転生鍛冶師は剣を打つ

夜月空羽

第五十五話 修行と癒し

ジエン流の使い手であるシジマさんに弟子入りして俺は毎日剣術の修行に明け暮れている。
「いいか? 『剣心一体』は確かに最上位スキルだ。そのスキルを保持しているだけで素人だろうが一流の剣術が使える。だが、超一流に届かせる為にはてめぇの死に物狂いの努力が必要だ」
「ですが師匠! このスキルは身体への負担が酷いんですが!」
「そんなもんお前がスキルに振り回されて無駄な動きをしているからだろうが。スキルを完全に使いこなすことが出来れば身体の負担なんてありはしねぇ」
両手剣をまるで片手剣のように扱う師匠の剣技は無駄な動きが一切ない。その上一撃一撃が重い為に俺は防戦一方。なんとか師匠の攻撃を防げている状態だ。
「ジエン流は実戦から生まれた剣術だ。その為に一対多数を得意とする。敵の懐に素早く潜り込む速さもそうだが、敵を一撃で仕留める重さも必要だ。無駄な動き、一瞬の判断が戦場じゃ死を招く」
「はい!」
「てめえは素質もスキルにも恵まれている。だから手取り足取り教えるつもりは毛頭ねぇ。殺さねぇ程度に手は抜いてやるからジエン流の技を俺から盗んでみろ。弟子」
「上等ですよ! 師匠!」
意気込むも本当に師匠は強い。一応スキルを発動させてはいるも一撃どころかかすり傷さえ与えるのも難しい。いくら剣の最上位スキルでも使い手である俺が未熟なせいでスキルの力を存分に発揮することができない。
「ボケっとすんな!」
「あぐ!」
師匠の喝が俺の横腹に入る。
「スキルも魔剣も好きに使いな。それで俺に一撃でも与えることができたら今日の修行は終いだ」
「……………言ったな、師匠よ」
にやり、と笑みを浮かばせる俺は刀を鞘に納めて聖女様の護衛の依頼の際に七つの欲セブンズ・ディザイアから頂戴した魔剣を両手に握る。
グルンドが持っていた魔槍を一度鍛冶場で溶かして短剣へと形を変えた。けれど、魔剣の力は衰えることなくむしろ俺のもう一つのスキル『精魂鍛錬ソウル・ジィスト』によってパワーアップした風の魔剣とジャンヌが倒したベネーノの持つ毒の魔剣。二つの魔剣を握りしめる。
「喰らえ! 毒の竜巻!」
風の魔剣で竜巻を起こし、その竜巻に毒の魔剣から麻痺毒を混ぜ込むことで生まれた毒の竜巻。自然災害である竜巻だけでも脅威なのにそこに触れただけで全身を麻痺させる毒まで加えた少しばかり大人げない魔剣のコラボ。
普通なら逃走一択の必殺技に師匠は両手剣を構える。
「ジエン流。斬魔剣」
ズバッと師匠は毒の竜巻を一刀両断した。
「うそっ!? 化物かよ!」
「誰が化物だ。対魔法用の剣技があって当然だろうが」
当たり前のように言うが、師匠よ。普通に考えて竜巻は斬れないって。常識外れもいいところだぞ? 今更ながら俺はとんでもない師匠を持ってしまった気がする。
けど、その常識外れのその先に俺の求めている強さがある。
「そら、いつまでも呆けてないてさっさと来な」
「応ッ!」
結局その日は一度も師匠に傷一つ与えることが出来なかった。


「ただいま~」
「お帰りなさいませ」
師匠にズタボロにされて家に帰ってきた俺をいつものようにセシリア達が出迎えてくれる。
「今日もまた随分と………治療の方は?」
「ああ、いいよ。師匠に止められているから」
自然治癒力を高める修行の一環で治療薬の類は禁止されている。だから簡単な消毒と包帯のみだ。
実戦で治療薬を飲ませてくれる敵はいないから生物が持つ自然治癒力を高めて傷の治りを早くさせるらしい。ズキズキと痛むけどこれも修行と思って我慢する。
「では入浴になさいますか?」
「ん~今、風呂に入ったらそのまま寝てしまいそうだし、少し休んでから入るわ」
「わかりました。それでは暫くしたらお部屋をお尋ねしますね」
「ああ、頼む」
後に起こして貰うように頼んで俺は自分の部屋に向かう。
「あ~つかれた~癒しが欲しい~」
一休みしたら今日もジャンヌでたっぷり癒されようかな? そう思ってジャンヌの部屋を横切ると、ジャンヌの部屋の扉に張り紙が張られていた。
『今日は無し! いい加減に休ませて!!』
そう書かれた張り紙を見て、俺、少しだけ反省。
任務が終えてから盛った猿のようにやりまくっていたから流石のジャンヌも怒ってしまったか。
それとも先日、リリスと一緒に弄りまくったせいだろうか?
まぁ、流石に今日は無理そうだな。
渋々と部屋に向かうとシュティアとばったり出くわした。
「あ、お帰り」
「ただいま」
相変わらずいつ見ても立派なおっぱいですね。シュティアと会う度に俺の視線は顔ではなく胸にいってしまう。ジャンヌという可愛い恋人がいるにも関わらずそこに目がいってしまうのは男の性だ。
「えっと、そんなに見つめられると照れちゃうんだけど……………」
「お気になさらず」
即答する俺に困ったように笑うシュティアの双丘に俺は顔を埋めてみる。
「ト、トムくん!?」
「おー、これはなかなか。素晴らしい心地の良さ」
魔乳を顔全体で堪能する。
柔らかくて弾力がある。例えると言うのなら低反発枕だろうか? それとも高級クッションだろうか? どちらにしても素晴らしい居心地だ。
すると、シュティアは俺の頭に腕を回して抱きしめてくる。
「よしよし。そんなに疲れたの? 一緒に寝ようか?」
まるで子供をあやすように言ってくる。
そういえば牛人キャトルは温厚な性格だって奴隷商が言っていたな。だからだろうか? 疲れ切った俺を甘やかしてくれるのは。俺はそんなシュティアに。
「うん」
存分に甘えることにしました。
手を繋いで一緒に部屋に入って汗まみれの服を着替えさせてくれて、ベッドに入って俺を包み込むように抱きしめてくれる。牛人キャトルは体温も高いのか、シュティアの身体は温かくて凄くポカポカしてくる。
年上のお姉さんに子供のように甘やかされるってこんなにも癒されるもんだな……………。
ぎゅって抱きしめても、その立派な双丘を揉んでも、シュティアは慈愛に満ちた微笑みのまま俺の頭を撫でてくる。
……………僕、新しい扉を開けてしまいそう。
もし、子供になれる魔法の薬があればそれを買ってその時は存分にシュティアもしくはリリス。二人のお姉さんキャラに甘えるのもいいかもしれない。
そんなことを考えている内に瞼が重くなってきて、睡魔が襲ってくる。
もう少しシュティアの身体を堪能したい気持ちもあるけど、それ以上に俺の身体は睡眠を欲している。俺は抗えない睡魔にその身を委ねて眠りにつく。
「お休み」
最後にその言葉が聞こえた。





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