冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。
第7話:盲目な羊たち
 ワタルを除き、一行は久しぶりの快適な睡眠と時間を過ごした。朝日が昇り、眠りから覚めた。
「おはよう。みんな。」
アエナが男子と違う部屋から2人の部屋の玄関で準備万端の形で入って来ていた。
「ワタル、やたら早いわね。まぁいいわ。オーガス起こしてあげて」
オーガス、ワタルの2人はそこまで話もせず黙々と準備をした。終えるとアエナとも合流して3人は改めて外に出ると前には龍神がいた。
「おはようなのダ。諸君。」
「おはようございます。龍神さま。」
「さて、とりあえず魔王の事とか水晶板の修理について調査するのダ。あ、ナヴィの事はナヴィと言って構わないのダ。」
「ナヴィ?あなたの名前?神さまなのにいいの?」
「そう!良きに計らえなのダ!」
そう言って"ナヴィ"は人間の尻から少し生えた尻尾をピンとはった。
 こうしてワタル、アエナ、オーガス、ナヴィの四人はケモイの街に繰り出して聞き込み調査へと足を運ぶのであった。
街を物色すると特に文明が栄えている印象は無く、木々の生い茂った自然な街並みが彼らの印象にとても合っていた。ケモイ達は入国した異邦人を昨日と違い、あまり四人を歓迎しているようには見えなかった。しかし、少しすると一人(?)のケモイが四人を木の物陰から物珍しそうに見つめている。どうやら“彼女”はトラのケモイらしい。
「ねぇ、君たちニンゲン?どこからきたの?」
「ええ、人間よ。私はアエナ。ナーガ村から来たの。あなた水晶板の直せる所知らないかしら。」
といってその話に併せてワタルがポケットから水晶板を取りだしたそうすると彼女は目を丸くして
「ああ!それ、お父さん直せるかも!」
トラのケモイは体をピョンピョンと跳ねて嬉しそうに話していた。
「なんでそんな嬉しそうなんだ?」
オーガスが首をかしげると
「ニンゲンと話すの久しぶりだし、それに役に立てることはとてもいい事だって教主サマも言ってたし。」
「教主…?まあ、良くわからんが早くそのお父さんの所へ連れて行ってもらえるかな?」
「わかった!ちょっとまってて。」
そう言うと彼女は左手に巻いている時計を触っていた。しばらくすると時計からホログラムで別のケモイが現れた。どうやら父親らしい。父親から承諾を得るとこっちを向いてオッケーサインを出してくれた。
「ありがとう。あの、えーと、」
「ニーシャ。わたし、ニーシャって言うの。よろしくね♪」
可愛らしげなニーシャに先導されて彼女の家へと向かうのであった。
 さて、一行はニーシャに連れられ、異世界によくありそうなこじんまりした建て物に着いた。ワタルは
「これがニーシャさんの家?」
と当たり前のことをつぶやいた。ニーシャは少し困った顔をしてから
「うん。ちょっと待っててね。」
「ワタル、なんか変よ?積極的に話そうとしてない?ちょっとぎこちないわよ。」
「う、うるさいな。僕だって女子と気軽に会話できるようになりたいんだよ。」
「別に君が話し上手になっても役に立たないのは変わらないけどね。」
「ワタル、“コミュ障”なのか?」
ナヴィの言葉を聞いて少しぎくりとした。大きなお世話だとも思ったが、なぜそんな言葉知ってるのか気になり聞いたら神さまだからの一点張りだった。しばらくするとニーシャが招き入れながら
「ごめん。おまたせ。さ、中に入って。」
誘導されて四人が中に入るとそこには普通の家具が並びながら少し違和感のある機材がたくさん散らばっていた。奥には作業台に座るライオン顔の雄のケモイが何やら火花を散らして作業していた。
「いらっしゃい。ニーシャが言っていたお客さ…ま おい、その女ルナ王国のニンゲンか!?その連れてる奴らも変なにおいがするぞ。お前ら何しに来た!」
その人は顔にしわを寄せ、牙を見せて威嚇していた。
