神様は酷いやつだった

ノベルバユーザー313493

魔王侵略編中編

 嵐がおさまるとそこには二人。いや一人と一体がいた。


 「宗時さん!」
 「宗時!」


 そう声をかけると宗時の体がぐらついたからと思うと急に倒れてしまった。
 しかし宗時はそのまま地面に激突することはなかった。なぜならもう一体が宗時の体を支え助けたからだ。


 「ぐっ!」
 「大丈夫でございますか、宗時様」
 「ああ、すみませんありがとうございます」
 「そのような言葉遣いは良くない、私は宗時様の下部なのですから」
 「そうか、成功したのか」


 どうやら召喚は成功したらしい。しかしなかなかに体力を持っていかれたようだ。体から力が抜けて思うように起き上がれなかった。


 「あなたは何者ですか」
 「これは失礼致しました。私強欲のマモンと申します。以後お見知りおきを」
 「そうですか、ではまず彼女が私の婚約者のスクリナです。でその隣の槍を持ったのがマック、剣を持っているのがロゼフです」
 「どうぞよろしくお願い致します」
 「よろしくな」
 「よろしくお願いします」
 「こちらこそよろしくお願い致します。奥方様」


 そういって恭しくお辞儀をしてみせるマモン。まるでマックとロゼフはいないような扱いだ。


 「おい、ひどくねぇか。俺らもいんぞ」
 「あぁ黙れ人間風情のゴミ虫ども殺すぞ」


 ものすごく強いプレッシャーを放ちながら睨みつけてくる。


 「まてまて、マモン。彼らは俺の親友だ、それに人間はゴミ虫じゃない。殺そうとするな!
 まずどんな相手にも礼を持って接しろそうすれば必ずいいことがある」
 「そうですよ。もし人間をすぐにでも殺せばあなたの主である宗時さんが嫌な目に会うのですよ」


 凄い、スクリナの言葉を聞いた瞬間にピクリとしすぐにプレッシャーを抑えるとふいんきが変わった。


 「失礼しました。奥方様ありがとうございます。並びにマック様、ロゼフ様先程のご無礼どうかお許しくださいませ」
 「わかればいいさ、あとはその様って呼び方をやめてくれりゃぁな」
 「そうですよ。そもそも価値観が違うのです。これから気をつけてくれればいいですよ。ですが出来れば私も様はやめて欲しいです」
 「わかりました。マック、ロゼフよろしくお願いします」


 そうして無事(?)マモンを仲間にするとマモンをおいて王宮に向かった。と、いうのもいきなり俺が悪魔を連れて来たら王宮中が大パニックになってしまうと考えたからだ。


 「陛下、ただいま戻りました」
 「うむご苦労であった。して、魔王を倒せる力は手にはいったか」
 「それが、完全ではないようでしてなんと言いますか、他にあと6つの迷宮を攻略しなければならないようなんです」


 そう、力を得るためにはあと6つの迷宮をクリアして、7つの大罪の悪魔全て配下としなければならないらしい。


 「そうか・・・仕方ない、すまないが行ってきてはくれないか。こうしている間にも奴等はまたいつぞや進行してこないとも限らない。必要なものがあれば用意しよう」
 

 ━━━━っということで、用意してもらったのがこの土地、いったい何に使うかというとここに倉庫を作るんだ。
 とびっきり丈夫なやつ。しかもなんとこの倉庫入り口がない!つ・ま・り、俺しか入れないというわけだ。
 サイコー!!
 前の迷宮攻略で思ったのだ。
 これだけの素材と魔石売ったらいくらになるかな
 ━━って。でせっかくだから貰ったのだ。もちろん置かせて貰ったのだ、お礼として利益の1割を陛下に渡すことにした。
 そしてここで思い出した。彼のそんざいを!そこでもう一度ラスノマのところへ行った。


 「すみません先程お伝えするのを忘れていたのですが━━━」
 「なんだね」
 「それが前の迷宮攻略で手に入れた力のようなものでして・・・決して危険ではないのですが・・・紹介してもよろしいでしょうか」
 「構わんつれて参れ」


 そういうことなので呼びに行った。
 ごめん本当にごめん。完全にワスレテマシタ。


 「彼が私の配下となったマモンです」
 「お初にお目にかかります皇帝陛下。宗時様よりご紹介預かりました。7つの大罪強欲の王。マモン、と申します。以後お見知りおきを」
 「お、おぉう」


