転生鍛冶師は剣を打つ

夜月空羽

第五話 魔法適性

「まったくいつまで寝ているかと思って部屋まで来てみれば、どうして汗まみれになっているうえに一睡もしていないのよ!?」
「だから悪かったってふぁ~」
つい熱が入って徹夜で剣を打ってしまったことにジャンヌはぷんすかと憤っている。
そして徹夜して途中から妙なハイテンションになって出来上がった剣がコレなんだよな……………。
俺の腰には神様から貰った刀とは別に剣身が波のようにうねっている剣が今朝がた出来上がったばかりの第一号の剣。
本当はもっと綺麗な剣を作るつもりだったけどどうして俺は途中からこんな剣を作ってしまったんだろう……………? まぁ、こっちの方が恰好よくねぇ? と深夜テンションで作っちまったし、初めてでもあったから仕方がないと言ったら仕方がないのだけど。
「妙な剣も増えているし、貴方っていったい何者なの?」
「鍛冶師になって剣を打ちたいごくごく普通の人間だよ」
疑いの眼差しを向けてくるジャンヌに俺はそう答える。
神様から貰った工房のことを話しても信じてくれるかどうかわからないし、見せるにしても今は試験の事に集中させたいしな。ネタバレは試験が終わってからでもいいだろう。
それよりも俺はせっかく打った剣の試し斬りをしてみたい。
「依頼内容ってなんだっけ?」
「ゴブリンの討伐。特にここ最近はゴブリンの動きが活発になっているから注意してくださいって受付けの人にも言われたでしょうが」
「ああそうだった」
俺は日々の生活費を稼ぐためにジャンヌと同じ職業である冒険者となって現在森の中を歩いている。討伐系の依頼をしつつ実戦で剣の腕も磨ける一石二鳥の依頼を俺達は受けた。
ふふふ、我が剣の錆にしてくれる………………。
「知っているとは思うけどゴブリンは個体では弱いけど集団で襲われたら厄介よ。ゴブリンだからといって油断しないでよ?」
「はいはい。そっちこそ油断してゴブリンに捕まってく、殺せ的な展開になってゴブリンに陵辱されないようにな」
「されるぐらいなら舌を噛み切って死んでやるわ!!」
そういうお約束展開もちょっとばかし見てみたい気持ちはあるけど、万が一にそんなことになったらこのお嬢様なら本気で舌を噛み切りそうで怖いな。
そんなことを思っていると不意にジャンヌが動きを止めた。
「いたわ」
声を潜めて指でゴブリンがいる方を指す。そこには確かにファンタジー代表のモンスターであるゴブリンがいた。
ゲーム通りの姿だな。本当に皮膚が緑色だ。
ゲームと同じ小学校の低学年ぐらいの背丈で全身が緑色の人型モンスターが三体いる。
一応武器らしい武器は持っているけど全部ボロボロだ。俺が打った剣よりも切れ味が悪そうだ。
「どうする?」
これが俺にとっての初めの実戦。命のやり取りだ。
殺さなければ殺される。俺がいるこの世界はそういうところだ。だからまずは先輩冒険者であるジャンヌの意見に耳を傾ける。
「…………………左右から挟む込む形で挟撃するわ。私が弓矢を持っているゴブリンを倒すから貴方は槍の方をお願い。残りの一体は二人で倒すわよ。挟撃の合図は私がするわ」
「了解」
頷いて応じる。
俺とジャンヌはゴブリンに気づかれない様に身を潜めながら移動する。幸いにもゴブリン達はこちらに気づかずに談話をしている今がチャンスだ。
「ふー、はー」
緊張で手汗が出てくる。それはそうだ。モンスターとはいえ現代社会ではまずない殺しを経験するんだ。緊張しない方がどうかしている。
それでも殺るしかない。じゃないと俺が死ぬ。
俺は手汗を拭って剣を手にする。
「いくぞ、波切り」
第一号の剣、波切りを持つと突然気持ちが昂る。つい今しがたの緊張などどこかに吹っ飛んで行った気分だ。そしてジャンヌの合図と共にゴブリンに奇襲する。
「ギッ!?」
突然に姿を現した俺達に驚くゴブリンだが反撃する暇を与えずジャンヌは弓矢を持ったゴブリンに剣を突き刺して殺した。
俺も慌てふためいている槍を持ったゴブリンに目掛けて剣を振り下ろす。
「ギャ!?」
左肩から右横腹に赤い線を走らせ絶命させると俺はすぐさま最後の一匹であるゴブリンに迫る。
剣で迎撃しようとしてくるも俺はそれを剣で受け流して接近、切断。
ゴブリンの首と胴を切り捨てた。
戦闘が終えると不意に昂っていた気持ちが消えた。
「お疲れ様。後は証拠品である耳をそぎ落として他のゴブリンを探しましょう。あ、魔石の回収も忘れずにね」
「あ、ああ…………」
さっきの自分の妙な感覚に疑念を残しながら俺は討伐証拠であるゴブリンの耳を斬って袋に入れて胸部から魔石と呼ばれる石を取り出す。
それからもジャンヌと共にゴブリンを討伐するも戦闘の際には妙に気持ちが昂った。
