異世界最強の英雄は七人の竜使いでした

えむしすてむ

第一章 序章 夢の記憶



貴方は、ドラゴンという物を信じるだろうか?
ドラゴンとは、火を噴き大きな翼で空を飛ぶ、西洋より古く伝えられているモンスターである。
多くは神話や伝承などで登場するが、そう言った話は何もモンスターの話だけではない。

それらには、やはり英雄譚も欠かせないと言う物だ。
例えば、巨悪のドラゴンから、ある王国を護った7人の竜使いの話とか。
そして、神話や伝承は語り継がれていく内に形を変え、後生へ伝えられて行く物である。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



―――意識がぼんやりとしている。

まるで画面の縁に白いモヤが霞掛かっているようだ。これは―――夢...?

そうだ、この夢は10年前の記憶。自分の過去の記憶を第三者視点で見つめるこの気分は何とも不思議な気分だ。
この日の事はとても鮮明に覚えている。
それはある晴れた夏休みの日の出来事だった。

当時7歳だった俺、五十嵐隆二(いがらしりゅうじ)は隣家に住む華園花梨(はなぞのかりん)と幼馴染みで良く遊んでいた。
親同士も仲良く、近所からの俺と花梨の仲の良さは評判だった事を記憶してる。

そう言えば花梨は女の子ながら活発な子で、よく男同士の喧嘩の仲裁さえやっていたなぁと俺は微笑んだ。この日も俺は花梨を遊びに誘うべく彼女の家へ向かっていた。
その幼馴染の家はと言うと、割と何処にでもある住宅パンフレットに載っていそうな白塗り2階建ての家だ。


―――ピンポーン


呼び鈴を鳴らして暫くするとインターホン越しに女性の声が聞こえる。
花梨のお母さんだ。

「はい」
「花梨居る?」
「あ、隆ちゃん?待っててねー。」

そこからまたインターホンの前で立ち尽くしてると、花梨が勢いよくドアを開けて飛び出してきた。


「隆ちゃんやっほ!」
「花梨!今日はカブトムシ捕りに行こうぜ!!」

そう言うと俺は持っていた虫かごを花梨に突き付ける様に掲げて見せた。
家の近くに裏山があり、この日はカブトムシを捕りに裏山へ行こうとしていたのだ。

「オッケー待っててね!」

花梨はそう言うとドアを開けっぱなしのまま自室へ続く階段を駆け上がっていく。虫かごを持ってくるみたいだ。
すると玄関前から見て左側のドアが開き花梨のお母さんが顔を出した。
名前は金糸雀(かなりあ)さんと言うらしい。

「もう、花梨ったらまた開けっぱなしにして!ごめんね隆ちゃん、中に入って待っててくれる?虫入って来ちゃうから」
「はーい」

俺は花梨のお母さんに従い、中へ入る。
ふと横をみると、下駄箱の上には花梨の家族写真が飾られていた。
しばらくすると花梨がやってきてーーー

「お待たせー」

と、虫かごを片手に階段を駆け下りてきた花梨。

「んじゃ、いこーぜー」

俺は閉められたドアを再び開けて外に出るとそれに花梨も続く。
裏山へは、住宅街を抜けた先にある林道から行くことが出来た。

この日は快晴だった事もあり林道を照らす木漏れ日は淡い筋となって差し込み、砂利の地面には光と影が折り重なって鮮やかなグラデーションを映し出していた。

整備された林道から外れ、獣道となった森の中へ進む事およそ5分。俺と花梨が見つけた二人だけの秘密基地がある。

そこは今は誰も使っていない空き倉庫のようで、部屋の中には物が一切無い代わりに雑草がアスファルトの地面をこじ開けるように所々生い茂っていた。
恐らく昔林業の人が資材置き場として使っていたのかも知れない。

俺は立付けの悪いスライド式のドアをガララッ...と開けて中へ入る。
木造のその倉庫はそれなりに広く、子供二人がたむろう場としては十分なスペースだ。

俺と花梨はそこへ来ては、こっそり持ってきたお菓子を広げて一緒に食べるのが恒例行事となっていた。

「花梨、今日はどっちが多くのカブトムシを捕まえる事ができるか勝負しようぜ!」
「いいよー負けないけどね!」

お菓子を頬張りながら何やら勝負事が成立する。
広げたお菓子をあらかた食べ尽くすと、虫かごを持って扉の前で二人並んでスタンバイ。
俺は花梨に言った。

「じゃあ帰る前に此処へ戻ってきてカブトムシ多かった方の勝ちね」
「おっけーわかった。今から隆ちゃんの悔しがる姿が頭に浮かんでくるわ」
「けっ!言ってろ!花梨こそ俺に負けて泣くなよ!」
「泣き虫は隆ちゃんでしょ。」
「何だとー!ぜってぇ負けねぇ!んじゃいくぜ!」

俺は扉の取っ手に手を掛けて
「よーい、どん!」

その瞬間、ドアを勢いよく開けると二人一斉に走り出した。
そのまま花梨は全力疾走で真っ直ぐ森の奥へと消えていったが、俺としては花梨と同じ所でカブトムシを捕っていても面白くないし、何より横取りされないか心配だったので、扉を出るとすぐさま花梨とは別の方向へ走っていった。

しばらく走るとクヌギの木が密集した地帯に出た。
どうやらクヌギの木はカブトムシが好む蜜を出すらしい。
俺はそこでカブトムシを探すことにしたーーー
のだが、世の中そう簡単にいく物でも無いらしくカブトムシは中々見つからず落胆しながら、更に深く森の奥へと足を踏み入れる。

生い茂った草花が俺の足を絡めてくるが、それを気にせず前へ、その奥へ進むと視界には見たことの無い風景が広がっていた。
俺はそこで立ち止まる。

「あれ、こんなところあったっけ?」

そこは開けた空間になっており、周りには木々が囲む様に立ち並んでいる。
だが、俺が立ち止まった理由はそれではない。
その広場の中央に巨大な大樹が佇んでいたからだ。
まるでこの森の長とでも言わんばかりのその圧倒的存在感にあっけにとられたのだ。

「すげーでっけー!!」

半ばカブトムシの事を忘れ、多少興奮気味にその大樹へ近づく。
所々窪みが出来ていて、虫や小動物の住処のようになっているようだ。
俺は大樹を360゜見回す為、裏へ回ってみると、一つの窪みの中に何か埋め込まれている事に気付いた。

「ん?なんだこれ?」

それは、見れば吸い込まれそうな程澄んだ紅色をしていたが、表面はゴツゴツしている。
まるで研かれる前の宝石の原石のようだった。

「やっべー俺、ルビー見つけちゃったかも」

その魅力を前に俺の意識は抗う事が出来ず、気付いたらほぼ無意識に手を差し延べていた。
俺の小さい子供の手が、それに触れる。

―――刹那


石が発光しだしたかと思うとそれは徐々に肥大化し、やがて収まった


「うわっ!!...え?」


何が起こったのか理解できず立ち尽くしていると、頭の中に声が響いてきた。
その声は男の子の様な声だったが、どこか弱々しく今にも消え入りそうな声だ。

「僕の力を、君に...託すから...10年後で、君を待ってる...」

その瞬間、俺の意識は暗闇に引きずり込まれた。


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