ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。

ノベルバユーザー313493

5話 僕と鶏舎造り

――――2日目―――――






 日課を済ませた僕はココナが起きる前にあらかじめもらっていた紙に昨日習った事の復習をした。案の定、少し忘れていたがまぁ本当に少なかったので明日には完璧だろう。ココナと朝食をとると今度は貰った本の勉強に入った。なんとあの本、全て魔法関連の本だったのだ。


 魔法、なんと素晴らしい響き。ファンタジーものの定番である。ついに僕にも魔法が使える日が来るのだ。


 「じゃあまずはこの本の最初の文を読んで自分なりの考察をしてみてください」


 ココナの言う通り読んでみる。


 魔法とは虚を見極め真を繋ぐものであり、また真を見極めるものでもある。魔法とは真であり虚である。そのものの歴史が今をつくる。虚と実を極めしは魔法を極めるに等しくそのもの未だ現れることかなわない。


 なんじゃこりゃ、読みにくすぎる。どこの古文書だって話だ。取り敢えず真は物事の本質って事だろう。ってことは虚は間違いって事だと思う。歴史は―――――経験かな。魔法は経験か重要って事か?


 「魔法は本質を理解することが大切で、自分の経験が魔法の、恐らく威力に反映される。こんな感じですかね」


 「虚を見極め真を繋ぐ、これは物事の本質を理解してそれを合わせて考えろということです。
 また、真を見極める、これは今の常識、当たり前に囚われるなということです。全ての物事に疑いの心を持ってよく考えてみろということです。
 歴史が今をつくる。これは知識の事を差します。魔法の発動にはその現象が起こるまでのプロセスを明確にイメージすることが大切です。ですから沢山の知識、経験を積む事が魔法を極める事の近道と言うことです」


 なるほど、つまり魔法は連続でバンバン撃てるってわけではないんだな。でも想像力次第ではとんでもない魔法も産み出せるってことだな。


 「ここまではどうです?」


 「大丈夫だとおもう。ココナは教えるのが上手だね。もしかしてそうゆう職業なの?」


 「・・・」


 「あ、そうだ職業って個人情報なんだったよね。ごめん、今のはいいや」


 「いや、別にいいんですよ。教えて困るわけではないですから。それに私は司さんの職業知ってますし、不公平ですもんね」


 そういうとココナはグローブを外して僕に手の甲を見せてきた。


 「読んでください」


 そこには賢者とかかれていた。


 「賢者!?」


 「はい、私の職業、賢者は魔力が高くまた記憶力が上がると言う補正効果と【賢者の叡知】という職業スキルがあります。これは知識があればさっき説明した魔法を発動するためのプロセスを省略できるというスキルです」


 そこまで聞いてないが、とんでもなくチート職業だということがわかった。


 「ココナって凄かったんですね」


 「そんなことないですよ。ほら続きやりますよ」


 それからひたすらに本を読みその内容をココナが解説するという事を続けた。


 「それにしても本当に凄いです。今日で半分も進んじゃいました。司さんって伝説の勇者みたいですね」


 「勇者とか僕があり得ないですよ」


 「そうですよね」


 勉強した物を片付けると夕食を食べて寝る。そうしてあっという間に一週間がたった。


 =^・―・^=


 「それじゃ私は本を取りに一回戻りますね」


 今日は勉強はお休みだ。どうやら予想よりも早いペースで進んでしまったらしく用意していた本を全て読みきってしまったらしい。もとは文字を教えて貰うだけだった筈なのだが。


 「わかりました。この前みたいに急がなくていいですから、ゆっくり焦らずにお願いします」


 「わかってますよ」


 玄関でココナを見送ると早速僕も作業に入る。今日は鶏舎を新しく建て替えるのだ。既に構想は出来ているので直ぐに作業に入る。
 家の裏に回ると森へ入り樹と樹の間隔が10メートル程度になるように周りの樹を斧で伐っていく。だいたい100メートル×50メートル程度の広さにする予定だ。切り出した木は蔵にしまっていく。休み休みやっていたら1日がたってしまった。


 ―――――鶏舎造り2日目―――――


 今日は伐った木を加工していく。12、3メートル程度の長さに切り分けると板を切り出していく。一本の木から三枚切り出せた。40メートル程度あったのでだいたい一本の木から9枚程度とれる計算だ。この日は90枚程度切り出して終った。


 「そういえばココナ帰って来ないな」


 ―――――鶏舎造り3日目―――――


 今日の目標は切り出しを終える事だ。計算では900枚必要なのだが今のペースだとあと10日ほどかかりそうだ。まぁ仕方ないのでひたすらに頑張るだけだが。ちなみに今日もココナは帰って来なかった。


 ―――――鶏舎づたい10日目―――――


 慣れてきた事も相まって予定より2日ほど早く切り終った。それよりもココナが帰ってこないのが物凄く心配なのだが。今日はまた樹を伐る。地上から8メートル程度の所に行くと足で樹にしがみつき手に持った鋸で切り倒す。隣の樹に移るとまた伐る。
 太陽が昇りきった辺りで聞き覚えのある声が響いた。


 「司さ~ん。どこですか~」


 よかった。どうやら無事だったらしい。今は初めて携帯のありがたみを物凄く実感している。無いものをねだっても仕方がないが。


 「司さ~ん?」


 「ここです」 


 そういって木から飛び降りる。


 「わぁ、びっくりしましたよ」


 「それはこっちの台詞だよ!のんびりとは言ったけどこんなに遅くなるならちゃんと言ってくれないと。心配したんだから!!」


 僕がそういうと少し嬉しそうにでれっとした。


 「僕は怒ってるんだよ!」


 「すみません、でもそんなにこれぐらいで心配することないと思いますよ。ましてや私と司さんは家族ではないのですから」  


 「確かにそうだけど・・・それでも今度10日以上出掛けるときは確りと報告して!」


 「わかりました」


 取り敢えず言質がとれたので頷く。


 「お帰り」


 「ただいまです」


 二人で家の表まで行くとそこには大きな荷車と沢山の荷物があった。


 「こんなに沢山、大変だったんじゃないですか」


 「そんなことないですよ。これくらいへっちゃらです。でもそうですね、一つお願いを聞いてもらえますか」


 「何でも言ってください。僕に出来ることなら全力でしますので」


 ここまで用意して貰ったんだ。何かしら返さないといけないだろう。それに今僕に出来る事といったらご飯を作るくらいしかできないし。


 「そしたら―――――私の弟子になってください」


 「弟子ですか?」


 「はい、ダメですか」


 「そんな事とないですよ。僕でよければ喜んで」


 「よかった」


 ココナは大袈裟にため息をつくと胸を張って言った。


 「じゃあ先ずはこれを運びなさい!」


 「わかりましたお師匠様!」


 僕がそういうとココナは唐突に笑いだした。それにつられて僕も笑う。なんだか今のやり取りが可笑しかったのだ。


 「取り敢えず蔵にしまっておきますね」


 「はい、お願いします」


 蔵を発動すると荷車ごと蔵にしまった。


 「何度みてもそのスキル凄いですよね」


 「そうですね、重宝しています。さっき伐った木も全てこの中に収納してますからね」


 「羨ましいです。そのスキルがあればこんなに時間かからなかったのに」


 「ほんとお疲れ様です。さぁご飯にしましょ」


 家に入るとご飯を作る。毎日やっている事だがやはり誰かのために作る料理の方が断然美味しく作れるのはなぜだろうか、それに一人で食べるよりも二人で食べる方が美味しいのも、同じ材料で作っている筈なのに不思議だ。



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