神様は酷いやつだった

ノベルバユーザー313493

世界最強戦士決定戦編

 「いざレッツゴーニューワールドワシを楽しませてくれよ~」


 無駄にテンションの高い狂った奴に俺は送り出され新しい人生を歩むことになった。
 なぜこうなったかって?それは全てあの瞬間から始まったんだ━━━


(‐=‐)p


 俺の家の先祖は有名な武将だったらしい。その事もあってか家は代々武術を受け継いできた。


 そして俺も例外なく5歳から柔術を教え込まれ7歳には剣術、8歳からは投擲術と弓術を学んだ。更に俺にはそれらの武術全てに才能があったらしくみるみるうちに上達していった。父も祖父もそんな俺を凄く誉めてくれた。
 俺は嬉しくて、もっと誉めてほしくて一生懸命努力した。練習が終われば祖父も父も一緒に遊んでくれた。祖父はプロ棋士でもあって一緒に対局したこともあった。


 そんなある日事件は起きた。練習中に頭を打ってしまい激しい運動が出来なくなってしまったのだ。家族は皆心配してくれた、武術が出来なくなった俺を励ましてくれた。
 しかし俺は皆の期待に応えられなくなったことでどんどん学校にも行かなくなり、太り、ラノベやアニメをみて過ごす日々を送っていた。


 久々に外に買い物に行った帰りそれはやって来た。今思えば最初からおかしかったのだ・・・


 ( ° ▼ ° )


 買い物を済ませた俺は家に帰ろうとしていた。
 そこであるものをもった人を見つけた。


 『アンケート調査中、ご協力いただいたあなたにはもれなく図書券5000円分をプレゼント』


 アンケートに答えるだけで5000円分貰えるなんて!
 そう思って俺はアンケートに協力しに行った。
 周りの人が全く気づいていないことにも気がつかずに。


 「あの・・・アンケートを受けたいのですが」
 「ありがとうごさます。ではこちらで記入をお願いします」


 声はお爺さんのものだった。促された方を見るといつの間にか机と椅子がおかれている。


 こんなものここにあっただろうか・・・


 不思議に思うもさっさと終わらせて帰ろうと記入を始めた。


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 1,あなたの家族構成を教えてください。


 祖父、父、母、兄、妹


 2,あなたの職業を教えてください。


 学生


 3,あなたの将来の夢を教えてください。もし叶っている場合はそれを教えてください。


 なし


 4,もしいくつでも願いが叶うなら何を願いますか。


 なぜか急に変なものがきたが無視してどんどん書いていった。


 もう一度激しい運動ができるようになる。地球上の全ての技術を覚える。記憶力がよくなる。身体能力を上げる。魔法が使えるようになる。元の体型に戻る。


 5,もし異世界転生できるとしたらいたいですか


 とうとうおかしいのがきた。なにこの質問ふざけてるんじゃないだろうか、しかし答えは一つである。


 はい


 アンケートは以上ですありがとうございました。


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 書き終えるとアンケートの紙をおじいさんに渡した。


 「ありがとう。少し確認するから待っていてくれ」


 そう言って待たされること1分・・・


 「問題ないです。ありがとうございました。最後にあなたのお名前をお聞かせ願いますか」
 「最上もがみ 宗時そうじです」
 「では最上君去らばだ」


 そう言って差し出たカードをそのまま宗時の鳩尾に突き刺してきた。
 体が一瞬燃えるように熱くなった、そしてすぐにどんどん寒くなっていく。未だに何が起きたか状況の整理がついていない宗時は自分の手を鳩尾に当ててみてやっと気がついた。


 「うあぁぁぁ!!」


 叫んだのは一瞬で苦痛からそのあとは全く声が出なかった。しかし、こんなにも叫んだのに誰一人として宗時の存在に気がつくそぶりを見せるものはいなかった。


 なんでだよ!なんで俺なんだよ!なんで俺ばかり。イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!


 そうして俺の意識は途切れた。最後に見たのはおじいさんのニヤリとした笑みのみだった━━━━


b(ー@ー)b


 暫くして目が覚めたのたは真っ白な空間だった。


 「ここはどこだ」


 そう一人ごちるもかえす者はいなかった。宗時の周りの広がるのは白、白、白、白、白、ただ白い空間だけだ。
 そこで宗時は考えることにした。
 こういった場合人間は驚きすぎと状況が理解できなくてパニックなれない。つまりこの状態が終わるもしくは原因がわかった場合にそく俺はパニック状態におちいるということだ。そこでまずは心構えをしっかりすることにした。
 まぁどうやってもパニクルときはパニクルのだが・・・


 よし、まずは何があったか思いだそう。家を出る→買い物にいく→家に帰る。
 いやまてよ、帰る前に何かあったきが━━━そうだ、変なおじさんのアンケートに答えたんだ。そして、そして━━━刺された・・・
 てことは俺は死んだのか?
 いや死んだはずだ、だがなぜだろうなぜこんなにも実感が持てないのか、まるで他人事のようだ。あの痛みも確かに体験したはずなのにまるで知識のような非現実感はなんだろう・・・
 それよりもそんな事はどうでもよくて、いやどうでもよくないが━━━あいつはどこだ!


 「ワシか?ワシはここにおるぞ」


 どこからともかくそんな声が聞こえると真っ白だった空間が少しぐにゃりと歪んだように見えたあと、そこにまるでインクが落ちるように少しずつ斑模様が広がりやがて繋がると一人の人物が現れた現れた。そしてその人物の出現と同じにまるで世界生まれたかのように色がついていく。


 「あんたはあのときの!」
 「おはようさん、最上君」
 「お前は何をして━━━」
 「まてまて説明する。まずは自己紹介といこうかワシは神じゃ」
 「は?」


 思わずガラの悪い声を出してしまった。まさか殺人犯が神(笑)を名乗るとは思わなかった


 「最上君、信じておらんじゃろ」
 「もちろんです自称神(笑)様」


 信じるわけがない。これを信じろという方がおかしいのだ


 「では証拠を見せるとしよう。さっきアンケートを書いただろ、そこの4番に地球上全ての技術を覚えるとあったな、試しにドイツで作ろうとしていた世界最強クラスの戦車の名前は」


 そもそも戦車の名前なんて興味がないのだから知るわけがな━━━くない!?
 なんだこの一瞬で思い浮かんだ名前は。


 「マクス・・・」
 「正解だ、これでわかったか」
 「いや、おまえが嘘をついているかも知れないだろ」
 「そんな必要はどこに。ほら」


 そういうとなにもなかった場所に突如本が出現した。それを促されるままとり光っているページを開くするとそこには一台の戦車が書かれていた。名前は━━マクス、生産国名は━━━ドイツだ!


