個性が強くて何が悪い!

小鳥 遊(ことり ゆう)

24:ビバ! 文化祭



体育祭というイベントも終わり、日常に戻った信男たちは毎日が少し退屈に思えた。

だが、彼らに待ち受けているものは学園の大イベント文化祭というものがあるのだ!!


「…その前にテスト返すぞ~。今年の2学期は行事続きで浮かれるのも無理ないが、勉強しないと大学には入れないからな。よし、じゃあ蒼井からな、順に来い。」


担任の西京 貴は現代文の教師だ。今日も普通にしている如月は普通に並び、普通にテストを受け取った。結果も普通。まあ、クラス単位で考えると中の中、ザ・平均点男である。そんな信男にきらりさんが目を光らせ点数を聞いてきた。


「なぁ、モブッチ! 何点だった??」


「俺? 57点だけど?」


「ひぇえー、でもねえ、うちも頑張ったよー。なんと、50点!! どお!? すごい?」


「へえ、すごいじゃん! 俺と特訓したおかげかな?」


「そろそろ、れんれんも返されてるころかな?」


というと連 廉がこちらを向いて帰ってきた。


「お! むらじっち! 何点だった?」


「お、おう。68だが…。今日もモブ男のおごりでおK?」


きらりがきょとんとした顔で廉を見つめながら

「うっそだろ、おめえ、まじかしこじゃん。」


きらりをなだめるように信男は

「きらりさん、こいつはそういうやつだから…。ったく、仕方ねえな。さすがに今回は昼飯じゃなくてお菓子な。」


「まあ、いいさ。他人の金でモノが食えんだからな。…そういえば天使さんは?」


たしかにれんれんの言う通り天使ちゃんが見当たらない。でも皆はあまり気にしていない様子だ。一人で何かやっているのだろうか…?と思うと何もなかったかのように教室に普通に帰ってきた。

俺は不思議に思って問いただすと顔を赤らめて


「神様だってお花摘みに行きますよ!! 悪いですか!?」


「お、お花?それってどういう?」


れんれんは俺の手に肩を置くと、首を横に振り


「それ以上、言いっこなしだ。さ、席に着こう。」


「モブッチ、デリカシーなさすぎww」


「え、ええ…。」



授業が終わり、そして今日の学業を終えた信男たちは家庭科室に集まっていった。あそこに入れば信男のハーレム御殿が待っていた。


そこには、いつも通りれんれんと天使の他にきらり、愛海、そして浮かない表情の亜莉須先輩とまさかの御笠 麗が手を振っていた。



信男は驚いて

「御笠 麗! なんでここに?」


「だってぇ、ダーリンと一緒にいたいもん!」


「ダーリンって、ウヘへ 困っちゃうなぁ。ま、来るもの拒まず! ってことでいいかな?みんな?」


みんなはやれやれといった表情を見せながら御笠を受け入れた。この御殿では彼の言葉が絶対なのだから。

空気をかえ、結城亜莉須が神妙な顔をして


「そんなことより、いよいよ文化祭なんだけどね、うちの部でも何かしないと認められないらしいのよねぇ。みんなどうする?」


「そうだぞ、でなければこの部は廃部だ。」


そう横槍を入れてきたのは担任の西京と生徒会の一人、松村 禅至が立っていた。西京が松村の肩に手を置き、


「よく報告してくれたな、えっと、松村だっけか。お前の個性<空気>は役に立つ。今後も伸ばしなさい。」


「ありがたいお言葉です。ではみなさん、頑張って。」


と言い放ち、そよ風のように去っていった。余韻の暇を与えず、肩を落として亜莉須が


「ということなのよぇ、どうしよぉ。」


亜莉須が小学生がおもちゃ欲しさに駄々をこねる前触れのような顔で全員を見つめてくる。どうするったってあの人たちの言う通り、部活としては成り立ってなかったのは事実だしなあ。ほかのみんなも亜莉須をみてたじろぐばかりだった。そこに、結城愛海が亜莉須をなだめて


「とりあえず、姉さん落ち着いて。部長だし、唯一の先輩なんだから… と言っても廃部になるのは、、困るし。」


信男も最大限のフォローを入れるしかなかった。


「そ、そうだね。みんなと一緒に過ごす、ここが俺の居場所なんだと思う。みんなでなんかやろうよ!!」

(やらねば、ならない。すべては俺のハーレム御殿存続のためだ。あの、先生といい、松村とかいうムカつく野郎をあっと言わせる出し物ををだな、誰か考えてくれよ!)


そこでれんれんが顎に手を当て


「じゃあ、モブ男。お前は何がしたいんだ? そもそもお前と亜莉須先輩の利害の一致で起きた事だろ。案はないのか?」


「…!? いやぁ、おれなんかより、ほら、手芸部なんだから女性の意見をだね…。」


「そんなこたぁ聞いてない。お前、ほんとにこの場所が好きか? この子たちのこと想ってんのか?ただ、お前は“相手や自分が好きか”どうかじゃなくて“モテている今の自分が好き”なんじゃないのか?」

二人の口論に口をはさめずにいた残りのメンバーは、ただ居心地悪そうに佇んでいた。

話題を切り替えようとして信男は口調を荒げて


「今はそんな喧嘩してる場合じゃないだろ、れんれん。部の存続がかかってるんだ。お前が意見出せよ。」

廉は立ち上がり、信男の方に近づいていって、声色は変えていなかったがどこか悲しげに


「初めにも言っておいたが、俺はお前を見守るだけだ。お前のハーレム道を見極めてる。それでも、今まではお前と二人だけでゲームしてる頃より以外にも楽しかった。…なぁ、信男。お前はいつからそんな適当になったんだ? 今のお前はただの女子収集家だぞ。」


その時、パンッと空気を切り裂くように信男の拳が廉の頬を力強く殴った。


殴った拳を見つめてハッとして、震えた右手を左手で下ろし


「…ごめん、今日はもう解散にしよう。文化祭まではまだ、1週間あるし…。ほんと、ごめんね。」


そういうと、それぞれバラバラになって家庭科室を後にした。




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