「ちょっと、落ち着いてくれる? 私はルナ出身じゃないし、あなたたちの国とルナ王国とで何があったかは知らないけどあなたが頼りなのよ。ワタルからも頼んでよ。」
アエナにできなくて自分にできるわけもないと思いながら恐る恐る彼に話をした。
「あ、あの、このスマh、じゃなかった水晶板見てくれるだけでいいんです。そうすれば僕たち帰りますんで。」
「それでも、ダメだ。」
「なぜです?」
「お前たちがルナ王国の人間だとすると教主サマの教えに反する。教主サマの言葉は何者も従わなければならない。」
「教えって何なんだ。それに教主って・・・」
その時、ドアをたたく音がドンドンドンっと大きくなった。周りは一瞬静かになった。
「みんな、隠れて! もしかしたら教主サマの親衛隊かも!」
一行は訳も分からず奥にある道具を入れる倉庫へと追いやられた。向こうの様子はまるで見えなかったが幸い、声だけは聞こえてきた。
「ごきげんよう。フランツ博士にニーシャちゃん。実はちょっとした噂を聞きつけてね。」
「なによ。いつもえらそうに。教主サマがいなかったらただのプー太郎だったくせに。」
「チッ。まあいい。ニンゲンをかくまってないか?ルナ王国から来た奴らだ。それを聞きに来た。どうなんですかフランツ博士。」
フランツは沈黙していた。それに対してニーシャが威嚇しながら代わりに煽るように兵士に応えた。
「かくまう?て言うかニンゲンとか見てないし。」
「お前には聞いてねえんだよ!カスが!」
向こう側で物騒な物音が聞こえてきた。四人は息をひそめて状況を聞いていた。その中でアエナには選択を迫られていた。
「すごい物音なのダ。アエナ、勇者としてここはどう出るの?」
「とりあえず、ここは冷静に出る方法を考えましょ。」
「ちょっと待って。身捨てるっていうのかい?君は。」
ここで少し声を荒げたのはワタルだった。それに歯向かったのはやはりオーガスだった。
「状況が状況だろ。あれじゃ無理だ。ぼくもアエナに賛成だ。勇者は時に残忍で無いと世界は救えない。アエナ、君は間違ってない。こんな異質な奴・・・」
言葉をさえぎりもっと強くワタルは二人に当たるように話した。
「今ここで困ってるかも知れない人を放っておくのがこの世界の勇者なのか!? 僕はごめんだね。少なくとも僕は何かを変えるために君たちと旅に出たんだ。」
そう言って彼は倉庫から一人飛び出して行った。オーガスはワタルを止めようと失敗し、怒りで満ちていたが、アエナはワタルの言葉に何かハッとさせられた。それは彼女も分からなかった。ただはっきり分かることは今の自分の考えは間違っているのかもしれないと。そうしているうちにワタルがなりふり構わず表へ出て
「おい、いい加減に・・・ってあれ?」
部屋は荒らされて資料や発明品がめちゃくちゃになっていてその中でフランツ一人ポツンとうなだれて地面に座っていた。ワタルの声を聞き、振り向き顔を見るなり彼の胸倉をつかみ
「遅かったな。お前らのせいで娘は反逆者だ。連れていかれたんだよ!!教主のところへ」
フランツの眼には涙がこぼれていた。やがてやるせない気持ちになり、ワタルの胸倉をつかむのを緩めて話を続けた。
「教主は我々の救世主だった。いやそう思い込んでいたのかもしれん。こんなのただの独裁だ。なぁ、さっきの事は水に流して娘を助けてくれ。お願いだ!」
「そんな都合のいい・・・」
怒りに身を任せてオーガスが言おうとしたがワタルが止めて
「これ、直しててもらえますか。その間に助けてきますんで。ナヴィ、その人見張ってて。」
「・・・了解なのダ。気をつけて。」
オーガスとアエナはただ、ワタルの怒りと覇気に気負けしてついて行くだけだった。そこにフランツが大急ぎで駆けつけて
「待ってくれ。教主のいる教会の道を知らんだろ。 これを持って行ってくれ。後はお願いします。」
それはニーシャやフランツの持っていた時計型デバイスだった。フランツによるとそれに行き方の載った地図がGPS付きであるらしい。とても便利だ。