 「これでわかったかの、そろそろ本題に入りたいのじゃが」


 確かにもしこの本が偽物でもたった今言った名前の戦車がそこに書かれている可能性はゼロに等しく、またなにも無いところから1ページだけ光る本を取り出すなどできる気がしない。 
 もしかしてこの自称神(笑)は自称ではなくて本当に神なのだろうか?いや神でなければあんな芸当は出来ないだろう。
 それに今思い出したが町で誰ひとりとして俺が刺されたことに気がついていなかったのはおかしい。
 宗時は渋々納得することにした。


 「やっと信じてくれたようじゃの、では次だがここは神界じゃ、そしてワシが君を一度殺したのにはわけがある。 
 それは━━━━」
 「それは・・・」
 「退屈だったかはじゃ」
 「はぃ!?」


 今この自称神(笑)改めて神はなんと言っただろうかたしか退屈だからとか言った気がするが気のせいだろうか・・・どうやら気のせいではないらしい。記憶力がよくなったせいで余計なことまで覚えてしまっていた・・・


 「ざっけんじゃねぇぞゴラァァァ」


 胸ぐらを掴みかかろうと手を伸ばすしかし、うまく掴めない、それどころか自分が転んでしまった。


 「あれ?」


 もう一度やってみる━━━やはりダメだ


 「ムリじゃよここはもともと無の世界、地面はないのだからな」
 「話の続きを摺るかの、で殺した。しかしすぐに生き返ってもらう。アンケートの5番に異世界転生したいと答えたじゃろ、今からその夢を叶えてやる。そしてワシの与えた力を使ってワシを楽しませるがよいわ」


 そう言って急に笑いだした。
 つまりだ、この神は自分がつまらないからという理由で俺を殺した上で生き返らせてまた自分のために面白いことをしてこいというのだ。


 「ふざけんじゃねぇ、なんで俺がてめぇのためにまたやらなきゃならん」
 「ではこのまま死ぬというのか」
 「は?」
 「だからいってるじゃろ最上君は一度死んだ、つまりもう生き返れない。だから別の体に生まれ変われと言っているのじゃよ」


 つまりはもともと俺に選択肢はなかったわけだ。


 「わかったよ」
 「よし、じゃあ転生する世界を選んでくれ」


 そう言って渡されたカードにはその世界の特徴と思われるものが書いてあった。 


 魔法技術が発達したため、武術の得意な者はいない。科学など機械技術も全く発達していない魔法に頼りきった世界。


 魔法技術はまったく発達していないが使えるものはいる。機械工技術はとても発達しているが、そのせいで食料問題などがある。


 機会も魔法も特出して発達しているわけではないが、今は平和な世界。


 さてこれならば答えは一つのみだ。俺がそのカードを選び渡すとなにやら神様はニヤリとした気がしたが気のせいだろう。


 そして現在に戻る


 『(→・→)『


 神様が開いた門?のようなものをくぐるとそこは木が生い茂り鳥の鳴き声が聞こえる森のなかだった。
 空気が美味しい、まるで父と行った軽井沢の森のなかのようだった。
 俺は起き上がり辺りを見回した。


 「お!目覚めたか、大丈夫か」


 そういわれたので体を見てみる。鳩尾辺りの服が裂けちが染み込んでいた。どうやら怪我をしていたらしい。


 「ん、まだどこか痛むか」
 「いや大丈夫だ。助けてくれたみたいでありがとう」
 「いいってことよ。ところでお前名はなんだ」


 この体は転生体だ、つまりこの世界での名前があるはずなのだが全く思い出せない。
 ここで適当な名前を言ってしまいもしこの世界でのこの体の知り合いに出会ってしまったら困るから適当なことはいえない。さてどうしたものか━━━━


 「もしかしてお前記憶喪失か」
 「ああそうかもしれない、今までのことが全く思い出せないんだ」
 「そうか、確かにその格好だと冒険者って訳でもなさそうだしな。それで魔獣に襲われたらトラウマになって記憶も飛ぶかも知れねぇな」
 「あぁすまない助けてくれたのに、とりあえず宗時とでも読んでくれ」
 「わかった、俺はマックだよろしくな」


 マックとは美味しそうな名前だな。うん印象的な名前だからすぐに覚えられた。


 「それで悪いがこの世界について教えてくれないか」


 そして俺はこの世界について聞くことができた。


 まず今いるここはカムサ帝国という国でこの世界で2番目に大きい国らしい、1番大きい国はサルハマラ及びメイラスト連合王国なので実質世界で1番大きい国ということになる。


 そしてこの世界には魔法というものがあり、そのなかにも詠唱魔法、無詠唱魔法、刻印魔法というものがあるらしい、刻印魔法とは魔石に使いたい魔法を魔方陣として刻印することで発動可能とする方法で理論上は全ての魔法が刻印魔法として使えるらしいが、その魔法の魔方陣が解明できずに作ることができないものが多いらしい。


 また言語についてはこの世界の人間は皆テレパシーのようなもので会話ができているらしく共通の言葉という概念はないらしい。
 しかし文字にいくつか種類があり。刻印したときにより強力な魔法が使えるのが神霊文字>聖霊文字>ルーン文字>エトワイセ文字となっているらしく、聖霊文字は複雑すぎで既に使える者は少ないらしい。また神霊文字は既に伝説上の失われた文字らしく資料としていくつかの文字が残っているが読むことができないらしい。


 と、まぁこんなことを教えてもらった。しかしこの世界はどうやら魔法文明が一度滅んでしまっているようだった。


 「ありがとう、なんとなくわかったよ。それでお礼をしたいんだけどなにも持っていないからすまないがギルドに案内してくれないか」
 「お礼なら要らないけど案内するのは構わないぜ」


 そうして俺たちは近くのアマスという町に訪れた。そこでギルド登録を済ませると早速依頼を選ぶことにした。


 「まずは採取系がいいだろ」
 「そうだね、そうするよ。そこでさ一つお願いがあるんだけど俺にも回復系の魔法教えてくれないかな」
 「いいけど魔法は教えられるものじゃないぜ」
 「え!そうなの!?」
 「ああ魔法ってのは━━━━っことだ。すまねぇな」
 「いいよありがとう。なんとなくできる気がしたから」
 「おいおいそれは無理だぜ」


