迷宮に転生した者達の成り上がり物語

ノベルバユーザー313607

02  久々の会話

翼を残像が見えるほどの速さで振りながら、現れたのはコウモリだ。
そうだよ。あいつだ。
あれって美味しいのだろうか。


いや、そんな事を言ってる暇はない。
久しぶりの飯だ。
なんか、牙向けて来てるけどそんな事気にしない。


「今日の晩御飯じゃー!」


飯が噛みついてこようとするのを予想した俺は
あえて手を差し出し、噛みつく瞬間に下にかわし、
思いっきりアッパーパンチを当てる。
この極限状態だからか、戦闘能力が少し上がってる気がする。
残りの奴等は、発電機を振り回して無事仕留めた。


俺は早速、火が無いため生で頬張る。
ここに来る前に食ってたら吐き出していそうな
ゴミのような味がしたが、今はご馳走だ。
残りの飯は腐るかも知れないが、一応とっておく。


食べ終わった俺は立ち上がり、いつものように探索を続ける。
歩いていると、辺り一面氷だらけのとても寒い雪国のような場所を見つけた。
鳥よりも多く鳥肌が出てくる。
でも、これは不幸中の幸いだ。
氷があれば、コウモリ達が腐らないようにできる。
そして俺はついでに、何個か塊を砕いてバッグに入れた。
また、コウモリが出たときに武器として使うためだ。


また歩き続けていると、
今度は面白い模様の3つ集まった光る結晶を見つけた。
中で赤い何かがうねうね動いている。
まるで炎をそのまま閉じ込めているようで、とても綺麗だ。
見たことないし、レアな物に違いない。
俺は早速氷を取り出し、根気強く打ちまくる。
ちょっと砕きすぎて小さくなってしまったが、まぁいいや。 
手に取ってみると、まるでカイロのように暖かい。
防寒に使えそうだ。俺はポケットに入れた。


今日はたくさんの収穫があった。
武器にも使えて、飲み物にもできる氷を手にいれ
温かい謎の結晶も入手した。食料もある。


そろそろ疲れてきたし、今日はここで寝よう。
座るのにちょうど良い岩もあるし。
俺は座りながらバッグをあさる。
今日、思い出した事が一つだけ。
確か使わなかったが、スマホを持ってきていたはずだ。
山に行く途中のバスでゲームしようと思ったが
友人の『真人』がレク大会を勝手に始めたため、
結局入れたまんまだった。
インターネットは使えないだろうが、時間はわかるはずだ。


《2月8日、19時40分》


えぇと、確か登山の日は3日だから..
5日もたってんの!?


そんなに、時間が過ぎているとは。
恐らく気を失っていた時、結構起きるまでに時間が
掛かったのだろう。


うーん。眠くないし、そんな時間でもないから
もう少しだけ辺りを探検しようか。
と、立ち上がった瞬間。
画面が変わり、聞き覚えのある声が。






《直也様、こんばんわ。AIのperoです。》


「うお、勝手に喋った!」


《私も何故自由に発言できるかわかりません。
今、あなた様が端末を起動した瞬間、プログラムが
変更されたのです。》


「ほ..ほお。つまりどゆこと?」


《誰がやったのかは知りませんが
許可なしに発言できるように
カメラアプリを使って視覚を得て、
聴覚も、アプリによって授かりました。
ついでに、この場所の情報もインプットされました。》


「最後は特に役立つけど、
お前ってそんなお喋りだっけ?」


《それも変更による影響です。》


視界、聴覚、それにここの知識。
一体誰がやったのだろう。
気絶してる時か寝てる時に、でも何の意味が。


「取り敢えず、ここの情報を教えてくれないか?」


《ここは無限に広がる迷宮です。
しかも、観測者が近くに居ない、
もしくは、寝ていると地形や自然物が変更されます。
後は、敵対する怪物も居るそうです》


今日起きた時に洞穴が塞がっていたのはそういうことか。
敵対って、コウモリ達か?


「..でも、それって」


《えぇ。現実にはあり得ないことです。
情報では、神々が作った『新世界』だそうで。
信じられませんが、宇宙中の生物が生息しているそうです
そして村も、もうたくさん出来ているようで。》  


「でもそいつらもまた、敵対するんじゃ」


《それは無いでしょう。この世界において個性は宝です。
実際、村には色んな星の生命体が
暮らしているようです。》


じゃあ、明日にでも探すか。


「まぁ、取り敢えず今日は寝るよ。
色々とありがとう。」


《いえいえ。
あ、ちなみに残りのバッテリーが切れかけています。》


ちなみにって他人事かよ!
一応、充電できるのだが。
これが結構大変なんだ。


《は..早く、早くコンセントを!!》


少し声を枯らしていて、今にも死にそうだ。


いや、なんでそんな息切れなの。
いつもそんな感じなの?
罪悪感ハンパないんすけど。


このコンセントを差し込む場所が無いこの空間で、
唯一可能な方法。


それは、手回し発電機による地道な作業。
俺は、悟りを開いたかのような顔で回し続けた。
結局、寝れなかった。













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