 おそらくラスノマの心の声を代弁するとこうだろ。
 「悪魔に滅ぼされかけてるのになんてもん連れてきてんだ!」
 っと、まぁわからなくもない。俺だってまさか悪魔を配下にすることになるとは思わなかったからな。


 「それだけです。では行ってきます」


 そうして俺達は、旅?に出発した。
 転移魔法を使って訪れたのは世界最大の国サルハマラ及びメイラスト連合王国だ。この国は6つの大小様々な国が集まってできた連合王国なのだ。今はサルハマラの国王が連合王国の国王もしているらしい。
 ちなみにこの国には2つの迷宮があるらしい。そしてやって来たのがこの迷宮、サンペレスだ!この世界では最も有名な迷宮だ。


 「よし!行きますか」
 「「「「はい(おう)!」」」」


 俺達が迷宮に入って暫くがたった、現在70層のボスを倒したところだ。


 「おい、さっきまでとはまるでプレッシャーの強さがちがうぜ」
 「そうですね。質もいい、かなり強いですね」


 そういっても前の100層のボスよりは弱いからそう問題はないだろうと俺達は進んだ。


 「見てください。あそこ、あれって100層にあった扉と同じじゃないですか」
 「そうみたいですね。どうやらこ層が最後みたいですね」
 「案外簡単だったな」


 そういって談笑しながらもしっかりと気を引き締めて前を睨みつけているとそいつは降りてきた。


 「スターフィッシュ?」


 そう、現れたのは海星型の魔獣だった。どうやらあれがボスらしい・・・


 「宗時様、見てください。あいつは半魔魔獣ですよ」


 一瞬なんだそれと思ったがなぜか意味はわかった。つまりは半分魔獣で半分悪魔ということだ。つまりエクスキャリバーで倒せるということだ。
 

 「皆、離れてくれ」


 一応皆を避難させると詠唱を開始した。


 《この一閃にて魔を断たん。我は聖剣の守護者なり》


 そして発動すると同じに斬る、するとスターフィッシュは倒れた。これぞ聖剣が聖剣であるゆえん。魔族の再生能力を無視した斬撃だ。


 「よっしゃ~!楽勝だったな」
 「そうですね、今回はそこまで強くなくてよかったです」


 そう感想を述べる二人、しかしそう喜べていないものがいた。


 「どうしたんだよ」
 「気が付きませんか、倒したはずなのに奴のプレッシャーはいっこうに衰えていく気配がない」
 「ああ、それどころかさっきよりも増してるぜ」


 二人も倒したはずのスターフィッシュの方に目を向ける。確かに強くなっていた。
 次の瞬間


 「うぅぉぉ」
 「一旦離れろ」


 そういって全員が距離をとる。すると次の瞬間切断面から一斉にたくさんの触手が現れもう片方の切断面の触手と結びついていく。そしてついには元に戻ってしまった。
 いや、完全に前と同じという訳ではない。全身からはさっきまで無かった触手が出ていた。
 なぜだろ、違う意味でさっきよりも強くなっている気がするのは気のせいだろうか・・・


 「げっ、キモ!」
 「確かにキモいな」


 マックと俺がそんなことを言ってるとスクリナが飛び出してスパッンと触手を何本か切り落として帰って来た。


 「ダメですね、すぐに再生する。どうすればいいのか」 


 なんて言ってると、ついにスターフィッシュが攻撃してきた。あのキモイ触手をうねらせながら、俺達はそれを突き、薙ぎ、断っていく。幸い奴の攻撃は決して強くはないのでなんとか耐えられているがこのままでは数で押しきられてしまう。
 そこで俺は《煉魔イフリート》を発動した。すると一瞬で灰と化した。今度こそやったかと見張っていると灰の中に5つの光る物体が現れた。
 やがてそれから触手が生まれみるみるうちに再生していく。