こうして一行は教主に会いに行くため教会へと急ぐのであった。
「おはよう。みんな。」
アエナが男子と違う部屋から2人の部屋の玄関で準備万端の形で入って来ていた。
「ワタル、やたら早いわね。まぁいいわ。オーガス起こしてあげて」
オーガス、ワタルの2人はそこまで話もせず黙々と準備をした。終えるとアエナとも合流して3人は改めて外に出ると前には龍神がいた。
「おはようなのダ。諸君。」
「おはようございます。龍神さま。」
「さて、とりあえず魔王の事とか水晶板の修理について調査するのダ。あ、ナヴィの事はナヴィと言って構わないのダ。」
「ナヴィ?あなたの名前?神さまなのにいいの?」
「そう!良きに計らえなのダ!」
そう言って"ナヴィ"は人間の尻から少し生えた尻尾をピンとはった。
 こうしてワタル、アエナ、オーガス、ナヴィの四人はケモイの街に繰り出して聞き込み調査へと足を運ぶのであった。
街を物色すると特に文明が栄えている印象は無く、木々の生い茂った自然な街並みが彼らの印象にとても合っていた。ケモイ達は入国した異邦人を昨日と違い、あまり四人を歓迎しているようには見えなかった。しかし、少しすると一人(?)のケモイが四人を木の物陰から物珍しそうに見つめている。どうやら“彼女”はトラのケモイらしい。
「ねぇ、君たちニンゲン?どこからきたの?」
「ええ、人間よ。私はアエナ。ナーガ村から来たの。あなた水晶板の直せる所知らないかしら。」
といってその話に併せてワタルがポケットから水晶板を取りだしたそうすると彼女は目を丸くして
「ああ!それ、お父さん直せるかも!」
トラのケモイは体をピョンピョンと跳ねて嬉しそうに話していた。
「なんでそんな嬉しそうなんだ?」
オーガスが首をかしげると
「ニンゲンと話すの久しぶりだし、それに役に立てることはとてもいい事だって教主サマも言ってたし。」
「教主…?まあ、良くわからんが早くそのお父さんの所へ連れて行ってもらえるかな?」
「わかった!ちょっとまってて。」
そう言うと彼女は左手に巻いている時計を触っていた。しばらくすると時計からホログラムで別のケモイが現れた。どうやら父親らしい。父親から承諾を得るとこっちを向いてオッケーサインを出してくれた。
「ありがとう。あの、えーと、」
「ニーシャ。わたし、ニーシャって言うの。よろしくね♪」
可愛らしげなニーシャに先導されて彼女の家へと向かうのであった。
 さて、一行はニーシャに連れられ、異世界によくありそうなこじんまりした建て物に着いた。ワタルは
「これがニーシャさんの家?」
と当たり前のことをつぶやいた。ニーシャは少し困った顔をしてから
「うん。ちょっと待っててね。」
「ワタル、なんか変よ?積極的に話そうとしてない?ちょっとぎこちないわよ。」
「う、うるさいな。僕だって女子と気軽に会話できるようになりたいんだよ。」
「別に君が話し上手になっても役に立たないのは変わらないけどね。」
「ワタル、“コミュ障”なのか?」
ナヴィの言葉を聞いて少しぎくりとした。大きなお世話だとも思ったが、なぜそんな言葉知ってるのか気になり聞いたら神さまだからの一点張りだった。しばらくするとニーシャが招き入れながら
「ごめん。おまたせ。さ、中に入って。」
誘導されて四人が中に入るとそこには普通の家具が並びながら少し違和感のある機材がたくさん散らばっていた。奥には作業台に座るライオン顔の雄のケモイが何やら火花を散らして作業していた。
「いらっしゃい。ニーシャが言っていたお客さ…ま おい、その女ルナ王国のニンゲンか!?その連れてる奴らも変なにおいがするぞ。お前ら何しに来た!」
その人は顔にしわを寄せ、牙を見せて威嚇していた。
「ちょっと、落ち着いてくれる? 私はルナ出身じゃないし、あなたたちの国とルナ王国とで何があったかは知らないけどあなたが頼りなのよ。ワタルからも頼んでよ。」
