2.5D/リアル世界の異世界リアル
第8話
8
「!? あ、アリス!?」
アリスが枯葉のように落ちてくる。彼女の異変に気づくのが遅れてしまい、俺は慌てて彼女を受け止めようと走り出すが、
「―――鳥籠に居ろ」
アリスパパが冷たく言い放った途端、アリスは本当に籠の中の鳥状態になった。しかも鳥籠のてっぺんの……吊るすための輪っかとでも言えばいいんだろうか。とにかくその輪っかにはロープが通されていて。
鳥籠は下りロープの終点、つまりはアリスパパの元へと向かうようになっていた。ちなみにロープの両端はどこにも縛られていない。
(ってかこれ、アリスパパの発言がそのまま魔法として発現してないか? いや、ダジャレのつもりはなくてだな―――)
「人間よ、なにも考えるな。貴様の頭では到底我の力を見抜けん。そこで大人しくしていろ」
アリスパパは俺を一瞥してそう言い、いよいよ鳥籠を掴みかける。
しかしその瞬間、
「サンボル!!」
「ぐ、ぐおぉっ!?」
不意打ちしたのはアリスの雷撃だった。鳥籠がひしゃげるほどの凄まじい威力。アリスパパはそれをもろに喰らった!
「き、貴様!? 腹に穴を開けてなお、まだこれほどの力が出せるか!?」
しかしアリスパパはノーダメとばかりに声を荒げていた。全身に防御魔法でも張っていたのだろうか。黒白の法衣が若干焦げたくらいだった。
「はぁ、はぁっ……!」
「…………。そうか。今のが全力で最後だったか」
アリスパパの判断で間違いなかった。せっかく鳥籠から脱出しアリスパパにも大きな隙ができていたのに。当のアリスはただその場で気息を整えることに必死そうだったからだ。
「はぁ、はぁっ……」
「…………醜いな。死を前にし死を拒絶するその目は」
「はぁ、はぁ……っ!」
「甚だ不愉快だ。情けは元より別れの一言すらかける気がせん。ただ後悔を抱いて……死ぬがいい」
言うやアリスパパはロッドの先端に禍々しい光の塊を再現させた。
そうして今にもアリスが殺されようとした、まさにその時。
【死ぬのはテメェだろ!! この早熟老害神……ッッ!!】
…………………………………………………………。
…………うん、うんうん? うんうん?
(まぁ、さ? とりあえず勘違いだけはしないでもらいたいよな。俺、言ってねーからッ!)
恐る恐る顔を上げると、アリスパパが眉を歪めて俺を見下ろしている。
……ひぃ!?
「貴様、声に出しておきながら否定するとは……。心や思考が読める我を嘲笑っているつもりか……?」
(そ、そんなわけないじゃないですかー! 自慢になりますけど皆の長所を褒め合ってみる授業で『場の空気が読める』で全会一致だったんすよ、俺! だからそう! たとえ悲惨な結末になるとわかっていても、この親子喧嘩は黙って見届けることに決めたんすよ! たった今、そう決めたんです……ッッ!!)
【―――嘲笑っている? はっ、これは心外だな。俺の宣戦布告がテメェにはおふざけにしか見えなかったってことかよ?】
い、いいいいいいいい言ってねえよ!?
「ほほう!? つまり貴様も死にたいとな!?」
「言ってねえっての……ッ!!」
あれ、なぜか声が出せたぞ! けど良かった、さすがに今の質問は否定しとかないと! 夢の中とはいえ俺が死にたいわけないだろっ!
「なっ!? 貴様、ますます赦し難い!!」
「へ???」
「我は正真正銘の神ぞ!? その神に人間ごときが宣戦布告しあまつさえ《《神を負かす気でいた》》などと! 身の程知らずにも程がある!!」
きょ、きょきょきょきょ曲解だー!
人間の俺が神様に勝てるわけねえだろうがッ!
(ってかなんで急に躍起になってんのこの神様!?  人間ごときの言葉なんて俺達で言うところの虫の鳴声みたいなもんだろ!? いちいち真に受けて気にしてんじゃねえよ……!)
「よかろう!! ならば貴様ら、この妙な世界諸共消し去ってくれる!! 我が究極秘奥義、ビッグバーン!!」
……え? なにこのテンポの速さ? 俺の心と思考、ちゃんと読んでくれてたらまだ時間的猶予あったよな? なぁ本気でアリスパパがビッグバーン放っちゃったみたいなんだけど? 視界が完全にゲームオーバーの真っ暗画面みたいなんだけど……!?
(こ、こんな理不尽、アリかよ……!?)
