2.5D/リアル世界の異世界リアル
第24話
24
覚えておけと言われたばかりで覚えておくまでもない内にまた会うのは、どうかと思ったのだが―――。
結局俺は第2校舎3階、保安委員の休憩室前に立っていた。
廊下は不気味なほど閑散としていた。第2校舎は部室や特別教室ばかりだからだろう。第1校舎の普通教室で大半の生徒が昼休みを過ごしているわけだ。
(にしても……本当に奇姫が休憩室にいるのか?)
ドア越しとはいえ物音がすれば聴こえるはずだ。しかし中からはなにも聴こえてこない。お菓子を食べててその咀嚼音が聴こえてきても不思議ではないのだが……。
まぁ黙って立っていても仕方ない。
俺はノックをしてみた。
「……………………」
反応がない。いないようだ。よし急いで寮部屋に戻ってアボカド弁当に舌鼓を打つとしよう。そうしよう。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」
来た道を戻ろうとして腕を掴まれる。
直後、なにもない空間から奇姫が姿を現した。涙ぐんだ様子で。
実はすぐ傍に彼女がいたことに、しかし俺は驚かなかった。
「やっぱ尾けてたのか」
「ぐっ……またあたしの不可視顕現を見抜くとは、さすがね憑々谷子童」
いやだって第2校舎に踏み入れたあたりから『すすり泣き』が聴こえてたからな。すすり泣きだけが後ろを尾いてくるとか、とんだホラーだった……。
「で? なんか用か?」
「それはこっちの台詞でしょう! どうしてここに来たの?」
「……んん?」
あれ、もしかしてコイツ、ハンカチ落としたの知らないのか。 ってことは透明人間になれる異能力で俺を尾けてきたのは、道すがらで決めたのか。
「あたしを追い越してどこに向かうのかと思えば、まさかあたしの行き先と一緒だったなんてね」
「……、」
「でもちょっとだけ見直したわ。わかってる。謝罪の意をこめてあたしのアボカド弁当を届けに来たのよね?」
「いつお前のモノになったんだ。違う」
だがなるほど、透明人間には道すがらでなったのか。きっと泣いてる姿を他人に見られるのが恥ずかしかったのだろう。
で、俺のほうが歩調が速くて奇姫を追い越してしまったと(納得)。
「だったら百歩譲ってあんたのアボカド弁当にしといてあげるわ。このあたしに献上しにきたのよね?」
「お前どんだけ食いたいんだよアボカド弁当。ああいい、もうやるよ。落としたハンカチも返す。これで満足だろ」
「えっ、あたしのハンカチ? いつの間に……?」
目を丸くする奇姫に、俺はコンビニ袋とハンカチを強引に手渡した。
「じゃあ俺はこれで」
「待ちなさい。このハンカチは……洗ってくれたのよね?」
「キレていいか?」
「冗談よ」
奇姫は悪びれた風もなく休憩室のドアを指差すと、
「あたしもあんたに返すモノがあったから、ちょっと寄っていきなさい」
「は? 俺に返すモノ……?」
俺は眉根を寄せた。なにか貸しただろうか。全く覚えがない。
(そうか、これは罠だ! 俺の貞操を奪うため、休憩室で無理矢理行為に及ぼうとするに違いない! 積極的なヒロインだったらその程度、息をするように仕掛けてくるッ!)
……とまあ、ね。トピアにフラれる前の俺だったら自信満々に断定しているんだけども。少なくとも今は無理だ。
著者にもてあそばれたせいで絶賛自己嫌悪中なのだ……(反省)。
「なにしてんの? 早くしないと食べる時間なくなるわよ?」
「……わかった」
ドアを開けた奇姫を見て、俺はお邪魔することに決めた。その泣き疲れた表情が嘘を吐いている人間のものとは到底思えなかった。
(ま、まぁ……な? 俺も一応は盛りの付いた男なもんで、たとえ他に好きな子がいたとしても、ほんのちょっとだが罠でもいいかなーなんて思っていたり……?)
