個性が強くて何が悪い!

小鳥 遊(ことり ゆう)

12:ナツ☆キャン!

待ちに待った夏休み、7月も中盤で結城亜莉須の提案により手芸部(仮)は二泊三日のキャンプ合宿を行うことにした。
もちろん、保護責任は結城先輩のお父さんにお願いしている。(とは言っても遠くのロッジで見守っているだけだ)そもそも、来てるこの敷地もお父さんが貸しキャンプ場としての土地らしい。
結城亜莉須先輩は辺りを見渡し、キャンプができそうな適地を探し、ころあいの川辺に近い木陰を指さし

「よし、ここをキャンプ地としますか!」

れんれんが心配そうに聞いてきた。

「なあ、誰かキャンプ経験ある奴いるのか?」

誰も手をあげない中、結城姉妹が手を恐る恐るあげた。

「多少は...ね?やった事あるよね。」

「まあ、子供の頃の事なので覚えているか不安ですが、いざとなれば私の能力で・・・。」

モブ男はため息交じりに

「誰も経験無いんじゃ、二人に任せるしかないよね。 お願いします。」

そして、結城姉妹の指揮の元分担して作業することにした。俺とれんれんと結城愛海さんがテント張り、亜莉須先輩とあやさんが火を起こすための枝や葉っぱ集め、きらりさんと天使ちゃんが調理担当ということで作業をしていった。

俺達テント組はなんやかんやでテントを張ることに成功した。初めてで複雑怪奇な印象のテント張りだったが、最近のものは手軽にできるようになっていたのか三つ合わせてだいたい一時間ちょっとで完成した。

 モブ男たちがテントを張っている間、調理組はバーベキューの具材を切っていた。天使月姫は華麗な包丁さばきで圧倒していた。

「どぉーよ。 私の包丁さばき。」

「ひええ、すげえじゃん。うちもモブッチのために一肌脱がないとね。」

蒲生希星はギャルとは思えない丁寧で慎重な包丁さばきで玉ねぎと格闘していた。

「もしかしてきらりちゃん、あんま料理したことないとか?」

「えっ!? あ、あるし! た、たまごやきとか・・・。」

「これからだって。練習しよ。」

「うん! うち、実ははなよめしゅぎょー? やってるんだ。だから、あいつに食べてもらうんだ。」

にこやかにきらりが悪戦苦闘するのをフォローする天使は本当に天使のような輝きのへ顔であったとモブ男は横目で感じていた。さて、残りの材木集め組は近場の森で辺りを探索していたのであった。

結城亜莉須は目を縁取るように手で覆い遠くまで見渡してはしゃぎまわっていた。

「すごいなー。やっぱりここ広いなぁ。」

「はしゃいでないで、手伝ってもらえますか?」

「相変わらず、ちょっとつめたいよねぇ。あやちゃん。」

札杜礼は枝や葉っぱを両手で抱きかかえながら冷やかな目で亜莉須を見ていた。亜莉須は少し膨れながら無言で再び枝を拾い始めた。

「・・・亜莉須先輩、どうしてマス、信男くんと行動してるんですか?」

「うーん、分かんないけど一緒にいると楽しいからかな?」

笑みを浮かべて話す亜莉須に目線をそらし、ぼそっとこぼすように
「それって好きって事じゃないですか。」

「好きだよ?」

きょとんとした顔で答える亜莉須に目だけ驚くあやは、ただただ見つめることしかできなかった。しばらくの間があった後

「如月くんは一緒にいるとワクワクする事が起きたし、私を受け入れてくれたから。私ちょっと浮いてる所あるから・・・。逆に好きにならないわけないよね。」

「そうですよね。あの人はとてもいい人です。だから、守りたいし、一緒にいたいって思えますよね。分かります。」

そしてお互いは鋭く見つめ合うも、急に亜莉須の方が噴き出した。噴き出した亜莉須に驚いたあやは戸惑いながら

「えっ、なんで?」

「間が面白くなっちゃったぁ…。ごめんね。 」

しばらくしてあやも表情が緩んで笑いあった後、談笑しながらモブ男達のいる所へと戻っていった。


「やっと火元の二人がやってきたよ。遅いよ、今まで何してたの?」

月姫がエプロン姿で母親のようにしかりつけた。

「すみません、うちの姉が方向音痴なもので・・・」

「ま、まあとにかく、みんな戻ったことだし。 バーベキューの準備しよう!」

下準備の終えた食材をバーベキューコンロで焼いていく。ジュ―、ジュ―とおいしそうな音と煙が辺りに立ち込めていく。野菜や肉はこんがり焼き色が付き始め、食べごろになった。みんなの皿に月姫がとりわけてみんなに配分した後、輪になってキャンプファイヤー予定地を囲んでいた。亜莉須は自分の皿を地面に起き、立ちあがってみんなに改まって話した。

「みんなぁ、今日は手芸部(仮)の交流キャンプに参加してくれてありがとぉ~。それじゃあ、お昼でお腹すいたことだし、いただきますしましょうか。」

亜莉須さんがせーのと声をかけるとみんな一斉に大きく元気な声で言った。

「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」

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