【―――アリだ。そして俺はこれからもっと酷い仕打ちに遭うことだろう。だが挫けるな。前へ進め。進み続ければきっと俺は……この始まりの場所に戻って来られるはずだ】
(は、始まりの場所? 自称著者はまた俺になにを言わせて―――)
【大丈夫だ。俺なら絶対にできる。このラノベ世界の内なる世界を制覇できる。ずっと望んでたはずだもんな?】
(――――――――――――――――)
【ラノベ主人公みたいに。死ぬほどなりたいってよ】
「!? あ、アリス!?」
アリスが枯葉のように落ちてくる。彼女の異変に気づくのが遅れてしまい、俺は慌てて彼女を受け止めようと走り出すが、
「―――鳥籠に居ろ」
アリスパパが冷たく言い放った途端、アリスは本当に籠の中の鳥状態になった。しかも鳥籠のてっぺんの……吊るすための輪っかとでも言えばいいんだろうか。とにかくその輪っかにはロープが通されていて。
鳥籠は下りロープの終点、つまりはアリスパパの元へと向かうようになっていた。ちなみにロープの両端はどこにも縛られていない。
(ってかこれ、アリスパパの発言がそのまま魔法として発現してないか? いや、ダジャレのつもりはなくてだな―――)
「人間よ、なにも考えるな。貴様の頭では到底我の力を見抜けん。そこで大人しくしていろ」
アリスパパは俺を一瞥してそう言い、いよいよ鳥籠を掴みかける。
しかしその瞬間、
「サンボル!!」
「ぐ、ぐおぉっ!?」
不意打ちしたのはアリスの雷撃だった。鳥籠がひしゃげるほどの凄まじい威力。アリスパパはそれをもろに喰らった!
「き、貴様!? 腹に穴を開けてなお、まだこれほどの力が出せるか!?」
しかしアリスパパはノーダメとばかりに声を荒げていた。全身に防御魔法でも張っていたのだろうか。黒白の法衣が若干焦げたくらいだった。
「はぁ、はぁっ……!」
「…………。そうか。今のが全力で最後だったか」
アリスパパの判断で間違いなかった。せっかく鳥籠から脱出しアリスパパにも大きな隙ができていたのに。当のアリスはただその場で気息を整えることに必死そうだったからだ。
「はぁ、はぁっ……」
「…………醜いな。死を前にし死を拒絶するその目は」
「はぁ、はぁ……っ!」
「甚だ不愉快だ。情けは元より別れの一言すらかける気がせん。ただ後悔を抱いて……死ぬがいい」
言うやアリスパパはロッドの先端に禍々しい光の塊を再現させた。
そうして今にもアリスが殺されようとした、まさにその時。
【死ぬのはテメェだろ!! この早熟老害神……ッッ!!】
…………………………………………………………。
…………うん、うんうん? うんうん?
(まぁ、さ? とりあえず勘違いだけはしないでもらいたいよな。俺、言ってねーからッ!)
恐る恐る顔を上げると、アリスパパが眉を歪めて俺を見下ろしている。
……ひぃ!?
「貴様、声に出しておきながら否定するとは……。心や思考が読める我を嘲笑っているつもりか……?」
(そ、そんなわけないじゃないですかー! 自慢になりますけど皆の長所を褒め合ってみる授業で『場の空気が読める』で全会一致だったんすよ、俺! だからそう! たとえ悲惨な結末になるとわかっていても、この親子喧嘩は黙って見届けることに決めたんすよ! たった今、そう決めたんです……ッッ!!)
【―――嘲笑っている? はっ、これは心外だな。俺の宣戦布告がテメェにはおふざけにしか見えなかったってことかよ?】
い、いいいいいいいい言ってねえよ!?
「ほほう!? つまり貴様も死にたいとな!?」
「言ってねえっての……ッ!!」
あれ、なぜか声が出せたぞ! けど良かった、さすがに今の質問は否定しとかないと! 夢の中とはいえ俺が死にたいわけないだろっ!
「なっ!? 貴様、ますます赦し難い!!」
「へ???」
「我は正真正銘の神ぞ!? その神に人間ごときが宣戦布告しあまつさえ《《神を負かす気でいた》》などと! 身の程知らずにも程がある!!」
きょ、きょきょきょきょ曲解だー!
人間の俺が神様に勝てるわけねえだろうがッ!
(ってかなんで急に躍起になってんのこの神様!?  人間ごときの言葉なんて俺達で言うところの虫の鳴声みたいなもんだろ!? いちいち真に受けて気にしてんじゃねえよ……!)
「よかろう!! ならば貴様ら、この妙な世界諸共消し去ってくれる!! 我が究極秘奥義、ビッグバーン!!」
……え? なにこのテンポの速さ? 俺の心と思考、ちゃんと読んでくれてたらまだ時間的猶予あったよな? なぁ本気でアリスパパがビッグバーン放っちゃったみたいなんだけど? 視界が完全にゲームオーバーの真っ暗画面みたいなんだけど……!?
(こ、こんな理不尽、アリかよ……!?)
【―――アリだ。そして俺はこれからもっと酷い仕打ちに遭うことだろう。だが挫けるな。前へ進め。進み続ければきっと俺は……この始まりの場所に戻って来られるはずだ】
(は、始まりの場所? 自称著者はまた俺になにを言わせて―――)
【大丈夫だ。俺なら絶対にできる。このラノベ世界の内なる世界を制覇できる。ずっと望んでたはずだもんな?】
(――――――――――――――――)
【ラノベ主人公みたいに。死ぬほどなりたいってよ】
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