昨日ジャンヌと手合わせした時にはならなかったのに、いったいどういうことだ?
疑念を抱きながらも無事にゴブリンの討伐は終えた。
「さぁ、依頼達成の証拠を持って帰りましょう」
証拠品であるゴブリンの耳を持って帰る。その時だった。
俺達の背後からズシン、と思う足音が聞こえたのは。
背後抜振り返るとそこには二メートルはある豚顔のモンスターが姿を現した。
「オーク!? どうしてオークがここに!?」
オークの存在に驚きを隠せないジャンヌ。するとオークはジャンヌをじっと見ると急に鼻息が荒くい始めた。
「ブフ―ブフー」
何かに興奮しているオークにジャンヌは何かを察して一歩後退した。するとオークは二歩前進する。何に興奮しているのか、そんなの見れば一目瞭然。
このオークはジャンヌに性的に興奮している。
まぁ、オークの気持ちはよくわかる。ジャンヌほどの美少女に欲情しない方が男としておかしい。
「よしジャンヌ。任せた」
「助けなさいよ!!」
「いやだってお前に興味津々じゃんか、このオーク。相手してやれよ」
「無理! 近づきたくもないわ!! 代わりに倒して!」
「人を見かけで判断したらいけませんってお母さんから教われなかったのか?」
「あれは人じゃなくてモンスターよ!!」
ごもっとも。
「ブモォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
冗談を言い合っていると痺れを切らしたオークがジャンヌに向かって駆け出す。
口から涎を撒き散らし、興奮しきったあの顔はまさに強姦魔と呼んでもいい顔だ。豚顔だけど。
「ひっ!」
そんなオークにジャンヌは本気の悲鳴を口から漏らす。
しょうがない。と俺はジャンヌに代わってオークの相手をしようと思った矢先。
「【火の精霊よ、我が呼び声に応じてその力を貸し賜え。炎をここに。炎弾となって眼前の敵を焼き払え】」
ジャンヌはオークに手を向ける。
「【フレイムボール】!」
「ブモォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?」
ジャンヌの手から放たれた炎の玉はオークに直撃すると炎はオークの全身にまで広がって火達磨になる。炎に包まれながら悲鳴をあげるオークだがその悲鳴は徐々に弱まりオークは地に伏せて絶命した。
「魔法…………」
初めて見た魔法という超常現象に目を瞬かせる。
「ジャンヌ。剣だけじゃなくて魔法も使えるのかよ」
「誰だって魔法は使えるわよ。誰だって四属性のどれかに最低一つは適性を持っているのだから」
ジャンヌの話によると魔法を行使する際は精霊に魔力を支払うことで使えることができる。
基本的に火、水、風、土の四属性のうち最低でも一つは適性は持っている。ジャンヌの場合は火の属性に対して適性を持っている為に火の魔法は使えるもそれ以外は属性は使えないらしい。
しかし、火に属する魔法は使える。熱魔法とか。それ以外に例外として稀にその四属性に当てはまらない魔法も存在する。
「俺はどんな魔法が使えるのだろうか……………?」
「それは調べてみればわかるわ。冒険者ギルドに戻って測定して貰ったら?」
「おう。楽しみだな」
そうして俺は期待に胸を膨らませて依頼達成の報告も含めて魔法の適性を調べて貰った。
その結果。
「えっと、ホウキ・トムさん。貴方の魔法適性は召喚魔法です」
妙な水晶に手を当てて調べて貰った結果。俺の魔法適性は稀にある魔法の一つだった。
よかった。異世界転移・転生もので一切魔力がないとか、魔法が使えないとかじゃなくて。
「召喚ってことは何かを召喚して使役する的な?」
それはそれでいいな。召喚するものによっては楽ができる。
すると、受付の人はどこかぎこちない笑みを見せながらその魔法の詳細を教えてくれた。
「その通りなのですが、召喚魔法は特殊な魔法のせいか一度発動したら二度と使えない欠陥魔法なのです………………………」
「え?」
「おまけに何が召喚されるかは全くのランダムです。あ、召喚魔として使役は出来ます…………けど」
「けど?」
「過去、街中にドラゴンを召喚してしまって街を半壊させて多額の借金を背負った冒険者もいるようですのでどうか、都市の外で召喚してくださいね?」
「わ、わかりました…………」
受付の本気マジの忠告。
俺は一度しかつかない上に何が出てくるのかわからないガチャ、召喚魔法に適性があったことに俺は何とも言えない気持ちになる。
そんな俺にジャンヌは肩に手を置いて慰めてくれた。

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