STAR STONE STORY

強さとは

「おりゃーーーー!!」
「くそ、でりゃー!」

ここはアストラシア。あらゆる種族がそれぞれの伝統を重んじて生活をしている。

「はっ!!とう!!」
「ぐっ!ふん!!」

そんな世界にある小さな島ルージ島。村は1つ。世界の中でも何の特徴のない最古の種族と言われているヒューマンが住んでいる。数はたったの200人。

「きめるぞ!うぉりゃ!!」
「どわっ!!」

木の棒がぶつかり合う音が鳴り響く。
そんな村に2人の少年がいる。レインとカイルだ。カイルの父ヴァイスはこのアストラシアを平和な世界へと導いた伝説の騎士の1人である。

レインは父も母も見たことはなく、カイルの父に育てられてきた。

「また勝ったぜ!」
「レイン、もう一回だけ頼む!」

彼らはいつも木の棒を剣に見立てて2人で修行をしていた。ヴァイスの話に憧れてだ。
・・・無理もない。この村ではヴァイスのことを故郷で村中が英雄として彼を讃えている。おまけに彼の大きな銅像すら村の中央に存在し、1年に1度この村の最強を決める【ヴァイス祭り】という祭りが銅像の前で繰り広げられる。

18歳からしかこの大会には出られないが、2人は今年18歳になったばかり。初めて出れる祭りに向け、毎日修行に励んでいる。今は大会まで残り10日前の話だ。

「その辺にしておけ。大会が近いぞー。体を少し休めるのも修行のうちだぞ。」

2人の肩をポンッと叩いて笑いながら言ってきたこの男が伝説の騎士ヴァイスである。

「父さん。」

「レインはほんとに筋がいいな。カイルも早く追いついて当日見返してやれよ。」

小さい頃修行を始めた時からカイルは1度もレインに勝ったことがない。

「カイル、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。やっぱりレインは強ぇや。」

しかしカイルはレインを尊敬し、いつか超える好敵手として仲良く過ごし続けている。

「大会も近いし、今日は家で飯でも食いながら伝説の話をしてやるぞ。」

「またそれかよー。大会近いとか関係ないじゃんか!」

3人は微笑ましい空気に包まれながら家に戻って行った。


しばらくし、ヴァイスの話が始まった。
「俺はなぁ。」

長々続くヴァイスの話はこのアストラシアで起こった事実である。

【アストラシア20年前】
あらゆる種族はそれぞれの種族でかたまり生活をしていた。
そんないつもと変わりない世界に突如現れた1人の邪悪な男ジンによって世界は一変した。
彼は心の中に潜むその者の闇に入り込み、闇の意思を強くさせ、あらゆる種族を闇の力へと変え、世界を支配しようとした。ジンの力は強大であった。強力な魔法を使う上に、どの種族にも属されないような身形で2本の剣を容易に扱い、盾には闇の力に変えた者達を身代わりにした。

残酷な世界が幕を開け、世界の大半が彼のものとなった。

そんな時に1人の男は小さな島で星に願いを唱えていた。それがヴァイスだ。
彼はアストラシアに伝わる【星石の力】を信じていた。
このアストラシアには10個光の大きい星があり、その星には【星霊】というものが存在し、星霊たちは自分たちの力をアストラシアの地に送り込んだ。
それが【星石】。ヴァイスはそのうちの一つ炎の星霊サラエフを宿す星石を世界中を旅し、あらゆる魔獣に立ち向かい、幾度の試練を乗り越えようやく見つけることに成功した。星石を掴むと、サラエフと思われる声に問われた。

【我の力で汝は何を求める?】

ヴァイスはそれに応えた言葉は何一つ覚えていなかったが、その力を得て、ジンに立ち向かった。正確に言うなればヴァイスの他にも9人、星石を手にした者達がおりそのもの達の力も合わさってジンを封印した。

ジンの拠点にしていたアストラシア北の大地にある大樹に星石と一緒にシンは眠っているという。

彼の力は強大すぎるゆえ、完全に葬ることができなかった。

その大樹は今でも厳戒態勢が張り続けてある。世界本部も常に【ジンの大樹】についての口論が繰り広げられている。

「その戦いの中でも最前線にいて、最後まで諦めなければ勝てると言い続けたのが俺さ。はっはっは。」

「うさんくさいなー。」
「まぁまぁ。ほんとに銅像あるくらいだし。信じてやれよ。」

「いいかカイル、レイン。俺たちはヒューマンだ。種族の中でも何の特徴もない、低種族として世界には見られている。」

うつむく2人。

「だけど、俺たちヒューマンはそれでも生き残ってきた。俺たちを強くさせているのは何だと思う?」

「んー、知恵?」
「金とか?ははっ」

「いーや違う。3つ。俺達が強くなるためには3つ大切にしなきゃいけないことがある。」

「3つ?」
「多いな。」

「まぁ、そう言うな。大会も近いし教えといてやる。1つは、思うことだ。」

「???」

「はっはっ。思いとは全て力に変わる。思う力が強ければ強いほどそれは自然と形になる。いずれ分かってくるさ。」

2人は軽く頷く。

「もう1つは努力。諦めないことだ。ヒューマンは他の種族に比べてものすごく諦めが悪い。強くなることを諦めるな。努力し続けるんだ。」

「まぁそれは普通だよな。」
「あと1つは?」

「あぁ。これが1番大切なんだ。最後のひとつは【弱さを認めること】だ。」

「なんだよそれ。矛盾してる!」

「いーや。ヒューマンは弱い。自分は弱いと認めることで強くなれる。弱さを知ることで我らは強くなるんだ。」

「よくわかんねー」

「はっはっ。この島からお前達が出た時に周りの強さにきっとびっくりするぞー。エルフやドラゴ、モグラみたいなやつだっているんだが、みんなそれぞれ特徴があってな!ほんとに強い!いい仲間たちだったぞー!いつかいろんな種族に会ってみるといい。そして自分の弱さに気づき、強くなれ。」

ヴァイスはこの話をしてる時が1番楽しそうだった。どんな時よりも彼の美しい記憶が蘇ってきていたのだろう。

そしてその話をしてる彼を見ている若干18歳の2人もまた。彼の話に飽きたと言いながらも、目をキラキラさせながら聞いていた。

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