冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第24話:結束

マ・ゴンテの廃城から逃げるように後にしたワタル、アエナ、エル・シド、ウガルの四人であった。最期に残るはマ・ゾールのみとなったが山の頂上にある城へはまだ先は長く敵の襲来も頻繁になってきている。そんな中アエナはある疑問を投げかけた。


「そう言えば、ウガルはどうして私たちと一緒に戦ってくれるの?」


「罪滅ぼしと行ったほうが早いかもな。アエナの嬢ちゃんには話してないけど俺は元々学者でマ・ゾールのもとで異世界から魔族を連れてくる魔方陣の研究をしてた。最初は強制やったけど俺も学者や、だんだんおもろなってきてついに完成させてしまった。その力は一魔王が持つには強大過ぎた。あれは禁忌の術やった。力にのまれる魔王から俺は逃げるように放っていって放蕩して今ではあいつらの頭っちゅう感じやったんや。だから、おまえらの話聞いてて俺は思った、けじめをつけようと。そういうことやから今更ついてくんなって言ってもついていくからな。」


「いえ、理由があるなら全然いいわ。あなたはワタルを元の世界に返してくれそうだし。」
「ウガルさんは僕のムチャにとても付き合ってくれました。いい人だし頼りがいがあると思うのでついてくんななんて言いませんよ。」


山を登っている間多くの魔物と戦うはめになった。特にデビルワイバーンは厄介で小型飛竜の一種でありながらどこからともなくアエナ達にむかって飛んで襲ってくる。鋭いかぎ爪と歯、そして両翼は伸ばすと5mほどあり、それが引き起こす風は竜巻にもなりうる。登るごとに増え、いよいよ半分来たところでデビルワイバーンのボスで大型のタイラントデビルワイバーンが姿を現し、それに群がるデビルワイバーン数体がアエナ達をこれから行くはずの洞窟を塞いでいる。そこを抜ければマ・ゾール城への近道となるということ知っていたウガルとワタルの意見に従い、目の前の竜を退治するのであった。
 彼らの起こす竜巻になんとか耐えながらエル・シドがサラマンダーで周りの小型の方を怯ませる。ウガルもなんとか一匹のワイバーンの首に飛び乗りそのままその鋭い歯で喉元を噛みついている。ワイバーンは暴れ出し他のワイバーンに被害を及ばせている。ワタルとアエナは大きい方のワイバーンの足元を剣で傷つけていく。だが、そんなちまちました戦略では大型にとってはかすり傷程度で逆に怒らせて足蹴にされて山道の崖側に吹き飛ばされてしまう。何とか大事には至らなかったが足場は十二分にあるが足元ギリギリでの戦いになっている。ウガルは少し考えて内側のポケットから何やら黒い固形物を二つほど両手に持っていた。ワタル達はそれが何か分からなかった。


「お前ら! 後ろ下がれ!!」


ウガルが叫んだと同時に両手の固形物をワイバーン達近くの方へ投げ入れた。その後、エル・シドにそれをサラマンダーで打ってほしいと頼んだ。訳も分からず打ってみると固形物はワイバーンの前で大爆発した。その後、炎は燃え広がり、燃え移ったのか何体かのワイバーンは燃え盛る物体となって地面を這いつくばって焼死体となっていった。大型は翼を防御の楯代わりにしていたのかまだ、息もあり軽傷ですんでいるがさっきよりだいぶ血が出ている。ワタルが改めて何なのか聞くと


「あれか、焼夷手榴弾って知ってるか? まあ知らんか。いうたら、物を燃やす爆弾や。」
「作ったんですか?それも。」
「当たり前や。剣と魔法の世界で生きてるんや、普通あれへん。けど何とかなるもんやな。備えあればってやつやな。」