 どうやら魔法とは自分の知識にあるものなら全て無から生み出せるらしい。しかしそこで問題となるのが詠唱と魔力だ。
 詠唱は自分の知識をより明確に言葉にすることで魔法を発動させる方法で、魔力はその魔法の規模によって消費するらしくこれは鍛えれは増えるらしい。ちなみに無詠唱魔法は固有魔法のようなものでよくわからないそうだ。


 「じゃぁ試しにやってみるよ。
  《炎よ》」


 ボッ


 「うそだろ・・・出来ちまったよ」


 やはり、俺にはラノベやアニメの知識がある。つまり詠唱はラノベやアニメに出てきた通りにすればいいということだ。さらにもともと詠唱なしの魔法は無詠唱で発動できるということだ。
 うん!現在俺はチート持ちになりました。


 結局俺達はパーティーを組むことになり、一緒に依頼をこなしその依頼と素材のお金から少し渡すことにした。


 こうして二人で冒険者として過ごしはじめて1週間がたった。


 「宗時これに出てみねぇか」


 そういってマックが見せてきた者は2枚の大会のチラシだ。


 「え~っと」


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 『世界最強戦士決定戦』


 参加方法
 各国で行われる大会で優勝したものがカムサ帝国で行われる本大会に出場できる。
 優勝したものにはギルドから可能な限りの願いを一つ叶える。


 『世界最強戦士決定戦予選カムサ大会』


 参加方法
 王都コロッセオで参加料銀貨5枚を払い体のどこかに刻印をされること。


 優勝したものは何でも願いを一つ叶える。


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 「いいぜ、じゃあ王都に向かわないとな」
 「ああ、準備はいいかいくぞ。
 《万里万里彼方我その地へ運ばん》」
 「いや~何度みてもこの魔法すげぇな」


 そう既にここはカムサ帝国王都ラグナスの都である。というのも今宗時が使った魔法は転移魔法というもので長距離を一瞬で移動する魔法だ。他にも黙視できる範囲なら一瞬で移動できるものもある。ちなみにこれは無詠唱魔法だ。


 「とりあえず受付を済ませて来ようぜ」


 そうして俺達はコロッセオにて受付をしに行った。


 「では最後に今大会では死ぬ場合がありますがよろしいですか」
 「もちろんだぜ」
 「はい」
 「では銀貨5枚確かに受けとりました。こちらが参加証明の刻印です」


 そうして手の甲にそれぞれ刻印をしてもらう。大会はさらに一週間後それまでは各自準備期間だ。そこで俺達は高額な報酬の依頼を求めてギルドへ往くことにした。


 「おおさすがは王都、いい依頼が揃ってるぜ」
 「これなんかよくない」
 「おおじゃあ俺はこれな」


 そういって受付を済ませる。宗時が受けたのは手紙を渡す依頼、マックが受けたのは討伐依頼だ。どちらも銀貨8枚となかなかに高額な依頼だった。ちなみにこの世界のお金は金貨>銀貨>銅貨となっている。銅貨は銀貨1000枚分、銀貨は金貨1000枚分という具合だ。アマスでは依頼で貰える報酬はせいぜい銀貨1枚分だったからなかなかだ。


 そうしてさっさと依頼を届けて討伐も済ませると宿で飯を食い寝た。それからというもの毎日そうして暮らしていた。


 〔”⇔“〕


 一週間がたった。稼いだ金で装備は揃えた、とは言っても買ったのは素材で作ったのは宗時だが・・・
 そうしてコロッセオに着いた二人は刻印を見せなかに入った。


 「さ~ついにこの日がやってきました。優勝するのは誰か。まずは皇帝陛下からの挨拶があります」
 「今日はよく集まった。今回の大会ではうちの騎士団員も参加する逃げたいものは逃げるがいい。しかしここで逃げるのは腰抜けのすることだ!さぁ勇気を振り絞り勝利をつかみとれ、我が国に世界一の称号を持ってくるのだ!!
 諸君の健闘を祈る」


 皇帝陛下がそう挨拶をすると一瞬の静寂のあと辺り一面はものすごい熱気と叫び声で溢れかえった。


 「次に今大会の説明です。今大会は一回戦を10グループにわけたバトルロワイヤル形式で行い勝者1名は後日から1対1で行われる2回戦目に参加できる。2回戦目は1日5試合行われる。その後勝ったものは後日3回戦目に参加する。この日は2試合行われ買った者は準決勝進出となる。準決勝からは1日1試合づつ行う。グループの選定は自分の刻印の色を確認するように」


 刻印を見てみると俺は青、マックは緑に光っていた。つまり俺は2試合目、マックは3試合ということだ。試合開始まで俺達はのんびり話ながら過ごすことにした。


 「一試合目勝者ガザフ~。次は2試合目だなんといっても注目は騎士団服団長のロゼフだ。鬼と言われたロゼフに勝てるものはいるのか~!」


 実況のその声と同じに開始の合図がなった。


 宗時は常に全力で戦う。これは祖父に教わったことだ。戦闘で相手がわざと手を抜いて隙を狙っているかも知れない。それに手を抜くのは倒す相手に失礼だとずっと言われてきたのだ。
 だから今回も出し惜しみをせず全力でいく。


 《この幸せを分け与えん。その幸せの名は、死ああなんという甘美なる響きか》


 宗時がそういい終えると同じにライトニングドラゴンが発動し、戦場にいる全ての者を飲み込んだ。


 「ぐぁぁぁ」


 そこかしこから雷に射たれ悲鳴をあげながら倒れていく人、人、人。その中に一人剣で支えながらも立っているものがいた。


 「うぉぉぉ!なんだ今の魔法は誰が見たことあるでしょうか。とんでもないものが現れたー!
 しか~し、あれを受けて立っている者がいる。そうロゼフだ!」


 ロゼフは一人ごちていた。


 「なんだあの魔法は化け物ですか!!」


 ロゼフが今立っていられたのは彼の固有魔法《魔法遮断》のおかげた。それでもこれだけのダメージを受けてしまったのだ。恐ろしすぎる。


 「さぁ第2ラウンドの始まりだ~」


 「今の魔法すごかったですね。私はロゼフといいます。お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
 「ありがとうごさます。俺は宗時っていいます」
 「そうですか、では宗時君手加減したら私は負けてしまうのでもし生きて残れたなら騎士団への入団しませんか」 
 「考えておきます。ではそろそろ続きを始めますかっ!」


