軌跡を奪われし村人は、復讐に身をゆだねない
第十八話 【サポーター】
(スウイさんは知らないんだ。私がどれだけ、あなたの記憶に衝撃を受けたのかなんて)
モモカはスウイのことを強い人だと思っていた。何の縁もない迷子の少女に同行を許し、自身の時間を割いてまで助けてくれた人。いい人だと思った。優しい人だと思った。少し言葉が乱暴で、でもそれ以上に温かみのある人だと思った。
だから、モモカは、スウイの過去をを覗いた時に深いショックを受けたのだ。
もともとは優しい言葉を使うごくありふれた少年だった。幼い時から恋人がいたりするけれど、そんなの世界から見ればごくごく当たり前なこと。スウイはいたって普通の子供だった。
それがアキトなんて人間が現れてからすべてが変わってしまった。恋人も友達も全部全部失うばかりか心が傷つく要因にさえなりえている。
それを疑似的に体験してモモカの腹の底から何か熱い感情が溢れたのだ。スウイがリーシア達の裏切りを見たがゆえに生じた憎悪やら嫉妬とは違う、『モモカ』自身から溢れる想い。
助けたいと、支えになってあげたいと。そう思ったのだ。
母性からか同情からか。何の感情が所以かなんてわからない。けど、今もこの感情はモモカの全身を燃やすように滾っている。
支えたい、救ってあげたい、そばにいてあげたい。想いが止められない。
(私はスウイさんの仲間になる。スウイさんがそんなもの、望んでないのも分かってるけど)
仲間なんて要らない、絆なんて欲しくない。もう、二度と、傷つきたくなんてないんだよ。
絶望の七年で凝り固まったスウイの信念。これが嘘でも冗談でもないことなんてわかっている。
あるいは自身の行いがスウイを傷つけているかもしれないことも。
(けど私はそれでも、あなたのそばに居たいよ、スウイさん。支えたいと、そう思うよ)
折れないスウイの信念、譲れないモモカの衝動。
ゆえに場所を移して始まった話し合いに終わりがないのはやる前から決まっていたのかもしれない。
*** *** *** *** ***
「パーティーに入れてくださいよ!」
「嫌だっつってんだろ!」
こちらを噛みつくように放たれた言葉にスウイも同じくらいの覇気をもって挑んだ。場所はギルドの応接間。部屋にはスウイとモモカと受付嬢の三人だけ。
スウイとモモカはまるで交じり合わない討論をかれこれ数十分進めていた。
「何でもします! 荷物運びでもいいです、料理だって学んで作りますから! だから一緒に!!」
「だからそれは、俺じゃなくてもいいだろうが!! ランク4だって冒険者の中で比べりゃ低いが、ランク1とは雲泥の差だ。お前だって仮に冒険者をするんなら実力が同レベルの相手と組んだ方がいい。受付嬢さんもそう思うだろ?」
モモカとスウイが机を挟んで対面し、受付嬢は応接室の扉付近で立っていた。
「こっちは勝手にやるから仕事に戻っていいぞ」と言ったスウイに彼女は「いえ、お気になさらずっす。さぼりの口実になりますし」とのことで同席することになった。
そんな彼女にスウイは発言の肯定を求めて話を振ってみる。受付嬢は一つ頷き、
「ま、そっすね。才能があってもランクの差を埋めるのは大変っすから。実力相応の相手と組んだ方がいいってのはその通りだと思うっすよ? ……けど、こんだけ必死にお願いされてるんすから、パーティーを組んであげてもいいんじゃないかな、とも思うっすけど」
「……」
それを言われると、如何ともしがたい気になるスウイだった。スウイだってこれほど強い思いで請う少女を蔑ろにするのは、少しばかり良心の痛む行為である。
だが、それでもスウイはこの部分だけは譲れない。
仲間なんて、もう……。その考えがスウイを捉えて離さないのだ。
「じゃ。こうするのはどうすか?」
「あん?」
受付嬢が一つ、指を立てて宣言する。スウイとモモカの視線は彼女に向けられた。
「スーさんは仲間が欲しくない、モモカさんは仲間になりたい。それを一挙に満たす案があるっす。――――――――モモカさんはスーさんのサポーターになればいいんすよ」
