異世界最強の英雄は七人の竜使いでした

えむしすてむ

第三幕 金髪騎士野郎は大体イケメン


一つだけ言えることがある。
眼前に広がる景色は、明らかに俺が居た場所とは異なっていた。
しかもその場所が夢に見た丘の上と来た。
状況がいまいち読み込めずに立ち尽くしていると、後ろから金属が軽く擦れる音がした。

「貴様、何者だ。入国手続きはしてあるのか?」

気付いたら俺の首元に剣の切っ先が突き付けられている。

「うわっ、ちょっとまて!って言うか、誰だお前!ってうわっ!」

俺は突然の事に慌てふためき、尻餅をついた。
そのまま声が聞こえた方を見上げると、金髪でショートヘアーの青年が剣の切っ先をこちらに向けている。
瞳が澄んだ水色をしており、風貌からして恐らく外国人だと予想できた。
て言うか何だこいつ、金髪騎士のコスプレイヤー?

「何者だと聞いている。怪しいな、今すぐ此処で切り捨てた方が良いか?」
「それと、何故それを持っている。貴様テイマーか?」

俺は言われて自分があの赤い石を持っている事に気付いた。
それもそうだが、気になる単語が金髪騎士から出てきた。

「テイマーって何だ?てか、お前これが何なのか知ってるのか!?」

金髪騎士は腕を組むと、しばらくの間俺を睨み付けるように見つめ黙りこんだ。
その間、俺はどうしていいかわからず困惑していると金髪騎士はようやく喋りだした。

「ふむ、どうやら本当に何も知らないみたいだな。まぁいい、いずれにせよ貴様は連行する。我がアラスタ領に侵入する奴は王女ユリア様の元へ審問賭ける決まりになっているんだ。」
「それに、貴様が信用に足るのならユリア様がその石について詳しい事を説明して下さるだろう。あの方はそう言うのに詳しい」

俺は帰る手段も分からなければ、この状況下で抗うことも出来ず、黙って連行される他無かった。
それに、この石の事について教えてくれるのなら都合が良い。
ダメ元で帰る方法も聞いてみるか。

金髪騎士野郎が先導して俺を誘導する。
丘の上から城まではやはり距離があるらしく、丘を下り森へ入り、林道をひたすら歩いた。
しかし金髪騎士の歩くペースが異常に速く、俺も付いていくだけで精一杯だ。

「お、おい...ちょっと待ってくれ...早ぇよ...」

俺は息が上がって両手を膝についてゼェゼェ言っている。
その光景を見た金髪騎士はフンッと鼻で笑う。

「おい、大丈夫か?まさかそこまでヘタレだとは思わなかったぞ」

うっせ。と頭の中で文句を言ってやった。
だが金髪騎士は俺を気遣ってくれているのか、ある提案をしてきた。

「近くに湖畔がある。そこの水は飲めるから寄っていくか?」

何だコイツ。意外と悪い奴じゃない。
そろそろ喉も渇いていたので、提案通り湖へ寄らせて貰う事にした。

しばらく森をさ迷うと目的の湖に到着した。
そしてその景色を前に俺は目を奪われている。
森に囲まれた湖畔。水は澄んでいてとても綺麗だ。
暖かな日差しが差し込んで湖が光を反射し、キラキラと輝いている。

絶景だった。
俺はその水で目一杯喉を潤し余韻に浸っていると、一つ気付いたことがあった。
そう言えば、こいつの名前聞いてなかったな。

「なぁ、そう言えばお前名前なんて言うんだ?」

そいつは再び腕を組み俺を観察して暫く黙っていたが、やがて口を開いた。

「人の名前を聞くときはまずは自分から名乗るのが礼儀だろう?」

最もだ。
俺は軽く咳払いすると、自己紹介を始める。

「俺は五十嵐 隆二。延原町から来たんだけど、知ってるか?」
「知らん。何処そこは」

流石に地名まではわからないようだったが、金髪騎士は続けて自己紹介を始めた。

「まぁいい。お前が名乗ったのなら、俺も名乗ろう。レイル・アルシェだ。アラスタ王国の騎士団に所属してる」

ん?アラスタ?何処かで聞いたことがあるフレーズだな。
しかし見た目通りここは日本じゃないのか。
俺が此処に来たあの現象を考えると、そもそも地球なのかすら疑わしかったが。

と、そこで一つ疑問に思う。
何でこいつ、日本語理解して喋ってんだ?
此処が日本かどうかは兎も角、日本語話してる時点で此処が地球と言うのは明らかになった。
なのでもう一つ質問をしてみる。

「延原町は知らないんだよな?じゃあ日本は知ってるだろ?」
「知らん」

は?こいつ、俺をからかっているのか?