 そういうと宗時は地面に手をつき《高速錬成》を発動、一振りの刀を作り出すと《瞬間移動》を使いロゼフの後ろに回り込み最上流抜刀術《つばめ返し》を使った。
 これはとても早い剣速で三方向からほぼ同じに斬りかかる剣術だが、これに振り下ろす瞬間刀の重さを増し威力を上げる工夫をしている。これをロゼフは気配だけで前方に転がりよける。宗時はそれを追うことなく残心の体制をとったまま構え直した。
 呼気を整えると《瞬脚》を使い今度は目の前に一瞬て肉薄する。そうして今度は右袈裟をかけるふりをして突きをだす。


 パキッン


 そんな音と共に刀が中程かは折れてしまつまた、ロゼフが《金剛》を発動したのだ。
 しかしそれにあせることなく素早く《メテオアーツ》を発動した。そのままロゼフに掴みかかり柔術《枕投げ》を使うもちろんこれもロゼフの重さを増して威力を上げた。
 ここまで一方的な展開を見せる宗時とロゼフの戦いに観客は声を失っていた。
 しかしロゼフを叩きつける瞬間ロゼフが宗時の体に電流を流す。それを受けた宗時は一瞬意識を手放しそうになるもそれをこらえた。
 しかしその一瞬でロゼフは体制を立て直すとすぐさま足を斬りかかる。宗時はそれを受けてしまい完全に体制を崩した。
 《瞬間移動》を発動しできる限り距離をとると《天使の祝福ゴッドヒーリング》を発動しすぐさま治した。そして《ライトニングドラゴン》を発動した。さすがに2回目のこの攻撃には耐えられなかったロゼフはそのまま倒れた。


 「勝者宗時~。なんと優勝候補のロゼフを倒しての2回戦進出だ~!!」


 宗時はロゼフのところへ行くと《天使の祝福ゴッドヒーリング》を発動し戦場をあとにした。


 《・⇔・》


 「お!目覚ましましたか」
 「ここは・・・」
 「大会の控え室ですよ。それよりも自分でやっておいてなんですけど大丈夫ですか」


 第2試合でこのロゼフさんに勝った俺は全員に回復魔法をかけるとこの人を連れて控え室に来ていたのだ。


 「問題ない、ありがとうごさます」
 「それは良かった」
 「いやそれにしてもお強い。ほんとこの大会が終わったら是非騎士団に入ってほしいですよ、なにせあなたはこの国最強の騎士に勝ったのですから」
 「いやいや、さすがに団長さんには勝てないと思いますよ」
 「ほんとですよ。私の固有魔法《魔法遮断》はこの世界では天敵のようなものですからね。団長の剣の腕は私よりも上ですが魔法を絡めると断然に私が上ですからね」
 

 つまりは本当にこの国最強になってしまったようだ。


 「はやい、はやすぎる圧倒的だ~!勝者レオナルド~。さすが団長の名は伊達じゃないぃ!!」


 どうやら終わったようだ。残念ながらマックは勝てなかったらしい。 
 暫くするとマックが運ばれてきた。かなりの重症だ、宗時はすぐさま《天使の祝福ゴッドヒーリング》を発動する。


 「お疲れ」 
 「おう負けちまったぜまさか初戦で団長に当たるとはな。運がない。
 それにしても宗時、やったじゃねぇかすげぇよ服団長に勝つなんて。さすがだな」
 「ありがとう。でもあまり本人の前で言ってやるなよ」
 「いやいいですよ。それよりもご飯に行きませんかいいお店紹介しますよ」
 「本当ですか、マックいいか?」
 「ああいいぜ」
 「じゃあお願いします」


 そうしてロゼフさんと食事をして仲良くなり今日はお開きとなった。
 ロゼフさんがなぜ鬼などと呼ばれているのかは不思議だが何か嫌な予感がして聞くことがでになかった。
 明日は2回戦なので今日は早くに休むことにした。


 次の日、
 今日の宗時の試合は第1試合だ。対戦相手はガザフである。戦いかたはきになるところだが今さら考えても遅いので初っぱなから全力で行くことに集中することにした。


 「さあ第2回戦第1試合はガザフVS宗時だ~!宗時は優勝候補を倒した実力者、対してガザフは謎の戦闘方法でいつの間にか勝っていた実力のわからない男だ。いったいどんな試合になるのか楽しみだ~!!」


 そういい終えると同じに試合開始の合図が鳴った。見た目は黒いフードをかぶり黒いマントを着た本当に謎な男だ。
 しかし宗時のやることに変わりはない。


 《正義の光よ彼のもの裁きを与えん》


 それをいい終えるとホワイトハリケーンが発動した。もちろんそんな詠唱を待ってくれるほど相手も優しくはない。何度も《瞬間移動》を使い攻撃を避けながらの詠唱だ。
 ガザフは宗時の魔法に呑み込まれると全身に焼けただれたあとを残して落ちてきた。
 もちろん殺してはいない。
 しかしあっけなかったもう少し手応えがあれば良かったのだが・・・


 「勝者宗時~。強いこの男強すぎる~!!」


 試合を終えると控え室には行かずそのまま観戦に行った。なぜなら恐らくこの男が今大会で一番の強敵となるからだ。


 「お!お疲れ~」
 「お疲れ様です。本当に凄いですね」
 「ありがとう」


 それだけいうと試合の観戦に移った━━━━
 試合の結果は圧勝だった。戦い方すらわからないほどの瞬殺だった。(殺してはいないけど)


 「あれじゃわからないな」
 「ああ、でも恐らく身体強化の魔法を使っているんじゃないか」
 「当たりです。団長は身体強化の魔法の使い手です。しかし魔法もなかなか強いですよ」


 今日は団長が身体強化の魔法を使うということを知れた事が一番の収穫だった。しかし次の日の試合でもそれ以上の収穫を得られないまま決勝戦の日となった。


 」《━━》」


 「さぁいよいよこの日がやって来た。勝つのは天才魔法使い宗時か、それとも騎士団長のレオナルドか、いま勝負の火蓋はきっておとされた」


 試合開始と同じに今回もホワイトハリケーンを使用した。
 しかし案の定レオナルドはその攻撃に耐えてきた。
 レオナルドはそのまま《身体強化》で強化した脚力で一気に肉薄し、袈裟懸けに入った。しかしその攻撃を《瞬間移動》で背後に回り込み避けるとそのまま無理やり回転斬りを仕掛けてきた。それをバックステップで避けると遠くへ逃げ詠唱を開始した。


 《雨が降る。死の雨だ。今星は死ぬであろう》


 宗時は詠唱を終えると同じに全力で跳ね上がったそれと同じにそれはやって来た《星の雨メテオレイン》戦場に無数の小さな石があり得ない速さで堕ちてくる。その早さは100キロを越えていた。レオナルドは必死でそれを弾くが徐々に数が増えて行きやがて防ぎきれなくなった者が足を穿ち、腕を穿つ。足の腱が切れ立てなくなり宗時が眼前に剣先を向けたところで試合は終了した。