……すまん著者、やっぱりここカットでお願いだ(←だが断る。by著者)。
保安委員の休憩室は狭く、部屋の中心にオフィスデスクが6台、隙間を作らないように置かれていた。壁にはキャビネットやロッカー、冷蔵庫、電気ポットなどが設けられており、これだけ見ればどこかの小さな会社みたいだった。
「で? 俺に返すモノって?」
「は?……あんた、自分が身に着けてた装飾品を忘れてるって、どうなの?」
呆れたように言いながら奇姫がデスクの引き出しを鍵で開け、「これよこれ」と俺に寄越してきたのは。
「……、え?」
俺は、これが一体なんなのかを理解するのに数秒を要した。
しかも数秒を要したと同時に、なぜ俺は今の今まで忘れることができたんだろう? と自分を疑わしく思った。
だってそうだろう。
俺がこのラノベ世界に来れたのは、これを手にしたからこそだ。
「ど、どうしてお前が、アリスバンドを……!?」
「アリスバンド?……あんた、その腕輪にあだ名なんか付けてんの? 気持ち悪いわねぇ」
「あだ名……? これに商品名でもあるのか?」
「というかそれ非売品よ? 知らなかったの?」
「あ、ああ。ネットオークションで買ったんだよ」
実際は腕時計を買ったのに誤配でこれが届いたわけだが。
「本当に?」
「ほ、本当だ」
「怪しいわね。でも本物ならかなりのお宝よそれ。車を買ってお釣りが返ってくるくらいじゃないかしら」
「……マジか?」
俺は耳を疑った。
車の相場なんてピンキリだろうが、数百万はかたいと思う。
「あ、けど誤解しないでちょうだい。あたしはその腕輪をなにかで見た気がしたから、ちょっと拝借して調べさせてもらっただけよ。一昨日までそれの価値なんてわからなかった。昨日価値がわかっても欲しいと思ってないから、あんたに返すのよ」
……なら欲しいと思ったら返さなかったのか。ツッコまないではおくが。
「ついでにその腕輪のこと教えといてあげるわ。―――これあげる」
デスクの上、ファイルスタンドから取り出したのは1枚のプリントだった。
「ん……日本異能研究所が異能力発現を支援する装飾品、スキルゲッターを開発中???」
「ネットから引っ張ってきた20年くらい前の記事よ。そこに載ってる画像、あんたのそれと同じでしょ?」
「……、確かに」
これは驚いた。寸分違わず同じものだ。
さすがに偶然の一致ではないだろう。
(じゃあなんだ、アリスバンドの本当の名前はスキルゲッターだったのか? けどおかしいな。俺がゲットしたのはスキルじゃなくてゴッドだったんだが?)
「当時は異能力者に目覚めない人達から革命が起きるって騒がれてたみたいよ。これが実用化に至ったら誰でも異能力者になれるんだから」
それはありがたい話だ。
大会まであと1週間しかない俺には必須アイテムじゃないか。
だったら繰り返そう。
俺がゲットしたのはスキルじゃなくてゴッドだったんだが?
