神様は酷いやつだった
魔王侵略偏前編
「宗時様陛下がお呼びです至急王宮に来てください」
「わかりました。ありがとうございます」
そんな事を騎士が伝えに来たのは大会が終わって2週間程たった頃だった。今日はマックと一緒にギルドの依頼を受けにいく予定だったのだが・・・
俺はマックにこの事を伝えると《転移魔法》ですぐに王宮に行った。門の前ではなぜかレオナルドとロゼフが待っており事の重要性を表していた。
案内されるまま俺は謁見の間にやって来た。そこには既に国の重要人物が揃っておりとてつもない緊張感が部屋に居座っていた。
「よく来てくれた。単刀直入にいう、ここより遥か東の地にある国、モウラナヤ神国が消滅した」
「消滅ですか・・・」
「ああ比喩ではない、そのままの通りだ。森を残して建物や人が全て消えた。犯人はわかっている。悪魔だ」
「悪魔ですか。犯人がそう言ってるのですか」
「あぁそうだ。奴は自分の事を魔王と名乗ったそうだ」
「そいつが悪魔だという証拠はあるのですか、普通に考えれば幻覚や認識阻害をかけている方が納得がいくのですが」
「それなんだが、奴は背中から黒い羽が生え、腕や足も黒い毛でおおわれているらしい。
また討伐に行った騎士がただ一人とその他の人の装備品を除いて目の前で消されたらしいのだ」
「そうですか・・・」
「そこでだ宗時君にこの悪魔の討伐を依頼したい。いいだろうか」
 
暫し考えた。何か引っ掛かるのだ。
しかし聞くところによるとブリテン騎士王国の近くに位置しているらしいので討伐はもちろんするのだが、やはり何か引っ掛かるのだ。
「わかりました、その依頼受けたいと思います」
「そうか良かった。では討伐をメンバーなのだが━━━」
「いいです、とりあえず様子を見てくるのでそのあとで決めてもいいですか」
「もちろん構わないが・・・」
「では行ってきます」
そうして《転移魔法》を発動しようとしたとき異変に気がついたのだ。そう全員の動きが止まっているのだ。
俺は魔王とやらの襲撃かと思い身構えたがどうやら別のひとだったようだ。
「なんですか神様」
「いや、なにやら楽しそうな事が起こりそうだからね」 
今気がついた。犯人はこいつだ。
「あなたですね犯人は」
「何のことかな」
「とぼけないでください。この世界に魔王とやらを読んだのはあなたですよね」
そう怒気を込めて聞いてみると、悪びれた様子もなく白状した。
 
「そうさ、ワシが呼んだ。刺激が欲しかったものでの」
「ふざけるな!そんなことでこの世界を危機にさらすな」
頭にきた俺は《瞬間移動》を使い神様の背後にまわるとそのまま殴ろうとした。
しかし確かに振るったその拳はなんと神様を突き抜けてしまったのだ。それでも何か方法はないかと考えた。
「無駄じゃよ、今の私はいわば君の記憶のなかの物のような者じゃから実態がない。実態がないものを傷つけることはできんよ」
「くそ、てめえなにをしに来た」
「いい事を教えてやろうと思うての、東の森に迷宮がある。そこに行けば新たな力が手に入るだろう」
「けっ、誰がてめぇの教えなんて聞くかよ」
「必ずきくさ、去らばじゃの」
そうして霞のようにぼやけて消えてしまった。
ちくしょ!次あったときこそは必ず殴り付けてやる。
そうして予定通り《転移魔法》を使い東の果てモウラナヤ神国にのあった場所に転移した。 
ドオッン!
転移してすぐに感じたのは上から抑えられるような圧力だった。
まずいまずいまずい。あり得ないでしょ、これにはまだ勝てない。
そう、普通の人ならこの圧力のみで死んでしまいそうな程強力な者だった。
俺はすぐさま王宮に帰った。
「どうだった」
「さすがにあれにはまだ勝てませんね」
「ほう、そこまでか。でもまだ勝てないって事はいつかは勝てるのだな」
「はい、あいつの言う事をきくのはかなりしゃくですが可能性はあります。東の森に迷宮はありますか」
「迷宮?そのようなものはないが遺跡ならあるぞ」
おそらくそこだ。遺跡ということならどこかに必ず迷宮への入り口があるはず
「ではそこがどこら辺にあるか教えてくれませんか」
「いいとも、だれか地図を持ってこい」
カムサがそう言えと一人の騎士が足早に部屋から遠ざかっていく気配がした。暫くすると扉がノックされ一人の騎士がとても大きな紙を持って来た。
「確かここら辺にあった筈だ」
「ありがとうございます。どれだけかかるかはわからないですがなるべく急いできます」
「頼んだぞ。しかし誰も連れていかないのか」
確かにラノベやアニメでも迷宮を一人で攻略するのは難しいとは言っていたが━━━━
「なら私が同行します」
そうして前へ進み出たのはロゼフだった。確かにロゼフなら大丈夫かも知れないが、なにせ行ったことのない場所だ。何がいるかわからない。
「そうかではロゼフ頼んだぞ」
「わかりました」
こうしてロゼフの同行が決まった。ならばあいつを連れていってもいいだろ
俺は宿屋に戻るとマックを連れ出した。これで3人だ。いよいよ主発だ!
