冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。
第1話:勇者の証
第一話:勇者の証
ここはルナ王国のはずれにある龍神の住まう村、ナーガ村。この村には村の守り神、龍神によって選ばれた証を持つ子供が勇者として旅立つのだという伝説があるのだという。その伝説は村中の人だけでなく王国の人間も知っている寓話として子供たちに伝えられていた。そう。これはただの気晴らしで魔王「マ・ゾール」が世界をのっとっている現状を晴らす物語にすぎないと思っていた。だが、一人の子供の誕生で世迷言ではなくなりつつあった・・・。
「この子は、この世界を救う勇者になるんじゃぞ。なのに、ああ、なんと残酷な。」
「よもや、選択の余地はありませんぞ長老。早く、勇者の訓練をさせるんだ。」
「二人とも、私たちの子供のことは私たちに決めさせてください。」
「何だ。それは、子供が女だからなのか!」
「男女に差別はありません。どちらにせよ、私たちの子に変わりありません。彼女のしたいようにさせます。世界に終わりがこようとも・・・。」
彼女が生まれた夜、長老、村長そして赤子の両親がまだ、何も知らずに寝る幼き子を起こさないように会議は朝日が昇るまで行われた。結局、両親の意見を尊重し、その場では勇者としてではなく普通の村人として育てることになった。子供には神の加護あれと王国神話の一人になぞらえ『アエナ』とした。少女、アエナ・マクスウェルは元気にたくましく成長した。男勝りではあるが女性らしく、しかし村の男にも負けずに剣術も人一倍の実力者だった。美しくもたくましく成長したアエナは成人である16歳を迎えたのであった。にもかかわらず、未だに元気有り余り血気盛んなおてんばとして知られていた。
「アエナ!ごはん出来たわよ!いい加減帰ってきなさい。」
「わかったわ。ちょっと待ってて。」
「また勝ち逃げかよ~。」
「それはあんたが弱すぎんの。オーガス。」
アエナの剣術に泣きそうになって座り込んでいる少年、オーガス・トムゼンは彼女とは幼なじみでアエナとは逆に気弱で引っ込み思案だが努力家で魔導に精通している。彼女らはアエナの母親の大きな声とともにそれぞれの家に帰っていった。この日はいつも通りの夜だった。そう、そのはずであった。家族で食卓を囲み、談笑していると外から何やら騒がしい音が聞こえる。急いで玄関を開けると王国の騎士団が無尽蔵に暴れていた。
「これは、王令である。勇者の証をもつ者を魔王の前に差し出せ!さもなくば、村すべてを焼き尽くす!」
「ほら、はやくしろよじじい。いるってことは魔王さまの心眼でわかってんだよ!」
村の長老たちが見せしめにされている。王国の騎士たちはいつもと違う黒い甲冑で辺りをものすごい形相で歩いている。彼らのほとんどの目は澱んでうつろのように感じた。私たちの家からは何を言っているかは分からなかったけど、アエナの両親は急に焦り出しアエナを家の奥の方へと避難させようとしていた。
「アエナ、家に地下壕があるからそこに隠れていなさい。」
「何でよ。私、外に出て戦うわ。だって、村一番の剣士だから!」
「そんなの、大人に任せればいいのよ。だから!」
「お父さん!、お母さん! 私はもう、大人よ!」
「違う、そういうことじゃないんだ!狙いはおま・・・。」
その時、でかい図体の男がドアを蹴破ってきた。そこから、何人かの男がぞろぞろとやってきた。やはりなにか探しているようだ。アエナは両親を守るように二人の前へ出ていった。騎士団の中でもえらそうな人が
「ここには、三人か。父親と母親は違うだろうからそこの娘を連れてこい。」
一人の男が私に近づいてきた。だけど、私はいつも何かのために護身用にダガーナイフを持ち歩いていた。いつもお父さんに怒られるけど、それが今日限りは幸いしたのだった。私ははナイフを取り出し自分より大柄な男を脅迫した。
「おお、怖い怖い。可愛いものにはトゲがあるって言うがあれ、ほんとらしいな。だがな、お嬢ちゃん。刃を向ける相手を間違えたな。」