薄く笑みを浮かべて語る受付嬢。そんな彼女にモモカは困惑しスウイは眉を顰める。
キチンと話を聞いてたのか、この女は。
「話聞いてたか? 俺は仲間なんて要らねえって言ってんだよ」
「もちろん、聞いてるっすよ。要するに信頼関係って奴がスーさんは嫌いなんすよね。だったらやっぱりサポーターをお勧めするっす」
「サポーターってのは仲間の延長線上にあるやつだろ? 戦闘行為をしないだけの仲間みたいなもんだろ」
それこそモモカの言った通り、荷物を持ち、飯をつくり、ダンジョンに潜む魔物の情報を調べるといったことをするのがスウイの知るサポーターだ。
これは間違いがないはずである。アキトを通してとはいえスウイもダンジョンを攻略する様を間近で見てきた。脳裏にはサポーターとのそんなやり取りが思い浮かぶ。
「あはは! スーさん面白いこと言うんすね!! サポーターが仲間? 奴隷の間違いじゃないっすか!?」
「ど、奴隷ですか……?」
口を開けてヒイヒイ笑う受付嬢。
モモカもスウイも怪訝な顔で彼女を見やる。アキトの視点から見たサポーターは見眼麗しい女性の場合がほとんどだった。女性からは嫉妬の眼差しを、男性からは下種な眼差しを注がれていた。
奴隷のようなみすぼらしい格好も、どんよりと淀んだ目もしていなかったのだ。
「俺が知ってるサポーターは風俗の女みたいだったけどな」
「風俗って……!! ちょっ、やめてくださいっす! お腹が痛い……!! そんなサポーターいるわけないじゃないっすか!!」
「いや、俺はそんなのしか見たことがないんだが」
「そんな女がサポーターなんてしたら秒で食われるっす! ダンジョンでまわされてから魔物の餌っすよ!」
受付嬢は腹を抱えて笑いまくる。何が面白かったかまるで分からないのだが。
「ふぃー、面白かった。サポーターが風俗嬢って週一笑ったっすよ!」
「あ? じゃあ、あんたはほんとにサポータは奴隷だとか言うつもりかよ」
「そんなのこの町に住んでれば常識中の常識っす。受付嬢なんてやらなくてもここでは冒険者と接することなんてざらっすから住人みんなそう思ってるっすよ」
推量ではなく言い切りの形で言葉は終えられた。それだけ彼女がサポーターの扱いに対して確信を抱いている証左であろう。
実際に常識中の常識とまで語っている訳だし割と信憑性の高い話だ。こんなすぐばれる嘘はつかないだろうという意味で。
「で話をもどすっすけど、スーさんとモモカさんの希望に適うのはこのサポーターって扱いしかないっすよ。だってサポーターってのは全てが全て冒険者次第なんすよ?」
「冒険者次第? それはどういう意味だよ」
「給与、仕事内容、休暇、解雇通知。全部冒険者側だけで決めていいんすよ。例えば冒険者がサポータを囮に使うとするっす。それは人道にもとる行為っすけど、それが仕事だと主張されるとこっちとしては罰せられないんすよ。曰く、仕事の範疇だから」
それは最高にクズ過ぎる話だ。そんなの言ったもん勝ちということではないか。
「規定はないのかよ」
「殺しちゃダメってのはあるっすけどそれだけっす。何でも国の偉い人が決めたことなんでうちではどうしようもないんすよね。ギルドもアルスバランの下部組織っすから上の移行には逆らえないんすよ」
「……! ギルドって自由じゃないんだ」
小さくモモカが驚きの声を漏らしていた。それは本当に小さな声ですぐさま空気に溶けて消えていく。
「まあでもそんなんはどうでもいいんすよ。うちが言いたいのはなんていうか、その、サポーターと冒険者は完全な上下関係ってことが言いたかったんすよ。えと、言葉悪いんすけど見捨ててもいいかなって」
「……!!」
「サポーターは戦闘しないっすから命を預けなくていいっすし、仲良くなくてもやっていけるというか。完全な仕事関係で接せられるというか」
言い淀む受付嬢を前にスウイは彼女の言いたいことがようやくわかった。
パーティーでの行動となるとどうしても互いの信頼関係が必要になる。信頼がなければ仲間と言う存在はむしろ足かせになりかねないからだ。