なんでも知ってる上にこんな凶器まで作れるウガルに三人は少し引いたが今ではとても役立っている。だが、ウガルは申し訳なさそうにもう無いと言ったのでここからはまた、地道にワイバーンを迎撃するしかない。敵の数が圧倒的に減り、エル・シドも大型の方に手をまわしてくれてだいぶワイバーンもへばり始めている。ウガルも最後の小型を倒し終わり、四人で負傷した大型へ挑んでいく。ワタルの剣に合わせてウガルが大きく飛び上がり首元に噛みつく。暴れ出さないようにエル・シドのサラマンダーで何とか頭を抑えつける。そこにアエナがもう一度剣で叩き切る。だが、ワイバーンは負傷していながらも一層威力が増す一方で、口元から炎を吐きだす。これは全員退避してエル・シドが月の楯で防いでいく。月の楯は大きな護法陣を描き、炎を払いのける。炎で体力を使ったワイバーンに対してまた同じような戦略で取り掛かる。すると洞窟の奥からボスの窮地を察知したのか、何体か小型のワイバーンがやってきた。大型は体力がもう無いといえどこの状況になるとこちらも体力を消費している。これ以上構っている暇は無いのでアエナはまだ使っていない剣に眠る力を使い、小型のワイバーンを一掃した。討ち切れなかった小型はウガルが食いちぎっていた。大型が一体だけになると大型は逃げるように空高くへとふらふらな様子で飛んでいる。逃げたかと思うと途中で振り向いて怒りの眼差しでこちらを睨みつけている。それを見てウガルが


「お前ら、ちょっと待ってろ。」


とだけ残して山の頂へとそそり立つ断崖絶壁をいともたやすく駆け上がり、そこで大きくジャンプして空へと逃げるワイバーンを捕まえる。あれ以上追う必要は無いと思った三人だったが、ウガルはワイバーンが次に何をしようとしていたことは分かっていたのかもしれない。


「おまえ、せめてもの空中からあいつら向かって特攻してやろうという算段だろ?そうはいかねえ。」


ワイバーンは急降下していったがウガルはそれに振り落とされまいと必死になりながら竜の角を持って方向を変えようとしている。地上で三人が聞こえないにも関わらず、やめておけと叫び手を振る。


「ウガルさん、なんで。あの竜はもうやる気がなさそうに逃げたけど。」
「いやきっと、それで隙を作って特攻しようと・・・それに気づいたんだわ、あの人。」
「ウルフちゃんだから、やっぱり鼻は効くのね。でもあれは大丈夫かしら。」


エル・シドのいやな感は不幸にも当たりそうだった。ワイバーンはウガルの思い通り路線から大きく外れ、山の下の地面の方へと向かっていた。三人は焦り、彼を助けないと、その一心で崖の方へ向かって手を伸ばして行いったがウガルが落ちながら手をどけろと言っていたのだろうか。山側のワタル達の方に顔を乗っているワイバーンごと向けて自分の手を横へかき分けていた。ワイバーンをもっと山から話して行くウガル。そして彼は山の下の方へとワイバーンと共に消えていった。山の半分の位置まで来ているため地面はすでに霧がかって見えにくかった。一瞬の出来事だった。落ちた音も聞こえなかったが、あの疲弊した竜の体力からするともう羽ばたく能力も残っていないだろう。まさに決死の特攻だが、それは一匹のオオカミによって三人は難を逃れた。三人は遠い地面を眺めて茫然としていた。すると急にワタルが叫び出した。


「おーい、ウガルさーん。返事してくださいよ!」
「ちょっと、もうあの高さじゃあ、助からないわよ!」
「そんなの分からないじゃないですか! ちゃんと確認しないと!」
「おーい! おーい!・・・」
「もう、無駄よ、ワタちゃん!!」


エル・シドとワタルが言いあいしている所にアエナが静かに割って入って言った。


「もう、やめましょ。 あそこまで身体能力の高いウガルが帰ってきてないのだから、それは最悪の事態を考えた方がいいわ。それより私たちは前に進まなきゃいけないのよ。」


ワタルは少し泣きながら


「アエナは哀しくないの? 僕たちの、恩人なんだよ!」


「そうよ、だから彼の行いを、償いを受け継いで前に進むのよ。」


アエナはそう言って洞窟の中へと進んでいった。彼女の顔からは涙がこぼれていたのかきらりと見えた。ワタルも彼女の言葉になんとか整理を付けて涙をぬぐって彼女を追いながら前へ進んだ。エル・シドは二人の背中を見ながら私も頑張らなくちゃとつぶやいて目へ進んでいった。







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