そういって私の腹に一発くわえさせようとしたが、私の方が一枚早く動いていた。大柄には素早く背後を取る方がいい。私は男の背後につき、剣先を向け、尋問した。
「ここに何をしてきたわけ?これ以上村のみんなを気づつけるなら、あんたの首をかき切るから。」
「やるじゃん!?じゃあさ、その勇気に免じて、俺たちの目的を教えてやるよ。」
と言うと振り向きながら背後にいた私を持っていたナイフを赤子のように腕ごとごっそり片手で引っ張って壁に寄せて行って丸太のような腕で逃げられないようにして逆に私を尋問してきた。
「俺たちはある紋章がついた子供を探しているんだ。龍のようなアザっていや分かりやすいかなぁ?そういう子見なかった? もしくは君だったりしない?その右腕の包帯、怪しいし。」
「その話って子供を寝かせるための寓話でしょ。そんな話信じてるわけ?」
「それが違うんだよなぁ!」
リーダーのような人はアエナのその右腕を力強くひっぱり、右腕の包帯を強引に解こうとしていた。すべての包帯が解かれようとした時、龍のようなアザが見えた。その一瞬で謎の光が放たれた。その後、龍のようなオーラがアエナを包んでいたのであった。
「うわあ!!なんだぁ!?こりゃあ」
『お前達、私の土地を荒らし、何をしている!!ふん。さては魔王マ・ゾールの手先になり下がったか。もう良い。立ち去れ!』
声は騎士たちの脳内に響き渡り、その龍のオーラに恐れをなして騎士団全員はその場を後にしていった。
 
 村は彼らのせいで荒れ果てて幸い死者はいなかったものの、アエナの両親は意識不明の重体となっていた。アエナはなぜこうなったのかも分からず、怒りの矛先はもうどこにもいない。そのやり場のない怒りはこの村を救えなかった自分と大人たちへと向いていった。だが、アエナは怒りを抑えて村長の元へとむかった。村長はアエナの訪問にはまったく動じなかった。むしろこの時が来たかという面持ちで迎え入れ、村長はこの間起こった事の真相と彼女自身の運命について彼の知っている限りを話した。
「そう、なのね。私がその龍神から受けた証を持つ子供だったわけね。」
「そう。だけど、もはやこれはこの村だけの問題だけではない。王国もこの世界全体も侵略されているようだ。そして、君の両親はどうやら魔王による呪いを受けているようだ。だから、一刻の猶予もない。女のお前に言うのもなんだが・・・。」
「そんなの関係ないわ。証だろうが私が女だろうが。私自身、こんなこと二度と起こさせたくないもの。だから行くの。これは今の私にしかできないことだと思うの。」
村長は深いため息をつきながら、彼女の確固たる決意を曲げられないと悟り、ある所へと連れて行った。そこは龍神の眠る祠だった。祠にはきらりと光っている剣が礎石に刺さっていた。
「本当はこんな物騒なもの渡したくはなかった。だが、お前が言うなら、おまえの言う決意が本物ならこの剣、抜くことができるだろう。」
祠には剣の柄の部分が飛び出ていた。柄には龍の頭を模した彫刻がされていた。彼女はそれを両手で持ち、石から抜き出した。抜き出すと役目を終えたのか祠は砂ぼこりのように舞って消えていった。村長は自身が作った鞘をアエナに差しだしながら剣について説明した。
「うむ。それは龍神の剣。お前はこの村で一番の剣士なんじゃろ?ならばそれを善き道のために使のじゃ、さすれば龍神が力を分け与えてくれるだろう。」
アエナはそれを聞きながらその大きな剣を村長からもらった鞘に納めた。
一旦家に帰り、身支度をして一人で出かけようとしていると向こうの家からオーガスが身支度を澄ませて大荷物を背負って大慌てでやってきた。
「僕も、行くよ。君ひとりじゃ危ないよ。」
「さみしいだけなんじゃないの? ま、心強いけど」
オーガスは顔をそらし顔を掻いた。アエナが少し歩くと追いかけていったが、荷物が重くてこけてしまった。アエナは微笑みながらオーガスに手を差し伸べた。そして、決意を胸に村を後にした。オーガス自身も笑みを浮かべて走って後を追いかけて行った。