「でも」
「?」
「それから今日まで研究所からの続報は一切ナシよ。つまるところ……スキルゲッターの開発は頓挫してしまったのよ」
「は? 頓挫したって……研究所が認めたのか?」
「認めてはいないわ。ずっと音沙汰ナシ。でも開発発表から20年も経ってたら、いいかげん誰でも察するでしょ」
「まぁそれほど長い期間が空いたんなら、皆ジョークニュースだったってことで空気読むだろうが……」
俺は困惑した。
じゃあこの手にあるものは―――。
「さて。あんたはそれ、どうやって手に入れたんだっけ?」
「……ネットオークション」
「本物だと思う?」
「いや。絶対にありえん。きっと誰かが模倣して作った……偽物だ」
どうりで奇姫が欲しがらないわけだ。仮にこれが『研究所の試作品』の意味で本物だったとしても、肝心の異能力発現を支援する機能なんてありはしないから、やはり無価値に等しい(残念)。
しかしながらだ。すでに目の当たりにしたように、アリスバンドとしての価値は明らかだ。なんせ本物の神様の世界と繋がっているのだから。
(アリスのためにもこれを手離すわけにはいかない。手離したら必ず後悔する)
にもかかわらず俺はアリスバンドのことをすっかり忘れていたわけだが。
うーむ。どうも信じられないな……(謎)。
「偽物ならこれ以上読んでも仕方ないな。プリントは返す」
「じゃあ棄てるけどいいの?」
「いいぞ。書かれてるのはただの妄想だろ」
「あ、そう。まぁその通りなんだけど」
奇姫は紙を受け取ると、椅子に座ってアボカド弁当を開封し始めた。
……イラッ。
「……、なぁ」
「なによ? あたしに聞きたいことでもあんの?」
「その……。一昨日の件なんだが」
瞬間、奇姫の顔が真っ赤になった。
「き、消えなさい憑々谷子童! あ、ああああんたなんてあのまま死んじゃえば良かったのよ!」
「はあ」
「そしたら噂でだけどこのあたしが学園最強の異能力者になれたんだしッ! それはそれで面白そうだわッ!」
「俺もそれはそれで助かるんだが。大会に出なくて済むし」
「はあ!? ダメよ、武闘大会で優勝する約束でしょ! 風呂覗きがバラされてもいいの!? 間違いなく退学よ!?」
確かに退学となるだろう。元々憑々谷子童は変態で有名であるはずだ。
犯罪を犯していたとバレたら学園も野放しにはできなくなる(確信)。
「と、とにかく! あの日のことは全部忘れなさいッ! 約束は忘れちゃダメだけど!」
「ってか、俺に忘れて欲しいのは岩が落ちてきた後だろ? 俺、知らないんだが」
「ならいいじゃない! あたしはトピアに救援を求めただけよ!」
「え? さっきファーストキスだったって大声で言って―――」
「あんたもう黙りなさいよぉぉぉぉ!!」
……というわけで、俺は部屋を追い出されてしまった。
俺の死を無かったことにすべく世界がどのように改変されたのかは探れなかった。
ま、どうせこれも著者の仕業なのだろう。
覚えておけと言われたばかりで覚えておくまでもない内にまた会うのは、どうかと思ったのだが―――。
結局俺は第2校舎3階、保安委員の休憩室前に立っていた。
廊下は不気味なほど閑散としていた。第2校舎は部室や特別教室ばかりだからだろう。第1校舎の普通教室で大半の生徒が昼休みを過ごしているわけだ。
(にしても……本当に奇姫が休憩室にいるのか?)
ドア越しとはいえ物音がすれば聴こえるはずだ。しかし中からはなにも聴こえてこない。お菓子を食べててその咀嚼音が聴こえてきても不思議ではないのだが……。
まぁ黙って立っていても仕方ない。
俺はノックをしてみた。
「……………………」
反応がない。いないようだ。よし急いで寮部屋に戻ってアボカド弁当に舌鼓を打つとしよう。そうしよう。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」
来た道を戻ろうとして腕を掴まれる。
直後、なにもない空間から奇姫が姿を現した。涙ぐんだ様子で。
実はすぐ傍に彼女がいたことに、しかし俺は驚かなかった。
「やっぱ尾けてたのか」
「ぐっ……またあたしの不可視顕現を見抜くとは、さすがね憑々谷子童」
いやだって第2校舎に踏み入れたあたりから『すすり泣き』が聴こえてたからな。すすり泣きだけが後ろを尾いてくるとか、とんだホラーだった……。
「で? なんか用か?」
「それはこっちの台詞でしょう! どうしてここに来たの?」
「……んん?」
あれ、もしかしてコイツ、ハンカチ落としたの知らないのか。 ってことは透明人間になれる異能力で俺を尾けてきたのは、道すがらで決めたのか。
「あたしを追い越してどこに向かうのかと思えば、まさかあたしの行き先と一緒だったなんてね」
「……、」
「でもちょっとだけ見直したわ。わかってる。謝罪の意をこめてあたしのアボカド弁当を届けに来たのよね?」
「いつお前のモノになったんだ。違う」
だがなるほど、透明人間には道すがらでなったのか。きっと泣いてる姿を他人に見られるのが恥ずかしかったのだろう。
で、俺のほうが歩調が速くて奇姫を追い越してしまったと(納得)。
「だったら百歩譲ってあんたのアボカド弁当にしといてあげるわ。このあたしに献上しにきたのよね?」
「お前どんだけ食いたいんだよアボカド弁当。ああいい、もうやるよ。落としたハンカチも返す。これで満足だろ」
「えっ、あたしのハンカチ? いつの間に……?」
目を丸くする奇姫に、俺はコンビニ袋とハンカチを強引に手渡した。
「じゃあ俺はこれで」
「待ちなさい。このハンカチは……洗ってくれたのよね?」
「キレていいか?」
「冗談よ」
奇姫は悪びれた風もなく休憩室のドアを指差すと、
「あたしもあんたに返すモノがあったから、ちょっと寄っていきなさい」
「は? 俺に返すモノ……?」
俺は眉根を寄せた。なにか貸しただろうか。全く覚えがない。
(そうか、これは罠だ! 俺の貞操を奪うため、休憩室で無理矢理行為に及ぼうとするに違いない! 積極的なヒロインだったらその程度、息をするように仕掛けてくるッ!)