 「勝者宗時~!!なんとレオナルドを破りこの国の頂点にたった~」
 「まずはお祝いの言葉を述べるとしようか、おめでとう宗時くん。見事だった」
 「ありがたきお言葉」
 「そこでだここで聞こう。そなたの願いはなんだ」
 「はい、私の願いは知識です。この国にある全ての本の閲覧権をください。もちろん政治に関するものは見ません。研究資料や歴史書等がみられればいいのです」
 「そんな事でいいのか、ならばよかろう。ここに皇帝として宣言する今後宗時に対しての書物及び研究資料などの一切の知識を開示する。またこの者は一月後この地で行われる世界最強戦士決定戦の我が国の代表となったみな応援するように!」
 「ありがたき幸せ」


 そうして無事優勝することができた宗時は控え室でだら~んとしていた。


 「お疲れ、まさか優勝するとはな。しかしまさか優勝した願いが知識のためとはな、面白いやつだぜ」 
 「ほんと凄いですね宗時さんは、その無欲さ人として騎士として尊敬しますよ」
 「そんなことないよ。そういえば陛下に呼ばれてるんだった、行ってくるね」


 〔\@▼@/〕


 そうして宗時は王宮に来ていた。


 「私はラスノマ=カムサだ、改めておめでとう宗時君、今回君をこうして読んだのには訳があるんだ」


 まぁそりゃ訳もなく呼ぶわけはないよな。なんてどうでもいいことを心のなかで思いながら続きを促した。


 「今回君はうちの団長と服団長を正面から打ち破った。この意味がわかるか」
 「はい」


 それはもちろん力の問題だろ。これだけの大国の騎士団の一番と二番が揃って負けたのだ。しかも無名の冒険者に、これは外国から何か仕掛けられる可能性が高くなってしまう。


 「そこでだ。騎士団に入ってくれないか」  
 「お断りします」
 「その発言、もし私がお前を反逆罪で処刑すると言っても言い逃れできないぞ」 


 そういうと一気に圧力をかけてきた。普通の人ならそのまま気絶してしまうのではないかというほどの強力なものだ。さすが行程だ。


 「あなたはそんな事をする人じゃないですよ」 
 「なぜそういいきれる」
 「目を見ればわかります。こう見えて私人をみるめはあると思うんですよ」


 そうして圧力をかけ返す。倍にしてね


 「ふっ、ふははははは。面白い、ここからは皇帝としてではなく普通の人として話そう」
 「あなたって面白い人ですね」
 「お互い様だ。して宗時君、君は何者だ。まさか普通の人間ということはあるまい」
 「目がいいのもお互い様のようですね。
 確かに私はこの世界の人間ではありません━━━━━」


 そうして俺は地球のこと等を話した。もちろん神様のことは言っていない。さすがにこれは不味いと思ったのだ。


 「そういう事か、それで知識が欲しかったわけだ。
 やはり惜しい、宗時君一つ取引をしないか。君は騎士団に名前だけおく、もちろん仕事をしなくていい。こうすることで他国への抑止力となる。そうして君にはその見返りとして毎月銀貨100枚の給料をやろう」
 「いいでしょう。その取引応じます。では給料はギルドに入れて貰うという事でいいですか」
 「もちろんだ」


 こうして俺は安定した収入源を得ることに成功した。それと同じに、事実上皇帝がバックに着いたのだ。最強すぎる・・・
 その後少し話をしたあとは早速王宮の書庫に向かった。さすがお城でだとても沢山の本がおいてあった。文字も問題なく読むことができた。
 というのもエトワイセ文字を使ってある本が多かったのだがこれは地球でいうところの英語(アメリカ英語)と同じたったのだ。他にもルーン文字もそのまま地球にあるものと同じだし、聖霊文字というのも中国語だったのだ。
 この日から毎日この書庫で本を読むようになった。おかげで王宮の使用人や警備の騎士に貴族の方とも話すことができた。
 しかし一つ問題ができてしまった。それはそう彼である。


 「宗時様、何を読んでおられるのですか」


 犬のように尻尾を降っている姿と体から溢れるような幸せオーラを幻視させている少年、彼の名はサウドス=カムサといい、名前の通りカムサ皇帝の息子だ。
 しかし彼の問題はそこではない。それは━━━、
 “それは彼が宗時に恋心を抱いてしまっているのだ”というのも先日はじめてあったときの事だ━━━


 (。.。)


 「おお、いいところにいた。紹介しようこれは私の息子のサウドスだ」


 そう紹介されると一歩前にでてお辞儀をすると胸に手を当てた。


 「初めまして、サウドス=カムサといいますどうぞよろしくお願いいたします」
 「初めまして、宗時です。こちらこそよろしくお願いします」
 「じゃあサウドス私は仕事があるからまた後でな」
 「はい、お父様」


 ラスノマが仕事に行き完全に見えなくなると一瞬でその場の空気が変わった。


 「宗時様少しよろしいでしょうか」
 「様」
 「ああ~、すみませんお気に障られましたか」
 「いや、大丈夫ですけど。一国の王子が一冒険者に対しての様付けは示しがつきませんよ」
 「それならば良かった。宗時様の事が好きです!どうか私の嫁として結婚してください」


 え~今彼はなんと行ったでしょうか、私には好きがなんやら結婚がなんやらと言っていた気がするのですが・・・
 ああそうか、あれですね。好きな人がいて結婚したいので相談にのってもらえませんかと、そういう話ですね。


 「あの、もしかしてお婿さんの方が良かったですか?私ならどちらでも構わないので」


 うん、どうやら俺は夢を観ているようだ。しかもとてもたちの悪い夢を。夢とはその人の記憶、または願望を叶えるものじゃないのか?