ここはルナ王国のはずれにある龍神の住まう村、ナーガ村。この村には村の守り神、龍神によって選ばれた証を持つ子供が勇者として旅立つのだという伝説があるのだという。その伝説は村中の人だけでなく王国の人間も知っている寓話として子供たちに伝えられていた。そう。これはただの気晴らしで魔王「マ・ゾール」が世界をのっとっている現状を晴らす物語にすぎないと思っていた。だが、一人の子供の誕生で世迷言ではなくなりつつあった・・・。
「この子は、この世界を救う勇者になるんじゃぞ。なのに、ああ、なんと残酷な。」
「よもや、選択の余地はありませんぞ長老。早く、勇者の訓練をさせるんだ。」
「二人とも、私たちの子供のことは私たちに決めさせてください。」
「何だ。それは、子供が女だからなのか!」
「男女に差別はありません。どちらにせよ、私たちの子に変わりありません。彼女のしたいようにさせます。世界に終わりがこようとも・・・。」
彼女が生まれた夜、長老、村長そして赤子の両親がまだ、何も知らずに寝る幼き子を起こさないように会議は朝日が昇るまで行われた。結局、両親の意見を尊重し、その場では勇者としてではなく普通の村人として育てることになった。子供には神の加護あれと王国神話の一人になぞらえ『アエナ』とした。少女、アエナ・マクスウェルは元気にたくましく成長した。男勝りではあるが女性らしく、しかし村の男にも負けずに剣術も人一倍の実力者だった。美しくもたくましく成長したアエナは成人である16歳を迎えたのであった。にもかかわらず、未だに元気有り余り血気盛んなおてんばとして知られていた。
「アエナ!ごはん出来たわよ!いい加減帰ってきなさい。」
「わかったわ。ちょっと待ってて。」
「また勝ち逃げかよ~。」
「それはあんたが弱すぎんの。オーガス。」
アエナの剣術に泣きそうになって座り込んでいる少年、オーガス・トムゼンは彼女とは幼なじみでアエナとは逆に気弱で引っ込み思案だが努力家で魔導に精通している。彼女らはアエナの母親の大きな声とともにそれぞれの家に帰っていった。この日はいつも通りの夜だった。そう、そのはずであった。家族で食卓を囲み、談笑していると外から何やら騒がしい音が聞こえる。急いで玄関を開けると王国の騎士団が無尽蔵に暴れていた。
「これは、王令である。勇者の証をもつ者を魔王の前に差し出せ!さもなくば、村すべてを焼き尽くす!」
「ほら、はやくしろよじじい。いるってことは魔王さまの心眼でわかってんだよ!」
村の長老たちが見せしめにされている。王国の騎士たちはいつもと違う黒い甲冑で辺りをものすごい形相で歩いている。彼らのほとんどの目は澱んでうつろのように感じた。私たちの家からは何を言っているかは分からなかったけど、アエナの両親は急に焦り出しアエナを家の奥の方へと避難させようとしていた。
「アエナ、家に地下壕があるからそこに隠れていなさい。」
「何でよ。私、外に出て戦うわ。だって、村一番の剣士だから!」
「そんなの、大人に任せればいいのよ。だから!」
「お父さん!、お母さん! 私はもう、大人よ!」
「違う、そういうことじゃないんだ!狙いはおま・・・。」
その時、でかい図体の男がドアを蹴破ってきた。そこから、何人かの男がぞろぞろとやってきた。やはりなにか探しているようだ。アエナは両親を守るように二人の前へ出ていった。騎士団の中でもえらそうな人が
「ここには、三人か。父親と母親は違うだろうからそこの娘を連れてこい。」
一人の男が私に近づいてきた。だけど、私はいつも何かのために護身用にダガーナイフを持ち歩いていた。いつもお父さんに怒られるけど、それが今日限りは幸いしたのだった。私ははナイフを取り出し自分より大柄な男を脅迫した。
「おお、怖い怖い。可愛いものにはトゲがあるって言うがあれ、ほんとらしいな。だがな、お嬢ちゃん。刃を向ける相手を間違えたな。」
そういって私の腹に一発くわえさせようとしたが、私の方が一枚早く動いていた。大柄には素早く背後を取る方がいい。私は男の背後につき、剣先を向け、尋問した。
