冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第13話:刺客現る。

ワタル、アエナ、エル・シドの三人が新たな大地へと向かっている頃、マ・ゾール城では大魔王マ・ゾールが頭を抱えていた。
「ああ、やばいんじゃ、やばいんじゃ~。やっぱ異世界から来たやつら全員頼りにならんじゃん。」
「いえ、そんなことはありません。 オレ達に任せておけよ。」
「そなた、大丈夫か? 結構不安なんだけど? 明日は割と我が身なんですけど!?」
「心配には及びません、魔王さま。 なんならオレ達で勇者の首をへし折って 裏切り者には罰を与えましょう。」
「その自身があるなら、行ってこい。そしてこの世界を我が手中に収めるのだ!! ハ―ッハハハッ」


さて、アエナ達は新たなる大地に浸る間もなくただひたすらに進んでいっていた。しかしここからは敵地が多くなってくるため彼らは作戦会議を練っていた。
「アエナちゃん、ワタちゃん、よく聞いて。 ここから先は魔王マ・ゾールを敬愛してる魔物たちが多く住みついているの。だからもしかしたら刺客や自ら勇者に挑んでくる奴らが現れるかもだから、より注意深く行動しないとね。」
「どんな敵が現れるか、分からないんですか。」
「唯一知っているとすればこの先の『ベテルク帝国』の帝王が今一番マ・ゾールのお気に入りで右腕らしいわ。それ以外は聞いたことないわね。」
「いずれにせよ、これからは用心してかかれってことでしょ?マ・ゾールを倒して一刻も早く平和を取り戻さないと。私の両親やどこかへと消えたオーガスを助けられない。」
「そうか・・・だが、頼りにならないかもしれないけどアエナ・マクスウェル。僕らを頼ってほしい。」
「急に改まった話し方しないでくれる? ワタル。」
硬くなってしまったが、僕は本心で言いたかったから、真面目にアエナには僕たちに頼ってほしい。やっぱり元魔王だからどこか距離を置いているのだろうか。
「さ、先を急ぎましょ。 今はあなたたち二人しか頼れる存在がいないんだから・・・」
うつむいて語るその姿はどこか寂しげに見えた。彼女のためにも先を急がねば。


進んでいくといよいよ空気感が禍々しく魔物の勢力も強そうな感じがする。 そう思っていると突然霧がかかってきた。霧は歩くたびにだんだん濃くなっていく。濃い霧を抜けていくとさっきまでは無かったであろう館が見えてきた。
館の前にはフードを眼深に被って仮面を付けた人物がいた。彼は雄弁に
「私はここいらで占いをやっているものです。そこのお三方、霧が深いと前に進めないから霧がやむまでと思ってやってみませんか」
という風に切り出してきたので三人はいい提案だと思い中へと入っていった。
中に入ると奇妙なことにアエナ一人だけが気味の悪い鏡張りの部屋に通された。ワタルやエルも穴璽様な部屋に一人きりになっていた。そこからの記憶は無く、意識を失っていたのだろう。


アエナが意識を取り戻すとそこは霧の晴れた草原だった。
「夢? 少し疲れていたのね。きっと。」
そう思い込んで起きると目の前には不思議な光景があった。
「何をボケっとしてるんだい、アエナ。とにかく、エル・シドとワタルが裏切った!」
声の主はオーガスでさらに向こう側には彼の言う通り二人とそれを取り巻くモンスターがいた。本当に彼らは裏切ったのだろうか。
「オーガスどういうこと?」
「見たまんまでしょ。やっぱり彼らは魔王であり、魔族の一員なんだ。こうなったら行くよ。」
この状況に違和感を感じずにいられないのはなぜかは分からなかった。


一方その頃、ワタルも同じように意識がもうろうとしているところに急に刃物が振り下ろされた。間一髪のところでよけれた。よく見るとなんとそれはアエナだった。アエナは鬼のような形相で彼に立ちふさがる。ワタルは焦りながら自分も死にたくないため剣で受ける。
「アエナ、どうして。」
「たき・・・親の敵っ!!」
乱暴に見境なく振りかざす彼女の剣を何とか今までの経験の成果と片眼の力でどうにかなった。
だが、ワタルは少しというか異常なまでに冷静だった。自分が死に物狂いで剣をさばいていていたのにかかわらず状況を正確に判断しようとしていた。
(彼女の剣のようで彼女の意志のようなものを感じないのはなぜだろう。気迫があるようでない。もしかして・・・)
自らの聖剣で彼女の剣をさばき、その手を掴んで


「おまえ、誰だ?」
と問いただした。その間、眼の力で彼女の瞳の中にある真相を見つけた。
ワタルとは反対にアエナは未だに疑念を振り払えていなかった。
「どうしたのアエナ。早くしないとぼくたちがやられてしまう! 早く!」
(そうじゃない。オーガスはもうこの世界にはいないはずなのに。)
「早く! その龍神の剣で! 」
(彼はエルお姐さんや、ワタルの事を呼ばなかった。でもあれが彼らの姿なの?)
「やれ、やれ、『殺れ』!!!」
その時、アエナの中で何かが吹っ切れたのか、
「・・・助けて! ワタル! 頼れっていったのあなたでしょうが!!」
その時、太陽が割れたと思うと世界が変わり、さっきの鏡張りの部屋にいた。鏡は何枚か割れていた。


そして! 何かを持って何者かが現れた。 それは紛れもなくワタルだった。
「はぁ、こいつが、鏡に連れ込んで幻想を見せていたんだ。」
「く、くう、低級魔王の癖に生意気にオレ達の術を見破りやがって!」
そうしているとエル・シドも合流し
「みんな大丈夫? なんかずっと意識を失ってたみたい。」
「はい。」


「・・・二人とも、私と一緒に戦ってくれる?」
「なに言ってんの? あたりまえじゃない! そのために魔王側やめたのよ。」
「僕もこの世界の人たちと自身が戻るための戦いだ。君も、僕も、お互いの力を合わせないと。」


             『戦おう! 一緒に!』


「言ってくれるじゃないか! このデ=ベ・リット様に勝てると思ってんのか?」


「さっき、思ったんだが、お前、術無かったら弱いだろ。」
「貴様、誰に向かって口きいてんの? こらぁ・・・」
「あなたには悪いけど、容赦はできないわ。 なんせ、この剣見境ない強さを持ってるから。」


三人の恐喝に少し血の気を引いた魔王が少し後ずさりすると三人は一斉に取り囲み彼をリンチにする。決して正義の味方がする品物ではないが・・・彼の仮面が取れると、一層弱くなった。彼の悲鳴と断末魔が聞こえなくなると


「あいつ、思ったより弱かったっていうか 仮面が取れたら全然怖くなかったわ。」
「けど、この仮面、どうしようか。」
「 ハナセ! このベ・リット様をナメルナヨ!」
「まさか、魂の存在で この魔物に取り付いていたとはね。」
仮面は魔物の魂を封じ込めていたらしく、取りつかれていた本体のデ・ゴールに仮面の中のベ・リットが取りついていたらしい。
「川にでも流しておけば?」


「とにかく、よかったわ、アエナちゃん。 私たち(ワタルだけだったけど)を頼ってくれて。ありがとね。」
アエナはすぐそっぽを向いて僕らを急かせた。











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