ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。

ノベルバユーザー313493

20話 僕と黒い渦

 フレイヤ祭も無事終了し、僕はまた森の監視に戻っている。三日目に行われた剣術大会ではコンポさんが前回王者シュトロフ様を下し優勝を掴んだ。今年のフレイヤ祭は二つの大会両方で王者が入れ替わるということも起こり、街は大いに湧いた。
 ココナとはフレイヤ祭以降一度も会っていない。2ヶ月前からココナは賢者会と呼ばれる東西南北の賢者と賢者職を持つ人との会議の為、王都に行っている。正直ハーディスに会うのはやめて欲しいがこればかりは賢者の勤めとしてしょうがないらしい。
 そうそう、鶏たちの雛が帰ったのだ。昔お祭りでみたような青かったり赤かったりする。ヒヨコより元気で可愛かった。


 「沢山食えよ~」


 今日も鶏とヒヨコに餌をあげると見回りに走った。


 実はこの森かなり広くて北には発射台に使った大きな崖があり、東に行くと南西にあるミルフェスト稜という別の領まで続く谷がある。
 最近は体も頑丈になったみたいで身体強化の三重掛けをしても反動が殆どこなくなった。


 【身体強化】


 家を出て西に進む。そしてある程度行くと北に進みぐるっと一周するルートに入る。そして家からちょうど東の方へ来たときだった。


 「なんだあれ?」


 目を擦ってみる。


 消えなかった。


 空中に黒いぐるぐるした渦があるのだ。てで触れてみても通り抜けてしまう。何も感じない。


 「一応報告しておくか」


 家に戻り朝食をとると身支度をして家を出た。緊急なので身体強化を五重に掛ける。流石にこれを使うと次の日筋肉痛が辛くなるのだが、諦めるしかない。今更だがのんびり朝食を食べてる場合ではなかったように思う。


 「コンポさんはいますか?緊急なんです」


 衛兵の一人にそう訪ねてみる。シュトロフ様に会うには身内のココナかコンポさんを頼るのがいいと思ったのだ。ココナは今王都にいる。そこでコンポさんを頼ったわけだ。
 僕も有名になったみたいで僕の顔をみるや直ぐに掛け合ってくれた。


 「司さんどうしました?」


 「コンポさん、森に黒い渦のようなものが生まれて恐らく緊急事態だと思いシュトロフ様に会いに来ました」


 「そうゆう事か、確かに気になる。馬を用意する急ごう」


 コンポさんは馬を二頭用意してくれたが僕が乗れないことを言うと後ろに乗せてくれた。馬に乗ると直ぐにシュトロフ様の屋敷に着いた。
 コンポさんの顔をみるなり何も言わず通してくれた。


 「父のところへ案内してくれ」


 執事のような出で立ちの青年が少し急ぎ足て案内してくれた。


 「こちらの部屋でお待ち下さい」


 この前通された応接室に案内された。


 「私は父の元へ案内しろと言った筈だ。速くしろ」


 「しかし今は政務中であり―――――」


 「いいから速くしろ緊急事態だ」


 おぉ、迫力が凄い。コンポさんの物凄い剣幕と圧力に押され震えている。流石にこれかわいそうだ。


 「コンポさん、そこまで言わなくても」


 「確かに、すまなかった。しかし緊急だ。待っている時間がないかもしれない。何か言われても僕のせいだから案内してくれ」


 そう言うと、青年は一つお辞儀をして二階の執務室に案内してくれた。


 「旦那様、お客様がお越しです。なんでも緊急ということでコンポ様もおられます」


 「通せ」


 中に入ると正面に大きな窓がそこから目一杯光が差し込んでいる。シュトロフ様は椅子に腰掛けペンを置いて座っていた。机には書類が何枚か置いてあり今まさに仕事をしていたのがわかる。


