昔話集~アレンジ版~

ノベルバユーザー313493

浦島太郎

 初めまして浦島 太郎です。


 今年で61になります。


 去年会社を定年退職しました。


 趣味が釣りだったこともあり熱海に引っ越して日々釣りをして楽しんでいます。


 もちろん妻はいません。独身貴族というやつです。


 今日も砂浜を歩いています。
 あーあー子どもが亀を叩いてるよ。可哀想に、


 「ちょっとボク達、亀がかわいそうだからやめなさい」
 「あぁ!?なんだよじじぃ」


 ダメだ最近目が悪くなっていたようだ。よくみるとボクという歳ではなかった。
 10代後半から20代前半位だろうか、かなり悪のようだ。
 悪どもが今度は私を殴ってくる。


 「すまなかった、やめてくれ」
 「今さら謝ったっておせぇんだよ」


 やはり僕、という呼び方が気に障ったんだろう。亀を叩いていた棒で今度は私を叩く。
 うん、かなり痛い。
 あ、血が出てきた。
 そろそろ私はおちそうです。


 ピューッ


 「うぁっ目が!」
 「なんだこの亀急に水かけてきたぞ」
 「いや、まてなんかかけられたところヌルヌルしないか」
 「ほんとだ、まさか塩酸!?」
 「くそっ、逃げろ」


 こうして無事悪どもは亀に塩酸をかけられて逃げていきましたとさ。
 めでたしめでたし
 おしまい


 「いやいや、まておしまいにするなよ」


 ん、なんか声が聞こえる。気のせいだろうか。


 「いや、気のせいじゃねぇよ」


 私は声のする方をみてみる。そこに人は誰もいない。いるのはさっきまで虐められていた亀だけだ。
 やはり気のせいだろう。昨日酒を飲み過ぎたのかもしれない。そお思い俺は釣りをやめて帰ることにした。


 「いや帰んな、俺はここだ」


 なんだろうやけにリアルな空耳だ。


 「まて行くな」


 そうして足に水がかかる。私は水をかけてきたものの方をみてみる。やはりそこには亀しかいない。


 「俺だ、お前をよでるのは。そもそもおかしいだろ、なぜ助けられる筈の俺が助けなきゃいけないんだ」
 「おお、亀が喋ってる。そうか、ついに私にもお迎えがきたか」
 「お、おお、言いたいことは色々あるがまぁその通りだ。ついてこい」


 私はどうやら旅立つようです。友人に別れを告げられないことは少々心残りですがしかたありません。
 なかなか良い人生だった。
 私は亀さんが開けた門?をくぐります。するとそこには美しい女性と、豪華な料理が並んでいました。
 おお、どうやら私は天国にこられたようだ。


 「初めまして、ようこそ竜宮城へ。私はここの城主の娘の乙姫と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
 「これはこれはご丁寧にどうも、私は浦島太郎と申しま・・・す!?
 はて、今乙姫と仰られましたか」
 「はい」
 「ではここは竜宮城?天国ではなく?」
 「面白い方ですね、ここは竜宮城だと先程もご説明したと思いますが」


 あ、ああ、どうやら私はとんでもないところに来てしまったようだ。
 昔話通りならここの進む時間は向こうよりも遥かに遅い事になる。それでは色々と困る。


 「申し訳ございません。私まだ向こうで用事がございますので、帰らせていただいてもよろしいでしょうか」  
 「あら、それは申し訳ございませんでした。ではせめてお料理とこちらの玉手箱をお持ちください。千数百年前にお呼びした方は誤って開けてしまったようですが、今のあなたなら直ぐに開けても問題はないでしょう」


 乙姫がそう説明するとタコが玉手箱を持ってくる。


 「ではまたいらしてください」
 「ええ、ぜひとも」


 こうして私は無事帰る事ができた、のだが。


 「なんだ、これは・・・」


 そう、平屋の家が多かった海岸線沿いには高層ビルが立ち並んでいたのだ。
 実は竜宮城の時間の流れが遅いのではなく、そこに行く門の時間がずれていたのだ。


 「嘘だ・・・」


 私は悲しみにくれました。これでは私の友人はおろか、家すらももうないだろう。
 ならば、もうなにもうしなうものはない。
 私は玉手箱を開けることにしました。もし今よりも年寄りになっても今更です。若返ったならば仕事を探せばいいだけ。
 そう思い、玉手箱の紐をとき開けました。


 モガモガモガ


 中から煙が吹き出しました。しかし、体には何の変化も起きません。
 不思議に思っていたそのとき。


 ドゴゥァン!!


 急にとてつもない地響きと共に地面が揺れ砂浜に亀裂が入ります。遠くには大きな波が押し寄せてきているのがみえました。


 そうしてあっという間に街は飲み込まれました。このような自然現象が世界各地で起こりあっとまに人類は滅亡しました。


 その頃竜宮城では・・・


 「あっ!」
 「どうしたのですか」
 「その・・・間違えて滅亡の玉手箱を渡してしまいました」


 「うそぉん・・・」


 おしまい

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