「まってるからぁ~~~!!うわぁ~~~ん!」

しまった、泣かせてしまった。そして、抱き着いてくる。

「いい子だぞ、アリス。」ナデナデ

何故だろう、父さんがジト目で、母さんがにっこり微笑んで見つめてくる。若干の居心地の悪さを覚えつつアリスを引きはがす。

「リュート様ぁ~、馬車が到着しました。」

どうやら馬車と護衛の冒険者たちが到着したようだ。アニエルと二人で荷物を馬車に運び込む。アニエルはいいと言ったが旅立ちの準備くらい自分でしたい。

「護衛任務で来ました、C級冒険者チーム『禁断の果実』リーダーのガイルです。途中の辺境都市ガレンまでは我々が護衛します。ガレンからは待機している仲間が一人同伴して乗り合い馬車で王都を目指します。」

「お願いします!」

冒険者たちとあいさつを交わし、馬車に乗る。そして、出発する馬車から身を乗り出して父さんたちに手を振る。

「みんなぁ!いってきまぁす!」

「気を付けるんだぞぉ!」
「リュートちゃん、手紙は毎週書いてねぇ~!」
「にーちゃん!あ、あ、うわぁ~~~ん!!!」

またアリスは泣き出してしまっているようだ。
俺は中に戻り、アニエルに尋ねる。

「そういえば、この世界の名前は何なんだ?」

「もとの世界に名前がないように、こちらの世界にも世界そのものを示す固有名詞はありません。」

「こまったなぁ、地球に戻ったときのために記録を残しておこうと思ったんだが。」

「では、『大地』を意味する単語『ザード』なんかいかがですか?」

「お、いいねぇ、異世界『ザード』か。」

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