⊂●⊂
そこは蔦がはびこり“これぞ遺跡!”というふいんきを醸し出していた。その地へ俺達はついに踏み込んだ。
「これからどうすんよ」
「先ずは怪しいものがないか調べてくれ、でも見つけても絶対に触らないこと」
「わかったぜ」
「了解です」
そうして俺達は一度別れバラバラに辺りを捜索することにした。が、
「ねぇ~なにもねぇよ」
「これだけ探して見つからないとなると本当にあるんですかね」
「ここいらへんにあるはずなんだが」
本当に見当たらない、もう日もくれる頃なのでそろそろ諦めて帰ろうとしたときだ。
「ベタだけどあれじゃね、ひらけごまとか」
「いくらなんでもそれはないですよ」
「あぁさすがにな━━━」
急に地面が揺れ始めたのだ。しかもかなり大きい、俺は皆にしゃがむようにいうと揺れが収まるまで待とうとした。
そのとき地面が割れ俺達3人は地中の中に飲み込まれてしまった。
ドンッドドンッ
どうやらそこまで深くはなかったらしい。俺達は取り敢えずマッピングしながら進むことにした。途中魔獣が出て来て最初こそ採取しながら行ったが100体ほど倒し終えたところで採取するのを諦めた。
「それにしても広いですね」
「まあ迷宮だからな、しっかしまぁ~こんなところにあるとぁな」
「ほんとどこまで続いてるんですかね」
「さあなどの迷宮も未だに誰一人として攻略できた奴はいないからな」
「へぇ~そうなのか」
つまりはこれを攻略したら世界初だと、これは胸が高鳴る。
しかし、どうやら簡単にはいかないようだ。10層目に入りそろそろボスが現れる頃だとは思っていたが、今までとは比べ物にならない程のプレッシャーを放ってくる奴がいた。
「こりゃやべぇな、とんでもねぇほどのピりピりとしたプレッシャーを放ってやがる」
「ああこいつはさっきまでとは比べ物にならないほど強いよ」
「そうみたいですね。より気を引き締めていかないと」
俺達が部屋に入る。しかし目の前には何もいなかった。つまり上だ。
俺達はほぼ同じに上を向く。するとそこには丸い頭に丸い体、沢山の目と毛の生えた足が特徴的な蜘蛛型の魔獣がいた。
向こうもこちらの存在に気がついたようだ。すぐさま糸を噴射してきた。俺達はそれを避けると散会して体制をたてなおした。 
しかしプレッシャーのわりにはそこまで強い攻撃ではなかった。試しに俺は《炎弾》を撃ってみる。みごとそれは命中しそのまま蜘蛛型の魔獣は灰となった。
「そこまで強くなかったな」
「いやいや、十分強かったですよ私では避けるので精一杯でしたから」
「俺もかするかと思ったぜ。直感で動いたから間に合ったがみてからだと絶対食らってたぜ」
「そうか?」
「「そうだぜ(ですよ)!」」
まぁ倒せたしよしとするか、そんな具合でプレッシャーのわりにはあまり強くはない敵を次々と俺は倒してきた。どうやらここいらへんもラノベなんかと同じて10層毎に強さが全体的に上がるらしい。
そしてついに90層に来たところで問題が起きた。
「なんか、プレッシャー弱くなってねぇ」
「はい、確かに弱くなってますね」
そうなのだ、ここに来て急にプレッシャーが弱くなったのだ。しかしもう1つのことには2人は気がついていないようだ。
「一旦帰るよ」
「わかりまし」
「何でだよ」
「理由はあとで説明する。早くここを出るぞ」
そう言ったときだ。気がつかれてしまったようだ。
奥からくるプレッシャーを放つ魔獣、そいつが黙視できる位の距離になった。
見た目は猫や犬、それも小さい奴だしかし次の瞬間そいつの姿が消えたかと思うと隣に現れた。
ぐぁっ 
マックはそいつの前足に触れられたかと思うと次の瞬間には壁に激突して動けなくなっていた。
俺はすぐさま《瞬間移動》でマックを捕まえるとそのあとロゼフのもとへ行き。さらに《瞬間移動》で奴と距離をとる。何度も何度も使い距離を見えなくなるまで距離をとると詠唱を始めた。
《万里万里彼方我その地へ運ばん》
詠唱が終わる寸前奴は臭いを辿ってきたのだろう。地面に鼻を近づけながら黙視できるところまで現れると、獲物を見つけたように口が裂けて笑ったように見えた。
しかし危機一髪で《転移魔法》が発動し俺達は無事地上に戻ってこられた。
俺は《天使の祝福》を使いマックを回復させるとさっき気がついたことについて話始めた。
「つまりさっきの魔獣のプレッシャーは弱かったのではなく密度が違ったってことですか」
「そうです。正確には密度というよりその質ですが・・・
1つ言えることは今のままでは勝てないということです。ですがいくつか方法はあります」
「なんだそれは」
「1つ目は他の迷宮も片っ端からやって行き何かアイテムがないか調べる。
でもこれは攻略することが前提なので正直厳しいですし、アイテムがあるとも限らないですから。
2つ目は降霊術です。
これは強力な力を持った死者を憑依させ力を増すという方法ですがその死者に精神を乗っ取られてしまうというリスクがあります。
ですが今一番確実なのはこの方法です」
さすがに二人とも考え込んでしまった。迷宮は攻略できる可能性が限りなくゼロだし。
かといって降霊術は死ぬ可能性がある。
しかし時間がないのだ。俺は二人を帝都に送ってから一人で行こうとしたそのとき。
「わかったぜ。やろう」
「そうですね、やるにしてもやらないにしても結局魔王に殺されたら同じですからね」
「いいんだな」
「ああ!」
「はい!」
そして俺は二人に伝説を伝えるとその地へ転移した。そうしてそのままお城へ向かう。
「宗時さん!よくいらっしゃいました」
「スクリナ大丈夫だったか」
「はい!なんともありません」
「それは良かった。ペンドラゴンさんも変わらないようで何よりです」
「ありがとう。それで用とはなんだ」
「はい、この地に伝わるアーサ王の墓に連れていってほしいのです」
「なぜかね」
俺は魔王討伐のこと、迷宮のこと今までの事を話した。しかしその度にスクリナの表情が険しくなっていくのだから恐ろしい。
「宗時さん!なんでわたしを連れていってくれなかったのですか」
「だって君にもしもの事があったら嫌だし。君がいなくなった世界なんて死ぬよりも辛いから・・・」
「それがわかっていてなぜ連れていってくれないのですか。私だってあなたのいない世界なんて死ぬより辛いですのに。
私は世界で2番目に強いんですよ。1番と2番が組んだら負けません。そうじゃないですか」
凄い怒られた。まぁ確かに死ぬよりも辛い思いを彼女にさせようとしていたのは俺が悪いが━━━
「二人ともそこら辺にして。
宗時君わかったよ。アーサペンドラゴン=ブリテンの墓に連れていこう」
こうして俺達は墓に向かって歩いた。
「ここがその墓です」
とても立派な墓だった。墓石にはブリテン騎士王国の国旗でもある剣とそれに巻き付く龍が彫られていた。
そして俺はその墓に一度手を合わせると詠唱を始めた。
《安らぎと共にある汝の御霊。我いまその力を求めん。永き眠りより覚め我が力となれ》
詠唱を終えると墓石の上に一人の男が現れた。おそらくこの人がアーサペンドラゴンなのだろう。その姿が急に薄れて行き俺の中に入ってくる。
そこで俺の意識は途絶えた━━━
(#&#)))
「起きろ!」
ここは・・・なんていうベタな事は言わない。おそらく夢のなかだ、アニメでもこれを使った直後に意識を失い夢の中で相手と戦って力を手にしていた。
「あのアーサペンドラゴンさんであってますか」
「いかにも私がアーサペンドラゴンだ!
