転生したら天使でした。

大橋 祐

天使という名

 天使。
 誰が呼んだのか、地球人か、はたまた天人か。
 その名は地球のみならず天人の世界でも広く浸透していた。

 天の使い。

 翼の生えた人間達はそれを気に入った。

 ……………………我は。

『我はリグレス。衰退の象徴であり、汝らの繁栄の象徴でもある』

 神はそう名乗り、あるかも分からない指を鳴らした。

『さア、魅せてもらおう。君たちの繁栄と衰退を……』

 その一言で世界が変わった。

 とある者は異能を与えられ、とある者は白い羽根のある翼が変化し禍々しい色の骨と薄い膜の翼になり、とある者は翼を片方失い、またとある者は翼が増え、そして……。

 神は嗤う。

* * *

 成り行きである。

 無論、俺に断る権限なんてないし従うしかない。

「転入生とか珍しいな」

「えー、女の子じゃないのかよ……」

「あんまタイプじゃない」

 金属と木製であろう椅子に腰掛けて俺はひたすらに下を向き続けた。

 ああ、なんでこんなことに……。

 数時間前。

 朝起きると布団の脇に綺麗に畳んである服を見つけた。

「制服みたいだな……」

 ワイシャツのような服に大きめの黒い服……ブレザー? みたいなやつにきちんとネクタイまである。

「いや、ファンタジー世界ではこんなもん見たくなかった……」

 ただ石油製のヤツや綿とは違う独特の触り心地があるソレに俺は着替えた。
 すると、扉がノックされ光を反射させるようなほんのすこし水色がかった短い白髪に桜のような色のヘアピンを前髪に留めた俺にとっての天使さんが入ってきた。

「おはよ……よくねむれた?」

「はい。ぐっすり、それでラファエルさん制服のようなものコレは……」

「制服だね」

 俺はうっかり跪いた。
 何故だ。何故、ファンタジー世界で学校に通わなければ……いや待てよ? 制服だからといっても学校とは限らない。
 もしかしたらコスプレの一種かもしれない。
 ここに来たばかり俺を慰めるために仕組んだラファエルの配慮に違いない。
 そうだそうに違いない。

「ほら着替え終わったら学校・・だからね」

 そう言って扉が閉められると俺はその場に倒れた。天井に正四面体の大きな結晶が埋め込まれてるのに気づいた。

 ああ、きっとあれが光源なんだな……そんなとこでファンタジー感出すなよこの世界妙にリアリティあるファンタジーだよな。

 そんなこんなで嫌々学校について行った俺は転入生として珍しがられた。

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