2.5D/リアル世界の異世界リアル
第39話
39
翌日、日曜日。午前10時。
とある男子寮部屋の前にて。
「ひ、樋口ッ! これから俺と、俺と……ッ!」
―――俺は。
男であるはずの俺は―――。
「おう、おはよう憑々谷。こんな時間からどうしたんだ? 急用か?」
樋口。樋口成人。
そのイケメン男子生徒に対し―――。
「お……俺と……ッ! で、デートしてくれ…………ッ!」
…………ああ、マジで言ってしまったよ俺。
しかも初めてデートに誘ったのが男っていう、ね。
もうさ、俺が女の子になるしかないよな(狂乱)。
樋口が顔を顰めた。
「は? お前、なに言ってるんだ?」
「だ、だよな! やっぱ俺、おかしいよな、すまん今のは忘れて、」
「大会まで1週間切ってるんだぞ。デートなんてしてる暇ないだろ」
「そっちかよ!?」
俺は戦慄した。
だったら暇さえあればデートするのかよ、俺達は!?
「あー、でもそうだな。午前中だけならいいぞ。これから本格的に練習漬けになるだろうし、最後の休暇と思えば」
結局デートするのかい! そして誰とデートするのかちゃんとわかってる!?
なんか勘違いしてないか!? むしろ勘違いしててくれお願いだッ!
「ははっ。憑々谷からデートに誘ってくるとか、珍しいな」
メ・ズ・ラ・シ・イ!?
「そ、そうなのか……!?」
「? 普段は俺から誘うだろ?」
俺とお前の関係って一体なんなの!? ただの男友達じゃないのか!?
激しく気になるが激しく知りたくないッ!
「少し待っててくれ。さすがに部屋着じゃ外出できない。……あ、どうせだから中に入るか?」
「け、結構だ!」
「よし。今ちょっと散らかってるが、我慢してくれよ?」
「そっちの意味じゃない! ここで待つって言ってんだぞ!?」
日本語難しい!
でもこれは日本語のせいじゃない気がしてならない!
「なに怒ってんだ? ひょっとしてデートのお誘いはジョークだったりするのか?」
「! いや、その、まぁ……いや、デートは本気だ……ぞ?」
我ながら完全にホモ発言じゃないか。
死にたい。
「そうか。んじゃ、そのへんで待っててくれ」
バタン、と扉が閉められる。
その直後、俺は男子寮の壁に項垂れてしまった。
「……はあ、先が思いやられる……」
「いいよーいいよー、順調じゃん!」
「楽しみですね」
アリスとトピアが姿を現した。廊下のすぐ角に隠れていたのだ。
言うまでもないが2人は男子寮に侵入していた。なのに緊張感の欠片もない様子。
アリスだけならまだしも、あのトピアまでもが浮かれた表情をしていた。
ちなみにアリスは相変わらずのメイド服で、トピアは学園の制服だった。
なおトピアは首からデジカメを提げている。
……で、俺はといえばもちろんデートなんだし私服だった。
だが格好の詳細は省かせてもらおう。いわゆる『お前ら』と同じと格好だと思ってくれていい(適当)。
「ツっきんの服装はどうでもいいけど、樋口っちのはちゃんと解説して!」
「なんでだよ! お前が発言すれば読者にも伝わるだろ。あとその呼び方マジで止めろ。吐き気がする」
俺は溜息を吐く。
……あぁ、もう皆、アリスの願いがなんだったのかお気づきだろう。
念のためざっくり説明しておくと。
アリスは例のノベルゲー、『胸板でもできるッ!』でBLに目覚めてしまったらしい。
そしてアリスの願いは『リアルでツっきんと樋口っちのBLっぷりが観たい!』だった。
樋口が憑々谷子童と友達であったことをアリスに伏せておけば、こんな事態にはならなかったはず。だが……こうなるとは予想できるものじゃない。トピアにもそっちの趣味があったとは思いもしなかった。
本人はアリスの保護者だからという理由で同行しているが……やはり自前のデジカメを持ってきたあたり、彼女もBLが好物なのだ。撮る気満々とか相当だろう。
「帰りてぇー……」
「まだ始まってもないのになに言ってんのさ! ほら、にょきっとする!」
それを言うならしゃきっとだろ。
これ以上俺のキノコは生えてこないぞ(下品)。
「アリス、そろそろ隠れましょう」
「ん、そだね。樋口っちがあたしに一目惚れしてデートどころじゃなくなったら困るし。やーん♪」
100パーありえない。
そうじゃなかったらアリスをひっ捕らえて樋口に献上しているところだ。
「んもう、ツっきんったら……。イヤらしッ♪」
アリスがそう言い置いてトピアと廊下の角に戻っていった。
「……、嬉しそうな反応するなよ……」
「どうした、憑々谷?」