 「なんだよこいつ、斬っても、灰にしてもダメとかどうすればいいんだ・・・」
 「いや、いくつか倒せる可能性を見つけたぞ」


 そう言うと俺は光る物体の1つを剣で叩き割った。すると一瞬他の物体の光が増し割ったやつが再生した。


 「どうやらビンゴだな。皆、こいつの弱点はこの光っている物体だ。こいつが核になっていて全て同じに割れば倒せる筈だ」


 そういっているうちにスターフィッシュの再生は終わり、ついでとばかりに全身から炎を出してきた。なんと、受けた攻撃の特性をコピーできるらしい。


 「皆、核はおそらく足の先端辺りにある筈だ!1人一ヶ所づつ、せーので破壊してくれ。
 いくぞ、せ━━━━の」


 そうして俺達は各々妨害しようとする触診触手を避けながら攻撃をいれた。全員の攻撃は見事核を割ることに成功し、今度こそ動かなくなったところを確認する。どうやらやっと倒せたようだ。


 「よっしゃー!!」
 「やりましたね宗時さん」
 「お疲れ様です」
 「さすがは宗時様です」


 そして扉を開く。中には台とその上に一冊の本が置いてあった。
 俺はそれを開き魔法を発動する。するとやはり俺を中心として魔力の嵐が起こり目の前に1人の悪魔が現れた。


 「はじめまして主さま、私は7つの大罪嫉妬の王、レヴィアタンでございます。主さまのためならどんなことでも致しますわ」


 そうして現れたのは美しく輝く蒼く澄んだ髪色に妖艶な唇が特徴的な美しい女性だった。とても悪魔には見えない、全く人間とそっくりなのだ。


 「はじめまして、俺の名前は宗時です。でこちらが俺の婚約者のスクリナだ。で彼が━━━」


 俺は全員を1人づつ紹介していった。


 「そうですか、皆様どうぞよろしくお願いいたしますわ」
 「レヴィアタンは差別したりしないんですね」
 「もちろんですわ。全ての物には利用価値がありますもの、ましてや主さまの奥方様やお仲間、お友達の方には礼を持って接しないと主さまの品が疑われてしまいますもの」
 「そうなんだ・・・」
 「はい!」


 そう満面の笑みで答えるレヴィアタン。友だちまで大切にしてくれるのは嬉しいが、他人を物として扱うのはなんとかしなければ・・・
 こうしてとりあえず無事攻略した俺達は一旦迷宮を出てすぐにもう1つの場所にとんだ。
 時間がないのだ。
 実はその頃カムサ帝国王宮は大変な事になっていた。


 (!、!)ゞ


 「陛下大変です」


 そういってノックもせずに1人の騎士が入ってきた。普段なら「無礼者!」と叱りつけるところだが、今は何があってもおかしくはない緊張状態だ。直ぐに用件を話すように促した。


 「は!魔王軍が南へ進行を開始しました。また現在はヘルメイヤ公国国境付近との情報があり、既にサクラ王国が消滅したとのことです」


 サクラ王国とはモウラナヤ神国とヘルメイヤ公国の間に位置する小国だ。
 そしてヘルメイヤ公国はここカムサ帝国の南東から南にかけて広がる大国だ。もし、そこが落とされでもしたら次はこのカムサ帝国が狙われかねない状況だった。


 「直ぐに南にあるクロイスの砦と、南東のハヌイの砦の監視を強化しろ、騎士が足りなければ冒険者を雇うことも許可しよう。いけ!」


 そういって騎士を出ていかせる。
 いよいよこの国も危なくなってきた。
 宗時君一刻も早く力を得て戻ってきてくれ!
 そう願いながら窓の外の雲を覗いた。


 ゞ(/・\)
  
 「次は遺跡かよ、やだぜまた落ちるの」
 「そうですね、出来ればあれはいやです」
 「とりあえずは試しに言ってみますか《開けごま》ってダメですよね」


 やはりうまくはいかないものだ。さて、また探さなければいけない。でも、もしかしたら合言葉があるかも知れないのでマックにやってもらうことにした。


 「え~、だりぃな」


 ゴゴゴゴ!!!!


