冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。
第17話:闇夜に輝く紅い宝玉 後篇
強大な能力を秘めていた魔王、ベ・デルがついに<怨念態>として覚醒してしまった。そうなると、もはや緋灼の首飾りの効果は薄い。 望みを断たれてしまったワタル達であったが、彼らの心の灯火はまだ燃えているのであった。
ウガルとワタルは何とかベ・デルを倒そうとウガルは素手でワタルは賢者の聖剣で攻撃しているが巨大なモンスターの前にそれはまったく無意味で致命傷にもならなかった。ベ・デルの大きな腕が二人の目の前に押し寄せ、一掃した。一つ一つの大ぶりな攻撃は小さな蠅が蠅たたきに見舞われるように残酷であった。
「ちょっと危ない橋かもしれんけどこいつを乗り切れる方法があったらどうする?」
「倒せるってことですか?」
「分からん、でもやれんことはない!」
「分かりました。」
ウガルが首飾りを外してワタルに渡して着けるように促すとともに何やらひそひそと話し始める。ワタルが承諾しベ・デルをひきつけていった。首飾りの力で聖剣は赤く燃え上がり、先ほどよりも攻撃力もましてベ・デルも少し疲弊するようになった。しばらくしているとエル・シドが参加してきた。彼女によるとアエナはすでに回復してじきに再戦に向かってくるという。
「ほんとにあのオオカミに任せていいの?」
「今はそれしか・・・」
「くっ・・・少しきつくなってきたか。 君たちの威勢は認めるがこうもしぶといと面倒なんだよ!」
「それはあんたもでしょ。 いい加減殺されなさいよ。」
サラマンダーは言葉通り蛇のようにベ・デルの周りをうろついてのたうちまわる。そのダメージはじわじわとベ・デルをむしばんだ。だが、やはりベ・デル自身のしぶとさは尋常ではなかった。決定的なものがない限り状況は変わらないだろう。エル・シドとのコンビも厳しい状況になっていた時、アエナとウガルが現れた。
「遅かったわね。」
「とりあえず、この人から話は聞いたわ。じゃあおっぱじめるわよ。」
「よし、ワタ坊 お前とアエナの姉ちゃんが頼りだ。二人の勇者が宝具を覚醒させる。チャンスは一回だぞ!」
「ウガルさん具体的に何するか聞いてないんですけど!」
「 奴に太陽を拝ませてやる。 詳しくは姉ちゃんに聞け。」
そう言うとアエナとワタルを置いてエル・シドとウガルがベ・デルの相手をしていた。彼らの猛攻は巨大コウモリには効かなくなっていた。早くしなければいけないがどうしろというのだろうか。
「ワタル、私の言葉を復唱すればいいわ。それで一度だけその宝具の力を覚醒することができる。 これで太陽を出す。用意はいい?」
「僕が倒さなければ前に進めないと言ったんだ。やるよ。」
『・・・あまねく広い大地と空、』
『それを司るすべての神よ、われら勇者に、そしてこの宝具に宿り給わん。』
『緋灼の首飾り宿りしすべての「ひ」を守るものよ! 太陽をわれらが地に昇らせ、闇を照らしたまえ!』
ひかりが今まで見ることのできなかったひかりを彼らは見た。これまでの常闇が瞬く間にまるで大雨の大雲が消え去った後の快晴のようなひかりであった。ベ・デルの棲む殿の窓からでもそれは容易に届いた。ベ・デルはバンパイア族であるので太陽の光は絶対的に避けていたいのである。また、他のモンスターも白昼に活動するよりかは夜のように暗い方がより活動しやすかったから今まで暗い空が広がっていたのだろう。その空が打って変って明るくなったのだから魔物たちは当然だがワタル達でさえ目を押さえてしまった。見えはしなかったがただ叫び声だけが響き渡っていた。 しばらくするとひかりはおさまっていった。恐る恐る目を開けるとベ・デルは跡かたもなく消えていた。おそらく死んだのだろう。四人はホッと一息をつくと同時に腰を落とした。