「ここに何をしてきたわけ?これ以上村のみんなを気づつけるなら、あんたの首をかき切るから。」
「やるじゃん!?じゃあさ、その勇気に免じて、俺たちの目的を教えてやるよ。」
と言うと振り向きながら背後にいた私を持っていたナイフを赤子のように腕ごとごっそり片手で引っ張って壁に寄せて行って丸太のような腕で逃げられないようにして逆に私を尋問してきた。
「俺たちはある紋章がついた子供を探しているんだ。龍のようなアザっていや分かりやすいかなぁ?そういう子見なかった? もしくは君だったりしない?その右腕の包帯、怪しいし。」
「その話って子供を寝かせるための寓話でしょ。そんな話信じてるわけ?」
「それが違うんだよなぁ!」
リーダーのような人はアエナのその右腕を力強くひっぱり、右腕の包帯を強引に解こうとしていた。すべての包帯が解かれようとした時、龍のようなアザが見えた。その一瞬で謎の光が放たれた。その後、龍のようなオーラがアエナを包んでいたのであった。
「うわあ!!なんだぁ!?こりゃあ」
『お前達、私の土地を荒らし、何をしている!!ふん。さては魔王マ・ゾールの手先になり下がったか。もう良い。立ち去れ!』
声は騎士たちの脳内に響き渡り、その龍のオーラに恐れをなして騎士団全員はその場を後にしていった。
 
 村は彼らのせいで荒れ果てて幸い死者はいなかったものの、アエナの両親は意識不明の重体となっていた。アエナはなぜこうなったのかも分からず、怒りの矛先はもうどこにもいない。そのやり場のない怒りはこの村を救えなかった自分と大人たちへと向いていった。だが、アエナは怒りを抑えて村長の元へとむかった。村長はアエナの訪問にはまったく動じなかった。むしろこの時が来たかという面持ちで迎え入れ、村長はこの間起こった事の真相と彼女自身の運命について彼の知っている限りを話した。
「そう、なのね。私がその龍神から受けた証を持つ子供だったわけね。」
「そう。だけど、もはやこれはこの村だけの問題だけではない。王国もこの世界全体も侵略されているようだ。そして、君の両親はどうやら魔王による呪いを受けているようだ。だから、一刻の猶予もない。女のお前に言うのもなんだが・・・。」
「そんなの関係ないわ。証だろうが私が女だろうが。私自身、こんなこと二度と起こさせたくないもの。だから行くの。これは今の私にしかできないことだと思うの。」
村長は深いため息をつきながら、彼女の確固たる決意を曲げられないと悟り、ある所へと連れて行った。そこは龍神の眠る祠だった。祠にはきらりと光っている剣が礎石に刺さっていた。
「本当はこんな物騒なもの渡したくはなかった。だが、お前が言うなら、おまえの言う決意が本物ならこの剣、抜くことができるだろう。」
祠には剣の柄の部分が飛び出ていた。柄には龍の頭を模した彫刻がされていた。彼女はそれを両手で持ち、石から抜き出した。抜き出すと役目を終えたのか祠は砂ぼこりのように舞って消えていった。村長は自身が作った鞘をアエナに差しだしながら剣について説明した。
「うむ。それは龍神の剣。お前はこの村で一番の剣士なんじゃろ?ならばそれを善き道のために使のじゃ、さすれば龍神が力を分け与えてくれるだろう。」
アエナはそれを聞きながらその大きな剣を村長からもらった鞘に納めた。
一旦家に帰り、身支度をして一人で出かけようとしていると向こうの家からオーガスが身支度を澄ませて大荷物を背負って大慌てでやってきた。
「僕も、行くよ。君ひとりじゃ危ないよ。」
「さみしいだけなんじゃないの? ま、心強いけど」
オーガスは顔をそらし顔を掻いた。アエナが少し歩くと追いかけていったが、荷物が重くてこけてしまった。アエナは微笑みながらオーガスに手を差し伸べた。そして、決意を胸に村を後にした。オーガス自身も笑みを浮かべて走って後を追いかけて行った。
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