日常を取り戻したい学生。

No.参。中途半端で全知全能な少女。

走りながら改めて確認する。
「余裕で間に合ったように見せるように走ろうか。その方がいい。」
「おけい!」
まぁペース配分的に500mを48秒で走って…いや、最短で行けば200m位だから19秒くらいで着くか。でも余裕があった感じも出さないと絶対平怒るしな…。5分前行動とかは価値観によるから良いけど時間は守れ!急がないといけないような時間に出るな!って。20m位は歩くことにしよう。
「最短距離で行くよ。ついて来れる?」
「行けるよ!」
「じゃあ行こうか。」
僕達は道を最短でつける道へ変え、最短距離で公園へ向かった。


「こんにちは。等也さん。」
「あ!どうも幽さん!昨日ぶりですね!」
「そうですね。昨日は驚きましたよ。いきなり『どうも!平等也と言います!少しお話しませんか?』なんて言われたのでナンパかと思いましたよ。」
「えっ!?あの、そんなつもりは~…」
確かにあの接し方はやばかったな。できるだけ疑われないように自分の情報をさらけ出せば良いと思ったからあの接し方をしてしまったけど…。俺だったらこんな人に会ったら逃げるし。勢いに任せすぎた感じがあったな。あの時幽さんが止めてくれなかったら多分住所まで公開してる。確信できる。後悔してる。
「こんな人気ひとけのない所に来てくださいなんて半ば無理矢理約束させられて…怖かったんですよ?」
「いや、あの、えっ、その…」
「冗談ですよ。」
その笑いを見るとからかわれているのが分かる。恥ずかしい。
ってかここに来るよう約束させたのは幽さんじゃ?
「そう言えば何で私に声をかけたんですか?」
「あぁ、その事は億山が来てから話しましょう。」
「もしかして呼んでなかったりして。二人きりの時間作ってたりしませんか?」
「いやいや!そ、そんなことないですよ!」
まぁ、こんな風な調子のいい話をしていると、そんな疑問は直ぐに頭の中から消え去った。まぁ一方的に俺がからかわれただけのようだが。すぐに時間が経った。そりが合う相手のようだ。しかし、秀が来ないな。もう29分だぞ。俺がここについてから軽く20分くらい過ぎたぞ。5分前行動って言葉知らないのか?とか考えていると、
「あぁ、そういえば。」
と、彼女は切り出した。
「?何です?」
「億山さん遅いですね。30分くらいに来ると思ってたんですけど。」
やべぇ。流石にあいつ遅いな。
「呼んだんですけどね…。あぁ、そういえば1人連れて行きたい奴がいるとかなんとか言ってたのでそれ呼ぶので時間かかってるのかもしれないですね。」
「ふぅん…。」
あ、もしかしたらもう1人連れてくるのは不味かったのかな?と思い聞いてみると、
「あぁ、大丈夫ですよ。」
知ってるので。と、言っていた。おかしいな。
「億山と連絡とってるんですか?」
「いやだなぁ、平さん。連絡してくれたじゃないですか。『もう1人連れてきますよ』って。」
と、言っていた。連絡していたらしい。そういえばそんな気がする。でも知っていると言って気遣ってくれているのかもしれない。そういう所優しいな。どっかの億山と違って。
という話をしていたら。いや、噂をすればかな。やっと来た。歩いて来たようだ。あいつ人を待たせること考えてないのか!?とか考えて時計を見ると丁度30分だった。時間通りに着いてた。それなら仕方がない。5分前行動とかは価値観によるところもあるからな。俺の当たり前があいつの当たり前じゃなかったりするし。遅れてきたら「5分前行動とかは仕方がないけど時間は守れ!」って言おうと思ったけど。