互いが互いにうっぷんを募らせ果てはダンジョン内で爆発。彼らは帰らぬものに、なんて絶対に御免である。
そう考えればサポーターという仕組みはスウイにとって都合がいい。
要するに冒険者とサポーターは他人ということだ。絆は要らず、そこにはただ命令する側とされるもの。虐げるものと虐げられるものという関係しかない。
そう思えばなんだ。気持ち悪いとか吐きそうなんて感慨がどこにもないではないか。
これであればスウイもやっていけるはず。
だがそれには一つ問題があり、
「けど、それはモモカが嫌がるだろ? まじで奴隷じゃねえか、むしろ規則がない分それ以上に悪質だ。これはさすがに」
「――――――――やります。スウイさん、私サポーターしたいです」
目を点にしてスウイはモモカの目を覗き込んだ。心底から彼女の正気を疑った。
けれどモモカは真っ直ぐこちらの目を見つめてきて本心から言っていることが伺える。
「今の聞いてその決断か? 俺がもしお前を蹴り飛ばしても受付嬢の話だと俺は無罪になるんだぞ。そんなのお前だって……」
「……私はスウイさんが優しい人だって知ってます。命を懸けて見知らぬ女の子を助けたことを覚えてます」
「――――――――」
それはリーシアとの出会いだった。彼女に連れられ探索した森で、ゴブリンに襲われるリーシアを助けたのが彼女と恋人になったきっかけだ。
「行き倒れの女の子を助けたのも知ってます。ご飯を上げて家まで用意してあげたことを知っています」
それはきっとリアの事だ。スウイが居なければ、遠からず死ぬことになっていたはずの女の子。
「どんなことがあろうと人間の本質はそうやすやすと変わると思えません。私は今までのスウイさんと私が見てきたスウイさんを信じます」
力強い言葉で思いっきり信用された。ならばもういいか。断る理由も消えたのだから。
「お前がいいならもういいわ」
「はい、これからよろしくお願いします。スウイさん」
モモカはスウイのサポーターになった。
モモカはスウイのことを強い人だと思っていた。何の縁もない迷子の少女に同行を許し、自身の時間を割いてまで助けてくれた人。いい人だと思った。優しい人だと思った。少し言葉が乱暴で、でもそれ以上に温かみのある人だと思った。
だから、モモカは、スウイの過去をを覗いた時に深いショックを受けたのだ。
もともとは優しい言葉を使うごくありふれた少年だった。幼い時から恋人がいたりするけれど、そんなの世界から見ればごくごく当たり前なこと。スウイはいたって普通の子供だった。
それがアキトなんて人間が現れてからすべてが変わってしまった。恋人も友達も全部全部失うばかりか心が傷つく要因にさえなりえている。
それを疑似的に体験してモモカの腹の底から何か熱い感情が溢れたのだ。スウイがリーシア達の裏切りを見たがゆえに生じた憎悪やら嫉妬とは違う、『モモカ』自身から溢れる想い。
助けたいと、支えになってあげたいと。そう思ったのだ。
母性からか同情からか。何の感情が所以かなんてわからない。けど、今もこの感情はモモカの全身を燃やすように滾っている。
支えたい、救ってあげたい、そばにいてあげたい。想いが止められない。
(私はスウイさんの仲間になる。スウイさんがそんなもの、望んでないのも分かってるけど)
仲間なんて要らない、絆なんて欲しくない。もう、二度と、傷つきたくなんてないんだよ。
絶望の七年で凝り固まったスウイの信念。これが嘘でも冗談でもないことなんてわかっている。
あるいは自身の行いがスウイを傷つけているかもしれないことも。
(けど私はそれでも、あなたのそばに居たいよ、スウイさん。支えたいと、そう思うよ)
折れないスウイの信念、譲れないモモカの衝動。
ゆえに場所を移して始まった話し合いに終わりがないのはやる前から決まっていたのかもしれない。
*** *** *** *** ***
「パーティーに入れてくださいよ!」
「嫌だっつってんだろ!」
