冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。
虹の向こうへ ~後篇~
何がぼくを動かしているのかは分からない。でも行かなければ。 ただ、前へ進む。彼女の顔が見たい。助けたいという善意なのか?
こころがぐちゃぐちゃだ。黒いクレヨンで乱暴に塗られたようなものがずっとかかっている。
うつろなまま、近道となる洞窟へと差し掛かる。
奥からすれた金属音がする。だれか戦っているのか? もしかしてあいつが?
音のする方へと向かうと
エル・シドが知らない女と戦っているようだった。アエナはどうしたんだ? ちゃんと城へ行ったのか?
女がエル・シドに対して不意打ちをしようとしている。
ぼくはとっさに悠久の石を使って、女からエル・シドを引き離した。
エル・シドは僕の顔をみてびっくりして
「あんた、なんでここにいるのよ!?」
「それより、アエナ達は無事に城へ辿り着いたんだろうね。」
「当たり前じゃない!? この変態女かたずけて、合流するつもりよ。あんたも手伝いなさい!」
まずい、石への魔力が持たない! とりあえず解除だ。
「あ? なんで二人になってんの? まあいいわ。遊び相手は多い方がいいわよね。」
見たところダークエルフの女のようだが、こいつ相当のやり手だな。ここでぼくがやられる訳にはいかない。さっさとかたずけてやる。
「魔導呪印、<絶対零度・極> !!」
女は足元の方から一瞬で凍りつき、両足だけ身動きの取れない状態になる。
エル・シドはそれをみて、女にサラマンダーの攻撃を加える。サラマンダーは彼女をなぶり、いたぶり続けた。
女は意識を失い、エル・シドの攻撃を受けてしまっていたが、その一瞬、猛攻を両手で受け止めた。
「この、エルトゥールを甘く見ないで。あなた達、火遊びはお好き?」
エルトゥールと名乗る女はそういうとサラマンダーつたいで焔をエルに移し、やけどを負わせた。そののち、凍結された両足を業火で溶かし、再び奇怪な動きで二人を翻弄するが、月の楯と、魔導結界のコンボで何とかしのいでいく、そしてもう一度同じ攻撃をするも歯が立たなくなっていった。戦いは消耗戦へともつれ込み、中々勝機を見いだせずにいた。だが、それも終わりにしたかったオーガスは戦いに、今、終止符を打つ。エル・シドとしっかり連携を取らないといけないと考えたオーガスは彼に
「こいつと長く戦っていると不利になる。連携して戦うぞ。」
「まあ、いいわ。おガスちゃんにあわせてあげる。 いつでもどうぞ!」
二人は二手に分かれ、オーガスは、左手から魔導呪印・拘束で相手の両手を縛り、右手からのエル・シドがサラマンダーを彼の魔導呪印・烈火の印で強化して相手を燃やしつくす。
エルトゥールはもだえつつ自分の得意魔法の炎を使い、火を制しようとするも、逆効果でみるみる炎は青白く燃え上がり、断末魔と共に灰と化した。
「中々やるじゃないのよ、おガスちゃん。 うっ・・・」
「どうやら、毒を受けていたようだな。 回復魔法は持っているが毒消しは一番時間がかかるし、相手の気力の問題もある。 おい、いけるか。」
「なによ、今更いい子ぶって。そんなことしてもアエナちゃんは帰って来ないわよ。」
確かに、そうだ。ボクもこのオカマを助けてもなんの得にもならない。何をしに来たかもわからずに、ここに来るなんてお笑い草だな。彼の事を手当てしながら語りかけた。
「確かに、お前をここで見殺しにしようが勝手だ。だが、ボクにも魔導士としてのプライドがある。それに、これ以上、彼女の哀しい顔を見たくない。・・・それだけだ。」
「その言葉、今度は嘘がなさそうね。 あんたを信じてあげる。回復してる間、アエナちゃんを守ってあげて・・・。」
そう言うと、ボクに月の楯を渡してきた。 これはお前の意志だ。お前も連れて行ってやる。
ボクは楯をしっかりと握りしめ、エル・シドが信じてくれたようにボクはボク自身のこの決意を信じる。彼女の笑顔を守る、これがボクの今できることなんだと彼が改めて教えてくれたのかもしれない。ボクはエル・シドに朗報を伝えた。
「下でウガルが上がってきているはずだ。合流して彼女たちの援護してくれ。」
とだけ残してボクは頂上へと登っていく。エル・シドはホッとして、少し休んでから行くとだけ言ってボクを追い出した。
とても単純な事を彼らへの信頼から学んで、そして理解した。ボクはあいつにはなれないし、アエナを幸せに出来ないかもしれない。でも、幸せを守ることはできるはずだ。
あいつの様なお人よしの善意ではなく、個人的な意思決定がボクを突き動かして行ったのだった・・・。
こころがぐちゃぐちゃだ。黒いクレヨンで乱暴に塗られたようなものがずっとかかっている。
うつろなまま、近道となる洞窟へと差し掛かる。
奥からすれた金属音がする。だれか戦っているのか? もしかしてあいつが?