ってやりずれぇな、死んでまでこんな茶番しなくていいか」
なんか思ってたのと違う・・・本当に強いのだろうか
「あ!今お前失礼なこと考えただろ、思ってたのと違って悪かったな。やりずらいんだよ聖剣の守護者かなんか知らないが勝手に天才だ、英雄だってまつられてよ。俺だって努力したんだっての!」
なかなかにいろんな意味で凄いひとだった・・・
「力が欲しいんだろ、いいさ試練だとか面倒だし。それに今俺はお前の中にいる。剣の腕はまだまだだが魔法を絡めれば俺より強いからな」
「は、はぁ、では力を貸していただけるという事でよろしいのですか」
「ああいいぜ。さっさと目覚めな仲間がいるんだろ。俺の知り合いの墓を紹介してやるよ」
なぜだろう、やな予感しかしない。知り合いの墓って・・・友達を紹介する感じで言われるのはなんか新鮮だ。
そんなやり取りをするとだんだんと視界が明るくなり俺は目覚めた。
・ ・
)(+)(
む、なんだこの後頭部に伝わる柔らかくて暖かい感覚。これはもしや・・・
「良かった~良かったよ」
そう言うと泣きながら膝枕の状態から無理やり俺を起こすとそのまま顔を抱き締めてきた。
「むがっむがが・・・」
苦しい、スクリナの柔らかくて大きな胸が口と鼻をふさいで息ができないのだ。ギブアップを伝えるために叩くとやっと話してくれた。
「ビックリしたぜ、急に倒れるんだもんな」
「そうですよ。スクリナ姫は泣き出してどうしようも出来ないし、回復魔法でも目が覚めないしで」
「心配かけた見たいでごめんな、でもしっかりとアーサ王の力はてにいれたぞ」
そう報告すると良かったといいながら二人は部屋を出ていった。よく見ると外は暗くなりかなりの間倒れていた事がわかった。
「本当に心配したんですからね」
「本当に悪かったよ」
「本当ですか、なら今晩は隣で寝てください」
「わかったよ、ってぇぇ!!さすがにそれはまずいでしょ、結婚もしてないのに」
「いいではないですか、どうせ結婚するんですから。それに心配なんです。今晩だけは隣にいてください」
確かに心配させて悪く思ってはいるがさすがに俺の理性がもつか・・・
「嫌ですか」
「そんなわけないだろ、いいよ」
ズルい、ズルすぎる。したら目を潤ませて除き混まないで!!
こうしてこの日は結局スクリナと一緒にねた。
もちろん手は出していない!
次の日俺はそうそうにペンドラゴンさんに呼ばれて二人で廊下を歩いていた。
「君に渡したいものがあるんだ」
そうして着いたのは美しい意匠の施された大きな扉のまえだ。
「少し待っていてくれ」
そういって中に入って暫くすると一本の剣を持って出てきた。
あれだな、あれだよな。
「この剣は普通の人はこの通り抜くことすらかなわない代物だ」
そういって実際に抜こうとしてみせる。
「しかし、アーサ王なら抜けるはずなのだ。だから今ここでこの剣を抜くことができたのなら、この聖剣エクスキャリバーをあげよう」
俺はそれを受けとるとそのまま鞘から引き抜こうとした。しかしここで思い出した(?) のだ。俺は魔力を少し込めながら引いた。するとするすると抜けて行き一本の光輝く剣が現れた。
「おおこれがかのアーサ王の剣か、よし約束だ持っていってくれ」
「本当にいいのですか」
「ああいいとも。どうせ他に使える者もいないからな」
そういって渡してくれた。
本当は誰でも抜けるのだが・・・
俺はそれを受けとると皆のもとへ行き、説明すると一ヶ所づつ墓をまわった。
憑依させる前にアーサ王が全員を説得してくれたお陰で誰も倒れることはなかった。
憑依させたのは
マックにパーシバル。
ロゼフにガラハッドだ。
無事に終えると俺達はそのまま迷宮に戻ろうとしたとき。
「待ってください。また私をおいていくのですか」
「しかし」
「しかしではありません。昨日あれほど話したのに」
「私からも頼む。弱くはないのだ、連れていってあげてくれないか」
「わかりました、なら先ずは誰かを憑依させないと」
そうして俺はある人を憑依させることにした。しかも驚くことにその人女である。
「じゃあ行きますか」
そういって俺達は森の中にある1つの墓の前に来ていた。
「こんな場所に、お墓があったなんて」
「ここはランスロットの墓です。まあ見ててください」
そういって呼び出すと美しい女の人が現れた。
「きれい・・・」
スクリナですらそう声を漏らしてしまうほどの美女だ。彼女こそが裏切りの騎士と言われたランスロットである。
しかし実はランスロットは裏切ってはいないのだ。彼女は優秀な剣士でありながら魔法の才能もあった。
そこで魔法の才能の乏しいスクリナに彼女を選んだのだ。まぁ最も強い理由は男を着けたくなかっただけなのだが。
無事全員に憑依を終えると俺達、スクリナを加えた4人はブリテンを出発して迷宮に戻ってきた。
「戻ってきたな」
「戻ってきましたね」
なに、この戦場に帰ってきたぜ俺達!見たいなふいんき。
「ここですか、何もないように見えるのですが」
「そうだよね、最初は俺達もかなり探したからね。まぁ最後は落ちたけど・・・。
でもでも今回は前回行った場所、90層に直接行くから」
そう、この前一度行っているので90層までは直接行けるのだ。100層辺りまで飛べないか試してはみたのだがどこにあるのかがわからなくて跳べなかったのだ。
くるぞ!俺がそういう皆一斉に身構えた。次の瞬間奴は猛スピードで突撃してきたのを俺は剣の腹で受け止めてしまった。
折られる!そう思った瞬間剣の光がいっそう強くなり奴は跳びすさった、さっきやられた剣の腹を見るとヒビが入っていた。しかしよく見ると徐々にそのヒビが塞がっていくのがわかった。 
「やっぱりすげぇーなあのスピード。でも今回は見えたぜ」
「はい、なんとか私も見えました。さすが伝説の英雄に使えていた人の力だけあります」
「確かにあれは前のままだったら危なかったです」
そう口々に感想を述べる。まだ終わってないのだが。
「今度はこちらから行くぞ。ツーマンセルワンユニットだ」
そういうと、俺はスクリナと組んだ。そして奴の攻撃がくる。俺はそれを今度は刃でスクリナの方に相手の体制を崩すように逸らした。すかさずスクリナ腹を斬りにかかる。 
が、やはり少し裂けただけだった。
しかし更に横から来ていたロゼフが同じ場所を斬る。少し傷が深くなった。そこへロゼフの後ろにいたマックが傷口にあわせて突きを加える。やったか、と思ったがまだ息があるようだった。しかし最後にスクリナが渾身の回し蹴りを槍にいれて止めとなった。
