冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。

小鳥 遊(ことり ゆう)

第8話 明かされる真実

 ワタル達は閑散とした街を駆け抜けて教主のいる教会へとたどり着いた。教会には多くの魔物がなぜかそこにいた。オーガスは魔物を見るなり


「アエナ、やっぱりあの教主とやら・・・怪しそうだね。」


アエナは教会を前にして険しい表情で佇んでいた。動いていたのは彼女の可憐な黄金色の髪の毛と親の形見で着ていた黒のロングコートだった。彼女はワタルの言葉をかみしめていた。勇者とは自分の復讐などのためではなく誰かを救ったり、助けるものなのかもしれないと考えていた。


「魔物がいるってことは私の予測として教主はワタルやルナにいたようなマ・ゾールが呼びだした”異世界”の魔王ね。その魔王が彼らを洗脳的に支配してるんだわ。」
「どこかで聞いた気がするよ。ここの魔王、デ・ゾールはそんな変な奴じゃない。本物の魔王だよ。」


「そうなの? じゃあ気を引き締めないと、行くわよ。二人とも!」


アエナが二人に呼びかけ、剣を構えていて準備は万端だった。彼女は始めよりも何か前に進んだような気がしていた。それは少なくともワタルという存在のおかげとも思っていた。オーガスはアエナのやる気を信じて仕方なく応じていた。強襲の周りにいる見張りのモンスターを払いのけるためアエナが先陣を切って


「二人とも下がって! “あれ”を使うから!」


アエナが突然にそういうと背中に納めている大剣「龍神の剣」を振りかざした。きっとオークに使った技を出すのだろう。そう思った瞬間、剣が振りかざした風圧によって門番たちは一瞬にして塵になりおまけに硬そうな扉もあけることができた。
正直ワタルはあの必殺技が好きではなかった。たとえ怪物といえども一瞬で塵になり、周りに血液や体液が飛び散るのは気分が悪い。
中へと進みながら


「アエナ・マクスウェル、その技怖いんだけど・・・」
「怪物を倒すには・・・これくらい強い力が・・・必要よ」


アエナは息もとぎれとぎれになっていて体もだるそうにふらついているようだった。オーガスがすかず肩を貸し、


「その技は急激に魔力を必要とするようだね。相当消耗してる。とりあえず後方に廻って。ここからは僕に・・・いやぼくたちか。ぼくたちに任せて。おい、行くぞ使い魔ワタル。」


オーガスは体力を回復する石をアエナに渡し、後ろに回した。彼女は歩けるまで回復したらここからは僕と彼の攻防戦だ。正直ワタルとの連携も相性も最悪の彼らだったがアエナを護るという点では合致していた。ワタルに対してオーガスが命令を下す。


「使い魔、君は左のテンダクルス(触手人間)を。僕はこちら側でインゼクトル(甲虫人間)をやっていく」


癪だとも思ったがそうも言ってられず、モンスターは襲ってくる。テンダクルスの集団はご自慢の触手をうねうねとうねらせて来る。しかし、ワタルは賢者の聖剣で何とかきり抜けていく。
 オーガスは魔導を使い、インゼクトルを返り討ちにしていた。彼の魔導は力強くそして荒々しかった。


「魔導呪印 <轟雷>! <氷結>!」


魔導呪印はインゼクトルを確実に捉え、どんどんと敵の数を減らして行った。一方、ワタルの剣さばきも未だおぼつかないがだいぶ板についてきた。アエナは少しずつ息を整えながら二人の後ろをついて行った。
 そしていよいよ大ボスがいそうな広い場所に出た。すると奴はいて


「おや、旅のお方、いや平和を乱す破壊者と言うべきか。ここに何の用です?」


しらを切る教主にアエナはタンカを切って


「とぼけんじゃないわよ! ニーシャはどこよ、魔王!」
「魔王とはとんでもない。私は教主ですよ・・・。 うーん、彼女ねえ、供物と言うべきかな。君たちにはその崇高な意味は理解できまい?」


困惑した表情でワタルが


「供物って?何かにささげるのか?」
「悪魔崇拝。と言えば分かりやすいかな? 悪への賛美、悪には悪の道理がある。またそれは魔王マ・ゾール様との交流でも私は体験した。彼にささげるため私は何もかもを捧げた! そう、私の体さえも!!」


そういうと“彼”は異形な形となり、大きくゆうに5,6mはある怪物へと変化した。そのいでたちは上半身だけ人の様な雄山羊に羽が生えたようなまさに自分が中学二年生の時によんだ本に載っていた悪魔にそっくりだとワタルは思った。
雄山羊は咆哮して


「我が名はデ・ゴルバ! 闇黒界の魔王である。この世界の勇者よ!世界を救いたければ私を倒すのだな!」


「この魔王、オーガスが言ってたのと違う。けど倒す事には変わりない!」


オーガスは呪文を唱えて援護魔法を打っている。アエナとワタルは最前線で刀を振り回しているがデ・ゴルバの速さは尋常でなかった。デ・ゴルバの頭突きはアエナに直撃してしまった。彼女は遥か入り口とは反対のステンドグラスの方へと飛ばされた。それによって入口は完全にヤギに塞がれて最前線はワタル、そして後方からオーガスと言う陣形になってしまった。オーガスが横柄な態度で


「勇者の使い魔になったといえど魔王の片鱗はあるだろう? なにか無いのか!!アエナがやられるだろ!」


「あれは、今の僕には使えるかわからない! でも、あいつを倒すなら少し使ってやる!」


そういうとワタルの左腕から禍々しい鎖が出てきたと思うとそれに応じて左側の顔も少し悪魔のような顔になった。左側の鎖をデ・ゴルバに巻きつけ、それを手繰り寄せて剣との見事な連携技を見せた。


「どうだ。これがここに来てから編みだした僕に住まう魔王を活かすとっておきだ!」


ワタルは自分自身こんなことができるのかと驚いていたが魔王が怯んで少し驚いているから虚勢をはった。オーガスとアエナも突然見た彼の技に非常に驚いた。そして彼の努力の甲斐あってかデ・ゴルバに大ダメージを与えた。それを見てアエナが立ちあがって


「へえ、やるじゃない。じゃあ、後は任せて。終わらせるから、あの技を使わずにね。」
そういって再び魔王デ・ゴルバの前に立ち、剣を両手で構えた。デ・ゴルバもワタルやオーガスに目もくれずアエナだけを直視していた。


「ここからは一対一で勝負よ。」
「勝つつもりか? よかろう相手になってやる。」


デ・ゴルバはアエナの勝負にのり一対一で戦って行く。アエナはデ・ゴルバのヤギの顔とは想像のつかない大きな手とそれに準じて大きく鋭い爪を剣で受け止めながら相手の懐に切り込んでいく。勝負は互角。だが、デ・ゴルバは何も手出しのできないワタルとオーガスには手を出さなかった。完全に二人だけの世界だった。
 二人は攻防を続けた。だんだん傷も増えてきて二人の世界は終わりを迎える。


そこには一呼吸の一瞬の静寂があった。


 そして、二つの意志が衝突し剣と拳が彼らの最後の一発に勝負をかけた戦いだった。だがそれは束の間の決着だった。アエナの方の剣が急所にささったのか、もうすでにデ・ゴルバの体力は無く決着はついていてアエナへの攻撃がはずれたのかそれともその両方か、それは彼女らにしか分からない。雄山羊は倒れ込み、人間の体へと姿を変えていた。アエナは膝から崩れ落ちた。二人が駆け込み、勝利に浸った。

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