 「ああ、すみません。なんか夢みたいですね」
 「ほんとですか!?夢のように嬉しいと、ああ私はなんて幸せなんだろうか」


 え~とこの王子様は変な解釈をされているようだ。本当にたちが悪い。夢なら早く覚めてくれ!!そう思いおもいっきり顔を叩いてみた━━━
 痛い、どうやら夢ではないらしい。と、いう事は今はかなりヤバイ状況なのではないだろうか。


 「では、お父様とお母様に報告して参りますね」


 そういって今にもスキップして行きそうな気配を漂わせながら報告しに行こうとした。


 「ちょっ待ったー!!」
 「なんですか宗時様」
 「お前は勘違いをしている。俺はお前の事は好きではないし、結婚するつもりもない。そもそも男は俺の守備範囲外だ!」
 「そうですか、そうですよね、すみませんでした」


 そういってトボトボと歩いていくサウドス王子を見送る。とんでもない者に目をつけられてしまった・・・


 (。.。)


 ━━━とまぁこんなことがあり、それ以来何かとあとをついてくるのだ。 


 「これは英雄譚だよ」
 「なぜそのようなものをお読みになっているのですか」
 「それは新しい強力な魔法を作るためだ。知っていると思うけど、魔法と言うのは知識をどれだけ言葉として表現できるかなんだよ。つまりこうゆう話に出てくる強力な力は強力な魔法になりうるということなんだよ」


 そう説明すると本を閉じた。ここ数日でこの書庫の半分位の本を読むことができた。
 なぜなら神様にもらった記憶力アップの効果でページをみるだけでそこに書いてある一言一句が完璧に覚えられるからだ。こうして俺はページをひたすらめくり続ける作業をしているのだ。
 しかしこの書庫、全く整理されておらずどのような本がどこにあるのかが全くわからないのだ。なので目的の本を探しながら整理をしているのだ、もちろん許可をとって。
 そうして今読んでいた英雄譚をそれらのある棚に移すと新しいのをめくった。


 「あった・・・」


 そうやっと見つけたのだ。
 その本に書かれているものは刻印魔法についてだ。それを素早くめくり終えると、俺は走って皇帝のもとへ向かった。


 「陛下、宗時ですよろしいでしょうか」
 「なんだ、入っていいぞ」
 「失礼します」
 「どうしたんだそんなに慌てて」
 「すぐに魔石を用意してください。わかったんです」


 そう興奮ぎみにいう。


 「まてまて、何がわかったんだ」
 「神玲文字がですよ!」
 「なにぃぃ!!わかった今すぐ手配しよう」
 「あとこの事は内密でお願いします」
 「わかっておる」


 そう興奮冷め止まぬまま陛下は走っていってしまった。それを見送ると宗時は椅子に腰かけた。
 薄々予感はしていたがまさか本当に神霊文字が●●●だったなんて・・・
 数分がたつと陛下は片手には収まりきらないほど沢山の魔石を持って戻ってきた。


 「では始めます」


 宗時は一言そういうと刻印魔法の生成に取りかかった。


 刻印魔法の生成には3つの行程がある。


 1、魔石に流れる魔力と自分の魔力の同調


 2、魔石への刻印


 3、刻印された魔石に詠唱を記録する


 以上だ。


 常人では1つ目の行程すらできない、また1つ目の行程をクリアしたとしても2つ目の行程でほとんどの人が刻印出来ないから刻印魔法は難しいのだ。
 宗時は1つ目の行程を難なくクリアし、2つ目の行程も簡単にクリアした。 
 最後は詠唱の記録のみだ。今回作る刻印魔法は今まで詠唱が長すぎて使わなかった魔法━━━


 《ああ人間よ。憐れなるかな。そこは死地と化す。生物に限らず全ての者には等しく死を。天も大地も海も止まる。さあ死よ。死よ。死よ。死よ。我はそなたを導く者なり。そなたが与えるのは幸福か。絶望か。運命の輪は周り始めた。さあ宴の始まりだ。今宵は最後の宴。最初で最後の宴。ああ素晴らしい。素晴らしい。全ての者に安らぎを》


 《ニヴルヘイム》だ。この魔法は一度発動すると半径5キロメートルの範囲に、あるものを一瞬にして氷付けにする魔法だ。他にもあと2つの刻印魔法を作った。1つは回復系のものでもう1つは実験用に《ファイアーボール》の魔法を入れた。


 「完成しました」
 「そうか、ではすぐにコロッセオにいくぞ」
 「はい」


 俺達はすぐに転移魔法を使ってコロッセオに行った。結果は聖霊文字の《ファイアーボール》では的が壊れただけだが、神霊文字の《ファイアーボール》では的を突破して壁を少しえぐってしまった。


 「宗時、これは私とお前二人だけの秘密だ。絶対に口外するな、こんなものがバレたらいよいよお前は死ぬぞ」
 「わかりました。でもまさか神霊文字が日本語だったなんて驚きですよ」
 「あぁ私もまさか宗時君の元の住んでいた国の言葉とは驚いたよ」


 そうして俺達二人はこの事を口外しない事を約束し王宮に戻った。
 そして月日は経ち、書庫も全て読み終えた宗時は再び冒険者として活動している間に時間は一気に過ぎて行き世界最強戦士決定戦の日がやって来た。


 (●¥:¥●)


 「よし、頑張れよ」
 「頑張ってくださいね」
  
 ロゼフとマックからそう声援を貰うと会場へ入ろうとしたその時。


 「待った。頑張れよ!」


 そう言ってきたのはレオナルドだ。応急で本を読んでいた時期に度々練習に付き合っていたら仲良くなったのだ。


 「ああ皆ありがとう。行ってくるよ」


 「さあついにこの日がやって来ました。世界最強戦士決定戦。果たして優勝し最強の名を手に入れるのは誰なんだ~!!」


 そういうと会場の観客が一斉に沸き立ち大気が震えた気がした。


 「ルールを説明します。今大会の参加者は16人、1対1のバトルをし、相手が降参するか戦闘不能と判断された場合終了となります。1日目は4試合行い。2日目は2試合準決勝を行い、3日目が2試合、決勝と3位決定戦を行います。
 では早速1試合目━━━━━」


 俺は最後、4試合目にサルハマラ及びメイラスト連合王国のダイ選手との試合があるのでそれまで休むことにした。


 「勝者ブリテン騎士王国のハルトだ~!見事な剣技で危なげなく2回戦進出だ~!!」


 どうやら終わったらしい、とゆうことは次はいよいよ俺のばんだ。しかしブリテンとは・・・なかなかこの世界も面白いと思い始めた。
 あの神には恨みしかないが・・・


  「次は本日最後の試合だ~!カムサ帝国の宗時VSサルハマラ及びメイラスト連合王国のダイ~!!
 宗時は騎士団長と副団長を倒した実力者、ダイは侍と呼ばれる一族の末裔だ、その一族の宝刀ムラマサを持っての参戦だ!どんな戦いになるのか楽しみだ~」


