冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第27話:決戦 ~闇の訪れ~

昇降機は城内部1階に繋がっていた。


辺りは意外にも静まり返っていた。気味の悪いくらいの静けさが二人を襲った。


 どんな状況でも明るくしてくれる彼?も、もういない。静かでも、たたずまいで安心してくれる兄貴肌の彼も、もういない。


1階昇降機近くの調理室から出て、渡り廊下をコツコツと歩いていき、魔王の居所を探す。魔王の声はしない。従事の者や、警備音が鳴ることもない。入ることを拒むことも受け入れることもしない城に不安が募る。


響き渡る二つを足音、さらに大広間を抜けて階段を上がる。二階には、ドアがずらりと並んでいる。どの部屋も使用してるようには見えないほどきれいだ。探索を続け、1階玄関のエントランスホールを上からのぞく。


上から身を乗り出すと階段下にはびっしりと並ぶ魔物たち。そして、戦闘のローブを付けた魔物。


あれがマ・ゾールだろう。マ・ゾールはきょろきょろと周りを見渡し、なにやら、イライラしているようだ。


僕たちはしばらく様子を見た。マ・ゾールがこっちに気付いた。いや、なんか驚いて二度見している。




「おい! なに勝手に入ってんの! 普通玄関から入るでしょ!? とりあえず、降りてきなさい。」


見つかってしまい、しかも拍子抜けする変な説教されて二人は顔を見合わせ、階段を下りる。階段で準備している魔物たちの目線が怖い。彼らの顔が怖いという訳ではない。どっちかというと引かれていた。掟破りの勇者に怒りと呆れの眼差しが向けられる。


「まったく、最近の若いもんは。 こっちも一世一代で生きるか死ぬかの大舞台だし、君たちもこんなばつの悪い登場の仕方したくなかったでしょうに。 どっから来たの? ああ、いい。答えなくて。どうせ昇降機からでしょ。たまにいるんだよね、そういう人。そっちにも美学があるようにこっちにもちゃんと美学もセオリーもあるの!!」


 なんか申し訳ない。勇者に説教垂れる魔王も見たことないが、彼は最悪だという顔をしていた。周りの部下たちも相当怒ってる。だが、その声はマ・ゾールが手をあげるとピタッとやんだ。マ・ゾールが咳払いをして、勇者へと話を進めた。








「よく、ここまでこれたな。勇者よ、そして、裏切り者。 ここが敵地と知って侵入してきたとはいい度胸だ。


そう! 我こそがお前たち人間を恐怖と混乱をもたらし、真にこの世界を統一するもの、


           大魔王マ・ゾールである!!


 人間、生きたくばせめて奴隷にしてやるがどうだ? これが最後の選択だ。」




アエナはためらいもなく返答した。


「そんなの、お断りよ! 絶対に抗って見せる。そしてあなたを倒し、平和を取り戻してみせる!!」




「愚かなり。 ならば、いずれかが死ぬまで戦うのみ。 ついてこい。ここでは狭すぎる。」




一旦、勇者である僕たちには手かせが着けられ、部下に引っ張られマ・ゾールに言われるがまま、後をついていく。連れられた先は屋上、しかも広い競技場のようになっている。


「我の用意したこのデス・コロッセオは、来る勇者との決戦のために作らせた。我が力を存分に使用できるステージである。さあ、勇者よ。存分に死のカウントダウンまで戦ってやる。」


自分の力を存分に、か。なら僕たちも自分達の力を使うまで!


「ワタル、行くわよ。」


「分かった。 君に合わせる。」




ワタルとアエナは息を合わせ、二手に分かれてそれぞれ右手と左手に分かれた。二人の動きに合わせて魔王も構える。魔王は弄ぶように二人の剣をさばいていく。彼の闇属性の魔法で二人が二人が最初に立っていた所まで飛ばされた。まだそこには壁があった。二人は立ち上がり、もう一度。




今度は右左分かれずに正面突破していく。


















































その時、僕たちには理解できなかった。 一体何が起きているんだ。


いつの間にかマ・ゾールは“僕たちの後ろにいた”。








「言ったはずだ、勇者よ。 我は容赦をせんと。 お前らには見えたか?」




魔王の言葉に悪寒が走る。その瞬間、僕たちは突然に膝から崩れ落ち、少量だが吐血した。最悪大事では無かった。アエナのもとへ駆け寄り、肩を貸して立ちあがる。僕たちはその間も何がこの場で起こっているのかの原因を考えていた。だが、そんな暇などない。 次が来る。


「ワタル、あれを使うわ。だけど、私だけでは難しいから二人で力を合わせれば反動も抑えられるはず。」




アエナの言葉を信じるしかなかった。ボクは自分の剣を納め、アエナの持つ龍神の剣を一緒に構える。


「「 剣に宿りし魔族の力よ!私達に力を! 」」


闇夜に閃光が走りぬける。しかし光は大いなる闇を打ち砕くほど鮮明で明るくなかった。マ・ゾールはそこにはいなかった。アエナの真横、なんとかすぐにワタルが剣を抜き、防御した。


「七宝はどうした、あんなに後生大事にしていたのに、今は立った三つ。それでは話にならんぞ。」


三つ? アエナと僕の剣、首元の首飾り。あの魔王はポケットの水晶板は認知していないのか?だとしても結局最後の一つを見つけずにここまで来てしまった。それは致命的なミスに変わりない。ここは虚勢を張るしかない。と思っていたら横にいるアエナが、したり顔を覗かせながら




「話にならないかどうか、これを見てから言うのね!」


挑発したアエナの剣はすでにマ・ゾールのわき腹に大きな木を切るのこぎりのように刺さっていた。そして彼女はワタルと共に


「近距離なら大魔王のあなたでも効くはずだ! <<リヒト・ゴッドラッヘ(神よ、希望の光を与え給え)!!>>」


さっきより強い光が魔王と勇者を包む。どうなったんだ? やったのか?




光はおさまり、アエナもワタルもへたり込み、地面に崩れていた。




だが、技が起こした土煙の向こうには絶望を指し示すように影がうごめいていた。












「中々、健闘した勇者だったよ。 君たちは。だが、私の進化は、絶望は底を抜け、究極の闇を身にまといしこの姿では無敵。絶対的不可侵なのだ! フハハハハ!!!」






































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【究極の闇まといし王現れしとき、7つの光集い、人を導く。ゆえに希望の光示す、勇者あり。それこそ、我らが英雄アエ・ルナ光臨の瞬間である。】 アエ・ルナ聖戦記 第一章 第一文より。









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