冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第19話 勇者アエナと伝説の英雄<カイ>

 エル・シドと名乗る青年は私たちに故郷を汚した魔王を倒してほしいと言った。もちろん私たちはその話を受け入れてケモイの国へと向かった。そこでは獣人ケモイ達がおびえながら暮らしていた。さらにはその人たちは私たちを見るなり牙を剥けてこちらをにらんできたり、実際に警備隊みたいな人が出てきた。


「ニンゲン、ケモイの侵略に来たのか? ルナの勇者は国盗りの輩だとデ・ゾールに聞いたが、」
「違うわ。私たちはそのデ・ゾールを倒しに来たのよ。」
「やはり、侵略行為ではないか!」


 攻撃態勢が敷かれて一気に不利な状況になった。エル・シドも懇願したが元は人間なので聞き入る事は出来なかった。私は魔物とは戦えてもこの魔王に従う関係のない住人とは戦いたくなかった。さすがにオーガスも何もできずにいた。その時、デ・ゾールも現れ、彼の狂信的な洗脳が説かれた。私はその話をデ・ゾールをかばう獣人たちに説得したが、うまくいかなかった。だが、そこに颯爽と現れたのがエル・シドの育ての親率いる人間との和平を求める住人だった。彼らのおかげでデ・ゾールとの対決はいい方向へと向かって行った。そう思えていたけど、


「おのれ、勇者! こうなればお前を呪って死んでやる!」
「呪われるなんてまっぴらごめんよ。あなただけ無様に死になさい!」
「ふざけるな! 呪いを、死が蝕む醜い呪いを!」


「そ、それは僕が引き受ける! 可憐な彼女を醜く死なせるわけにはいかない!」


呪いがかかろうとする私の元へ駆けつけたのはエル・シドだった。彼は勇敢にもその呪いを受けてしまった。デ・ゾールは発狂しながらその姿を消した。私たちはエル・シドのもとへ駆けつけた。


「エル・シド! なんてことを。」
「いや、良いんだ。 それより君は大丈夫?」
「大丈夫よ。あなたこそ、呪いは・・・」
「まだ、大丈夫。」


大丈夫なわけがない。 すこしばかりだけど端正な顔立ちは変わりつつあった。この世のものとは思えない醜い顔が半分まで来ていた。だけど変形は止まっていた。


「僕は君みたいにきれいな人になりたかった。 きれいな人も好きだ。 男の僕が言うのも変だけどやっぱり僕は“僕”じゃない。醜く死んでしまうのはいやだけど君に会えてよかった。」
「たとえ男でも心が乙女ならいつだって乙女になってきれいになれる。 いつか、生まれ変わったらあなたのきれいな姿見せてほしいわ。」
「そうするよ。」


私たちは彼に別れのあいさつもせずにその国を去った。彼がいつかどこかで会えるように祈りながら。私が少し足どりを重くしながら歩いていると


「アエナ、いつまで気にしているんだい? そんなのでは前に進めないよ。」
「オーガスは何とも思わないの?」
「男がきれいを求めるなんて、気持ちの悪い。 それより君とぼくが一緒に魔王を倒すことが重要なんだ。過程は重要じゃない。二人っきりで過ごす時間ということが僕にとって何よりも大切なんだ。」
「何を言っているの? もしかしてこの前から気になってた違和感ってあなたが・・・」
「そろそろ、潮時かも知れないけど僕は最強なんだ。絶対に思い出すことなんてない!」


そしてまた、光が私を包んでいった。 今回は少し違う風景も見えた。 叫んでる、男の人? もしかして私を呼んでる誰か、なの? 誰か分からないけど、これだけは言いたい! 助けて!
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・・・アエナはいなくなった。忽然と、彼女を誘拐したのは紛れもなくあの姿はオーガスであった。しかし、彼は、あの彼は異世界でもこの状況を打破するためになにかしているであろう!
「ちょっと! あれどういうことよ!? おガスっぽかったけど」
「僕も分からない。とにかくアエナを助けに行かないと。」
「助けにってどうやって?」


「いや、もう無理やろ。 あいつらはきっと別の時間におる。」
「もしかして七宝?」
「なんや、それ。 まあそんな奴で宝具の一つ、悠久の石かもしれん。あの石は時間を操ることのできる万能の石やから時間の干渉なんて今の俺らにはできん。 これからどうすんねん、お二人さんは。」
「・・・悠久の石を探そう。」


意味のわからないことを言っていたがワタル自身もそういうしかなかった。どういうことなのかと二人が問い詰めると


「この世界、というか時間軸にも石は存在するはずだと思って。 ほら、パラレルワールドってやつだよ。」
「ワタちゃん私にもわかるように言いなさいよ。」


「Aという世界にはA’の他に様々な可能性の未来、過去、そして現在があるというやつか?」
「ウガルさんは物知りですね。」
「俺はこれでも学者や。マ・ゾールに転生術教えたんも俺やしな。」
「じゃあ悠久の石の場所も?」
「知ってる。」
「お願いします。 アエナのために、この世界のために必要な事だと思うんです。」
「教えたる。やけど、音頭とるんはお前や、もう一人の勇者、ワタル。」
「指揮とか、リーダーなんてやったことないけどやります。それが龍神にもらった本当の使命だから。」


ワタル、エル・シド、そしてウガルは悠久の石を探すため、そして勇者アエナを救うためまた旅へと向かう。彼は、彼女らは、取り戻す事が出来るのだろうか。

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