 「え?」


 あれである。また地面が割れたのだ。
 どうやら今回の合言葉は《だりぃ》だったらしい、なんとも適当だ。
 今回はレヴィアタンが魔法で受け止めてくれたので誰もお尻を打つことはなかった。
 そして歩く、歩く、歩く、いつまで経ってもいっこうに魔獣の出てくる気配はない。それどころか骨の一本も見当たらなかった。これだけ何もないと逆に不気味である。  
 そして暫く歩いているとまだ一層目なのにも関わらずあの扉が出てきた。


 「皆気をつけて」


 そう声をかける。さすがにここまで何もないのは怪しすぎだ。俺達は直ぐに対応出来るよう注意を払いながら扉を開けた。
 やはりそこにも何もいなかった。ただいつもと同じ台と本があっただけだ。
 とりあえずやってみる。いつも通り魔力が嵐となって吹き荒れそこから一体の悪魔が現れた。
 寝転がりながら。


 「え~だれ?あ、宗時様ですか。俺は7つの大罪怠惰の王をやってますベルフェゴールって言います。どうぞよろしく」


 転がりながらさも怠そうに言ってくる。この時点でなぜ魔獣がいないのか、なぜ一層しか無かったのかわかった。


 “こいつが怠けていただけだ!!”


 なんとなく迷宮についてわかってきた気がする。どうやら迷宮は悪魔の特性にあわせて作られているようだ。
 だから強欲の迷宮は強力な魔獣が多かった。嫉妬の迷宮は強くないが協力するものが多かったのだ。
 とりあえず俺は皆を紹介した。


 「おい、ベルフェゴールお前その態度は宗時様に失礼だろなおせ!」
 「そうだよ主さまに対してその態度あり得ないわ。それにそんなんじゃ主さまの品が疑われてしまうではないですか」
 「るっせぇな、いいじゃねぇか」
 「「よくない!!」」


 見事に揃っていた。なにやら話すことがあるといって二人はベルフェゴールを連れて部屋の隅へ行ってしまった。
 そうして暫くすると━━━


 「え~先程は失礼しました。どうぞ皆様もよろしくお願いいたします」


 なんと怠そうなのは変わらないが少し直してきた。
 こうしてベルフェゴールを仲間に加えた俺達は次の場所に向かった。あとは、色欲、傲慢、暴食、憤怒だ。
 俺達は順調に迷宮に攻略していき傲慢の王。ルシュフェルと憤怒の王、サタンを仲間に加え、残り2つとなった迷宮の1つに来ていた。


 「宗時様お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 そこで待っていたのは女の悪魔だった。俺達は促されるまま就いていくと見慣れた台とその上に一冊の本があった。


 「では説明をさせて頂きます。今回の試練は大食い対決でございます。私よりも多く食べられたのなら勝利となりあそこの本を得る権利が与えられます」


 ふざけてる。こんなの絶対にふざけてる。
 なに?大食い対決?そんなもんで本が手に入るとかもうある意味ベルフェゴールよりも酷い。
 しかしとりあえずは我慢してやることにした。そうしなければ本が手に入らないのだから。


 「では、最初のお題はパンです。このパンをどちらが先に全て食べ終わるか勝負です。
 サタン様審判をお願いしてもよろしいですか」
 「ああ問題ない。ではスタート」


 目の前にあるパンの量はおよそ500、大きさはフランスパン位だ。こんなもの普通にやっても勝ち目はない。
 横を見ると既に半分以上平らげていた。もう手の動きとかみえないスピードで食べている。そこで俺は考えた。口の中に倉庫と繋がる入り口を用意した。そこにも俺は両手にパンを掴んで入れていく。どんどんどんどん入れていく。
 やがて相手のパンの数は残り50個位で、俺の数が100個程となってきた。ラストスパート、ついに俺は2個同じ収納を始めた。速度が倍になる。そしてついに相手は5個俺も5個となり━━━━


 「勝者宗時様」
 「負けてしまいましたね」
 「では次の勝負と行きましょう。次は小籠包です!」
 「まだやるんですか。結果は見えてるでしょうに」
 「勝負は最後までわかりません。そもそもこれは3回勝負なのです」
 「わかりましたよ。さっさと始めましょ」


 まぁ勝つのは私ですけどね。こうして小籠包の早食い勝負が始まった。まぁ結果は言うまでもなく俺の圧勝だった。


 「なぜだ、なぜ私は負けたのだ・・・」
 「もういいですか」
 「わかりました、どうぞお持ちください」


 やっと解放してくれた彼女はどこかへとぼとぼと歩いていこうとするので引き留めた。


 「待ってください」
 「・・・何ですか」
 「あの料理凄く美味しかったので是非作ってくれた人にありがとうと伝えといてください」


 そう、食べてはいないがどれも美味しそうな、いや絶対に美味しいと確信させる匂いだったのだ。


 「その必要はないでしょう。この料理を作ってくださったのは我が主ベルゼブブ様なのですから」


 それだけ言うと消えていった。そうしてなにもしていないのに急に本が光だし、魔力の嵐が起こる。召喚される全長だ。
 そして魔力の嵐が収まるとそこに一体の悪魔が現れた。