「いや、真面目に聞いているんだけど」
「知らん物は知らん。お前の方こそ此処がどこだかわからんのだろう?聞かずともお前を見かけたときの反応とその訳分からん服装で察しは付く」

俺的にはわけわからん服装と言えばお前の方だろと言いたかったが、口にしたらまた黙りこんで面倒くさそうだったので心の中に留めておいた。

「まぁ、それはそうだけど...」
「我々からしてみればその方が理解に苦しむんだがな。ここ、アラスタは世界三大国家の一つに入っているんだぞ」

おかしい、レイルが嘘を言ってる様には思えなかったが、それだと日本語通じるのが辻褄合わない。

「まぁ、貴様が何処から来たのかはこの際不問にしておくとして、兎に角ユリア様の元へ連れて行かなければならない。それに、その日本と言うのは分からないが、ユリア様なら何か知っているかも知れんぞ」

何にせよそのユリアとか言う王女に会わないと何も進まないな。
湖畔で軽い休憩を済ませると、すぐさま城へ向かって歩き出した。

湖畔を後にして森を抜けると城が見えた。
だがおかしい。森を抜けたこの場所は崖になっていて、下は海だ。その向こう側に孤立した陸地があり、そこに城が建っているのだが問題は...橋がない。
いや、この構造で橋が無いっておかしいだろ。

「おい、どう渡れって言うんだ。空でも飛べってか?」
「何を当たり前の事を言ってるんだ。飛ぶに決まってるだろう」
「・・・・・」

此処に来てから色々と驚かされたが、ここまで来ると最早笑えてくる。
飛べだって?仮にこの世界に魔法があり、金髪騎士野郎が魔法で飛べたとしても、俺は飛べないんだが?

すると、レイルは俺が居る方向とは逆の方向を向いて叫び始めた。

「グランガレオス!!」

レイルが叫ぶと何も無かった筈の空間に、突如として緑の鱗に鎧を着たドラゴンが音もなく現れた。

「どわっ!何処から出てきたんだ!?つーかドラゴン!?」
「何だ貴様、ドラゴンも見たことないのか?」
「あるわけねーだろ!」

グランガレオスと呼ばれたドラゴンが喋り出す。

「五月蠅いぞこのガキ。審問に賭ける前に喰ってやろうか?」

まるで地響きがしているかと錯覚するような、内臓に直接響いてくる声だった。
俺はその迫力を前に、言葉を詰まらせた。

「よせ、グランガレオス。審問が下る前にお前がコイツを喰ったら俺が罰せられる。」
「ふんっ、相変わらず冗談の通じない奴だ」

そう言うとグランガレオスは背を低くしてうつ伏せ状態になる。
グランガレオスの金の装飾の着いた鞍にレイルが跨がると、俺に向かって顎をしゃくった。
乗れって事か?

俺もグランガレオスの鞍に跨がるとレイルが俺に「しがみついていろ」と言うので、レイルの腰に手を回してしがみついた。
レイルが大声で叫ぶ。

「飛べ!グランガレオス!」

するとグランガレオスは物凄い風圧と共に巨大な翼をはためかせ舞い上がる。
その途轍もない風圧に周りの草木が吹き飛ばされそうだった。

俺は始めて空を飛んだ。
飛行機すら乗ったこと無かったのに、まさか空旅デビューがドラゴンになるとは夢にも思わないだろう。
ちょっぴり感動と興奮ではしゃぎそうになって、思わず声を出す。

「うおおおぉぉぉ!!」

しかし、森と城の間はそこまで離れている訳でも無かったので感動の空旅はあっという間に終わってしまった。
城門前に着くとグランガレオスは再び姿を眩まし消える。
そこには門番らしき二人組が居てレイルは門番に軽く会釈すると門番も無言で敬礼を返した。

門が大きな音を立てて開き、中に入ると豪華なシャンデリアが吊されたエントランスホールがあった。
そのエントランスホールを抜けてエレベーターで最上階まで登って行く。

レイル曰く、このエレベーターは魔力が原動力となっているらしい。エレベーターに運ばれていると、ふと気付いた事があり俺はレイルに聞いてみた。

「てか、お前ドラゴン使えるんだったら最初から飛べよ」
「そうしたい所なんだが、領内のパトロールも兼ねてるからそうもいかんのだ。現に貴様の様な不審人物を見掛けた訳だしな」
「なるほど、そう言う事かよ。最後のは余計だけどな」

目的の階に到着したようで、エレベーターの扉が開くと其処には一際豪華な装飾が施された巨大な扉が佇んでいた。

「貴様はそこで待っていろ」

レイルが扉を叩き、中へ入っていく。
暫く待っていると再び扉が開き、レイルが出てきて言った。

「着いてこい。貴様を審問に賭ける」

俺は半ば緊張の面持ちで中に入った。
皇室と呼ばれるその場所は全体的に広く、奥はガラス張りで海を一望できる造りとなっていた。
そのガラス張りの手前に、王女ユリアらしき人物が机越しに座っている。
俺はレイルに連れられ王女ユリアの前に立たされた。

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