獣耳男子と恋人契約
12、母には逆らえません
翌日――クッキーと散歩をしながら、今更ながらに考える。
男女が二人で遊びに出かけるのは、世間一般的に言うとデートと呼ばれるものではないかと。
そう考えると、何だかむずかゆい気がして恥ずかしい。
「ワンワン」
「ごめんね、クッキー」
考え事をしていたせいで、散歩の足取りが疎かになっていたらしい。
クッキーがまだまだ散歩したりないと言わんばかりに催促してくる。
茶色のモフモフの毛並みが最高に気持ちいポメラニアンのクッキー。
やんちゃなこの子は大の散歩好きだ。
学校の日は時間が限られてしまうため、あまり散歩が出来ない。
そのため土日はゆっくりとクッキーの散歩をするのが私の日課になっていた。
生憎、今日は午後からコハクと約束があるため遠出は出来ないが。
「クゥーン、クゥーン」
それを察しているようで、クッキーは悲しそうに鳴いた。
「大丈夫だよ、まだ時間あるからね」
「ワンワン」
途中、持参したサンドイッチとドッグフードでクッキーと一緒に食事を済ませ、散歩から帰ってくる頃にはすでに十二時半を回っていた。
そこで目にした自宅前で待つ人影はもしかしなくても……
「コハク、もう来てたの?」
「楽しみで早く来すぎちゃった」
照れ臭そうにコハクが笑うと、クッキーが警戒したように吠える。
「あ、その子がクッキー? 可愛いね」
おいでおいでとコハクがしゃがんで呼ぶと、クッキーは警戒しながら寄っていく。
クンクンと鼻をならしてコハクの手の匂いを嗅いでいる。
「ごめんね。少しだけ君のご主人様を借りてもいいかな?」
コハクとクッキーが見つめ合うこと数秒。
返事をするようにクッキーは「ワン」と一回吠えた。
「ありがとう」
頭を撫でられて警戒心がとれたのか、クッキーは気持ちよさそうに目を細めた。
警戒心の強いクッキーが初対面の人になつくのは実に珍しい。
「コハク、クッキーに気に入られたんだね。その子が初対面の人に抱っこされてる所、初めて見たよ」
「そうなんだ? 嬉しいな」
ペロペロと顔を舐められたコハクはくすぐったそうに笑っている。
犬と狐、お互い何か通じ合うものがあるのだろうか。
「桜、誰か来てるの?」
その時、クッキーの普段とは違う鳴き声を聞いて、家の中から母が顔を出してきた。
「あ、うん。今から一緒に遊園地行くんだ」
母と目が合ったコハクはいつものように爽やかな笑顔で挨拶をする。
「初めまして、桜さんと同じクラスの結城コハクと申します」
「娘がいつもお世話になってますぅ。ウフフ」
そう言いながら母は、聖母のように優しく微笑んでコハクを見つめている。
しかし私に視線を移した途端、母の眼光がきらりと鋭く光り出す。
「さ・く・ら?」
私は瞬時に悟る。この呼び方はヤバイ奴だと。
「今からデートに行くのにその格好で行くつもり?」
ニコニコと笑ってはいるが目は笑っていない。母の恐ろしい視線が私にグサグサと突き刺さる。
「そ、そうだけど」
あまりの迫力に思わずどもってしまった。
「ダメよ着替えてきなさい! コハク君、娘の準備が終わるまで上がって待っててもらえるぅ? 美味しい紅茶があるのよぉ」
私には厳しく、コハクには語尾にハートマークが付きそうな口調で喋る母によって、私達は強制的に家の中へ入れられた。
男女が二人で遊びに出かけるのは、世間一般的に言うとデートと呼ばれるものではないかと。
そう考えると、何だかむずかゆい気がして恥ずかしい。
「ワンワン」
「ごめんね、クッキー」
考え事をしていたせいで、散歩の足取りが疎かになっていたらしい。
クッキーがまだまだ散歩したりないと言わんばかりに催促してくる。
茶色のモフモフの毛並みが最高に気持ちいポメラニアンのクッキー。
やんちゃなこの子は大の散歩好きだ。
学校の日は時間が限られてしまうため、あまり散歩が出来ない。
そのため土日はゆっくりとクッキーの散歩をするのが私の日課になっていた。
生憎、今日は午後からコハクと約束があるため遠出は出来ないが。
「クゥーン、クゥーン」
それを察しているようで、クッキーは悲しそうに鳴いた。
「大丈夫だよ、まだ時間あるからね」
「ワンワン」
途中、持参したサンドイッチとドッグフードでクッキーと一緒に食事を済ませ、散歩から帰ってくる頃にはすでに十二時半を回っていた。
そこで目にした自宅前で待つ人影はもしかしなくても……
「コハク、もう来てたの?」
「楽しみで早く来すぎちゃった」
照れ臭そうにコハクが笑うと、クッキーが警戒したように吠える。
「あ、その子がクッキー? 可愛いね」
おいでおいでとコハクがしゃがんで呼ぶと、クッキーは警戒しながら寄っていく。
クンクンと鼻をならしてコハクの手の匂いを嗅いでいる。
「ごめんね。少しだけ君のご主人様を借りてもいいかな?」
コハクとクッキーが見つめ合うこと数秒。
返事をするようにクッキーは「ワン」と一回吠えた。
「ありがとう」
頭を撫でられて警戒心がとれたのか、クッキーは気持ちよさそうに目を細めた。
警戒心の強いクッキーが初対面の人になつくのは実に珍しい。
「コハク、クッキーに気に入られたんだね。その子が初対面の人に抱っこされてる所、初めて見たよ」
「そうなんだ? 嬉しいな」
ペロペロと顔を舐められたコハクはくすぐったそうに笑っている。
犬と狐、お互い何か通じ合うものがあるのだろうか。
「桜、誰か来てるの?」
その時、クッキーの普段とは違う鳴き声を聞いて、家の中から母が顔を出してきた。
「あ、うん。今から一緒に遊園地行くんだ」
母と目が合ったコハクはいつものように爽やかな笑顔で挨拶をする。
「初めまして、桜さんと同じクラスの結城コハクと申します」
「娘がいつもお世話になってますぅ。ウフフ」
そう言いながら母は、聖母のように優しく微笑んでコハクを見つめている。
しかし私に視線を移した途端、母の眼光がきらりと鋭く光り出す。
「さ・く・ら?」
私は瞬時に悟る。この呼び方はヤバイ奴だと。
「今からデートに行くのにその格好で行くつもり?」
ニコニコと笑ってはいるが目は笑っていない。母の恐ろしい視線が私にグサグサと突き刺さる。
「そ、そうだけど」
あまりの迫力に思わずどもってしまった。
「ダメよ着替えてきなさい! コハク君、娘の準備が終わるまで上がって待っててもらえるぅ? 美味しい紅茶があるのよぉ」
私には厳しく、コハクには語尾にハートマークが付きそうな口調で喋る母によって、私達は強制的に家の中へ入れられた。
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