こちらを噛みつくように放たれた言葉にスウイも同じくらいの覇気をもって挑んだ。場所はギルドの応接間。部屋にはスウイとモモカと受付嬢の三人だけ。
スウイとモモカはまるで交じり合わない討論をかれこれ数十分進めていた。
「何でもします! 荷物運びでもいいです、料理だって学んで作りますから! だから一緒に!!」
「だからそれは、俺じゃなくてもいいだろうが!! ランク4だって冒険者の中で比べりゃ低いが、ランク1とは雲泥の差だ。お前だって仮に冒険者をするんなら実力が同レベルの相手と組んだ方がいい。受付嬢さんもそう思うだろ?」
モモカとスウイが机を挟んで対面し、受付嬢は応接室の扉付近で立っていた。
「こっちは勝手にやるから仕事に戻っていいぞ」と言ったスウイに彼女は「いえ、お気になさらずっす。さぼりの口実になりますし」とのことで同席することになった。
そんな彼女にスウイは発言の肯定を求めて話を振ってみる。受付嬢は一つ頷き、
「ま、そっすね。才能があってもランクの差を埋めるのは大変っすから。実力相応の相手と組んだ方がいいってのはその通りだと思うっすよ? ……けど、こんだけ必死にお願いされてるんすから、パーティーを組んであげてもいいんじゃないかな、とも思うっすけど」
「……」
それを言われると、如何ともしがたい気になるスウイだった。スウイだってこれほど強い思いで請う少女を蔑ろにするのは、少しばかり良心の痛む行為である。
だが、それでもスウイはこの部分だけは譲れない。
仲間なんて、もう……。その考えがスウイを捉えて離さないのだ。
「じゃ。こうするのはどうすか?」
「あん?」
受付嬢が一つ、指を立てて宣言する。スウイとモモカの視線は彼女に向けられた。
「スーさんは仲間が欲しくない、モモカさんは仲間になりたい。それを一挙に満たす案があるっす。――――――――モモカさんはスーさんのサポーターになればいいんすよ」
薄く笑みを浮かべて語る受付嬢。そんな彼女にモモカは困惑しスウイは眉を顰める。
キチンと話を聞いてたのか、この女は。
「話聞いてたか? 俺は仲間なんて要らねえって言ってんだよ」
「もちろん、聞いてるっすよ。要するに信頼関係って奴がスーさんは嫌いなんすよね。だったらやっぱりサポーターをお勧めするっす」
「サポーターってのは仲間の延長線上にあるやつだろ? 戦闘行為をしないだけの仲間みたいなもんだろ」
それこそモモカの言った通り、荷物を持ち、飯をつくり、ダンジョンに潜む魔物の情報を調べるといったことをするのがスウイの知るサポーターだ。
これは間違いがないはずである。アキトを通してとはいえスウイもダンジョンを攻略する様を間近で見てきた。脳裏にはサポーターとのそんなやり取りが思い浮かぶ。
「あはは! スーさん面白いこと言うんすね!! サポーターが仲間? 奴隷の間違いじゃないっすか!?」
「ど、奴隷ですか……?」
口を開けてヒイヒイ笑う受付嬢。
モモカもスウイも怪訝な顔で彼女を見やる。アキトの視点から見たサポーターは見眼麗しい女性の場合がほとんどだった。女性からは嫉妬の眼差しを、男性からは下種な眼差しを注がれていた。
奴隷のようなみすぼらしい格好も、どんよりと淀んだ目もしていなかったのだ。
「俺が知ってるサポーターは風俗の女みたいだったけどな」
「風俗って……!! ちょっ、やめてくださいっす! お腹が痛い……!! そんなサポーターいるわけないじゃないっすか!!」
「いや、俺はそんなのしか見たことがないんだが」
「そんな女がサポーターなんてしたら秒で食われるっす! ダンジョンでまわされてから魔物の餌っすよ!」
受付嬢は腹を抱えて笑いまくる。何が面白かったかまるで分からないのだが。
「ふぃー、面白かった。サポーターが風俗嬢って週一笑ったっすよ!」
「あ? じゃあ、あんたはほんとにサポータは奴隷だとか言うつもりかよ」
「そんなのこの町に住んでれば常識中の常識っす。受付嬢なんてやらなくてもここでは冒険者と接することなんてざらっすから住人みんなそう思ってるっすよ」