 「急に押しかけて申し訳ありません」


 「気にするな、司くんが来るということは森で何かあったか」


 「はい、今朝方森の東に突如として黒い渦のようなものが現れたのです。触ることはできずただそこにあるだけでしたが」


 そう言うとシュトロフ様は何かに気がついたのか立ち上がった。そして本棚から一冊の本を取り出すとペラペラとめぐる。


 「やはりか。セント今すぐここに書いてある人を呼んでこい、緊急だ」


 「かしこまりました」


 青年、セントと呼ばれた人はシュトロフ様に気圧されると急いで出ていった。


 「コンポお前は王国騎士団に増援を頼みに行け、天災級の魔物が現れるかもしれない」


 「天災級!?」


 シュトロフ様は机の引き出しから一枚の手紙を取り出すとそれをコンポさんに預けた。
 災害級それは魔物の等級を表すもので組合でも使われている。冒険者はこれをみて依頼を決めているのだ。天災級は国をあげても討伐できるかわからないというクラスの事だ。これを倒すには兵士10万以上か、勇者と呼ばれる職業を持ってた高レベルの戦士が必要だ。
 現在この街にはどちらもない。つまり今そいつが来たらこの街は終わりということだ。
 暫くするとセントさんが帰って来た。


 「全ての者を集め終えました。会議室に全員揃っています」


 「わかった。司くんも来てくれ、恐らく今は君がこの街の最大戦力だ。みたものと一緒に意見を聞かせて欲しい」


 「僕でよければ」


 シュトロフ様と二人廊下を歩く。心なしかこの前よりも廊下が長く感じられる。
 会議室に入ると一斉に視線を向けられた。皆知らない人だ。僕とシュトロフ様が席につくと話はじめた。


 「よく集まってくれた。今回呼んだのは天災級の魔物の出現についてだ」


 そう言うと明らかに会議室のふいんきが変わった。


 「それは既に発見されたのですか」


 「いや、まだ現れていない。ただそれが現れるかもしれない予兆が発見されたのだ。司くん説明してくれ」


 そういわれて僕はシュトロフ様に話したことを皆にも同じように話した。
 僕が話終えるとシュトロフ様は右側に座っているさっきらかガクガク震えてる少年をみていた。正直僕と同じで場違いな感じの少年だ。


 「トルマくん、今の話を聞いてどう思う」


 「間違いないです。天災級が来ます。いくつかの話にもあります間違いなく天災級です。渦の大きさはどれくらいでしたか」


 「そうですね、50センチから1メートル程だったと思います」


 「つまり、予想されるのは黒き炎の巨人スルト、鷲の懐人フレースヴォルグのどちらかだと思います」


 今こっそりシュトロフ様に聞いたがかれは10歳にして王都の学校を首席で卒業した天才らしい。ちなみに父親はポパイさんだとか。


 「なるほど、その二体の魔物についてだ詳しいことはわかるか」


 「はい、スルトはそのなの通り炎を操る巨人です。大きさは小山の如くということから恐らく100メートルから300メートル程かと。フレースヴォルグは翼を持ち大きさはスルトと同じ位だと予想されます」


 嘘だろ、そんなの勝てるわけがない。こう考えたのは僕だけではないようで、辺りから今すぐ避難した方がいいという声が上がった。


 「確かにな、しかし移動手段がない、食料がない。これらはどうする」


 そう、全員を逃がすだけの物がないのだ。そしていつ現れるかもわからない。コンポさんが今王都に向かっているから援軍にはココナも含まれるだろう。それでもだ、例え援軍が来たとしても勝てるのだろうか。


 「ならせめて女子供だけでも」


 正直もしスルトやフレースヴォルグなんて化物が現れたらどこにいたって危ないのだ。シュトロフ様は暫く考えた後ふぅと息を吐いた。


 「わかった。街にあるありったけの馬車を集めて女子供から順に隣街へ逃がす」


 そう言うと席を達部屋を出ていった。100メートル以上の巨人が現れたら僕の家も危ないだろう。とりあえず家は最悪蔵にしまえばいい。だが鶏たちは蔵には入れない。僕も席をたち外に行くするとセントさんに廊下で呼び止められた。


 「北條様、旦那様より暫くここに滞在するようにとの事です」


 「わかりました。一旦家に戻ってもいいですか?」


 「構いません、旦那様から鳥達を連れてきてもいいと言われております」


 それは助かった、後でお礼をいっておかなくては。僕はセントさんと別れると身体強化をかけ家へ走った。これは明日は大変な事になりそうだ、





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