「よっしゃ~ナイス蹴り!」
「お見事です」
俺達は無事倒すと良さそうな素材なので持っていくことにした。
やはり他の階はそこまで強くはなく順調に100層までたどり着いた。ラノベとかならここがゴールなのだが果たして━━━━
「なんか前に扉があるぞ」
「ほんとですね」
「ビンゴ!どうやらここが最下層のようです」
「それにしてはプレッシャーを感じませんが」
「ああだが90層の事があるからむしろヤバイ臭いをがぷんぶんしてるぜ」
つまりはそういうことなのだ。そう思って近くにあった石を投げ込んでみる。
すると1つの魔方陣が浮かび上がりそこから一体の大きな狼のようなものが出てきた。
「マジかよ」
「これはなかなかですね」
「これってまさかフロースフェンリル!?」
「そうみたいですね」
 そうこいつはフロースフェンリルと言ってカムサ帝国の英雄譚に出てくる最速の魔物で氷魔法と雷魔法を使う化け物だ。
「まずいな一旦離れろ」
そういって全員が距離をとると詠唱を始めた。どうやら部屋の中、奴のテリトリーに入らなければ攻撃はしてこないようだ。
《煉獄の炎よ炎魔と化してその身を焼き尽くせ!》
《極寒の王よ死の風をもって奴を氷石と化せ!》
俺は2つの魔法《煉魔》と《氷王》今撃てる全力の魔法を同じに放った。
しかし奴は無傷で現れたのだ、こちらが攻撃したからだろう。奴はこちらをひとつ睨むと咆哮を放つ。ただそれだけの攻撃で俺達は飛ばされ壁に激突した。なんとか意識を手離さないようにこらえると今度はロゼフのもとへ一瞬の間に近づいておりその爪で引き裂こうとしていた。
「逃げろ!ロゼフ」
声をかけるもその声はあまりにも遅すぎた。さっき咆哮からようやく立て直してロゼフの前にあったのは鋭く尖った爪だった。その爪が一線、斜めに光ったかと思うと次の瞬間には体から血が溢れてきた。
「うぁっ」
声にならない声をあげる。その一方的な攻撃の合間に体制を立て直した俺は2つの事を考えた。
1つは今たてる2人だけでも逃がすこと。
もう1つは死ぬ覚悟で戦い続けること。
それを思い付いた瞬間ふとスクリナの方をみる。この行動が命取りなのはわかっている。
しかし見た先ではスクリナもこちらを見ていた。そして強く頷いてきたのだ「諦めない!」と。
俺も頷き返すと瞬間移動を使い奴の上に出た。そのまま剣で1突きする。すると刺さったのだ。
俺はそれを確認するとすぐに引き抜いて離れた。
「剣は通った!行けるぞ!」
まだあのスピードには対抗できない、しかしここで諦めないと決めたのだ。全力で攻撃にかかった。
 斬る斬る斬る。全力で斬りかかる。スクリナもマックも最初は避けるだけだったがだんだんと攻撃を入れられるようになってきた。
俺は《瞬間移動》すると右袈裟、下段からの切り上げ、左袈裟、下段からの突きを与えるとまた《瞬間移動》で距離をとった。するとそこにすかさず両サイドから斬った場所と同じ場所を突き、薙いでゆく。
こうしてだんだんと奴も消耗してきた事がわかると一変した。奴が全身から電撃を全方向に放ってきたのだ。死角はない、とっさに俺はロゼフからみて覚えた魔力向こうを使いガードするも、避けることの出来なかったスクリナとマックが倒れた。
「ちくしょょょ!!
このやろう死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!」
ヒット&アウェイを繰り返す。奴の体にはみるみるうちに切り傷が増えて行くがどれも決定打とはなり得なかった。それどころか最初の方に斬った場所がふさがり再生していたのだ。
それでも俺は切り続けた。まるで八つ当たりのように。
「宗時冷静になりなさい!」
振り替えるとそこには剣を支えに立っているスクリナの姿があった。
「あなたの強みはなに!」
「魔法だけど・・・」
「効かない?そんなことで私の好きな人は諦めたりしないはずよ」
そういわれた瞬間世界が色を失った。そうして色々な出来事が目の前を流れていく。
ああこれが走馬灯ってやつか
「おい、俺はこんなやつに力を貸して覚えはねぇぞ。
よく考えろ。今のお前はただ俺の動きを知識として使っているだけだった、理解していない。そしてこの剣についても理解できていない。
俺ならこんなやつ一撃で倒せるぞ」
俺は反発する思いを押さえつけて考えた。そうしていくつか思い出した。
「少しはわかったようだな、俺はお前の中にいるんだ、面倒だがわからないことは聞いてくれていいんだぞ」
「ありがとう。わかったよ」
そういうと急激に世界が色を取り戻していく。
そうして戻ってくるとフロースフェンリルを無視して俺はスクリナに向き合った。
「ありがとう。スクリナ、これで決めるよ」
そういうと俺は《氷の枷》を発動した。それはフロースフェンリルの足を凍らせて一時的に動きを止めることに成功した。その隙に詠唱を開始しする。  
  
《この一閃にて魔を断たん。我は聖剣の守護者なり》
詠唱を終えるとフロースフェンリルに向けて剣を振り抜いた。すると触れていないはずのフロースフェンリルが両断され左右に倒れた。
「よっしゃー!!」
「さすが宗時だ。さあ早く皆を回復させてあげないと」
そういってスクリナと俺はそれぞれに回復魔法を使った。 するとすぐに二人は目を覚ます。
「勝ったのか・・・」
「ああ勝った」
「さすがは宗時さんですね」
「私の自慢の旦那です!」
そういって胸を張るスクリナに俺が「いつ結婚した!」とツッコミを入れ、それを皆が笑う。
そんな光景はどんな回復魔法よりも癒しとなった。
「よし皆復活したところであの扉の先にいっみますか」
「そうだな」
「はい!」
俺達は何が起きてもいいように構えながら扉を押し開いた。するとそこには1つの台とその上に1冊の本が置いてあった。
俺は緊張状態を維持したまま本を手にとってひらいてみる。  
「うそ・・・だろ・・・」
「宗時さん何が書いてあったのですか」
「それなんですが、少し時間をください」
そういって俺は魔石を取り出すと1つの刻印魔法を生成した。その間扉の中が安全なことを確認した皆も緊張を解いてリラックスしていた。
「おい、これなんだよ」
「どうしたんですか、ってえぇぇ」
「この文字全部神霊文字じゃないですか」
そう本は全て神霊文字つまり日本語で書かれていたのだ。おそらくこの世界で俺しか読めないであろう神霊文字で。
中には2つの事が書いてあった。
