冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第11話:迷宮の謎を解け! 前篇

 「あれ? また、行き止まり?」
「ちょっと!ここ、さっきも来たんじゃないの!?」
「エルお姐さんもワタルも一旦落ち着いて。この手のダンジョンは冷静さを欠いたら一生迷うわよ。」
僕たち三人がなんでこんな状況になっているのかを説明するには少し時間を巻き戻さないといけない。それは今から一時間前の話・・・


ワタル、アエナ、エル・シドの三人は魔王を倒すための七つ道具「七宝」を探し、魔王を倒すための旅を続けている最中だった。ケモイから歩いて行くと魔王のいる城の山は大きく見えてきていた。しかし、まだまだ先は長いだろう。そう思っていたところでエル・シドが先頭にでてきて
「あ、あれ! あの建物は!」
彼が指す先には大きく道を塞いだ壁とそれに連なった建物があった。
「あそこは丁度関門になっていて、あれをくぐらないと魔王の城には行けないし、残りの七宝も手に入らないわ。」
「それじゃあ、ためらっている場合じゃないな! 行こう。」
「ちょっと待って、ワタル!」
ワタルが子供のようにはしゃぎながら中へと進むと
迷宮ダンジョン』と書かれた看板が壁に掛けられていた。ダンジョン・・・聞いたことある名前だ。確かいろんなことに罠があったりモンスターの巣窟になってるところだ。ラノベにも出てくるしRPGゲームの基礎だから得意だ。
「迷宮? ならよくやってたから 得意だよ。」
「あんたのいた世界ではどんだけ迷宮があるの?」
「エルお姐さん、それワタルに聞いても訳の分からない”ラノベ”の話をされるから。とりあえず、得意って言うなら彼に任せてみましょう?」
ワタルの言葉を信じ三人は迷宮へと進んでいった。壁は高く、道幅は狭くて行くとすぐには戻れないようになっている。いいことに建物内には松明が間隔よく立てかけられており、暗くは無い。入り組んだ道筋にワタルはなんの躊躇いなくぐんぐん進んでいく。
進んでいくもなお、同じような道筋、行き止まりに出会ってしまっている。モンスターに出くわしていないのが幸いなくらいである。


 そして一時間後彼らはとうとう迷子になった。


「はあ、ワタちゃんが大丈夫っていうから期待したのに全然ダメダメじゃない。」
「私もちょっと幻滅したわ。」
エル・シドに言われるならまだ分かるがアエナにも言われたワタルはだいぶ落ち込んでいた。
「すいませんねえ。でも、おかしいんですよ。違う方向に行ってるはずなのに同じようになってしまうなんて。というかモンスターが出てこないだけ全然ましですよ。」
「おかしいわ。」
「でしょ?」
「いや、そうじゃなくて。ただの迷路なのよ。普通もっと何か仕掛けてあるはずなのよ。モンスターがいないことも気がかりだし。」
「確かに関門にしては人気がないわね。さすが、アエナちゃんはいつでも冷静ね。」
一通りの会話が終わり、アエナは手あたり次第、壁を探索し始めた。
「ちょっと思ったけどここの壁、やけに厚いわね。そう思わない?」
「え? そう?」
「ワタちゃんには聞いてないわよ。 あんたはこういうのには使えないんだから黙ってなさいよ。」
ワタルがしゅんとしている間にアエナは少し上を見上げた。壁は自分の背丈より2~3m高いが屋根の方が数段高い位置にあり、違和感を覚えていた。
 彼女は彼らをよそに違和感を確かめるため、レンガ造りの壁にあるわずかな隙間を頼りに上っていた。それを見てエル・シドはひょいと一瞬にして壁をよじ登り、アエナに手を貸した。
アエナはスッと登ることができたのを見て、ワタルも置いて行かれないようにがんばって登っていく。登ろうとする彼をようやく二人がかりで登らせることができた。
 そこにある風景は今までと違い、先程の迷路を分ける壁が道筋になっておりその先には階段があった。
「あそこから行けるのかしら?」
「そうかもしれないけど、二人とも気を付けてかかりなさい。ここからが迷宮の本番なんだから」
エル・シドの言葉に鼓舞した二人は階段のある方へと急いだ。そして階段を上るとそこには有象無象のモンスターが存在していた。まだこちらには気づいていないらしい。息を殺し階段の踊り場で作戦会議をする。
「とりあえず、無視できるものは無視よ。 それに奥の部屋が見える? あそこには『月の楯』とそれを守護する魔物がいるらしいのよ。あそこまでは体力はできるだけ温存よ。」
「その魔物は”こちら”サイドなのか? エル・シドさん。」
「知らないわよ。でも、多分管轄外よ。この辺は無法地帯だし、私も知らないってことはそういうことでしょ。」
妙にそれっぽいことを言っているエル・シドには何となくだが説得力があった。
 さて、これからどうやってこの階層フロアを攻略してくれようか。









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