転生したら天使でした。

大橋 祐

目醒めの刻

「あ、あー、息あり。大丈夫かな」

 周囲を見渡すと少し小さめの部屋だった。

「布団……。明るいな窓か」

 寝起きの身体を立たせる。
 どうやら布団で寝ていたらしい。
 近くの窓に映った景色を見ることにした。

「うえぇぇぇぇぇえ!?」

 外は空飛ぶ人間(翼が生えてる)がいた。

 いや待て、状況整理だ。
 俺は死んで…………。
 そうか、死んだのか。

「はぁーーーー」

 何故かわからないが大きなため息が出てきた。
 まだ死んだという実感がないがこれが夢という可能性は限りなくゼロに近いだろう。

 近くの壁に背を当てそのままずるずると崩れ落ちた。

「なんだよ……コレ」

 窓の外の天使のような人間たちの翼がキラキラ光っていた。

* * *

 ……。
 …………。
 ………………。

「あ。起きた?」

「うぇ?」

 俺の思考が止まる。
 体育座りで寝てしまっていたらしい俺の目の前には天使がいた。
 透き通った短い白縹色の髪に明るい黄色の瞳を輝かせ天使は笑った。

 いやお世辞抜きに俺がみたどのアイドルとかよりも可愛かった。

「へ、いや、この、それは……」

 うまく言葉が出ない俺氏。
 おいそこ童貞乙とかいうなマジで目の前の美少女は反則級に可愛いんだから仕方ないだろ!

「ごめんね。こんなところに突然連れてきちゃって……。不安だったでしょ」

 いや、そんなことないです。と心のなかで呟いても口に出ない。
 何かが突っかかったような感覚がし口から嗚咽が漏れた。

「ほら、大丈夫。泣きたいなら泣きな。そう簡単に死なんてものは受け入れられないから」

 俺の目から流れた一滴の水を人差し指で拭い目の前の美少女は天使のような笑顔で笑った。

 その時。

 俺の中で何かが決壊した。

「こ、……ごわがっだ。ぐっ。あ゛ぁああああああ」

 泣いた。
 目の前に迫った車、死んだ時のこと、家族のこと、友達のこと、やりたかったこと。

 ぶちまけた。

 今まで憧れの異世界やら何やらで平静を装ってきた俺は心のしこりのようなものが無くなるまで泣いた。

 今思うと恥ずかしい。
 
 俺が冷静さを取り戻したのは一通り泣き終え少し眠ったその後だった。

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