1つは力を得るための方法。
もう1つは世界中の迷宮の位置だ。
そうして今作っていたのは1つ目の方法で必要な者だった。
「皆聞いてください。まずこの本には確かに強くなる方法が書かれて今した。
それは悪魔召喚です」
「「「悪魔召喚!?」」」
「はい、ですからもし私の精神が乗っ取られた場合私を殺すために手段を用意しました」
「乗っ取られるって・・・」
「これをもしものときスクリナに使って欲しいのです」
俺がそう言うと場に思い空気が雪崩れ込んだ。
「嫌です。何て言っても聞いてくれないですよね」
「ああ、この方法しかないんだ」
俺は強く意思を固めてスクリナへ向き合い答えた。
「わかったよ」
そう涙ながらに、けれどしっかりとした確信を持った心持ちで頷いた。しかしそこをいいのか、と追求してくるマックとロゼフ。
俺は二人にはスクリナとは別の信頼を込めた眼差して見つめる。
それを二人は「仕方ないな」といった様子で頷いてくれた。
皆が納得してくれたことで俺はこの刻印魔法について説明した。そしてそれを手渡すと詠唱を開始する。
《我はそなたの主なり。我は無にして全。全にして無。この世に我を越ゆる者はなく。我は全てを持たん。強欲の王よ我が御霊に導かれここに今現れん》
詠唱を終えると同じに部屋に膨大な魔力が嵐となって溢れかえり荒れ狂った。
「どうなったんだ」
「宗時さん・・・」
そうして嵐が止み三人は嵐の発生源へと目を向ける。そこには二人。いや一人と一体だ、がいた。もう一人は完全に人間ではなかったのだから。
「わかりました。ありがとうございます」
そんな事を騎士が伝えに来たのは大会が終わって2週間程たった頃だった。今日はマックと一緒にギルドの依頼を受けにいく予定だったのだが・・・
俺はマックにこの事を伝えると《転移魔法》ですぐに王宮に行った。門の前ではなぜかレオナルドとロゼフが待っており事の重要性を表していた。
案内されるまま俺は謁見の間にやって来た。そこには既に国の重要人物が揃っておりとてつもない緊張感が部屋に居座っていた。
「よく来てくれた。単刀直入にいう、ここより遥か東の地にある国、モウラナヤ神国が消滅した」
「消滅ですか・・・」
「ああ比喩ではない、そのままの通りだ。森を残して建物や人が全て消えた。犯人はわかっている。悪魔だ」
「悪魔ですか。犯人がそう言ってるのですか」
「あぁそうだ。奴は自分の事を魔王と名乗ったそうだ」
「そいつが悪魔だという証拠はあるのですか、普通に考えれば幻覚や認識阻害をかけている方が納得がいくのですが」
「それなんだが、奴は背中から黒い羽が生え、腕や足も黒い毛でおおわれているらしい。
また討伐に行った騎士がただ一人とその他の人の装備品を除いて目の前で消されたらしいのだ」
「そうですか・・・」
「そこでだ宗時君にこの悪魔の討伐を依頼したい。いいだろうか」
 
暫し考えた。何か引っ掛かるのだ。
しかし聞くところによるとブリテン騎士王国の近くに位置しているらしいので討伐はもちろんするのだが、やはり何か引っ掛かるのだ。
「わかりました、その依頼受けたいと思います」
「そうか良かった。では討伐をメンバーなのだが━━━」
「いいです、とりあえず様子を見てくるのでそのあとで決めてもいいですか」
「もちろん構わないが・・・」
「では行ってきます」
そうして《転移魔法》を発動しようとしたとき異変に気がついたのだ。そう全員の動きが止まっているのだ。
俺は魔王とやらの襲撃かと思い身構えたがどうやら別のひとだったようだ。
「なんですか神様」
「いや、なにやら楽しそうな事が起こりそうだからね」 
今気がついた。犯人はこいつだ。
「あなたですね犯人は」
「何のことかな」
「とぼけないでください。この世界に魔王とやらを読んだのはあなたですよね」
そう怒気を込めて聞いてみると、悪びれた様子もなく白状した。
 
「そうさ、ワシが呼んだ。刺激が欲しかったものでの」
「ふざけるな!そんなことでこの世界を危機にさらすな」
頭にきた俺は《瞬間移動》を使い神様の背後にまわるとそのまま殴ろうとした。
しかし確かに振るったその拳はなんと神様を突き抜けてしまったのだ。それでも何か方法はないかと考えた。
「無駄じゃよ、今の私はいわば君の記憶のなかの物のような者じゃから実態がない。実態がないものを傷つけることはできんよ」
「くそ、てめえなにをしに来た」
「いい事を教えてやろうと思うての、東の森に迷宮がある。そこに行けば新たな力が手に入るだろう」
「けっ、誰がてめぇの教えなんて聞くかよ」
「必ずきくさ、去らばじゃの」
そうして霞のようにぼやけて消えてしまった。
ちくしょ!次あったときこそは必ず殴り付けてやる。
そうして予定通り《転移魔法》を使い東の果てモウラナヤ神国にのあった場所に転移した。 
ドオッン!
転移してすぐに感じたのは上から抑えられるような圧力だった。
まずいまずいまずい。あり得ないでしょ、これにはまだ勝てない。
そう、普通の人ならこの圧力のみで死んでしまいそうな程強力な者だった。
俺はすぐさま王宮に帰った。
「どうだった」
「さすがにあれにはまだ勝てませんね」
「ほう、そこまでか。でもまだ勝てないって事はいつかは勝てるのだな」
「はい、あいつの言う事をきくのはかなりしゃくですが可能性はあります。東の森に迷宮はありますか」
「迷宮?そのようなものはないが遺跡ならあるぞ」
おそらくそこだ。遺跡ということならどこかに必ず迷宮への入り口があるはず
「ではそこがどこら辺にあるか教えてくれませんか」
「いいとも、だれか地図を持ってこい」
カムサがそう言えと一人の騎士が足早に部屋から遠ざかっていく気配がした。暫くすると扉がノックされ一人の騎士がとても大きな紙を持って来た。
「確かここら辺にあった筈だ」
「ありがとうございます。どれだけかかるかはわからないですがなるべく急いできます」
「頼んだぞ。しかし誰も連れていかないのか」
確かにラノベやアニメでも迷宮を一人で攻略するのは難しいとは言っていたが━━━━
「なら私が同行します」
そうして前へ進み出たのはロゼフだった。確かにロゼフなら大丈夫かも知れないが、なにせ行ったことのない場所だ。何がいるかわからない。
「そうかではロゼフ頼んだぞ」
「わかりました」
こうしてロゼフの同行が決まった。ならばあいつを連れていってもいいだろ
俺は宿屋に戻るとマックを連れ出した。これで3人だ。いよいよ主発だ!