振り返ると樋口が部屋から出てきていた。
「気にするな。ただの独り言だ」
「?」
樋口が首を傾げる。
―――とその時、俺は殺気にも似たなにかを感じ取った。
(…………ったく。さっさと樋口の服装を解説しろってか)
しょうがないな。約束は約束だ。
ここで拒否したらアリスが手の平返して大会に出てくれないだろうし。
「ひ、樋口。その服、似合ってるな……?」
俺は半眼になって樋口の服装を確認していった。
(……まぁ全裸よりは恥ずかしくない格好ではないかな。ジャケットを着こなせば大人に見えると頑張ってみた感がハンパない。無地の白シャツはお前にも合うとでも思ったのか? バカめ。それは致命的な勘違いだ。お前みたいな細マッチョだとガリガリが際立つだけなんだよ。あとなんだそのカラフルな首飾りは。じゃらじゃらしやがって。アフリカ民族でもまだオシャレなのチョイスしてるっての。ジーンズもこれまたお高く目に止まったことで。別に値段が張りゃあいいってもんじゃないだろう。だいたいお前は学生なんだ、無理に背伸びしてどうする。ファッションばかりに金かけてるのがモロバレだし、逆に笑われるわ。お前は残念なセンスしてるからな)
やれやれ、せっかくのイケメンが台無しだ。
なぁ、俺にくれよ、そのイケメン。宝の持ち腐れは見ていて不快なんだよ。
俺ならちゃんと服装も考えて使いこなせるからよ。
―――はい。以上が俺の解説です(白目)。
「本当か? そんなに似合ってるか?」
「…………おう」
「そうかぁ、俺にはちょっと早いと思ってたんだが。実はこれ、服飾部の部長してた元カノのコーデなんだ。はは!」
「…………へえ」
別れてくれて嬉しい。そのコーデのお上手な元カノ、ぜひとも俺に紹介してくれないか(困惑)。
「どうした憑々谷?」
「いや別に……」
くそぅ、テンションだだ下がりだ。
せっかく樋口の服装をそれっぽく非難したのに……。
「やっぱまだ具合悪いのか? 昨日、早退しただろ?」
「あー……。いや、もう平気だ」
そういえばそうだった。体育の授業、抜けたんだった。
「ってかお前、昨日から様子おかしくないか? 早く登校してきたかと思えばいきなり体調崩したり、今日は俺にデートまで―――」
「に、人間、たまにはそういうこともあるだろ……?」
俺は俺自身思ってもいないことを樋口に説くと。
「じゃあデート始めるぞ? プランは立ててあるから任せてくれ」
もちろんデートプランを立てたのは俺じゃない。
アリスとトピアが仲良く楽しげに立てたのだ……。
「へえびっくりだな、デートプランまで用意してたとは。お前、本物の憑々谷なのか?」
うるせえよ!
本物の俺は男とデートすらしねーよ(発狂)!
翌日、日曜日。午前10時。
とある男子寮部屋の前にて。
「ひ、樋口ッ! これから俺と、俺と……ッ!」
―――俺は。
男であるはずの俺は―――。
「おう、おはよう憑々谷。こんな時間からどうしたんだ? 急用か?」
樋口。樋口成人。
そのイケメン男子生徒に対し―――。
「お……俺と……ッ! で、デートしてくれ…………ッ!」
…………ああ、マジで言ってしまったよ俺。
しかも初めてデートに誘ったのが男っていう、ね。
もうさ、俺が女の子になるしかないよな(狂乱)。
樋口が顔を顰めた。
「は? お前、なに言ってるんだ?」
「だ、だよな! やっぱ俺、おかしいよな、すまん今のは忘れて、」
「大会まで1週間切ってるんだぞ。デートなんてしてる暇ないだろ」
「そっちかよ!?」
俺は戦慄した。
だったら暇さえあればデートするのかよ、俺達は!?
「あー、でもそうだな。午前中だけならいいぞ。これから本格的に練習漬けになるだろうし、最後の休暇と思えば」
結局デートするのかい! そして誰とデートするのかちゃんとわかってる!?
なんか勘違いしてないか!? むしろ勘違いしててくれお願いだッ!
「ははっ。憑々谷からデートに誘ってくるとか、珍しいな」
メ・ズ・ラ・シ・イ!?
「そ、そうなのか……!?」
「? 普段は俺から誘うだろ?」
俺とお前の関係って一体なんなの!? ただの男友達じゃないのか!?
激しく気になるが激しく知りたくないッ!
「少し待っててくれ。さすがに部屋着じゃ外出できない。……あ、どうせだから中に入るか?」
「け、結構だ!」
「よし。今ちょっと散らかってるが、我慢してくれよ?」
「そっちの意味じゃない! ここで待つって言ってんだぞ!?」
日本語難しい!
でもこれは日本語のせいじゃない気がしてならない!