 「はじめまして。ワシが7つの大罪暴食の王ベルゼバブブだ。よろしくな我が主よ。
 して、なぜワシの料理が美味しかったと言えたのだ?1つも食べておらんだろ」
 「バレてました?でも、わかりますよ。匂いが違いましたもん。こうみえて私良いもの食べて来ましたから」
 「そうか、なら今度ワシが勝負じゃない本当のご飯として作ろう」
 「お願いします」


 こうして新たな仲間、ベルゼバブブが加わった。後に彼は世界一の料理人と言われることになるのだがそれはまた別のお話・・・
 さて残るはあと1つ、ヘルメイヤ公国にある迷宮だけとなった。そして俺たちが迷宮のあると思われる場所に到着したとき━━


 「うそ━━」
 「マジかよ」


 なんと上空に悪魔がいたのだ。そう既にヘルメイヤ公国は悪魔達によって消滅させられていたのだ。


 「あいつらに見つかる前に早く入ろう。残るは色欲だけだからおそらく合言葉もそれに関する事だろう」


 そうして皆口々に言う。
 (※表現として、不適切なものがあるので自主規制を行いました。どうぞご理解のほどよろしくお願いいたします)
 予想通り直ぐに地面が割れ迷宮への侵入に成功した。


 「よし、早く進もう」


 俺達は足早に進むことにした。途中魔獣も出てきたがそれほど、というか全く強くないので直ぐに倒して行く。
 こうして俺達は120層まで来ていた。


 「嘘だろ、どれだけ深いんだ」
 「そうですね、そろそろ最下層でもおかしくないのですが、それになんでしょうかとても暑いですね」


 そう100層を過ぎた辺りからとても迷宮内が暑いのだ。そんなこともあり体力と共にだんだんと精神力も削られて行く俺達。
 しかし悪魔には効かないようで皆、ピンピンしていた。


 「お!やっとあったぜ」
 「ほんとです」


 そのせいでいつもなら警戒する扉の前でも直ぐに走り出してしまうマックとロゼフ。それを制止しようとスクリナと俺も入ったところで気がついたがもう遅い。
 その部屋には毒かは解らないがガスが充満していたのだ。そうして俺達は深い眠りに落ちてしまった。


 \「※」/


 俺は目覚めると豪華な意匠の施されたベットの上で寝ていた。


 「お早うございますあなた」


 俺は少しの違和感を挨拶を返す。


 「俺は寝ていたのか」
 「はい、昨夜は色々と大変でしたのでお疲れになったのでしょう」


 どうやら仕事がたいへんだったようだが、いまいちそこの記憶を思い出せないでいた俺はベットから起き上がろうとして気がついた。
 服を来ていないのだ。
 あれ、つまりなんだ昨日大変だった、って言うのはつまりはそういうことをしていて大変だっ、ということなのだろうか


 「すまん、昨日君に酷いことをしてしまったようだが思い出せない、どうか許してくれ」


 俺は布で下だけ隠すとそう謝った。なんとも不甲斐ない、初めてを奪っておいて忘れてしまったとは、酷いやつだ。


 「忘れてしまったのてますか・・・。しょうがない人ですね、ではもう一度して思い出させて上げますよ」
 

 そういってスクリナはベットから四つん這いになって出てくる。
 かかっていた布はスルリと落ちその美しい四肢と女性ならではの部分が露になる。あまりの美しさに目をそらすことも忘れて凝視してしまった。


 「では、昨日の続きといきましょ」


 そう言うと唇を重ねてくるスクリナ、何度か重ねたあとを離すと、唇と唇の間に銀色の橋が架かった。
 そのあとおもむろに手を胸から這わせてくる。そこで俺は思い出した。
 肩を掴んで引き離す。