「・・・フン、ざまあねえな。やってやったぜ。」
「みんな、ありがとう。」
「ワタちゃんもあなたなりに頑張ってたわ。見直したわ。もちろんアエナちゃんもかっこよかったわ。」
「やっぱり、私だけじゃなくてワタルも勇者だったわ。いや私より勇者らしいかもね。」
「勇者より勇者らしいなんてあるわけもないだろ。」
ワタルもアエナもエル・シドもこの声と怒りの感情を聞いたことがあった。だが、それは絶対にあり得ないことだった。彼は何もなくなった大部屋でどこからともなく椅子をとりだして座りだした。
「こいつを認めるなんてしかもボクがいないせいで魔物ばっかりじゃないか。」
「あなた・・・もしかして」
「もしかして忘れたの? 哀しいよあんなに一緒だったのに・・・ボクだよ、あ、そっちのオオカミさんは初めてか。オーガス・トムゼンって言います。ついでにアエナから離れてくれないかな。」
オーガス・トムゼンは以前のような出で立ちのようで違うように見えた。まるで何十年も待っていたかのように荒んでいた。ワタル達は彼に近づきたいとも思ったがうまく動かなかった。彼が何かしたのだろうか。僕たちはアエナから無理やり放されるように端に追いやられアエナとオーガスの二人が部屋の中腹に座っていた。
「やっと二人きりだ。さあ、約束の時間だ。狂った歴史と記憶を正しに行こうか、今度は二人だけで、、ね?」
アエナの頬に触れながら左手には石のようなものを持っていた。そうすると彼らだけの空間が歪み始めたと思うと途端に消えてしまった。 ワタル、エル・シドは今起こっていることに混乱していた。ウガルはイマイチ状況を飲み込めていなかった。だが、少し知っているような面持ちだった。
果たしてアエナはどこへと消えてしまったのだろうか。 旅路はここで終わってしまうのだろうか。いや、きっと彼が、彼らが立ち上がるのだろう。
ウガルとワタルは何とかベ・デルを倒そうとウガルは素手でワタルは賢者の聖剣で攻撃しているが巨大なモンスターの前にそれはまったく無意味で致命傷にもならなかった。ベ・デルの大きな腕が二人の目の前に押し寄せ、一掃した。一つ一つの大ぶりな攻撃は小さな蠅が蠅たたきに見舞われるように残酷であった。
「ちょっと危ない橋かもしれんけどこいつを乗り切れる方法があったらどうする?」
「倒せるってことですか?」
「分からん、でもやれんことはない!」
「分かりました。」
ウガルが首飾りを外してワタルに渡して着けるように促すとともに何やらひそひそと話し始める。ワタルが承諾しベ・デルをひきつけていった。首飾りの力で聖剣は赤く燃え上がり、先ほどよりも攻撃力もましてベ・デルも少し疲弊するようになった。しばらくしているとエル・シドが参加してきた。彼女によるとアエナはすでに回復してじきに再戦に向かってくるという。
「ほんとにあのオオカミに任せていいの?」
「今はそれしか・・・」
「くっ・・・少しきつくなってきたか。 君たちの威勢は認めるがこうもしぶといと面倒なんだよ!」
「それはあんたもでしょ。 いい加減殺されなさいよ。」
サラマンダーは言葉通り蛇のようにベ・デルの周りをうろついてのたうちまわる。そのダメージはじわじわとベ・デルをむしばんだ。だが、やはりベ・デル自身のしぶとさは尋常ではなかった。決定的なものがない限り状況は変わらないだろう。エル・シドとのコンビも厳しい状況になっていた時、アエナとウガルが現れた。
「遅かったわね。」
「とりあえず、この人から話は聞いたわ。じゃあおっぱじめるわよ。」