「なに怒ってんだ? ひょっとしてデートのお誘いはジョークだったりするのか?」
「! いや、その、まぁ……いや、デートは本気だ……ぞ?」
我ながら完全にホモ発言じゃないか。
死にたい。
「そうか。んじゃ、そのへんで待っててくれ」
バタン、と扉が閉められる。
その直後、俺は男子寮の壁に項垂れてしまった。
「……はあ、先が思いやられる……」
「いいよーいいよー、順調じゃん!」
「楽しみですね」
アリスとトピアが姿を現した。廊下のすぐ角に隠れていたのだ。
言うまでもないが2人は男子寮に侵入していた。なのに緊張感の欠片もない様子。
アリスだけならまだしも、あのトピアまでもが浮かれた表情をしていた。
ちなみにアリスは相変わらずのメイド服で、トピアは学園の制服だった。
なおトピアは首からデジカメを提げている。
……で、俺はといえばもちろんデートなんだし私服だった。
だが格好の詳細は省かせてもらおう。いわゆる『お前ら』と同じと格好だと思ってくれていい(適当)。
「ツっきんの服装はどうでもいいけど、樋口っちのはちゃんと解説して!」
「なんでだよ! お前が発言すれば読者にも伝わるだろ。あとその呼び方マジで止めろ。吐き気がする」
俺は溜息を吐く。
……あぁ、もう皆、アリスの願いがなんだったのかお気づきだろう。
念のためざっくり説明しておくと。
アリスは例のノベルゲー、『胸板でもできるッ!』でBLに目覚めてしまったらしい。
そしてアリスの願いは『リアルでツっきんと樋口っちのBLっぷりが観たい!』だった。
樋口が憑々谷子童と友達であったことをアリスに伏せておけば、こんな事態にはならなかったはず。だが……こうなるとは予想できるものじゃない。トピアにもそっちの趣味があったとは思いもしなかった。
本人はアリスの保護者だからという理由で同行しているが……やはり自前のデジカメを持ってきたあたり、彼女もBLが好物なのだ。撮る気満々とか相当だろう。
「帰りてぇー……」
「まだ始まってもないのになに言ってんのさ! ほら、にょきっとする!」
それを言うならしゃきっとだろ。
これ以上俺のキノコは生えてこないぞ(下品)。
「アリス、そろそろ隠れましょう」
「ん、そだね。樋口っちがあたしに一目惚れしてデートどころじゃなくなったら困るし。やーん♪」
100パーありえない。
そうじゃなかったらアリスをひっ捕らえて樋口に献上しているところだ。
「んもう、ツっきんったら……。イヤらしッ♪」
アリスがそう言い置いてトピアと廊下の角に戻っていった。
「……、嬉しそうな反応するなよ……」
「どうした、憑々谷?」
振り返ると樋口が部屋から出てきていた。
「気にするな。ただの独り言だ」
「?」
樋口が首を傾げる。
―――とその時、俺は殺気にも似たなにかを感じ取った。
(…………ったく。さっさと樋口の服装を解説しろってか)
しょうがないな。約束は約束だ。
ここで拒否したらアリスが手の平返して大会に出てくれないだろうし。
「ひ、樋口。その服、似合ってるな……?」
俺は半眼になって樋口の服装を確認していった。
(……まぁ全裸よりは恥ずかしくない格好ではないかな。ジャケットを着こなせば大人に見えると頑張ってみた感がハンパない。無地の白シャツはお前にも合うとでも思ったのか? バカめ。それは致命的な勘違いだ。お前みたいな細マッチョだとガリガリが際立つだけなんだよ。あとなんだそのカラフルな首飾りは。じゃらじゃらしやがって。アフリカ民族でもまだオシャレなのチョイスしてるっての。ジーンズもこれまたお高く目に止まったことで。別に値段が張りゃあいいってもんじゃないだろう。だいたいお前は学生なんだ、無理に背伸びしてどうする。ファッションばかりに金かけてるのがモロバレだし、逆に笑われるわ。お前は残念なセンスしてるからな)
やれやれ、せっかくのイケメンが台無しだ。
なぁ、俺にくれよ、そのイケメン。宝の持ち腐れは見ていて不快なんだよ。
俺ならちゃんと服装も考えて使いこなせるからよ。
―――はい。以上が俺の解説です(白目)。
「本当か? そんなに似合ってるか?」
「…………おう」
「そうかぁ、俺にはちょっと早いと思ってたんだが。実はこれ、服飾部の部長してた元カノのコーデなんだ。はは!」
「…………へえ」
別れてくれて嬉しい。そのコーデのお上手な元カノ、ぜひとも俺に紹介してくれないか(困惑)。
「どうした憑々谷?」
「いや別に……」
くそぅ、テンションだだ下がりだ。
せっかく樋口の服装をそれっぽく非難したのに……。
「やっぱまだ具合悪いのか? 昨日、早退しただろ?」
「あー……。いや、もう平気だ」
そういえばそうだった。体育の授業、抜けたんだった。
「ってかお前、昨日から様子おかしくないか? 早く登校してきたかと思えばいきなり体調崩したり、今日は俺にデートまで―――」
「に、人間、たまにはそういうこともあるだろ……?」
俺は俺自身思ってもいないことを樋口に説くと。
「じゃあデート始めるぞ? プランは立ててあるから任せてくれ」
もちろんデートプランを立てたのは俺じゃない。
アリスとトピアが仲良く楽しげに立てたのだ……。
「へえびっくりだな、デートプランまで用意してたとは。お前、本物の憑々谷なのか?」
うるせえよ!
本物の俺は男とデートすらしねーよ(発狂)!
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