 そういい終えると同じに開始の合図がなった。それと同じに《ライトニングドラゴン》の詠唱をする。相手は侍というだけあって甲冑に身を包み腰には刀を挿していた。


 《この幸せを分け与えん。その幸せの名は、死ああなんという甘美なる響きか》


 そう詠唱を終えるとダイに向かってそれを放った。
 しかしそれをダイは剣で断ってみせた。そのまま今度はダイの姿が消えたかと思うと背後をとられておりそれを《瞬間移動》で避ける。なかなかのスピードだ。
 しかし今度は宗時が《高速錬成》を使い一振りの刀を造り出す。それを正眼に構えると脚に力をいれ一気に肉薄する。
 刀と刀が正面から打ち合う。両者力は拮抗しているが徐々に宗時の刀に亀裂が入っていった。
 さすがは宝刀ムラマサである。(まぁ日本では宝刀ではなく夭刀だが)。今の打ち合いでも一切刃こぼれした様子がない。
 宗時は高速錬成で手裏剣と棒手裏剣を作り出しダイに投擲する。そのことごとくをダイは刀で打ち落とすが、最後の一投に触れたとき爆発が起こり、ダイは爆風で後方へ吹き飛んだ。
 その一瞬で宗時はダイの背後へ回り込むと刀を持つ手の腱を手刀で叩き刀が宙を舞う。そのまま腕を掴み飛んでくる力を利用して地面に叩きつけた。そして墜ちてくる刀の柄を掴むと刃先をダイの首筋にピタリと付けた。


 「王手」
 「勝者宗時~!なんだこの力は、誰がこれを止められるのか~」


 宗時の勝利宣言と共に会場からは拍手や雄叫び(?)、黄色い声までが聞こえてきた。
 宗時はそのまま控え室をでて宿に戻った。さすがは本戦とだけあってなかなかの強者だった。そう戦闘の余韻に浸ったいると不意にドアがノックされ、マック達が労いの言葉をかけにやって来た。そうして話していると今度は宿の人が呼びにきた。
 どうやら誰かに呼ばれているらしい。


 「始めまして、私ブリテン騎士王国騎士団団長のハルトと申します」
 「始めまして、俺は冒険者の宗時だ。それで何のようですか」
 「いや、明日の試合相手に一言挨拶をと思いまして。明日はどうぞよろしくお願いします」
 「こちらこそよろしく。いい試合にしよう」


 そうして二人は固い握手を交わした。明日はいい試合になりそうだ。




 そして次の日


 「さあ今日一番の注目の試合がやって来た~!
 騎士王国騎士団長ハルトVS宗時!!優勝候補同士の戦いだ~!!」


 そうして試合開始の合図が鳴った。


 「それではよろしくお願いします」
 「こちらこそよろしく。どうだ、今回は純粋に剣の勝負といかないか」
 「宜しいのですか、あなたの武器は強力な魔法だと思っていたのですが」
 「いいさ、騎士との戦いに魔法なんて邪魔だ!」
 「そうですか、では純粋に剣の勝負を楽しみましょう」


 そうして二人の意見が合致すると宗時は音響魔法を使って声高々に宣言した。


 『今回、我々は魔法を一切使わない剣でのみの勝負をする。どうかその姿をよくみてほしい!』


 宗時はかつてないほどに心高ぶっていた。


 最高だ、最高に楽しみだ。こんないいやつと戦えるなんて。今だけなら思う“神様ありがとう!!”と、


 「では行きます!」
 「はい!」


 そうして俺達の戦いは始まった。


 互いに全力でけんけんを合わせる。一太刀、二太刀、打ち合う数をますごとに徐々に俺は押されていった。
 さすがに剣技を磨き続けてきた人とでは一太刀の重さが違い過ぎるな。でもなんでだろう。どうしてこんなに楽しいんだろ。


 「ハルトさん」
 「なんですか宗時さん」
 「俺今最高に楽しいんですよっ!」
 「奇遇ですねっ!私も今同じ事を思っています」
 「それで、隠していた事があるんですけど、これが終わったら少しいいで、すかっ!」
 「はい私もお話しなければならない事がありますのっで、少し付き合ってくださいね!」


 そうしてまた剣を刀を打ち合う。そして距離をとると互いに隙を伺うようににらみ合う。
 暫しの静寂━━━それを破ったのはハルトだった。一気に間合いをつめると上段から斬りかかった。それを宗時はバックステップで避けると一気に踏み込んだ。
 しかしそれをハルトはかわすと両者睨み合い、そして同じに動いた。ハルトは中段からの流れるような剣筋を残して、宗時は最上流剣術秘伝折し切りへしぎりを使って。両者そのまま背中を向けながら残心の構えをとった。


 パキッン


 そうして折れたのはハルトの剣だった。


 「残念、私の負けだな」


 そうして二人の戦いは幕を閉じた。


 「勝者宗時~!!ハルトを破って決勝進出だ~!!」


 最後に握手を交わすと二人は揃って手を天に突き上る。これぞ友情というものである。
 そのまま二人はお互いを支えるようにして会場をあとにした。


 「おめでとう宗時くん」
 「ありがとう。勝てたのはハルトさんと勝負している中で俺が成長できたからだ。それで話があるんだ」
 「ああ私もだ」


 そうして俺は全てを話した。地球の事も、そして神様についても━━━


 「そうか、ならば私はその神様に感謝しなければならないな。そうしなければ私が君と出会えることはなかったのだから」
 「ああそうだな、俺もあの人は嫌いだが今回ばかりは感謝しているよ」
 「それでは私の話なんだが」
 「ああ、言ってみろよ」
 「実は私は女なんだ」
 「ああ知っていたよ」


 そう実は打ち合った瞬間筋肉の動きが男のそれではなかったのだ。というのも祖父から筋肉の動きを見て相手の次の動きを予測する方法を学んだのだが、その時手合わせしたどの男とも筋肉の動きが似ていなかったのだ。
 しかし女と手合わせしたときみた筋肉の動きとそっくりだったのだ。それに手を握ったとき、確かに鍛えている手ではあったがやはり男にしては柔らか過ぎたのだ。


 「ほぇ?」
 「なんだよその可愛らしい声は」
 「も、もう1つあるんだ、実は私はお姫様なんだぞ」
 「・・・・」
 「驚き過ぎて声もでないか」
 「あぁとても驚いたよ」


 女は知っていたがまさかお姫様が騎士をしているとは思わなかったのだ。


 「そ、そこでだ。その、あの━━━。
  わ、私と結婚してください!」
 「さすがにまだ結婚は出来ない」
 「どこが、どこかダメなのでしょうか」
 「ダメなんじゃない、結婚はまだできないと言うことだ。もしよければ俺と付き合ってください!」
 「はい、喜んで!」