「どうも。億山と言います。」
「どうも秀一さん。上山幽と申します~。」
あれ?秀一って言ったっけ?あぁ多分平が言ってたのかな。まぁ、そこはどうでもいいとして、うん。写真通りやっぱり変な感じだ。まとわりつく感じがある。身長は165位かな。髪の毛がショートかロングか分からないくらいの長さだ。んで、なんと言うか…その…髪の毛の色がくすんだ白というか…濁っているというか。そして目が半笑いと言うか、正直全部中途半端な感じだ。ここまで読めないような…いや、解けないやつは久しぶりだ。
「あの~、隣にいる子が連れてくると言っていた方でしょうか?」
「あぁ、そうです。すみません勝手に連れてきてしまって。劣、挨拶は?」
「ん?あぁ、どうも!億山烈花と言います!よろしくお願いします!」
「烈花さん…でいいかな?よろしくね~。」
なんだこいつ。なんで偽名なんだ?もしかして後ろめたいことでもあるのかな。…あぁ、よく考えたらこいつ殺し屋だったわ。僕が例外的に名前を知ってるだけか。いや、劣というのも偽名かもしれないが。長く一緒に過ごしてるから劣って言うのが当たり前になってたけど。まぁ長くと言っても4ヶ月程度だが。そう考えると劣のことあんまりよく知らないな。

じゃないわ!何で僕の苗字使ってるんだ!?どんな思惑があって偽名に俺の苗字入れた!?幽さんはまだしも平には違和感を与えるかも知れないだろ!?
「へぇー!秀お前妹いたのか?」
…うん。いらない心配だったわ。いや、心配はするべきか。平の頭について。勉強を僕に教えてる癖に馬鹿だな。まぁ勉強は教えて貰ってる振りをしてるだけだけど。こいついつも5位以内には居るからな。
「あれ?烈花ちゃんってどこに住んでるの?」
「?秀兄と一緒だよ?」
「へぇー、そうなんだ!今まで秀の家に行った時に見た事無かったから他の所に住んでるのかと思った!」
「呼んでくれればいつでも出てくるよ!」
なるほどな。こいつ僕の家に住む気か。寝床確保のためなら平と仲良くすることも厭わないって感じか。滅茶苦茶強かだな。
…違う!絶対違う!僕の家に住んで毎日風呂まで入ってくる気だ!その証拠になんか劣がこっち見て悪い笑いしてるもん!
「…秀一さん。少しいいですか?」
「ん、あぁはい。何でしょう。」
ここでは冷静なふりをして───
「首から少し血が出てますけど?」
あ、劣やったな。血が出るほど押し付けてやがったか。どうしよう。劣、こっちみてテヘペロするんじゃない。誤魔化し方が古いぞ。しかしこれは流石に誤魔化し方が思いつかない。
「結構鋭い傷ですね~。道の木で切りました?いや、この鋭さはナイフかなんかで切ったような」
「あぁ、いや、通り道で木の枝に引っかかっただけですよ。」
危なかった。この子勘が鋭いな。
「ふぅん…。包帯ありますけど、いります?」
「あ、すいません。いただきます。」
最近の女子は凄いな。包帯なんて持ってるのか。っていうか初対面でこんな気遣いできるものなのか。優しい。
「先にアルコールで一応拭いとけ?」
平は平で消毒液持ってるのか。こいつ大胆なくせに繊細だからな。常に裁縫セットとか持っているらしいし。
「ん、ありがと。」
と、包帯を巻いていると劣が近付いて、
「秀、分かってると思うけどあの子何かがおかしいよ?」
と、小声で話してきた。
「分かってる。何か掴めない。」
「違うよ。」
「え?」
「時々嘘をついてる。」
ん?どういうことだ?
と聞こうとしたが、包帯を巻き終えた辺りで、
「あの、そろそろ本題に入りますね。」
と、平が言った。あぁ。そういえば平が何故幽さんに話し掛けたのか聞いてなかったな。家に来た時点で教えてくれれば良かったのに。
「実は幽さん。」
「はい。」
「あなたのことを知らない人はこの町にはいないくらい有名なんですよ。」
「へぇ~。そうなんですか。」
「何で有名かご存知ですか?」
「私もこの町にいるので耳に入ってきますよ。まして自分の事ですもん。」
「それでは話は早いですね。」
本当のことを教えてください。と、念を押す。何故かわからないが緊張感がある…というシチュエーションになるかと思っていたが幽さんの話し方が腑抜ける話し方。すかすような話し方のせいで、いや、お陰でだろうか。そこまで重い感じはない。少なくともさっきの劣の殺人未遂の時よりかは軽い感じだ。…比べる対象に差がありすぎたな。
「はい。まぁ、私の知ってる噂話と同じならその答えは半分違います。になりますけど。」
「…幽さんが全知全能というのは本当ですか?」

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