俺が猫で猫が俺

さくらもち

俺の猫は出来が良い(後編)

俺の猫であり今では俺の体の主、ココアは
実は買ったのではなく拾った猫である

中学2年生の上旬、珍しく外出していたその帰りのことだった。俺は自転車で
門限破りの恐怖におびえながら夜道を爆走していたのだが、ふと寝ている猫を見つける
生まれ変わるなら猫になると宣言をクラス内で既にかましてあった俺は、珍しい動かず寝ている猫を写真に収めようとスマホを取り出したのだが

「・・・写真を・・・いや門限がぁ・・・」

散々迷った末、欲望にはどうして勝てず
ホームボタンを連打してカメラを起動、
フラッシュ機能をOFFにしてゆっくり近づいた
だが俺はすぐに異変に気づく
そう、近づいて気づかないほど寝るなんて
警戒心の低い行動は野良猫ではありえない
俺は足早にわざと音をたてて猫に近づいた
だが反応はない

「・・・っ!!」

いよいよやばいと感じたのでもう躊躇せず
触って転がしお腹を露にさせると見えた景色に俺は思わず吐きそうになる


お腹を斜めに走る赤い線、そこからは
少しずつだがしっかりと血が流れていた
よく見れば大きいのは腹だけだが他にも
切り傷がいくつか見受けられ、俺は怒りと動揺でもはや門限のことなど頭から抜けていて
素早く手に持っていたスマホで獣医に連絡、
帰り道をほぼ逆走して病院へ向かった

死には至らなかったものの酷い怪我で
治るだけでも2ヶ月だと断定された
一応母親を呼んでいた俺だが、医師から
怪我の状況や預け先の話を受けたとき
母親は乗り気じゃないのに何故か俺は

「俺が育てます」

とすんなり口に出て、世話は俺がすることを条件にしぶしぶ許された
(だが、その後こってり絞られた。くっそ)

ココアに2度目に会ったときのことは鮮明に覚えている。あれほど傷を受けて人が嫌いになっているだろうという医師の見解ははずれにはずれ、少しおびえながらも俺の差し出した手に体をくっつけたのだ
まるで心から求められいる気がして思わず
当時心を偽って流れまくりな生活をしていた俺の体は涙を流した
久しい涙にうろたえながらも俺はこいつとずっと一緒にいようと誓った

そこからのココアの成長は言っちゃえばまじで凄かったと思う。怪我は1ヶ月半で治り、元気いっぱい走れるようになった
それだけではなく
朝遅刻しそうなときはふみふみと声で優しく起こしてくれたり、落ち込んでいるときはずっと一緒にいて鳴いていてくれたりして、他の猫とは違ってこう、なんというか
気まぐれではなく何かの意思をもって
接してくれているように思えた

今では俺がココアに助かっている事の方が多くなってるんじゃないかと思っているのだが
ココアにとっては一緒にいれるだけで
十分幸せならしく不満はないらしい。ということを言葉がわかるようになって知った

「またまた、誰に自慢してるんですか?」

おいおい・・・俺の顔で俺に敬語使うなよ
と思ったことをメモにかいて伝えると

「いくら外見が猫でも主ですから」

と少しにやけて照れながら穏やかに口にした
ため息の1つもつきたくなるがこれもまた
楽しいひとときなのでこれ以上言及はしない

なんだかんだ平和がいいのである

そして俺とココアの日常は続く












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