音のする方へと向かうと
エル・シドが知らない女と戦っているようだった。アエナはどうしたんだ? ちゃんと城へ行ったのか?
女がエル・シドに対して不意打ちをしようとしている。
ぼくはとっさに悠久の石を使って、女からエル・シドを引き離した。
エル・シドは僕の顔をみてびっくりして
「あんた、なんでここにいるのよ!?」
「それより、アエナ達は無事に城へ辿り着いたんだろうね。」
「当たり前じゃない!? この変態女かたずけて、合流するつもりよ。あんたも手伝いなさい!」
まずい、石への魔力が持たない! とりあえず解除だ。
「あ? なんで二人になってんの? まあいいわ。遊び相手は多い方がいいわよね。」
見たところダークエルフの女のようだが、こいつ相当のやり手だな。ここでぼくがやられる訳にはいかない。さっさとかたずけてやる。
「魔導呪印、<絶対零度・極> !!」
女は足元の方から一瞬で凍りつき、両足だけ身動きの取れない状態になる。
エル・シドはそれをみて、女にサラマンダーの攻撃を加える。サラマンダーは彼女をなぶり、いたぶり続けた。
女は意識を失い、エル・シドの攻撃を受けてしまっていたが、その一瞬、猛攻を両手で受け止めた。
「この、エルトゥールを甘く見ないで。あなた達、火遊びはお好き?」
エルトゥールと名乗る女はそういうとサラマンダーつたいで焔をエルに移し、やけどを負わせた。そののち、凍結された両足を業火で溶かし、再び奇怪な動きで二人を翻弄するが、月の楯と、魔導結界のコンボで何とかしのいでいく、そしてもう一度同じ攻撃をするも歯が立たなくなっていった。戦いは消耗戦へともつれ込み、中々勝機を見いだせずにいた。だが、それも終わりにしたかったオーガスは戦いに、今、終止符を打つ。エル・シドとしっかり連携を取らないといけないと考えたオーガスは彼に
「こいつと長く戦っていると不利になる。連携して戦うぞ。」
「まあ、いいわ。おガスちゃんにあわせてあげる。 いつでもどうぞ!」
二人は二手に分かれ、オーガスは、左手から魔導呪印・拘束で相手の両手を縛り、右手からのエル・シドがサラマンダーを彼の魔導呪印・烈火の印で強化して相手を燃やしつくす。
エルトゥールはもだえつつ自分の得意魔法の炎を使い、火を制しようとするも、逆効果でみるみる炎は青白く燃え上がり、断末魔と共に灰と化した。
「中々やるじゃないのよ、おガスちゃん。 うっ・・・」
「どうやら、毒を受けていたようだな。 回復魔法は持っているが毒消しは一番時間がかかるし、相手の気力の問題もある。 おい、いけるか。」
「なによ、今更いい子ぶって。そんなことしてもアエナちゃんは帰って来ないわよ。」
確かに、そうだ。ボクもこのオカマを助けてもなんの得にもならない。何をしに来たかもわからずに、ここに来るなんてお笑い草だな。彼の事を手当てしながら語りかけた。
「確かに、お前をここで見殺しにしようが勝手だ。だが、ボクにも魔導士としてのプライドがある。それに、これ以上、彼女の哀しい顔を見たくない。・・・それだけだ。」
「その言葉、今度は嘘がなさそうね。 あんたを信じてあげる。回復してる間、アエナちゃんを守ってあげて・・・。」
そう言うと、ボクに月の楯を渡してきた。 これはお前の意志だ。お前も連れて行ってやる。
ボクは楯をしっかりと握りしめ、エル・シドが信じてくれたようにボクはボク自身のこの決意を信じる。彼女の笑顔を守る、これがボクの今できることなんだと彼が改めて教えてくれたのかもしれない。ボクはエル・シドに朗報を伝えた。
「下でウガルが上がってきているはずだ。合流して彼女たちの援護してくれ。」
とだけ残してボクは頂上へと登っていく。エル・シドはホッとして、少し休んでから行くとだけ言ってボクを追い出した。
とても単純な事を彼らへの信頼から学んで、そして理解した。ボクはあいつにはなれないし、アエナを幸せに出来ないかもしれない。でも、幸せを守ることはできるはずだ。
あいつの様なお人よしの善意ではなく、個人的な意思決定がボクを突き動かして行ったのだった・・・。
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