 「なぜです?」


 今見ても偽物とは思えないほど見た目が似ていた。
 そう今目の前にいるスクリナは偽物だ。どんなに見た目が似ていようと見間違う訳がない。
 そもそもスクリナはこんなふうに俺を襲ったりはしない。


 「お前は誰だ!」
 「貴方の妻のスクリナですよ」
 「俺達はまだ結婚していない」
 「あらそうでしたかしら」
 「スクリナはそんな事をしない」
 「そうですか・・・」


 そういって下を向くとスクリナは少しずつ形を変えて行きやがて水のように流れて消えてしまった。それと同じに目の前が眩み意識が遠退く。


 (”・”)


 「お!戻ってきたか」
 「なんだよお前の方が早く帰って来たのか」
 「ああどうやらこれがこの迷宮の試練らしいな」
 「ああ、だがなんでお前の方が早く戻ってきてんだよ」
 「俺はな、そのそういう事をしたい相手はもういないからな・・・」


 そういって上を向いてしまった。


 「そうか、悪いやなこと聞いたな」
 「いいさ」


 そうして俺達はかへ際に行くと腰をおろして休むことにした。案の定悪魔達には効いていないらしい。
 俺は少し考えるとスクリナの方をみた。


 ━※━


 そこは綺麗な調度品で飾られた一室だった。


 ここはどこでしょう、見たことのない場所のようですが・・・


 私は部屋の中を歩いてまわった。すると不意にドアが開く。
 入ってきたのはいつもと服装は違うが宗時だった。


 「またそんな格好をして、もう魔王もいないんだし君がそんな服を着る必要はないんだよ」


 そういってくる宗時、魔王はまだ倒していないだろうと思い口を開こうとするが直ぐに、また閉じることとなった。
 宗時が持ってきたのは1着の美しい純白のドレスだった。


 「明日は結婚式なんだからそんな格好はやめて、かわいい服を着なよ」


 そうしてドレスを椅子にかけると、私に近づいてきて鎧を一つづつはずし始めた。
 全ての鎧を外すと今度は服を脱がせ始める。私は恥ずかしかったが、宗時に身を委ねされるがままとなった。
 やがて服を脱がされると、もうほぼ全身の素肌が見えてしまっていた。あとは大事な部分を隠すもののみだ。
 しかし宗時はそれにも手をかけるとスルスルと脱がし、はずしてきた。
 私の顔は既に羞恥で真っ赤となっていた。


 「スクリナ・・・」


 そう呟くと宗時は唇を重ねてくる。私は抵抗した、まだ心の準備ができていないからだ。
 しかし宗時はそのまま私の体を隅々まで触ってくる。


 「・・・ダメ、やめて」


 我ながらなんとも弱々しい声だと思う。もちろんそんな事では手を止めてはくれない。ついに一番大切なところに手を触れようとしたところで私は宗時を押し返した。


 「どうして・・・」


 宗時が不思議そうに見つめ返してくる。


 「どうしてって、あなたは誰。宗時は嫌がっている私にそんな事を絶対にしない」
 「どうしてそう言い切れるんだ。実際に俺はその宗時だぞ」
 「いいえ、あなたは私の大好きな宗時なんかじゃない。あなたは心が見えないもの。
 これ以上私の、宗時の体にその汚い手を触れないで」


 そういい放つと宗時はドロドロと溶けて消えてしまった。するとだんだんと視界が眩み始めて私はまた深い眠りに着いた」


 《”・・”》


 「スクリナ!」
 「宗時!」
 「スクリナ、俺はお前に謝らないといけないことがある」
 「ええ私も」
 「夢とはいえスクリナ以外に唇を奪われてしまった。ごめん」
 「いいのよ夢なんだから、現実で私とすればいいじゃない。 
 私も、夢とはいえ宗時以外に唇を奪われたあげく初めてまで奪われるところだった。ごめんなさい」
 「いいさ、全てが終わったら二人ですればいい」


 こうして二人だけの世界を作り出してしまった二人。


 「おーい、お二人さん俺がいるのを忘れないでくださいね」
 「あの、私もいるのですが・・・」


 辺りを見回すと既に全員が起きていた。スクリナはあわあわしながら恥ずかしそうに縮こまってしまった。


 「よし、じゃあ全員無事クリアできたみたいだし。行くか」


 そういって俺達は扉を開けた━━━



コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品