 彼女はそういいながら帽子をとった。するとそこから美しく長い黒髪が溢れだし満面の笑顔を向けてきた。思わずその表情にドキッとした俺は抱き締めてしまいそうになる手を必死で抑えた。


 「その、今お父様が、ここに来ておられるのですが紹介しても宜しいでしょうか」
 「あぁもちろんだ。俺も立場があるからかカムサ陛下に紹介してもいいか」
 「もちろんです。それで私の本当の名前はスクリナ=ブリテンといいます。どうぞよろしくお願いします宗時さん」
 「こちらこそよろしくスクリナさん」


 そのまま二人は各国の国王が集まる場所に向かった。


 「失礼します宗時です。カムサ皇帝陛下今よろしいでしょうか」
 「すまないがあとにしてくれ」
 「スクリナです。よろしいでしょうか」
 「なにスクリナ姫がここに?よろしい、入ってくるがよい」
 「ちょうど良かったですわ、お父様お話がありますの」


 どうやらカムサ陛下と話していた人がスクリナのお父さんだったらしい。


 「なんだ、場所をわかっているのか」
 「はい、承知の上でお話があり参りました。私スクリナ=ブリテンは宗時様に婚約を申し込みました」
 「なに!?」
 「カムサ皇帝陛下、私もお話がございます。私宗時はスクリナ姫とお付き合いをさせて頂きたく思います」
 「は?」


 二人の目が点になってしまった。


 「えっとつまりなんだ、スクリナは結婚を申し込んだしかし急に結婚はあれだから付き合うということになったのから」
 「そう言うことですわ」
 「わかった少し待ってくれ」
 「少し二人で話す事ができた」


 そういって二人はなにやら話始めた。スクリナは手を握ってくるし、一部からは鋭い視線が飛んでくるものだから居心地が悪くて仕方がなかった。俺がそんな居心地の悪さに耐えることおそらく数十分━━━


 「よし、二人とも話がある」
 「まずは自己紹介をしょうか、私はペンドラゴン=ブリテン。ブリテン騎士王国の国王だ」
 「初めまして宗時ともうします。どうぞよろしくお願いいたします」
 「まずスクリナと付き合う事は問題ない。しかし条件がある。まずブリテンとカムサの同盟の強化を行う。更にここで君の立場と君の完成させた技術について発表しようと思う。いいか」
 「わかりました」


 そうして俺達はブリテン国王とカムサ皇帝につれられて部屋の中心へとつれてこられた。


 「聞いてくれ今ここにブリテン王国とカムサ帝国はスクリナ=ブリテンと宗時の交際及び婚約を公式に承認する。ついては宗時の立場について説明する。
 宗時は我がカムサ帝国の騎士団に所属している冒険者である。また彼は長年解明できなかった神霊文字の解明とそれによる刻印魔法の生成に成功した」


 こうして俺達は公式に認められ、そのことにより各国の王から挨拶にこられまたも居心地の悪い思いをする俺、そのあとは王様二人とスクリナと一緒に食事に行っくとうイベントを終えて就寝についた。


 (*・*)


 「さぁ~いよいよ本大会も終わりを迎えようとしている。ノックVS宗時。どちらが勝つかわからいない!さあ優勝者し世界最強の名を手にするのはどちらなのか~!!」


 その声と同じに斬りかかろうとした俺は動きを止める事を余儀なくされたのだ。


 「グァァァ!!アァァァ━━━━」
 「なんだなんだ!ノック選手の様子がおかしいぞ~」


 その声に反応したかのように背中の鎧が壊れそこから2枚1対の漆黒の羽が現れた。
 そいつは既にノックの面影すらない。ノックだった何かだった。
 そいつの口が裂けニタァとした笑みを浮かべたように見えた次の瞬間、地面が捲れあがり其を掴むと俺ではなく観客の方に投げたのだ。
 俺はとっさに《瞬間移動》で岩の前に行くとそれを全力で叩き割った。
 こいつは危険だそう心が警報を鳴らす。しかし俺は其を無視するとノックだった何かを消すことを決意した。その間もそいつは魔法を無差別に放つなどしている。俺はその全てを《瞬間移動》を使い防ぐと《反質量アンチマテリアル》を発動した。
 これはありとあらゆる質量体を消し去る魔法だ。それをノックだった者に放つとそれは跡形もなく消え去った。


 「しょっ、勝者宗時~!」
 

 こうして長かった大会は終わりを告げた。ちなみにハルト改めスクリナは3位決定戦に勝利したが、2位の人が消滅したことにより繰り上げされ2位となり相手の人は3位となった。


 「━━では優勝し見事最強の戦士となった宗時君の願いを言ってみたまえ」
 「はい、今の私に願いはありませんので保留でお願いします」
 「了解した。では諸君新たに生まれた最強の戦士宗時君に盛大な拍手を!」


 すると、会場の全ての人が拍手やお祝いの言葉を送ってくれている。
 すると今度はペンドラゴンさんとラスノマさんが現れた。


 「諸君、私はカムサ帝国皇帝だ」
 「私はブリテン騎士王国国王だ」
 「我が国の騎士宗時はこの度━」
 「私の国の姫スクリナと交際、婚約をしたことをここに発表する」


 会場にどよめきが走った。今さらだがスクリナと俺では立場的には釣り合っていないな~と思ったりした。
 まぁそんな事は関係ないのだが・・・


 こうして発表を終えると俺はやっと会場を出ることができた。


 「お前なに知らないうちにお姫様と婚約してんだよ~」
 「私もビックリしました。それにいつの間に騎士団に入っていたのですか」
 「それは━━━」


 王宮であったことと、大会の最中にあったことを全て話した。


 「そうだったのですか。しかし良かったですね、おめでとうございます」
 「ありがとう」
 「まぁほんと出会って2ヶ月位でまさか親友が王族になるとはな、こりゃ話し方変えなきゃかな?宗時さま」
 「やめろって、別に今のままでいいよ」


 そうワイワイ夜まで話し込んだ。
 そして次の日、今日はスクリナとデートだ。都の中央で待ち合わせお店をみてまわった。服に、カフェ、普通のデートをして過ごした。
 とても楽しい夢のようなひとときを過ごすことができた。楽しい時間はあっという間に過ぎて行きすぐに日もくれてしまった。俺はスクリナを王宮まで送ると宿に戻った。


 しかしこう楽しい日々はいつまでも続くわけではない。あの日の出来事から静か過ぎたのだ。
 そう、まるで嵐の前の静けさのような━━━━



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