⊂●⊂
そこは蔦がはびこり“これぞ遺跡!”というふいんきを醸し出していた。その地へ俺達はついに踏み込んだ。
「これからどうすんよ」
「先ずは怪しいものがないか調べてくれ、でも見つけても絶対に触らないこと」
「わかったぜ」
「了解です」
そうして俺達は一度別れバラバラに辺りを捜索することにした。が、
「ねぇ~なにもねぇよ」
「これだけ探して見つからないとなると本当にあるんですかね」
「ここいらへんにあるはずなんだが」
本当に見当たらない、もう日もくれる頃なのでそろそろ諦めて帰ろうとしたときだ。
「ベタだけどあれじゃね、ひらけごまとか」
「いくらなんでもそれはないですよ」
「あぁさすがにな━━━」
急に地面が揺れ始めたのだ。しかもかなり大きい、俺は皆にしゃがむようにいうと揺れが収まるまで待とうとした。
そのとき地面が割れ俺達3人は地中の中に飲み込まれてしまった。
ドンッドドンッ
どうやらそこまで深くはなかったらしい。俺達は取り敢えずマッピングしながら進むことにした。途中魔獣が出て来て最初こそ採取しながら行ったが100体ほど倒し終えたところで採取するのを諦めた。
「それにしても広いですね」
「まあ迷宮だからな、しっかしまぁ~こんなところにあるとぁな」
「ほんとどこまで続いてるんですかね」
「さあなどの迷宮も未だに誰一人として攻略できた奴はいないからな」
「へぇ~そうなのか」
つまりはこれを攻略したら世界初だと、これは胸が高鳴る。
しかし、どうやら簡単にはいかないようだ。10層目に入りそろそろボスが現れる頃だとは思っていたが、今までとは比べ物にならない程のプレッシャーを放ってくる奴がいた。
「こりゃやべぇな、とんでもねぇほどのピりピりとしたプレッシャーを放ってやがる」
「ああこいつはさっきまでとは比べ物にならないほど強いよ」
「そうみたいですね。より気を引き締めていかないと」
俺達が部屋に入る。しかし目の前には何もいなかった。つまり上だ。
俺達はほぼ同じに上を向く。するとそこには丸い頭に丸い体、沢山の目と毛の生えた足が特徴的な蜘蛛型の魔獣がいた。
向こうもこちらの存在に気がついたようだ。すぐさま糸を噴射してきた。俺達はそれを避けると散会して体制をたてなおした。 
しかしプレッシャーのわりにはそこまで強い攻撃ではなかった。試しに俺は《炎弾》を撃ってみる。みごとそれは命中しそのまま蜘蛛型の魔獣は灰となった。
「そこまで強くなかったな」
「いやいや、十分強かったですよ私では避けるので精一杯でしたから」
「俺もかするかと思ったぜ。直感で動いたから間に合ったがみてからだと絶対食らってたぜ」
「そうか?」
「「そうだぜ(ですよ)!」」
まぁ倒せたしよしとするか、そんな具合でプレッシャーのわりにはあまり強くはない敵を次々と俺は倒してきた。どうやらここいらへんもラノベなんかと同じて10層毎に強さが全体的に上がるらしい。
そしてついに90層に来たところで問題が起きた。
「なんか、プレッシャー弱くなってねぇ」
「はい、確かに弱くなってますね」
そうなのだ、ここに来て急にプレッシャーが弱くなったのだ。しかしもう1つのことには2人は気がついていないようだ。
「一旦帰るよ」
「わかりまし」
「何でだよ」
「理由はあとで説明する。早くここを出るぞ」
そう言ったときだ。気がつかれてしまったようだ。
奥からくるプレッシャーを放つ魔獣、そいつが黙視できる位の距離になった。
見た目は猫や犬、それも小さい奴だしかし次の瞬間そいつの姿が消えたかと思うと隣に現れた。
ぐぁっ 
マックはそいつの前足に触れられたかと思うと次の瞬間には壁に激突して動けなくなっていた。
俺はすぐさま《瞬間移動》でマックを捕まえるとそのあとロゼフのもとへ行き。さらに《瞬間移動》で奴と距離をとる。何度も何度も使い距離を見えなくなるまで距離をとると詠唱を始めた。
《万里万里彼方我その地へ運ばん》
詠唱が終わる寸前奴は臭いを辿ってきたのだろう。地面に鼻を近づけながら黙視できるところまで現れると、獲物を見つけたように口が裂けて笑ったように見えた。
しかし危機一髪で《転移魔法》が発動し俺達は無事地上に戻ってこられた。
俺は《天使の祝福》を使いマックを回復させるとさっき気がついたことについて話始めた。
「つまりさっきの魔獣のプレッシャーは弱かったのではなく密度が違ったってことですか」
「そうです。正確には密度というよりその質ですが・・・
1つ言えることは今のままでは勝てないということです。ですがいくつか方法はあります」
「なんだそれは」
「1つ目は他の迷宮も片っ端からやって行き何かアイテムがないか調べる。
でもこれは攻略することが前提なので正直厳しいですし、アイテムがあるとも限らないですから。
2つ目は降霊術です。
これは強力な力を持った死者を憑依させ力を増すという方法ですがその死者に精神を乗っ取られてしまうというリスクがあります。
ですが今一番確実なのはこの方法です」
さすがに二人とも考え込んでしまった。迷宮は攻略できる可能性が限りなくゼロだし。
かといって降霊術は死ぬ可能性がある。
しかし時間がないのだ。俺は二人を帝都に送ってから一人で行こうとしたそのとき。
「わかったぜ。やろう」
「そうですね、やるにしてもやらないにしても結局魔王に殺されたら同じですからね」
「いいんだな」
「ああ!」
「はい!」
そして俺は二人に伝説を伝えるとその地へ転移した。そうしてそのままお城へ向かう。
「宗時さん!よくいらっしゃいました」
「スクリナ大丈夫だったか」
「はい!なんともありません」
「それは良かった。ペンドラゴンさんも変わらないようで何よりです」
「ありがとう。それで用とはなんだ」
「はい、この地に伝わるアーサ王の墓に連れていってほしいのです」
「なぜかね」
俺は魔王討伐のこと、迷宮のこと今までの事を話した。しかしその度にスクリナの表情が険しくなっていくのだから恐ろしい。
「宗時さん!なんでわたしを連れていってくれなかったのですか」
「だって君にもしもの事があったら嫌だし。君がいなくなった世界なんて死ぬよりも辛いから・・・」
「それがわかっていてなぜ連れていってくれないのですか。私だってあなたのいない世界なんて死ぬより辛いですのに。
私は世界で2番目に強いんですよ。1番と2番が組んだら負けません。そうじゃないですか」
凄い怒られた。まぁ確かに死ぬよりも辛い思いを彼女にさせようとしていたのは俺が悪いが━━━
「二人ともそこら辺にして。
宗時君わかったよ。アーサペンドラゴン=ブリテンの墓に連れていこう」
こうして俺達は墓に向かって歩いた。
「ここがその墓です」
とても立派な墓だった。墓石にはブリテン騎士王国の国旗でもある剣とそれに巻き付く龍が彫られていた。
そして俺はその墓に一度手を合わせると詠唱を始めた。
《安らぎと共にある汝の御霊。我いまその力を求めん。永き眠りより覚め我が力となれ》
詠唱を終えると墓石の上に一人の男が現れた。おそらくこの人がアーサペンドラゴンなのだろう。その姿が急に薄れて行き俺の中に入ってくる。
そこで俺の意識は途絶えた━━━
(#&#)))
「起きろ!」
ここは・・・なんていうベタな事は言わない。おそらく夢のなかだ、アニメでもこれを使った直後に意識を失い夢の中で相手と戦って力を手にしていた。
「あのアーサペンドラゴンさんであってますか」
「いかにも私がアーサペンドラゴンだ!