……とまあ、ね。トピアにフラれる前の俺だったら自信満々に断定しているんだけども。少なくとも今は無理だ。
著者にもてあそばれたせいで絶賛自己嫌悪中なのだ……(反省)。
「なにしてんの? 早くしないと食べる時間なくなるわよ?」
「……わかった」
ドアを開けた奇姫を見て、俺はお邪魔することに決めた。その泣き疲れた表情が嘘を吐いている人間のものとは到底思えなかった。
(ま、まぁ……な? 俺も一応は盛りの付いた男なもんで、たとえ他に好きな子がいたとしても、ほんのちょっとだが罠でもいいかなーなんて思っていたり……?)
……すまん著者、やっぱりここカットでお願いだ(←だが断る。by著者)。
保安委員の休憩室は狭く、部屋の中心にオフィスデスクが6台、隙間を作らないように置かれていた。壁にはキャビネットやロッカー、冷蔵庫、電気ポットなどが設けられており、これだけ見ればどこかの小さな会社みたいだった。
「で? 俺に返すモノって?」
「は?……あんた、自分が身に着けてた装飾品を忘れてるって、どうなの?」
呆れたように言いながら奇姫がデスクの引き出しを鍵で開け、「これよこれ」と俺に寄越してきたのは。
「……、え?」
俺は、これが一体なんなのかを理解するのに数秒を要した。
しかも数秒を要したと同時に、なぜ俺は今の今まで忘れることができたんだろう? と自分を疑わしく思った。
だってそうだろう。
俺がこのラノベ世界に来れたのは、これを手にしたからこそだ。
「ど、どうしてお前が、アリスバンドを……!?」
「アリスバンド?……あんた、その腕輪にあだ名なんか付けてんの? 気持ち悪いわねぇ」
「あだ名……? これに商品名でもあるのか?」
「というかそれ非売品よ? 知らなかったの?」
「あ、ああ。ネットオークションで買ったんだよ」
実際は腕時計を買ったのに誤配でこれが届いたわけだが。
「本当に?」
「ほ、本当だ」
「怪しいわね。でも本物ならかなりのお宝よそれ。車を買ってお釣りが返ってくるくらいじゃないかしら」
「……マジか?」
俺は耳を疑った。
車の相場なんてピンキリだろうが、数百万はかたいと思う。
「あ、けど誤解しないでちょうだい。あたしはその腕輪をなにかで見た気がしたから、ちょっと拝借して調べさせてもらっただけよ。一昨日までそれの価値なんてわからなかった。昨日価値がわかっても欲しいと思ってないから、あんたに返すのよ」
……なら欲しいと思ったら返さなかったのか。ツッコまないではおくが。
「ついでにその腕輪のこと教えといてあげるわ。―――これあげる」
デスクの上、ファイルスタンドから取り出したのは1枚のプリントだった。
「ん……日本異能研究所が異能力発現を支援する装飾品、スキルゲッターを開発中???」
「ネットから引っ張ってきた20年くらい前の記事よ。そこに載ってる画像、あんたのそれと同じでしょ?」
「……、確かに」
これは驚いた。寸分違わず同じものだ。
さすがに偶然の一致ではないだろう。
(じゃあなんだ、アリスバンドの本当の名前はスキルゲッターだったのか? けどおかしいな。俺がゲットしたのはスキルじゃなくてゴッドだったんだが?)