「よし、ワタ坊 お前とアエナの姉ちゃんが頼りだ。二人の勇者が宝具を覚醒させる。チャンスは一回だぞ!」
「ウガルさん具体的に何するか聞いてないんですけど!」
「 奴に太陽を拝ませてやる。 詳しくは姉ちゃんに聞け。」
そう言うとアエナとワタルを置いてエル・シドとウガルがベ・デルの相手をしていた。彼らの猛攻は巨大コウモリには効かなくなっていた。早くしなければいけないがどうしろというのだろうか。
「ワタル、私の言葉を復唱すればいいわ。それで一度だけその宝具の力を覚醒することができる。 これで太陽を出す。用意はいい?」
「僕が倒さなければ前に進めないと言ったんだ。やるよ。」
『・・・あまねく広い大地と空、』
『それを司るすべての神よ、われら勇者に、そしてこの宝具に宿り給わん。』
『緋灼の首飾り宿りしすべての「ひ」を守るものよ! 太陽をわれらが地に昇らせ、闇を照らしたまえ!』
ひかりが今まで見ることのできなかったひかりを彼らは見た。これまでの常闇が瞬く間にまるで大雨の大雲が消え去った後の快晴のようなひかりであった。ベ・デルの棲む殿の窓からでもそれは容易に届いた。ベ・デルはバンパイア族であるので太陽の光は絶対的に避けていたいのである。また、他のモンスターも白昼に活動するよりかは夜のように暗い方がより活動しやすかったから今まで暗い空が広がっていたのだろう。その空が打って変って明るくなったのだから魔物たちは当然だがワタル達でさえ目を押さえてしまった。見えはしなかったがただ叫び声だけが響き渡っていた。 しばらくするとひかりはおさまっていった。恐る恐る目を開けるとベ・デルは跡かたもなく消えていた。おそらく死んだのだろう。四人はホッと一息をつくと同時に腰を落とした。
「・・・フン、ざまあねえな。やってやったぜ。」
「みんな、ありがとう。」
「ワタちゃんもあなたなりに頑張ってたわ。見直したわ。もちろんアエナちゃんもかっこよかったわ。」
「やっぱり、私だけじゃなくてワタルも勇者だったわ。いや私より勇者らしいかもね。」
「勇者より勇者らしいなんてあるわけもないだろ。」
ワタルもアエナもエル・シドもこの声と怒りの感情を聞いたことがあった。だが、それは絶対にあり得ないことだった。彼は何もなくなった大部屋でどこからともなく椅子をとりだして座りだした。
「こいつを認めるなんてしかもボクがいないせいで魔物ばっかりじゃないか。」
「あなた・・・もしかして」
「もしかして忘れたの? 哀しいよあんなに一緒だったのに・・・ボクだよ、あ、そっちのオオカミさんは初めてか。オーガス・トムゼンって言います。ついでにアエナから離れてくれないかな。」
オーガス・トムゼンは以前のような出で立ちのようで違うように見えた。まるで何十年も待っていたかのように荒んでいた。ワタル達は彼に近づきたいとも思ったがうまく動かなかった。彼が何かしたのだろうか。僕たちはアエナから無理やり放されるように端に追いやられアエナとオーガスの二人が部屋の中腹に座っていた。
「やっと二人きりだ。さあ、約束の時間だ。狂った歴史と記憶を正しに行こうか、今度は二人だけで、、ね?」
アエナの頬に触れながら左手には石のようなものを持っていた。そうすると彼らだけの空間が歪み始めたと思うと途端に消えてしまった。 ワタル、エル・シドは今起こっていることに混乱していた。ウガルはイマイチ状況を飲み込めていなかった。だが、少し知っているような面持ちだった。
果たしてアエナはどこへと消えてしまったのだろうか。 旅路はここで終わってしまうのだろうか。いや、きっと彼が、彼らが立ち上がるのだろう。
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