冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第9話:新たな旅立ち

「くっ、、やるな。勇者よ。」
「あなたも魔王とか、悪魔崇拝なんていう割には騎士道精神にあふれる戦いだったわね。」


デ・ゴルバは返事をしなかった。アエナは剣をしまい、二人の元に戻り、一緒にニーシャを探した。
すると奥の部屋に両手足と口を縛られた彼女の姿を見つけ、彼女を開放し、4人は教会を後にした。


「ごめんなさい。私がこんなことに巻き込まれたばかりに・・・。」
「目の前にいた魔王を倒しただけよ。ニーシャ、それより怪我はしてなかった?」
「うん! 大丈夫だよ。ありがとう、アエナちゃん。」


ニーシャが軽くアエナに頬ずりすると、アエナが少し照れながら


「私だけじゃないわ。ワタルとオーガスも一緒にいたから頑張れたのかもね。でも今回の件はワタルがいたから救えたわ。」


ニーシャはそうなの?というようにワタルの顔をのぞいた。ワタルはビックリして顔をそらしながら


「僕はただ恩返しがしたかった。それだけだよ。」


ふーんと興味のなさそうに元に戻るニーシャ・・・話しているうちにニーシャの家の前へと着いた。住人たちもニーシャの帰還と魔王であった教主がいなくなったことに少し安堵していたようだ。


父親の元へと戻ると親子は喜びと安どをかみしめ抱き合い、涙した。


「ルナ王国の勇者、アエナよ。恩にきります。」
「私の名前を?」
「この方から全ての話を聞きました。」
「話は早い方がいいのダ。」


えへんと自分の功績を称えてほしいような顔でナヴィはたっていた。ワタルは仕方なく頭を撫でてやった。ナヴイはワタルにされて少しいやそうな顔をしていた。その顔にみんながほっこりした。それはそうと、フランツが話を切り返しワタルに


「そうそう。ワタルだったね、水晶板、直しておいたよ。なんと、アップグレードしておいた!
私の渡した時計と同じ機能も付いている!!・・・だから、時計返して。元々、私のだし。」


ちゃっかりした父親のフランツに礼をいって水晶板を受け取った。


「よし、うけとれるものは受け取れた。先を急ごう。アエナ。」


急かすオーガスは少しいらだっているようにも取れた。
だが、彼の言う通り時間は待ってくれない。そう思ったアエナは


「そうね。ちょっと名残惜しいけど私たちの目的はまだまだ先だからね。」
「ちょっと待ってくれ。」


フランツがまだ何か隠しもっていたようでそれをナヴィに持って行かせて


「これを二人に渡しておこう。お守り代わりだ。」


それは先程の時計だった。ナヴィは自分は神様なのでいらないと言いオーガスとアエナにフランツからの贈りものを手渡した。


「私のよりかは多機能ではないが連絡くらいお互いにできるようにしてある。君たちの旅に幸あらんことを。」
「ありがとう。大切にする。」


アエナはフランツに礼を言い、ケモイ王国を後にした。空は未だ昼か夜かもわからぬ禍々しい空だったが少し晴れているように感じた。ある程度旅支度の買い込みをすませ、三人は改めてケモイの村の初めに入った入口へと行った。


ケモイ達に見送られ四人はケモイの国を後にした。歩きながら


「結局、ルナ王国との因縁は聞けずじまいだったわね。」
「大昔の話なのダ。ルナの兵たちがケモイの知識と領土を奪おうとしたんだ。でも女神『アエ・ルナ』が争いを収めたのダ。」
「それが大昔から伝わる『アエ・ルナ聖戦記』・・・不思議な話ね。おとぎ話だと思ってた。」
「確かアエナの名の由来はその女神なんだよね?」


おとぎ話としても伝えられる「アエ・ルナ聖戦記」そこにはナーガの勇者の証の物語も刻まれている。ルナ王国建国の物語もそこに載っている。だが、その原典はこの世のどこにも存在しないという。そのような世迷言を話していた後、ナヴィが足を止めていた。