アエナにできなくて自分にできるわけもないと思いながら恐る恐る彼に話をした。
「あ、あの、このスマh、じゃなかった水晶板見てくれるだけでいいんです。そうすれば僕たち帰りますんで。」
「それでも、ダメだ。」
「なぜです?」
「お前たちがルナ王国の人間だとすると教主サマの教えに反する。教主サマの言葉は何者も従わなければならない。」
「教えって何なんだ。それに教主って・・・」
その時、ドアをたたく音がドンドンドンっと大きくなった。周りは一瞬静かになった。
「みんな、隠れて! もしかしたら教主サマの親衛隊かも!」
一行は訳も分からず奥にある道具を入れる倉庫へと追いやられた。向こうの様子はまるで見えなかったが幸い、声だけは聞こえてきた。
「ごきげんよう。フランツ博士にニーシャちゃん。実はちょっとした噂を聞きつけてね。」
「なによ。いつもえらそうに。教主サマがいなかったらただのプー太郎だったくせに。」
「チッ。まあいい。ニンゲンをかくまってないか?ルナ王国から来た奴らだ。それを聞きに来た。どうなんですかフランツ博士。」
フランツは沈黙していた。それに対してニーシャが威嚇しながら代わりに煽るように兵士に応えた。
「かくまう?て言うかニンゲンとか見てないし。」
「お前には聞いてねえんだよ!カスが!」
向こう側で物騒な物音が聞こえてきた。四人は息をひそめて状況を聞いていた。その中でアエナには選択を迫られていた。
「すごい物音なのダ。アエナ、勇者としてここはどう出るの?」
「とりあえず、ここは冷静に出る方法を考えましょ。」
「ちょっと待って。身捨てるっていうのかい?君は。」
ここで少し声を荒げたのはワタルだった。それに歯向かったのはやはりオーガスだった。
「状況が状況だろ。あれじゃ無理だ。ぼくもアエナに賛成だ。勇者は時に残忍で無いと世界は救えない。アエナ、君は間違ってない。こんな異質な奴・・・」
言葉をさえぎりもっと強くワタルは二人に当たるように話した。
「今ここで困ってるかも知れない人を放っておくのがこの世界の勇者なのか!? 僕はごめんだね。少なくとも僕は何かを変えるために君たちと旅に出たんだ。」
そう言って彼は倉庫から一人飛び出して行った。オーガスはワタルを止めようと失敗し、怒りで満ちていたが、アエナはワタルの言葉に何かハッとさせられた。それは彼女も分からなかった。ただはっきり分かることは今の自分の考えは間違っているのかもしれないと。そうしているうちにワタルがなりふり構わず表へ出て
「おい、いい加減に・・・ってあれ?」
部屋は荒らされて資料や発明品がめちゃくちゃになっていてその中でフランツ一人ポツンとうなだれて地面に座っていた。ワタルの声を聞き、振り向き顔を見るなり彼の胸倉をつかみ
「遅かったな。お前らのせいで娘は反逆者だ。連れていかれたんだよ!!教主のところへ」
フランツの眼には涙がこぼれていた。やがてやるせない気持ちになり、ワタルの胸倉をつかむのを緩めて話を続けた。
「教主は我々の救世主だった。いやそう思い込んでいたのかもしれん。こんなのただの独裁だ。なぁ、さっきの事は水に流して娘を助けてくれ。お願いだ!」
「そんな都合のいい・・・」
怒りに身を任せてオーガスが言おうとしたがワタルが止めて
「これ、直しててもらえますか。その間に助けてきますんで。ナヴィ、その人見張ってて。」
「・・・了解なのダ。気をつけて。」
オーガスとアエナはただ、ワタルの怒りと覇気に気負けしてついて行くだけだった。そこにフランツが大急ぎで駆けつけて
「待ってくれ。教主のいる教会の道を知らんだろ。 これを持って行ってくれ。後はお願いします。」
それはニーシャやフランツの持っていた時計型デバイスだった。フランツによるとそれに行き方の載った地図がGPS付きであるらしい。とても便利だ。
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