「当時は異能力者に目覚めない人達から革命が起きるって騒がれてたみたいよ。これが実用化に至ったら誰でも異能力者になれるんだから」
それはありがたい話だ。
大会まであと1週間しかない俺には必須アイテムじゃないか。
だったら繰り返そう。
俺がゲットしたのはスキルじゃなくてゴッドだったんだが?
「でも」
「?」
「それから今日まで研究所からの続報は一切ナシよ。つまるところ……スキルゲッターの開発は頓挫してしまったのよ」
「は? 頓挫したって……研究所が認めたのか?」
「認めてはいないわ。ずっと音沙汰ナシ。でも開発発表から20年も経ってたら、いいかげん誰でも察するでしょ」
「まぁそれほど長い期間が空いたんなら、皆ジョークニュースだったってことで空気読むだろうが……」
俺は困惑した。
じゃあこの手にあるものは―――。
「さて。あんたはそれ、どうやって手に入れたんだっけ?」
「……ネットオークション」
「本物だと思う?」
「いや。絶対にありえん。きっと誰かが模倣して作った……偽物だ」
どうりで奇姫が欲しがらないわけだ。仮にこれが『研究所の試作品』の意味で本物だったとしても、肝心の異能力発現を支援する機能なんてありはしないから、やはり無価値に等しい(残念)。
しかしながらだ。すでに目の当たりにしたように、アリスバンドとしての価値は明らかだ。なんせ本物の神様の世界と繋がっているのだから。
(アリスのためにもこれを手離すわけにはいかない。手離したら必ず後悔する)
にもかかわらず俺はアリスバンドのことをすっかり忘れていたわけだが。
うーむ。どうも信じられないな……(謎)。
「偽物ならこれ以上読んでも仕方ないな。プリントは返す」
「じゃあ棄てるけどいいの?」
「いいぞ。書かれてるのはただの妄想だろ」
「あ、そう。まぁその通りなんだけど」
奇姫は紙を受け取ると、椅子に座ってアボカド弁当を開封し始めた。
……イラッ。
「……、なぁ」
「なによ? あたしに聞きたいことでもあんの?」
「その……。一昨日の件なんだが」
瞬間、奇姫の顔が真っ赤になった。
「き、消えなさい憑々谷子童! あ、ああああんたなんてあのまま死んじゃえば良かったのよ!」
「はあ」
「そしたら噂でだけどこのあたしが学園最強の異能力者になれたんだしッ! それはそれで面白そうだわッ!」
「俺もそれはそれで助かるんだが。大会に出なくて済むし」
「はあ!? ダメよ、武闘大会で優勝する約束でしょ! 風呂覗きがバラされてもいいの!? 間違いなく退学よ!?」
確かに退学となるだろう。元々憑々谷子童は変態で有名であるはずだ。
犯罪を犯していたとバレたら学園も野放しにはできなくなる(確信)。
「と、とにかく! あの日のことは全部忘れなさいッ! 約束は忘れちゃダメだけど!」
「ってか、俺に忘れて欲しいのは岩が落ちてきた後だろ? 俺、知らないんだが」
「ならいいじゃない! あたしはトピアに救援を求めただけよ!」
「え? さっきファーストキスだったって大声で言って―――」
「あんたもう黙りなさいよぉぉぉぉ!!」
……というわけで、俺は部屋を追い出されてしまった。
俺の死を無かったことにすべく世界がどのように改変されたのかは探れなかった。
ま、どうせこれも著者の仕業なのだろう。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
238
-
-
4
-
-
314
-
-
549
-
-
140
-
-
157
-
-
2
-
-
1168
-
-
49989
コメント