「どうした?ナヴィ。」
「申し訳ないが、ナヴィはここまでなのダ。」
「どういうこと?」
「地上界にいられる期限が切れたのダ。長くこの姿を維持することもできない。村の事も心配だからな。」
「そうか、寂しくなるよ。」


みんなの顔を見まわしながらナヴィは


「それじゃ、またなのダ。 (だけど・・・)」


そう言って彼の周りからものすごい光が包み、それはワタルをも包んでしまった。ワタルが目がくらみ、閉じた。少しして開くと龍神が本来の姿でいて


「ワタルよ・・・」
「はい、なんでしょう。いきなり改まって」
「こんな世界に連れてきてしまって申し訳ないと思っている。」
「いや、呼んだの魔王マ・ゾー、」
「初めに呼ぼうとしたのは私だ。だが、うまくいかず魔王に奪われてしまった。すまない。」
「ここまで来てなんだが、勇者はアエナではなくお前にするつもりだった。だが、その前にアエナが生まれ、お前は魔王としての役割が与えられてしまった。だから、関係の無い人間を巻き込みたくない。だから君を元の世界に返すこともできる。どうする?」
「ほんとそうですよ。でも、僕は元の世界にまだ戻りたくない。魔王には借りがあるし。」
「では、言おう。お前の左目、そこにはゲイザーという魔族が存在する。それはいずれ力を与える代わりにお前の全てを奪うだろう。」
「ま、その辺は大丈夫でしょ。空気陰キャの時より面白いよ。」
「フフフ・・・面白い奴め。ならば、行くがいい。異世界の勇者、ワタルよ。お前の道はただ一つ。魔王マ・ゾールを倒し、元の世界に帰ること!それが運命だ!」


気が付くと僕はアエナの膝の上だった。


「大丈夫? 急に倒れて。」


ワタルはビックリしすぎて膝から転げ落ちて頭を打ったが頭を押さえて弱弱しく


「だ、大丈夫です。」


とだけ返した。よほどうらやましかったのかオーガスがふくれて


「先に行こう、アエナ。こんな奴放っておいてさ。こんな奴を介抱するなんて・・・」
「そうよ。こんな、低級魔王置いていっちゃいなさいよ。」


聞き覚えのあるような、ないような声がした。だが声の感じと女性的な話し言葉がミスマッチしている。その人は急に僕たちの輪の中に入ってきた。


「あなた、だれ?」
「え?もう、忘れちゃったの?あんないい戦いしたのに・・・アエナひどくない?」
「もしかして、デ・ゴルバ?」
「そう! でも、もうその名前はナッシングよ。今は勇者の見方になる系魔王、『エル・シド』よ。」


元魔王エル・シドは右手を頬にあて、左手は右手に添えて構えていた。




「仲間にしてくれるなら、あんたたちに良い情報教えてあげる。」


先程までとまるで違う姿に三人は困惑したがアエナは


「いいわ。その条件悪くない。戦力は多い方がいいからね。」




「じゃあ、話すわね。一つ、魔王は初めに付く名前によって強さが違うの。あんたの『サ』が一番下。そこからうちら『デ』それから『べ』そして最上級の魔王に与えられるのが『マ』よ。つまりうちより断然強い魔王がいっぱいいるってことよ。弱いのもいるけどね。二つ、七宝の一つ『月の楯』はここから数十キロ離れたところにあるからその間に補給も済ませた方がいいわ。私から言えるのはそんくらい。」




「こいつなんかよりはるかな情報量だよ。だが油断はしない。元は魔王だからな。」




「人を指ささないでもらえるかな。オーガスくん。」




「やめなさい。エルお姐さん、仲間割れは嫌いよ。」


エル・シドが半ば強引に自ら彼らの仲間となった。この奇妙な関係パーティーは一体どこにたどり着くのか・・・。

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