転生鍛冶師は剣を打つ

夜月空羽

第五十七話 新しい装備

今日は久々の工房で新しい装備を作っている。
毎日虐めと言ってもいいスパルタ師匠が珍しくも休みを頂いたのでせっかくの休日を剣ではなく鎚を持って前から考えていた新しい装備を作り出す。
「よし。完成」
以前から少しずつ作り上げていた新しい装備が完成して俺は早速それを試着する。
「うん、いい感じ。どうよ? ジャンヌ」
「黒一色ね」
新しい装備を見せるとジャンヌは簡易な感想を口にする。
「そんなにヤキモチを焼かなくてもちゃんとジャンヌの分の装備も作ってあるから」
「ヤキモチなんて焼いてないわよ」
ジャンヌの言う通り、俺の新しい装備は日本のアニメに出てくる黒の剣士さんを参考に作ったものだからそう思うのも無理はない。だけど、この新しい装備の性能はチーターを超えると断言する。
「いいか? ジャンヌ。この装備はただ黒いだけの革鎧じゃない。オリハルコンを中心とした少量のアダマンタイトとミスリル、レジスト金属も含まれて俺の魔力によって自在に姿を変える優れもの。万が一に剣が手元になくてもこの通り」
ウニのように全身から棘を出す。
「近づいた敵をぶっすりと刺します。勿論防具としての防御力も保証付き。それと属性耐性も当然付与している。少なくとも灼熱竜ヴォルケーノドラゴンのブレスなら余裕で耐えられる」
「……………もう国宝級ね。そんな出鱈目な装備を作れるなんて貴方ぐらいよ」
ジャンヌは観念したかのように諦観交じりのため息を吐いた。
俺としては国宝級は言いすぎだと思うけどな。ただ単にそういう発想力がないだけでやろうと思えば誰でもできると思うぞ? 現にカイドラ先生の知り合いの鍛冶師も似たようなもん作ってたし。
後はアレだな、武器に対する愛だな。
それに関してはあの武器屋のおっちゃんも凄かった。
俺と負け劣ずの武器マニア、武器凶ウェポンマニアだ。武器を狂おしい愛している武器凶ウェポンマニアだ。武器屋のおっちゃんとは武器に関して一生話が出来る自信がある。
滅茶苦茶気も合うし、また武器について語り合いたいものだ。
「さて、お待ちかねのジャンヌの新しい装備だ。あそこに更衣室も用意したから着替えて来てくれ」
「………準備がいいわね。まぁ、わかったわ」
手渡した装備を持って工房の奥に用意した更衣室に入る。すると、少ししてジャンヌが勢いよく更衣室のドアを開ける。
「なによこれ!!」
「新しい装備です」
顔を真っ赤にして叫ぶジャンヌが身に付けているのは簡単に言えばビキニアーマーだ。ジャンヌに似合う白色のビキニアーマー。うん、我ながらいい仕事をした。
「防具としての役割がほとんどないじゃない!! あ、もしかして更に別の装備があるの?」
「そんなものはない。それで完成だ」
「なら何の役にも立たないじゃない!!」
何を言うと思えば、まったく……………。
「何を言ってんだ、ジャンヌ。それは動きやすさを重視した実用性の高い防具だ。それに攻撃を喰らわなければ何も問題はない」
「それ以前に恥ずかしすぎるわよ!! こんなの着れないわ!!」
「しょうがない。ならそれはベッドの上で使うとして………次はこれだ」
「……………似たようなものじゃないわよね?」
「安心しろ。ちゃんとしたものだ」
「…………まぁ、着てみるだけ着てあげるわ」
それを持って再び更衣室のドアを閉めるジャンヌ。暫くしてまたドアが開く。
「ねぇ、確かにさっきのよりかはいいけど、これって動きづらくかしら? というよりこれって防具なの?」
次にジャンヌが来たのは一言で表すなら純白のドレスだ。貴族や王族が社交界に着てくるドレスを少し改造して多少動きやすくしたそのドレスはジャンヌの言う通り動きづらいし、防具としての役割は最低限しかない。しかし、それは当然のこと。それは特殊な防具だから。
「ジャンヌ。その防具には少量のオリハルコンを加えていてな。近づいてくる変態貴族に痛い思いをさせることができる。使い方次第では社交界の潜入捜査で王族の暗殺もできるぞ♪」
「しないわよ!! 私は暗殺者じゃないからね!!」
「遠慮するな、ジャンヌ。お前だって気に喰わない貴族や王族が一人や二人ぐらいいるだろ? そいつにちょっとぶすってするだけだ」
「貴方にぶすってしてあげましょうか? そもそも私は家出中の身なんだから社交界には出ないわよ」
それもそうか……………。なら断念するしかないか。
「もう、まともな装備はないの?」
「待て。ならこれはどうだ? お前にぴったりのはずだ」
次に俺が渡した装備に着替えるジャンヌ。
「これはいいわね」
次にジャンヌが来たのは青いドレスの上から甲冑を身に纏った……あの有名な剣の英霊さんの鎧だが、ジャンヌが着れば完全コスプレだな。けど、同じ金髪の美少女だからそこらのコスプレより遥かに上だけど、アホ毛がないのが惜しい。後は胸は流石に無理があるか。
あの慎ましい胸とジャンヌの胸は流石に比べたら可哀想だな。あ、胸と名前繋がりで聖処女の装備を作ればよかったな。なんで気付かなかったんだ。
「どうしたの?」
「いえ何も。騎士王様」
「誰が騎士王様よ」
しかしこれではいざという時、俺が戦えない。おかしくて。これはコスプレプレイとしてベッドの上で活躍してもらうとしよう。
というわけで俺は今度こそ本命を渡した。
ジャンヌに似合う白を基調とした革鎧。その上に白銀に輝く胸当てと籠手、更にはメタルブーツ。オリハルコン、ミスリル、アダマンタイトの三つの鉱石を組み合わせて完成させた俺の自慢の作品。機動力は俺の防具より劣るも防御力と耐久力は上だ。
ジャンヌは俺と違って下手な小細工を使うよりも正々堂々と正面から戦うスタイルだ。だからそれに見合う装備を作ってみた。
「どうだ? 自慢の一品だ」
「凄いけど……どうせなら一番最初に出して欲しかったわ」
「そんなことをしたら他の装備は着てくれないだろ?」
「当然よ」
それがわかっていたから敢えて最後にしたんだ。ジャンヌを弄れないから。
「さてジャンヌ。新しい装備も渡したところで一つ提案ある」
「なにかしら?」
灼熱竜ヴォルケーノドラゴンにもう一度挑戦する気ないか?」

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