ってやりずれぇな、死んでまでこんな茶番しなくていいか」
なんか思ってたのと違う・・・本当に強いのだろうか
「あ!今お前失礼なこと考えただろ、思ってたのと違って悪かったな。やりずらいんだよ聖剣の守護者かなんか知らないが勝手に天才だ、英雄だってまつられてよ。俺だって努力したんだっての!」
なかなかにいろんな意味で凄いひとだった・・・
「力が欲しいんだろ、いいさ試練だとか面倒だし。それに今俺はお前の中にいる。剣の腕はまだまだだが魔法を絡めれば俺より強いからな」
「は、はぁ、では力を貸していただけるという事でよろしいのですか」
「ああいいぜ。さっさと目覚めな仲間がいるんだろ。俺の知り合いの墓を紹介してやるよ」
なぜだろう、やな予感しかしない。知り合いの墓って・・・友達を紹介する感じで言われるのはなんか新鮮だ。
そんなやり取りをするとだんだんと視界が明るくなり俺は目覚めた。
・ ・
)(+)(
む、なんだこの後頭部に伝わる柔らかくて暖かい感覚。これはもしや・・・
「良かった~良かったよ」
そう言うと泣きながら膝枕の状態から無理やり俺を起こすとそのまま顔を抱き締めてきた。
「むがっむがが・・・」
苦しい、スクリナの柔らかくて大きな胸が口と鼻をふさいで息ができないのだ。ギブアップを伝えるために叩くとやっと話してくれた。
「ビックリしたぜ、急に倒れるんだもんな」
「そうですよ。スクリナ姫は泣き出してどうしようも出来ないし、回復魔法でも目が覚めないしで」
「心配かけた見たいでごめんな、でもしっかりとアーサ王の力はてにいれたぞ」
そう報告すると良かったといいながら二人は部屋を出ていった。よく見ると外は暗くなりかなりの間倒れていた事がわかった。
「本当に心配したんですからね」
「本当に悪かったよ」
「本当ですか、なら今晩は隣で寝てください」
「わかったよ、ってぇぇ!!さすがにそれはまずいでしょ、結婚もしてないのに」
「いいではないですか、どうせ結婚するんですから。それに心配なんです。今晩だけは隣にいてください」
確かに心配させて悪く思ってはいるがさすがに俺の理性がもつか・・・
「嫌ですか」
「そんなわけないだろ、いいよ」
ズルい、ズルすぎる。したら目を潤ませて除き混まないで!!
こうしてこの日は結局スクリナと一緒にねた。
もちろん手は出していない!
次の日俺はそうそうにペンドラゴンさんに呼ばれて二人で廊下を歩いていた。
「君に渡したいものがあるんだ」
そうして着いたのは美しい意匠の施された大きな扉のまえだ。
「少し待っていてくれ」
そういって中に入って暫くすると一本の剣を持って出てきた。
あれだな、あれだよな。
「この剣は普通の人はこの通り抜くことすらかなわない代物だ」
そういって実際に抜こうとしてみせる。
「しかし、アーサ王なら抜けるはずなのだ。だから今ここでこの剣を抜くことができたのなら、この聖剣エクスキャリバーをあげよう」
俺はそれを受けとるとそのまま鞘から引き抜こうとした。しかしここで思い出した(?) のだ。俺は魔力を少し込めながら引いた。するとするすると抜けて行き一本の光輝く剣が現れた。
「おおこれがかのアーサ王の剣か、よし約束だ持っていってくれ」
「本当にいいのですか」
「ああいいとも。どうせ他に使える者もいないからな」
そういって渡してくれた。
本当は誰でも抜けるのだが・・・
俺はそれを受けとると皆のもとへ行き、説明すると一ヶ所づつ墓をまわった。
憑依させる前にアーサ王が全員を説得してくれたお陰で誰も倒れることはなかった。
憑依させたのは
マックにパーシバル。
ロゼフにガラハッドだ。
無事に終えると俺達はそのまま迷宮に戻ろうとしたとき。
「待ってください。また私をおいていくのですか」
「しかし」
「しかしではありません。昨日あれほど話したのに」
「私からも頼む。弱くはないのだ、連れていってあげてくれないか」
「わかりました、なら先ずは誰かを憑依させないと」
そうして俺はある人を憑依させることにした。しかも驚くことにその人女である。
「じゃあ行きますか」
そういって俺達は森の中にある1つの墓の前に来ていた。
「こんな場所に、お墓があったなんて」
「ここはランスロットの墓です。まあ見ててください」
そういって呼び出すと美しい女の人が現れた。
「きれい・・・」
スクリナですらそう声を漏らしてしまうほどの美女だ。彼女こそが裏切りの騎士と言われたランスロットである。
しかし実はランスロットは裏切ってはいないのだ。彼女は優秀な剣士でありながら魔法の才能もあった。
そこで魔法の才能の乏しいスクリナに彼女を選んだのだ。まぁ最も強い理由は男を着けたくなかっただけなのだが。
無事全員に憑依を終えると俺達、スクリナを加えた4人はブリテンを出発して迷宮に戻ってきた。
「戻ってきたな」
「戻ってきましたね」
なに、この戦場に帰ってきたぜ俺達!見たいなふいんき。
「ここですか、何もないように見えるのですが」
「そうだよね、最初は俺達もかなり探したからね。まぁ最後は落ちたけど・・・。
でもでも今回は前回行った場所、90層に直接行くから」
そう、この前一度行っているので90層までは直接行けるのだ。100層辺りまで飛べないか試してはみたのだがどこにあるのかがわからなくて跳べなかったのだ。
くるぞ!俺がそういう皆一斉に身構えた。次の瞬間奴は猛スピードで突撃してきたのを俺は剣の腹で受け止めてしまった。
折られる!そう思った瞬間剣の光がいっそう強くなり奴は跳びすさった、さっきやられた剣の腹を見るとヒビが入っていた。しかしよく見ると徐々にそのヒビが塞がっていくのがわかった。 
「やっぱりすげぇーなあのスピード。でも今回は見えたぜ」
「はい、なんとか私も見えました。さすが伝説の英雄に使えていた人の力だけあります」
「確かにあれは前のままだったら危なかったです」
そう口々に感想を述べる。まだ終わってないのだが。
「今度はこちらから行くぞ。ツーマンセルワンユニットだ」
そういうと、俺はスクリナと組んだ。そして奴の攻撃がくる。俺はそれを今度は刃でスクリナの方に相手の体制を崩すように逸らした。すかさずスクリナ腹を斬りにかかる。 
が、やはり少し裂けただけだった。
しかし更に横から来ていたロゼフが同じ場所を斬る。少し傷が深くなった。そこへロゼフの後ろにいたマックが傷口にあわせて突きを加える。やったか、と思ったがまだ息があるようだった。しかし最後にスクリナが渾身の回し蹴りを槍にいれて止めとなった。
「よっしゃ~ナイス蹴り!」
「お見事です」
俺達は無事倒すと良さそうな素材なので持っていくことにした。
やはり他の階はそこまで強くはなく順調に100層までたどり着いた。ラノベとかならここがゴールなのだが果たして━━━━
「なんか前に扉があるぞ」
「ほんとですね」
「ビンゴ!どうやらここが最下層のようです」
「それにしてはプレッシャーを感じませんが」
「ああだが90層の事があるからむしろヤバイ臭いをがぷんぶんしてるぜ」
つまりはそういうことなのだ。そう思って近くにあった石を投げ込んでみる。
すると1つの魔方陣が浮かび上がりそこから一体の大きな狼のようなものが出てきた。
「マジかよ」
「これはなかなかですね」
「これってまさかフロースフェンリル!?」
