転生鍛冶師は剣を打つ

夜月空羽

第十三話 最大の壁

ダンジョン。それは太古の昔から存在されていると言われている未知の魔窟。
その魔窟は数多のモンスターが住みつき、また階層事に地形や環境、モンスターの強さも変化する。下の階層に降りれば降りるほどにその脅威は増してそれが牙となって襲いかかってくる。
一見、恐ろしい場所とは思うもそれと同じくらいに未知と資源に溢れたところでもある。
まだ誰も知らない未知の世界。一攫千金ともいえるほどの財宝。
危険とわかっていても人々はダンジョンに魅了されたかのように未知に挑戦し、探求し、金銭を得ようとダンジョンに潜る。
「というわけで目的は六階層にある鉱山エリアだ」
「何がという訳よ………………………」
都市にあるダンジョンの入り口前でジャンヌが半眼で俺を見てくる。
「鍛冶に使う鉱石を集める為にはダンジョンの六階層にある鉱山エリアで採掘した方が良いって先生からアドバイスを貰ってな。でも俺一人じゃ厳しいから誘ったってわけ」
一人でモンスター退治と採掘は無理があるから俺は人数を集める為に声をかけた。
「それはわかるけど………………」
ちらり、とジャンヌは隣にいるテイクを見るも本人は空笑いする。
「悪いな、テイク。他に声をかけれる奴がいなくてな」
「ううん、気にしてないよ。それに僕も近い内にダンジョンに潜る予定だったからむしろちょうどよかったよ」
良い奴だ。上手くいけば報酬として剣を打ってやろう。
まぁ、テイクは俺が誘ったからいいとして……………………。
「どうしてあんたまでいるの? お兄様」
「誰が兄だ」
俺が声をかけた人以外にジャンヌの兄貴が当然のようにここにいる。
「私は無謀にもダンジョンに潜ろうとする愚か者達をフォローするように講師から頼まれただけだ。勝手な行動は慎んでもらう」
ふーん、へぇー、ほぉー。
なんか何度も練習したかのような台詞に俺はリリスに耳打ちする。
(なぁリリス。やっぱり妹が心配でついてきたのかな?)
(恐らくはそうかと。私も弟や妹がいますからその気持ちはわかります)
(やっぱりそうか………。素直じゃないな)
(はい。正直に妹が心配と仰ればよいのに)
「何をコソコソと話している? まぁいい。それよりもダンジョンに入る前に貴様等に聞きたいことがある」
「なんすっか?」
「なんでしょうか? お兄様」
「貴様等。同棲しているのは本当か?」
「そうですけど?」
ジャンヌの兄貴の質問に俺は当然のように返したらジャンヌが顔を真っ赤にした。
「お、お兄様! た、確かに同じ部屋で寝泊まりしてはいますが別にやましいことなど何も!」
「そういう問題ではない。仮にも淑女なら淑女らしい振る舞いを常日頃から意識するのは当然のこと。貴様も我がフィルスト家の娘なら異性と同じ部屋で寝泊まりするなどと破廉恥な行為はするものではない。そもそも貴様は昔から」
妹にくどくどと説教する兄にジャンヌはどんどん肩幅が狭まっている。
兄妹の姿に俺達は微笑ましく見守る。
初めて会った時は冷たい印象があったけどやっぱり妹のことを大切にしているいいお兄ちゃんじゃないか。男のツンデレは需要はないけど。
「ね、ねぇ。本当に一緒の部屋に?」
「ん? ああ、美女美少女二人と一緒の部屋は楽しいぞ? 昨夜もなぁ?」
「はい」
「うわぁ………………………」
何も妄想したのか顔を赤くして童貞丸出しの反応をするテイクだが別段そういうことをしていないから俺も童貞で昨夜もただゲームで盛り上がっただけの話だ。
負けず嫌いのジャンヌに夜遅くまで付き合わされたし。
そもそも一緒の部屋に住んでいるのもいざという時の為に近くにいた方がいいからだ。
貴族や王族が通う学院なだけあって警備は厳重だけどこの世界は現代社会と違ってセキリティが甘い上に貴族や王族が権力を振るって何かしてくるかわからない。
下手に逆恨みでもされたら面倒だから決闘を申し込んできたあの先輩を見せしめにして俺がどれだけ危険な奴か教えたから下手に手を出す輩は減ったとは思うけど用心に越したことはない。
ジャンヌにもそう説明して一緒の部屋に住むことを了承して貰った。
まぁ、美女リリス美少女ジャンヌと同じ部屋で過ごす空間も悪くはない。
いずれはラッキースケベ的イベントが落ちてこなものか…………。
そんなことを思っているとジャンヌの兄貴の視線が俺に向けられた。
「ホウキ・トム。万が一に妹を傷物にでもしたその時は私自らの手で貴様を処断する。そのつもりでいろ」
目がマジだ……………。この兄ちゃんマジで俺を殺す気だ。
そこは責任を取って嫁にしろ。ではないの?
ジャンヌさえよければ俺は何時でもウェルカムだが……………よし。
「その時は責任を持って妹さんを俺の嫁に――――」
シュバ、と前髪が少し切れて宙を舞った。
血の気が引いていく俺の前には抜剣して殺気を迸らせているジャンヌの兄貴がいる。
「わかったか?」
「イエス、マム」
この兄ちゃん絶対シスコンだ。むしろ妹が好きすぎて変にこじれたんだきっと。
ジャンヌルートの最大の壁はこの兄貴シスコンだ。
「さて。それでは隊列を決める」
それからジャンヌの兄貴が隊列を決めてダンジョンにおける注意時点を聞かされた後に俺達は鉱石を求めて六階層にある鉱山エリアを目指す為にダンジョンに潜る。

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