推量ではなく言い切りの形で言葉は終えられた。それだけ彼女がサポーターの扱いに対して確信を抱いている証左であろう。
実際に常識中の常識とまで語っている訳だし割と信憑性の高い話だ。こんなすぐばれる嘘はつかないだろうという意味で。
「で話をもどすっすけど、スーさんとモモカさんの希望に適うのはこのサポーターって扱いしかないっすよ。だってサポーターってのは全てが全て冒険者次第なんすよ?」
「冒険者次第? それはどういう意味だよ」
「給与、仕事内容、休暇、解雇通知。全部冒険者側だけで決めていいんすよ。例えば冒険者がサポータを囮に使うとするっす。それは人道にもとる行為っすけど、それが仕事だと主張されるとこっちとしては罰せられないんすよ。曰く、仕事の範疇だから」
それは最高にクズ過ぎる話だ。そんなの言ったもん勝ちということではないか。
「規定はないのかよ」
「殺しちゃダメってのはあるっすけどそれだけっす。何でも国の偉い人が決めたことなんでうちではどうしようもないんすよね。ギルドもアルスバランの下部組織っすから上の移行には逆らえないんすよ」
「……! ギルドって自由じゃないんだ」
小さくモモカが驚きの声を漏らしていた。それは本当に小さな声ですぐさま空気に溶けて消えていく。
「まあでもそんなんはどうでもいいんすよ。うちが言いたいのはなんていうか、その、サポーターと冒険者は完全な上下関係ってことが言いたかったんすよ。えと、言葉悪いんすけど見捨ててもいいかなって」
「……!!」
「サポーターは戦闘しないっすから命を預けなくていいっすし、仲良くなくてもやっていけるというか。完全な仕事関係で接せられるというか」
言い淀む受付嬢を前にスウイは彼女の言いたいことがようやくわかった。
パーティーでの行動となるとどうしても互いの信頼関係が必要になる。信頼がなければ仲間と言う存在はむしろ足かせになりかねないからだ。
互いが互いにうっぷんを募らせ果てはダンジョン内で爆発。彼らは帰らぬものに、なんて絶対に御免である。
そう考えればサポーターという仕組みはスウイにとって都合がいい。
要するに冒険者とサポーターは他人ということだ。絆は要らず、そこにはただ命令する側とされるもの。虐げるものと虐げられるものという関係しかない。
そう思えばなんだ。気持ち悪いとか吐きそうなんて感慨がどこにもないではないか。
これであればスウイもやっていけるはず。
だがそれには一つ問題があり、
「けど、それはモモカが嫌がるだろ? まじで奴隷じゃねえか、むしろ規則がない分それ以上に悪質だ。これはさすがに」
「――――――――やります。スウイさん、私サポーターしたいです」
目を点にしてスウイはモモカの目を覗き込んだ。心底から彼女の正気を疑った。
けれどモモカは真っ直ぐこちらの目を見つめてきて本心から言っていることが伺える。
「今の聞いてその決断か? 俺がもしお前を蹴り飛ばしても受付嬢の話だと俺は無罪になるんだぞ。そんなのお前だって……」
「……私はスウイさんが優しい人だって知ってます。命を懸けて見知らぬ女の子を助けたことを覚えてます」
「――――――――」
それはリーシアとの出会いだった。彼女に連れられ探索した森で、ゴブリンに襲われるリーシアを助けたのが彼女と恋人になったきっかけだ。
「行き倒れの女の子を助けたのも知ってます。ご飯を上げて家まで用意してあげたことを知っています」
それはきっとリアの事だ。スウイが居なければ、遠からず死ぬことになっていたはずの女の子。
「どんなことがあろうと人間の本質はそうやすやすと変わると思えません。私は今までのスウイさんと私が見てきたスウイさんを信じます」
力強い言葉で思いっきり信用された。ならばもういいか。断る理由も消えたのだから。
「お前がいいならもういいわ」
「はい、これからよろしくお願いします。スウイさん」
モモカはスウイのサポーターになった。
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