「そうみたいですね」
 そうこいつはフロースフェンリルと言ってカムサ帝国の英雄譚に出てくる最速の魔物で氷魔法と雷魔法を使う化け物だ。
「まずいな一旦離れろ」
そういって全員が距離をとると詠唱を始めた。どうやら部屋の中、奴のテリトリーに入らなければ攻撃はしてこないようだ。
《煉獄の炎よ炎魔と化してその身を焼き尽くせ!》
《極寒の王よ死の風をもって奴を氷石と化せ!》
俺は2つの魔法《煉魔》と《氷王》今撃てる全力の魔法を同じに放った。
しかし奴は無傷で現れたのだ、こちらが攻撃したからだろう。奴はこちらをひとつ睨むと咆哮を放つ。ただそれだけの攻撃で俺達は飛ばされ壁に激突した。なんとか意識を手離さないようにこらえると今度はロゼフのもとへ一瞬の間に近づいておりその爪で引き裂こうとしていた。
「逃げろ!ロゼフ」
声をかけるもその声はあまりにも遅すぎた。さっき咆哮からようやく立て直してロゼフの前にあったのは鋭く尖った爪だった。その爪が一線、斜めに光ったかと思うと次の瞬間には体から血が溢れてきた。
「うぁっ」
声にならない声をあげる。その一方的な攻撃の合間に体制を立て直した俺は2つの事を考えた。
1つは今たてる2人だけでも逃がすこと。
もう1つは死ぬ覚悟で戦い続けること。
それを思い付いた瞬間ふとスクリナの方をみる。この行動が命取りなのはわかっている。
しかし見た先ではスクリナもこちらを見ていた。そして強く頷いてきたのだ「諦めない!」と。
俺も頷き返すと瞬間移動を使い奴の上に出た。そのまま剣で1突きする。すると刺さったのだ。
俺はそれを確認するとすぐに引き抜いて離れた。
「剣は通った!行けるぞ!」
まだあのスピードには対抗できない、しかしここで諦めないと決めたのだ。全力で攻撃にかかった。
 斬る斬る斬る。全力で斬りかかる。スクリナもマックも最初は避けるだけだったがだんだんと攻撃を入れられるようになってきた。
俺は《瞬間移動》すると右袈裟、下段からの切り上げ、左袈裟、下段からの突きを与えるとまた《瞬間移動》で距離をとった。するとそこにすかさず両サイドから斬った場所と同じ場所を突き、薙いでゆく。
こうしてだんだんと奴も消耗してきた事がわかると一変した。奴が全身から電撃を全方向に放ってきたのだ。死角はない、とっさに俺はロゼフからみて覚えた魔力向こうを使いガードするも、避けることの出来なかったスクリナとマックが倒れた。
「ちくしょょょ!!
このやろう死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!」
ヒット&アウェイを繰り返す。奴の体にはみるみるうちに切り傷が増えて行くがどれも決定打とはなり得なかった。それどころか最初の方に斬った場所がふさがり再生していたのだ。
それでも俺は切り続けた。まるで八つ当たりのように。
「宗時冷静になりなさい!」
振り替えるとそこには剣を支えに立っているスクリナの姿があった。
「あなたの強みはなに!」
「魔法だけど・・・」
「効かない?そんなことで私の好きな人は諦めたりしないはずよ」
そういわれた瞬間世界が色を失った。そうして色々な出来事が目の前を流れていく。
ああこれが走馬灯ってやつか
「おい、俺はこんなやつに力を貸して覚えはねぇぞ。
よく考えろ。今のお前はただ俺の動きを知識として使っているだけだった、理解していない。そしてこの剣についても理解できていない。
俺ならこんなやつ一撃で倒せるぞ」
俺は反発する思いを押さえつけて考えた。そうしていくつか思い出した。
「少しはわかったようだな、俺はお前の中にいるんだ、面倒だがわからないことは聞いてくれていいんだぞ」
「ありがとう。わかったよ」
そういうと急激に世界が色を取り戻していく。
そうして戻ってくるとフロースフェンリルを無視して俺はスクリナに向き合った。
「ありがとう。スクリナ、これで決めるよ」
そういうと俺は《氷の枷》を発動した。それはフロースフェンリルの足を凍らせて一時的に動きを止めることに成功した。その隙に詠唱を開始しする。  
  
《この一閃にて魔を断たん。我は聖剣の守護者なり》
詠唱を終えるとフロースフェンリルに向けて剣を振り抜いた。すると触れていないはずのフロースフェンリルが両断され左右に倒れた。
「よっしゃー!!」
「さすが宗時だ。さあ早く皆を回復させてあげないと」
そういってスクリナと俺はそれぞれに回復魔法を使った。 するとすぐに二人は目を覚ます。
「勝ったのか・・・」
「ああ勝った」
「さすがは宗時さんですね」
「私の自慢の旦那です!」
そういって胸を張るスクリナに俺が「いつ結婚した!」とツッコミを入れ、それを皆が笑う。
そんな光景はどんな回復魔法よりも癒しとなった。
「よし皆復活したところであの扉の先にいっみますか」
「そうだな」
「はい!」
俺達は何が起きてもいいように構えながら扉を押し開いた。するとそこには1つの台とその上に1冊の本が置いてあった。
俺は緊張状態を維持したまま本を手にとってひらいてみる。  
「うそ・・・だろ・・・」
「宗時さん何が書いてあったのですか」
「それなんですが、少し時間をください」
そういって俺は魔石を取り出すと1つの刻印魔法を生成した。その間扉の中が安全なことを確認した皆も緊張を解いてリラックスしていた。
「おい、これなんだよ」
「どうしたんですか、ってえぇぇ」
「この文字全部神霊文字じゃないですか」
そう本は全て神霊文字つまり日本語で書かれていたのだ。おそらくこの世界で俺しか読めないであろう神霊文字で。
中には2つの事が書いてあった。
1つは力を得るための方法。
もう1つは世界中の迷宮の位置だ。
そうして今作っていたのは1つ目の方法で必要な者だった。
「皆聞いてください。まずこの本には確かに強くなる方法が書かれて今した。
それは悪魔召喚です」
「「「悪魔召喚!?」」」
「はい、ですからもし私の精神が乗っ取られた場合私を殺すために手段を用意しました」
「乗っ取られるって・・・」
「これをもしものときスクリナに使って欲しいのです」
俺がそう言うと場に思い空気が雪崩れ込んだ。
「嫌です。何て言っても聞いてくれないですよね」
「ああ、この方法しかないんだ」
俺は強く意思を固めてスクリナへ向き合い答えた。
「わかったよ」
そう涙ながらに、けれどしっかりとした確信を持った心持ちで頷いた。しかしそこをいいのか、と追求してくるマックとロゼフ。
俺は二人にはスクリナとは別の信頼を込めた眼差して見つめる。
それを二人は「仕方ないな」といった様子で頷いてくれた。
皆が納得してくれたことで俺はこの刻印魔法について説明した。そしてそれを手渡すと詠唱を開始する。
《我はそなたの主なり。我は無にして全。全にして無。この世に我を越ゆる者はなく。我は全てを持たん。強欲の王よ我が御霊に導かれここに今現れん》
詠唱を終えると同じに部屋に膨大な魔力が嵐となって溢れかえり荒れ狂った。
「どうなったんだ」
「宗時さん・・・」
そうして嵐が止み三人は嵐の発生源へと目を向ける。そこには二人。いや一人と一体だ、がいた。もう一人は完全に人間ではなかったのだから。
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